著者
原田 一美
出版者
大阪産業大学
雑誌
大阪産業大学人間環境論集 (ISSN:13472135)
巻号頁・発行日
no.9, pp.157-175, 2010

1922年に刊行された『ドイツ民族の人種学』は,大きな評判を呼び,ベスト・セラーとなった。著者のハンス・F・K・ギュンターは一躍「人種論のスター」に躍り出て,ワイマル期ばかりか,ナチズム期の人種学,人種主義に大きな影響を与えることになる。本稿では,このギュンターに焦点を当て,彼の人種論の内容を検討し,それに若干の考察を加えた。ギュンターの人種論は,人文科学と自然科学を総合するような内容をもっており,その「科学性」ゆえに多くの知識人を惹きつけた。また,外観から人種を判断できるまなざしを鍛えることを重視し,多くの顔写真を掲載することによって,人びとが日常生活で目にする顔からその人の「人種」を判定できるような「基準」を提示した。このようなギュンターの人種論が評判を呼んだことは,ワイマル期における人種意識の高まりを示すとともに,逆に彼の著作が人種意識をさらに高めるのに貢献したということもできる。また,ナチズム期には,彼の人種分類が学校や党の諸団体においても教材として利用された。親衛隊では,ギュンターが提示した多様な人種の表現型が隊員を選別する際の重要な基準にされたのである。
著者
田中 眞奈子 原田 一敏 星野 真人
出版者
昭和女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、研究代表者らがこれまで確立してきた放射光X線を用いた鉄鋼文化財の非破壊分析技術を日本刀の作刀技法の解明のために応用し、刀剣の専門家や博物館、放射光分析の専門家他と学際的な研究グループを組織し、作者や流派、時代に焦点を絞り5年間で120振を超える価値ある日本刀を体系的に分析することで最終的に日本刀の黄金時代と言われる鎌倉中期の作刀技術を解明する。
著者
坪井 貴司 原田 一貴 中村 匠 大須賀 佑里
出版者
Japan Society of Neurovegetative Research
雑誌
自律神経 (ISSN:02889250)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.226-229, 2022 (Released:2022-07-16)
参考文献数
13

小腸上皮内に存在する小腸内分泌L細胞から分泌されるグルカゴン様ペプチド-1(glucagon-like peptide-1: GLP-1)は,インスリン分泌を促進し,食欲を抑制する.このGLP-1分泌は,消化管管腔内の様々な物質や血中に含まれる神経伝達物質やホルモン,さらには腸内細菌叢が産生する様々な代謝物などによって制御されているが,その詳細な制御機構は不明である.そこで本稿では,特にアミノ酸や腸内細菌代謝物などがGLP-1分泌に及ぼす影響について紹介する.
著者
緒方 維弘 那須 典完 原田 一寿 鴨田 正治
出版者
THE PHYSIOLOGICAL SOCIETY OF JAPAN
雑誌
The Japanese Journal of Physiology (ISSN:0021521X)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.303-309, 1951 (Released:2011-06-07)
参考文献数
6
被引用文献数
2 3

In spite of the common knowledge among physicians that the daily intake of as much as 30g. of sodium chloride will bring about disorders of various functions of the body to a considerable degree, the actual fact that the inhabit ants in North Manchuria take 40 g. or more every day during the winter months without any disorders in the body functions leads us to further study of the effect and significance of sodium chloride ingestion.1) Daily intake of sodium chloride amounting to 50-60 g. by adding 10 g. to each meal causes a gradual rise in basal metabolism, good appetite, and energetic feeling of the body after several days. In this stage of high metabolic rate due to increased salt ingestion, both a rise in the oxygen consumption and a drop in the surface temperatures during exposure to cold are less in degree and the subject complains less than normal subjects. It is also proved that the temperature reaction of skin vessels to cold in the middle finger of a human subject as well as in the ear-lobe of a rabbit is intense enough to offer resistance to frost-bite.2) When the increased salt formula is continued beyond this favourable stage, the displeasing symptoms known to all which are due to deposit of the excess salt manifest themselves before long.3) Generally speaking, a rise in the body functions seems to be accompanied not with an increased amount of exchange but with the amount of sodium chloride held in the body, and there exists a marked seasonal difference in the ability of salt metabolism: the maximum amount which can be retained without any symptoms of excess is far greater during the period in late autumn and winter than during the rest of the year, and the body can take more salt during the winter months and can discharge more in urine in summer than during the rest of the year.
著者
相川 裕子 土屋 利紀 原田 一道 高山 巌
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.1-11, 1996-03-31 (Released:2019-04-06)

