著者
櫻 哲郎 森田 寿郎 植田 一博
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第56回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.A16, 2009 (Released:2009-06-16)

伝統芸能文楽では,3人の人形遣いが1体の人形を操作し,多彩な動作を実現している.本研究ではこの協調操作技術のメカニズム解明を目指し,合図となる非言語情報“ほど”に着目した動作解析を行った. まず人形の構造・操作方法について調査を行い概要を把握した.“ほど”とは操作の主導権を握る主遣いが 動作開始時に“型”と呼ばれる動作パターンや,動作の大きさ・速さなどの情報を他の人形遣い(左・足遣い)に伝達する合図と言われている.“ほど”を含む人形各部位の位置姿勢情報を計測するため,磁気式センサ内蔵型文楽人形を製作した.実機を用いて現役の人形遣いによる演技の計測実験を行った.得られた主遣いの操る右手と,左遣いの操る左手の速度情報に対しウェーブレット解析による位相解析を行った.結果“型”動作は3つの動作要素に分けられ,主遣いに対し左遣いが高い追従性を持つ動作要素の前に,主遣いが先行する“ほど”にあたる動作要素が発見された. 以上より,人形の協調操作において,主遣いの動作中に含まれる“ほど”と呼ばれる動作要素が,左遣いの動作追従を促し,人形全体の協調動作を実現していることを明らかにした.
著者
梶田 航一 寺内 文雄 小野 健太 渡邉 誠
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第63回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.151, 2016 (Released:2016-06-30)

交通事故やスポーツ事故等で頚髄損傷者(以下頚損者)になると、手足が麻痺するため、一般的な身体障害者用トイレを利用することができない。そこで従来のリハビリテーションの現場では高床式トイレというものが最善と考えられている。リハビリセンターなどでは頸損者が自力で生活が行えるようになるために各種の訓練を行っているが、その中で高床式トイレを使用するための訓練として直角移乗などの訓練も行われている。高床式トイレは車椅子から直角移乗をし、いざり動作で便座まで移動して使うものである。しかし高床式トイレは住宅を大幅に改修する必要がある、外出先に無いため頚損者が長期の旅行に行く事が出来ないなどの問題がある。そこで本研究では頸損者でも一般的な身体障害者用トイレに行くことを可能にする長座位車椅子という製品を提案した。実際の使用方法としては頸損者が普段使用している車椅子から直接長座位車椅子へ直角移乗をし、一般的な身体障害者用トイレの便器の上に長座位車椅子ごと移動し、排泄を行うというものである。
著者
永山 雅大 原田 一 永山 広樹
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第64回春季研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.500, 2017 (Released:2017-06-29)

東日本大震災のような広域災害発生時、特に津波や洪水といった災害は円滑な避難誘導が必要とされる。避難をする際、避難経路の方向を示すサインや情報掲示板はあるが、避難誘導サイン間の距離があるなど避難経路が明確でない場合がある。短時間で安全なエリアまで到達するためには、十分とは言えない環境が多く、特に沿岸や河川の周辺は、より円滑な避難誘導が必要とされる。 本研究では、東日本大震災を経験した教訓から、従来の避難誘導方法の考え方を見直し、文字やピクトグラムなどを用いた現状の誘導サインだけに頼らず、歩行者、観光客、老若男女を問わず、全ての人が直観的に理解でき、適切な方向へ誘導可能なLED照明を用いた避難誘導の方法を開発することを目的とする。 研究方法は、東日本大震災発生において被害を受けた、宮城県名取市閖上地区の状況調査やアンケート調査から、問題点や避難誘導に際して重要である要素について分析を行った。得られた結果から、LED照明を用いた避難誘導サインユニットを試作、その有効性を検証、改良を行う。
著者
岩崎 奨吾 工藤 赳夫 齋藤 歩美 小池 星多
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第64回春季研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.438, 2017 (Released:2017-06-29)

本研究では、ソーシャルロボットをコミュニティの中に投入することで、ロボットと人間の共存する環境をデザインし、ロボットとコミュニティの関係性を明らかにする。ロボットを製作するワークショップの開催や、ロボット関係のイベントにて展示を行った。また高校の教育現場にロボットを導入し、これらの様々な環境においてロボットと人間の関係がどのように変化していくか、またロボットがどのように使用されていくかをフィールドワークにより調査した。
著者
金谷 英枝 大賀 暁 對馬 隆介 長田 純一
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第63回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.204, 2016 (Released:2016-06-30)

