著者
本村 和嗣
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.83, no.2, pp.81-93, 2009-03-20 (Released:2016-07-23)
参考文献数
39

It is estimated that one million people are dually infected with Human Immunodeficiency Virus type-I (HIV-1) and type-II (HIV-2) in West Africa and parts of India. HIV-1 and HIV-2 use the same receptor and coreceptors for entry into cells, and thus target the same cell populations in the host. Additionally, we first examined whether RNAs from HIV-1 and HIV-2 can be copackaged into the same virion. Therefore these properties suggest that in the dually infected population, it is likely that some cells can be infected by both HIV-1 and HIV-2, thereby providing opportunities for these two viruses to interact with each other. We constructed recombination assay system for measurement recombination frequencies and analyzed recombination rate between HIV-1 and HIV-2. We used modified near-full-length viruses that each contained a green fluorescent protein gene (gfp) with a different inactivating mutation. Thus, a functional gfp could be reconstituted via recombination, which was used to detect copackaging of HIV-1 and HIV-2 RNAs. In this study, approximately 0.2% of infection events generated the GFP+ phenotype. Therefore, the appearance of the GFP+ phenotype in the current system is approximately 35-fold lower than that between two homologous HIV-1 or HIV-2 viruses. We then mapped the general structures of the recombinant viruses and characterized the recombination junctions by DNA sequencing. We observed several different recombination patterns including those only had crossovers in gfp. The most common hybrid genomes had heterologous LTRs. Although infrequent, crossovers were also identified in the viral sequences. Such chimeric HIV-1 and HIV-2 viruses have yet to be observed in the infected population. It is unclear whether the lack of observed chimeras is due to the divergence between HIV-1 and HIV-2 being too great for such an event to occur, or whether such events could occur but have not yet been observed. Given the number of coinfected people, the potential for interactions between HIV-1 and HIV-2 should not be ignored.
著者
小林 宏行 押谷 浩 高村 光子 河野 浩太
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.57, no.10, pp.871-881, 1983-10-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
8

急性肺炎による呼吸不全を伴った症例 (15例) を対象に, 肺炎の早期治癒および呼吸不全の早期離脱を目的に広域抗生剤とステロイド剤の併用を行った.また家兎実験的肺炎を対象とし肺炎時呼吸不全発生のメカニズムおよびこれに対するステロイド剤の有用性について検討した.その結果, 肺炎発症後少なくとも4日以内にステロイドが併用されれば, 肺炎陰影の早期消失 (平均4.4日±1.7) およびPac2値の早期回復 (平均3.5日±1.4) が得られた.また, ステロイド併用によりその効果がみられなかった例は5例にみられ, これら症例のうち3例は高齢者高度進展肺炎で心不全併発による死亡例, 他の2例は肺炎治癒までに15日間を要した例であった. これら不成功例に共通することはステロイド併用開始時期の遅れ (平均7.6日±2.3) であった.肺炎時Pao2の低下は, 肺胞壁の著明な腫脹および肺胞腔内への滲出物充満等による肺内true shunt率増加にもとずくものとみられ, ステロイド剤はこれら肺胞壁の薄壁化あるいは滲出物を抑制しその結果呼吸不全の早期離脱を促進するものとみなされた.臨床的には以下の基準でステロイド併用が施行されることが望ましい. (1) 発病後4日以内, (2) Pao260mmHg以下, (3) 広域抗生剤の併用, (4) 使用期間は7日間以内.
著者
上田 周二 弓指 孝博 吉田 謙 前田 哲生 烏野 隆博 手島 博文 平岡 諦 中村 博行 正岡 徹
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.464-467, 1997-05-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
8
被引用文献数
2 2

Tsutsugamushi disease is widely spread throughout Japan. A case of tsutsugamushi disease was seen in October, 1996. A 64-year-old male developed typical symptons of tsutsugamushi disease with Rickettsia tsutsugamushi, after he returned to Japan from Cheju Island, Korea. Not only in Japan but also in other Asian countries including Korea, China, Taiwan, and Thailand, tsutsugamushi disease is one of the most important rickettsial diseases carried by ticks or mites.If a traveller returning from an Asian country has symptons such as high fever, skin eruption, and lymphadenitis, we should susupect that he is suffering from tsutsugamushi disease and should search if he has an eschar on any area of his body. We should not forget that tsutsugamushi disease is an imported disease. Patients of tsutsugamushi disease often have hematological disorders. They are sometimes referred to the hematological section of the hospital. Hematologists should be familiar with this disease.
著者
堀内 善信 戸田 眞佐子 大久保 幸枝 原 征彦 島村 忠勝
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.599-605, 1992-05-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
20
被引用文献数
7 8

茶およびカテキンの百日咳に対する感染防御の可能性を, 百日咳菌に対する殺菌活性, 菌の培養細胞への付着に対する抑制作用および百日咳毒素のリンパ球増多 (Lymphocytosis promoting, LP) 活性に対する不活化作用を指標として検討した.殺菌活性については, いずれも濃度依存的であり, 緑茶, 紅茶およびコーヒーは, それぞれ常用飲用濃度 (5%) で, 百日咳菌に対して強い殺菌活性を示した.プアール茶も比較的弱いながら殺菌活性を示した. (-) エピガロカテキンガレート (EGCg) およびテアフラビンジガレート (TF3) の殺菌活性は強く, 1mg/mlで24時間以内に百日咳菌を完全に殺菌した.HeLa細胞およびCHO細胞への百日咳菌の付着能に対する抑制作用を検討したところ, EGCgやTF3は全く抑制を示さなかった.これに対し, 緑茶および紅茶は, 培養細胞への菌の付着を強く抑制した.百日咳毒素のLP活性不活化作用は, 細胞への百日咳菌の付着抑制とは逆で, 1%で緑茶が全く作用を示さず, また紅茶でもわずかな不活化作用しか示さなかった.一方, EGCgおよびTF3は100μg/mlで強い不活化作用を示し, なかでもTF3の不活化作用は顕著であった.以上の結果から茶, EGCgおよびTF3には百日咳防御に関して, 興味ある活性のあることが示された.
著者
岩沢 篤郎 中村 良子
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.77, no.5, pp.316-322, 2003-05-20 (Released:2011-02-07)
参考文献数
16
被引用文献数
9 6