通院中の緑内障,高眼圧症患者の心理的,身体的特徴を面接,タイプA行動質問紙法で捉えた。その結果,18人の緑内障患者のタイプA行動の平均得点は22人の健常者の平均得点に比べて有意に高かった。緑内障患者は心理的緊張が強く,身体的にも過緊張状態がみられた。そこで,心身の緊張を緩和させるために,ATを中心とする心理的アプローチを試み,症状がどのように変化したか検討した。ATを習得した患者全員の症状が緩和し,ATの実施によって,眼圧不安定だった緑内障,高眼圧患者8例中6例において,統計的に有意な眼圧下降が認められた。これらの結果から,緑内障患者は,交感神経系が充進状態にあることが推測され,ATを中心とした心理的アプローチが,一部の患者の症状緩和に有効であることが確かめられた。
著者
對馬 育夫 小越 眞佐司 山下 洋正 原田 一郎
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.23-28, 2013 (Released:2013-01-10)
参考文献数
7
被引用文献数
8 8

福島第一原子力発電所事故に伴い飛散した放射性物質が,東北·関東を中心とする多くの下水処理施設において検出されている。本研究では,放射性物質により下水汚泥が高濃度に汚染されるメカニズムを解明するため,関東・東北地方の4箇所の下水処理場を対象に,流入状況の調査および各処理過程における放射性核種分析を行った。さらに,放射性物質を含む下水汚泥の埋立処分のための知見を得るため,下水汚泥焼却灰及び溶融スラグについて,溶出試験を行い,放射性セシウムの溶出特性を調査した。その結果,下水処理場内に流入した放射性物質は主に反応槽内において保持されていること,大部分の放射性物質が浮遊物とともに汚泥側に移行していることが示された。また,溶出試験において,本試験に供した12検体のうち9検体については,溶出液の放射性物質は検出限界値以下であり,残り3検体については,溶出率が0.5-2.7%と極めて小さかった。
著者
宮崎 康次 黒崎 潤一郎 笠井 哲郎 原田 一興 塚本 寛
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
熱工学コンファレンス講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.421-422, 2007-11-23

We fabricated bismuth-telluride based thin films and their in-plane thermoelectric micro-generators on a free standing silicon nitride thin film by using the flash evaporation method through shadow masks. The shadow masks are fabricated by standard micro-fabrication processes. The fabricated micro-generators are just put on a heated plate, and the open-circuit output voltages of micro-generators are measured by a digital voltmeter. The maximum measured voltage is about 40mV at 10K temperature difference. The output voltage is comparable to the bulk value although the device consists of as-grown thin films.
著者
原田 一敏
出版者
独立行政法人国立博物館東京国立博物館
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2004

自在置物は、動物や昆虫など、それらが本来的に持っている体を動かせる機能までも動かせるように作った置物である。本研究は、自在置物の歴史の探求と、それがいかにして動かすことができるかを理解するための復元にある。歴史の研究については、昨年度、メトロポリタン美術館、フライングクレインアンティークス、オリエンテーションギャラリー、ボストン美術館、ヒギンス・アーマリー博物館など海外の作品を調査したが、17年度は日本国内の遺品調査に重点を置いた。石川県立美術館では蛇、佐賀県鍋島報公会では龍、清水三年坂美術館では鯉、鯱、蝉、かまきり、蝶、蜂、カミキリムシなど総計で15点調査をするとともに、写真撮影を行った。これらの調査により明珍性の甲冑師の作品については、作者によって得意とする分野があり、たとえば明珍宗長は手長海老やヤドカリ、明珍吉久は鯉を複数製作していることなどが確認できた。また京都の高瀬好山工房の歴代の作家の作品を知ることができた。復元的研究については、16年度、明治時代以来自在置物を作っている工人の家に生まれた京都在住の冨木章(工人名は宗行)氏に伊勢海老の部品の制作を依頼するとともに、その制作過程を映像記録した。17年度はその完成品の制作を依頼し、完了した。これによって伊勢海老については、その制作法が明らかとなり、今後鍛金、彫金の専門家であれば、だれでもこの伊勢海老が作れることとなり、技術の伝承が可能となった。
著者
原田 一敏 松原 茂 神庭 信幸 澤田 むつ代 沖松 健次郎 和田 浩 小山 弓弦葉 行徳 真一郎 三浦 定俊 早川 康弘 若杉 準治 谷口 耕生 村重 寧 田沢 裕賀 小林 達朗 原田 一敏
出版者
独立行政法人国立博物館東京国立博物館
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