本稿は、ワークショプにおけるデザイナーの役割について述べる。ワークショップでは、そこに参加するデザイナーに対して、大きく二点のパフォーマンスが求められる。すなわち、客観的立ち位置でのファシリテーションと、当事者的立ち位置から斬新なアイデアを生み出すクリティビティである。この両者は相反する役割であるが、いくつかのワークショップでは、それが上手く両立することができている。しかしながら、その手法やノウハウはデザイナーのスキルや属人化しているために、活動をスケールアップすることが実現できない。そこで、筆者らは、これまで行ったワークショップの中で、上手く行った活動を振り返り考察することで、属人化しているノウハウとスキルを外在化することを試みた。その結果、この二つの役割をハイブリットで行う手法として「ドローイングによる参加者間での情報のシェア」および「ペアワークによるデザインファシリテーション」の二点があることを考察した。
著者
臼井 敬太郎
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第56回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.E18, 2009 (Released:2009-06-16)

イタリア人の官吏・建築家アンジョロ・マッツォーニは、2大戦間期にイタリア全土にわたってモダンデザインの駅舎を多数実現した。1935年以降に竣工した駅舎については、彼は建築のみならずベンチやカウンターなど造付け家具、椅子や机、棚など据置家具、そしてコーヒーメーカーなどプロダクト、駅名板などグラフィック、さらには鋏立てなどステーショナリーまで、ありとあらゆるものを設計している。駅舎の建築と家具のデザイン的特徴について通覧すると、各駅でほぼ同じスタイルが繰り返されている。そして、建築と家具の形態を極端なまでに単純化させることでトータルなデザインとしての全体的な統一感が図られている。マッツォーニは一貫してこのようなトータルデザインを追求し、結果的にモダンデザインの駅舎を全国的に普及させた。イタリア国鉄の一つの駅舎スタイルを実現した建築家として、マッツォーニを改めて評価する。
著者
武藤 武志
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第57回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.P29, 2010 (Released:2010-06-15)

クロスメディアやメディアミックスの中心にはWEBサイトが置かれることが多いが、その中でもWEBサイトや動画共有サイト等の普及により、動画がプロモーションやリッチコンテンツとして使用されるケースが増加している。そこでの動画の尺は、テレビCMより長く、映画より短い時間で構成されている。この尺での映像表現を魅力的にするためにはその尺に合った「盛り上がり」を考えなくてはならない。映画ほど時間をさいての盛り上がりの設定は困難であり、テレビCMのような短時間でのインパクトを追求した表現では、WEBに誘導する効果は薄いと言える。 この盛り上がりを考える上で、情報量との関係に注目した。映像表現には多くの種類の情報が混在している。文字情報、写真やイラスト等のグラフィック、オブジェクトの動きから、音楽・効果音などである。情報量を調節することが、映像のリズムを演出し、視聴者の集中力を維持し、しいては魅力的なものとなると推測される。 本研究では映像表現における盛り上がりについての要因の抽出分析を行い、仮想映像モデル作成、印象評価等を行い、各要因の関係性について考察する。
著者
岩崎 信治
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第56回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.E19, 2009 (Released:2009-06-16)

1930年代までの日本建築史では曖昧にしか語れなかった日本美について明確に提唱した二人の建築家がいた。岸田日出刀(1899-1966)とブルーノ・タウト(1880-1938)である。岸田は1929年に文と写真による日本美を「過去の構成」の出版で示した。タウトは1933年に来日し、日本美について書いたものを「ニッポン」の題名で1934年に出版した。両氏が取り上げた日本美は、伊勢神宮、桂離宮、京都御所、弧逢庵など殆どがお互いに共通しており、共に日本美の聖地として永遠性を認めていた。このことは岸田の動機によることが大きく、タウトよりいち早く日本美を発見した岸田日出刀を高く評価すべきと考える。
著者
中塚 慧 松岡 由幸
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第55回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.19, 2008 (Released:2008-06-16)

近年,ニーズの多様化や市場のグローバル化に伴い,人工物を取り巻く場は多様化している.ここで場とは,製品を取り巻くヒト,モノ,環境に含まれる全ての要素および要素間の関係である.例えば,椅子の例では,従来考慮されてきた平均的な体格や着座姿勢だけではなく,体格,着座姿勢,および使用目的の多様性を考慮する必要がある.このため,多様な場に対応可能な製品を開発する方策が求められている.一方,上記の問題を解決する方策としてロバストデザインが注目されている.ロバストとは,「頑強な」または「頑丈な」という意味であり,ロバストデザインとは,場の変化による製品の様々な変動に対して,機能の安定性(頑強性)が確保された製品を作ることを目的としたデザインである.本研究では,ロバストの意味,ロバストデザインの概念,およびロバストデザイン法を紹介することにより,本デザインにおける概念を説明した.
著者
山崎 友里江 蓮見 孝
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第58回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.161, 2011 (Released:2011-06-15)

現状の病院食は、患者の症例に合わせた数百食もの食事を用意するための作業コストや配膳時の都合により、見た目が損なわれている傾向がある。充実した食事を摂ることは患者にとって精神的健康に繋がるため、どのような状況下においても、おいしいと感じながら食事を摂ることができるような仕組みづくりをデザインの観点から行うことが望まれる。本研究では、病院食の見た目を損なう原因として、ここで使われている特殊なトレーの形状によって食器の配置が乱れていることに着目した。そこで、病院食のトレーの上に、パターンを施したシートを敷くことによって、トレー上の構成を美しくし、食事をおいしそうに見せるためのパターンデザインに取り組んだ。
著者
木村 光 林田 直澄
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第56回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.P28, 2009 (Released:2009-06-16)

豊橋鉄道東田本線は、半世紀以上の長い歴史を持つため、市内の周辺環境と合わなくなってきており、様々な問題が生じている。現在の都市環境と社会に合わせたLRTのあり方を研究し、今後の都市における公共機関の改善を視野に入れた。今回の研究で、2階建ての車両に2階建てのホームを提案した。これによって、短時間の間でスムーズに乗客の乗り降りができる。また、エレベーター付きの歩道橋と連続して、利用者は使用できる。
著者
白 柳爛 須田 高史 上田 エジウソン 寺内 文雄
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第63回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.183, 2016 (Released:2016-06-30)

本研究は、樹脂に充填するフィラーに着目し、生活者に製品の長期使用を促すプラスチック材料を開発することを最終目的としている。本報では熱可塑性樹脂であるポリプロピレンと熱硬化性樹脂である不飽和ポリエステル樹脂を用いて、これらの樹脂中に複数種類のフィラーを混入することを試みた。フィラーの大きさによって異なる混入方法を使い、サンプルを作製した。作製したサンプルの印象や質感を、被験者を用いた印象評価実現により検討した。これにより、サンプルの質感に対する評価構造とサンプルの特徴が明らかとなった。フィラーの種類を変えるだけでなく、サンプルの研磨やフィラーの表面処理によっても、その印象を大きく変化させられることが確認できた。
著者
池本 浩幸
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第63回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.124, 2016 (Released:2016-06-30)

イノベーション創出に資する人材の育成では,実際の体験で裏づけられた確信を伴う実践知の獲得が重要であり,プロセスや手法の本質を理解した上で,既存の方法にこだわらず,顧客や環境などに応じて柔軟かつ大胆な発想で取り組めるようにすることが大切である.革新性のあるサービス創造をテーマとしたProject based learning型教育の初期段階において,学修者が教育での学びについて自身を顧客と捉えた共感的リサーチを行いチーム内で議論することによって,筆者が指導している教育の一事例ではあるが,学修者がサービスデザインで行う顧客コンテキストの共感的理解の本質や重要性を事前に体得することができることを確認した.また,リサーチ結果をプロジェクトチーム内で共有・議論することによって,個々のプロジェクトメンバの学びに対する考えの背景にある様々な欲求や困りごとを相互に理解し合うことができ,チームビルディングを円滑に進めることができた.この方法がプロジェクトの進行や成果物の革新性にどのように影響したのかについて,教育が終了した時点で学修者に調査を行い,方法を改良していくことが課題である.
著者
福地 悠人 山崎 和彦
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第63回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.39, 2016 (Released:2016-06-30)

近年、技術の発達によって、GPSやカレンダーに登録したスケジュールをもとに、交通情報や天気など、ユーザーの欲しい情報を優先的に表示する「Google Now」のような、利用者のコンテクストに応じて提供する情報を変化せるアプリケーション、サービスが増えつつある。また今後はよりユーザーのコンテクストを入手する手段が増えると考えられているため、今後のアプリケーションやサービスを検討する上でコンテクストの情報をどのようにデザインに活用するかを明確にする必要がある。本研究は利用状況に応じて変化するユーザーインターフェースのデザインアプローチを提案することを目的とする。
著者
落合 太郎 大嶺 茉未
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第63回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.11, 2016 (Released:2016-06-30)

2014年に実施した音楽が時間経過に及ぼす影響を測る実験結果では、静かで緩やかな曲が時間の経過が短くむしろダイナミックでアップテンポの曲の方が長く感じるという結果であった。この実験過程で曲ごとに異なる色彩イメージを連想するという副次的結果を得たため「和音」に着目し,派生する色彩感覚を追加実験によって検証した。追加実験ではC(ド)のmajor,minor,sus4,diminishを代表和音としてデザイン学科学生を対象に聞かせた。色彩トーンや色相の連想イメージを聞くと一定の傾向が見られ,先行研究で報告された色聴保持者と共通する結果が得られた。和音は色彩イメージを誘発し,さらに当該色彩を介して環境デザインで指定された機能イメージと連動させることが理論的に可能となるため,和音が「言語」に替わるサインとして空間に機能するということが示唆された。