国宝・法隆寺献納宝物聖徳太子絵伝、全10面について場面内容の同定と描写内容の精査、当初の地である綾地の精査を行った。また高精細デジタル写真の撮影、1面ごとの合成を行い、あわせてX線フィルムをデジタル化し、同様に合成することにより、両者を対照可能なデータとする基本資料の作成を行った。
著者
原田 一
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.286-291, 1970-08-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
30
被引用文献数
1
著者
藍場 将司 原田 一宏
出版者
THE JAPANESE FORESTRY SOCIETY
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
pp.96, 2022-05-30 (Released:2022-06-21)

日本の国立公園研究における市民参加・協働に関して、「Cinii」に掲載されている先行研究のレビューと、論文本文の文章解析を実施した。日本の国立公園に関する研究のうち本文が閲覧可能であった698件中、138件で政策への提言が確認された。文章解析の結果、年代を問わず自然・利用・地域・保護が頻繫に用いられており、自然の利用と保護の関係に注目した論考が多いと考えられた。一方で年代を経るにつれ管理が頻出することから、研究者の間で自然への人為的介入の必要性が高まっていると考察された。一方で「管理」は多様な文脈で使用されるため、現地での検証も合わせて行われる必要がある。市民参加や連携に関する提言は27件(19.6%)で確認された。1980年代から2000年代前半までは、地域住民の意思を反映させる制度的・行政的仕組みの欠如が指摘されていた。環境省が連携を進める趣旨の提言を公表した2007年以降、国立公園の協働を主たるテーマとして議論する論考が増加し、「協働」の理論モデルの構築や負の側面にふれる論考が確認されるなど、「協働」を軸に市民参加や連携に関する議論が進行したものと考えられる。
著者
原田 一貴
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2016-04-22

小腸内分泌L細胞(以下、L細胞)は、消化管内の栄養素、腸内細菌代謝産物、血液中のホルモン、神経伝達物質などを感知し、グルカゴン様ペプチド-1(glucagon-like peptide-1: GLP-1)を分泌する。GLP-1は膵β細胞からのインスリン分泌を促進するほか、摂食行動を抑制するため、内在的なGLP-1分泌能を改善することで糖尿病などの代謝疾患治療に結びつくことが期待されている。アルギニンバソプレシン(arginine vasopressin: AVP)は、腎臓からの水の再吸収に加えて社会行動や血糖値制御にも関与するホルモンである。申請者はAVPがGLP-1分泌を制御し血糖値調節に関与している可能性を提唱し、AVPおよびAVP受容体によるGLP-1分泌調節機構、およびその破綻が生体に及ぼす影響の解明を目的とした。まず、マウスL細胞由来細胞株GLUTag細胞にAVPを投与し、ELISA法によりGLP-1分泌量を測定したところ、細胞内Ca2+濃度およびGLP-1開口分泌回数の上昇を引き起こす濃度で分泌量が有意に上昇した。ここから、AVPによりGLP-1分泌が促進されることが確かめられた。次に、3種のAVP受容体遺伝子欠損マウス(V1aR-/-、V1bR-/-、V1a・V1bR-/-マウス)を用い、安静時および摂食時の血中GLP-1濃度を測定した。摂食条件としてグルコースやアミノ酸などの栄養成分を経口投与したが、マウスでは経口投与によるGLP-1分泌促進効果が低く、分泌能をより正確に解析できるようにするため、小腸への直接注射による投与方法を確立している。また、細胞内の代謝を制御する分子であるATP濃度変化を可視化できる蛍光タンパク質センサーMaLionを開発したほか、グルコース可視化センサーGreen Glifonの開発にも成功した。
著者
原田 一明
出版者
横浜国立大学
雑誌
横浜国際経済法学 (ISSN:09199357)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.159-192, 2009-03