強酸性電解水とポビドンヨード製剤, グルコン酸クロルヘキシジン製剤, 塩化ベンザルコニウム製剤を細胞毒性とモルモット創治癒過程の影響, 感染創での膿生成有無で比較検討し, 以下の結果を得た.1) 細胞毒性試験系では, 強酸性電解水の毒性は認められなかったのに対し, ポビドンヨード製剤で0.1%~0.01%, グルコン酸クロルヘキシジン製剤では0.0002~0.0004%, 塩化ベンザルコニウムで10~0.1μg/mlの範囲まで, 毒性が認められた.2) モルモット創治癒過程では, 表皮細胞の遊走には各製剤間で有意な差は認められなかったが, ポビドンヨード製剤・グルコン酸クロルヘキシジン製剤・塩化ベンザルコニウム製剤で, 炎症部位面積は未処理群と比較し有意に大きかった.3) Pseudomonas aeruginosa感染創の膿形成は, 強酸性電解水で12.1%, ポビドンヨード製剤で20.6%, グルコン酸クロルヘキシジン製剤で27.3%, 生理食塩水で38.2%の割合で認められた.以上の結果から, 強酸性電解水の創傷治癒過程における障害は認められず, 汚染部位に菌の感染像がある場合は, 生理食塩水ではなく強酸性電解水を流しながら使用することで, 殺菌効果を期待できることが判明した.消毒薬使用の場合には細胞毒性を示すが, 強酸性電解水はほとんど細胞毒性を示さないため, 創傷治癒に対して促進的な作用ではないが, 有効性が認められたものと考えられた.
著者
大坪 寛子 海渡 健 柴 孝也
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.73-81, 2000
被引用文献数
1

維持血液透析 (HD), 腹膜透析 (CAPD) 患者の好中球殺菌能をoxidative burst (OB), elastase (EL), cathepsin (CA), collagenase (CO) などの細胞内酵素活性ならびに<I>in vitro</I>でのTNF-α に対する反応性の面から検討し以下の成績が得られた. HD群では非刺激時の酵素活性は健常群と相違なかったが, TNF-α にて刺激した場合にはCO以外は全て有意に低値であり, CAPD群では非刺激時の活性値は健常群と同等であり, 刺激時にはEL活性のみ低値であった. また, TNF-α 刺激時の活性値はHD群がCAPD群よりも低値であった. TNF-α 刺激に対する反応性はHD群やCAPD群では低下していたが, この傾向はHD群でより顕著であった. この反応性に有意な影響を及ぼす要因として, HD群ではOBに対しては透析期間, β<SUB>2</SUB>-MGやPTHが, ELとCAに対しては透析期間のみが, またCAPD群のOBとCAに対してはβ2-MGやPTHがあげられ, それぞれ反応性と有意な逆相関を示した. しかし透析期間と好中球機能には関連性は認められなかった. 以上の成績より, 長期透析を行っている慢性腎不全患者の好中球では, oxidative burstで示される酸化的殺菌メカニズムのみならず, elastase, cathepsinなどの非酸化的メカニズムにも障害が存在し, その程度は血液透析患者においてより顕著である. 特にTNF-α に代表されるサイトカイン刺激に対する反応が不充分であることは腎不全患者の易感染性に大きく関与しているものと思われた.
著者
具 芳明 藤友 結実子 添田 博 中浜 力 長谷川 直樹 前﨑 繁文 前田 真之 松本 哲哉 宮入 烈 大曲 貴夫
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.93, no.3, pp.289-297, 2019-05-20 (Released:2019-12-15)
参考文献数
32

背景:日本では抗菌薬の多くが診療所で処方されているが,その現状や医師の意識はあまり知られていない. 目的:診療所医師の抗菌薬適正使用の現状や意識について調査する.デザイン:診療所医師を対象としたアンケート調査.方法:日本全国の診療所から無作為抽出した1,500診療所に医師を対象とするアンケートを送付した.結果:回収数274回収率18.3%)のうち調査に同意した269通を集計の対象とした.アクションプランや抗微生物薬適正使用の手引きの認知度は低かったが,抗菌薬適正使用についての認識や意識は高かった.感冒や急性気管支炎に抗菌薬を処方している医師が一定数おり,最も処方されているのはマクロライド系抗菌薬であった.処方の背景には医師の知識だけでなく医師患者関係など複雑な要因があることが示唆された.結論:診療所医師の知識向上に加え,医師患者間のコミュニケーション改善などさまざまな手法で外来での抗菌薬適正使用を推進していく必要がある.
著者
堀 成美 中瀬 克己 中谷 友樹 谷口 清州
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.85, no.2, pp.166-171, 2011-03-20 (Released:2015-04-06)
参考文献数
19

Human immunodeficiency virus (HIV) 感染症の拡大防止は感染症施策の重要課題であり,流行のフェーズによって有効な介入法,優先順位が異なる.性感染症症例のパートナー (性的接触者) への検査勧奨は低流行国において特に有効とされているが,本邦では制度としては確立しておらず,臨床においてどの程度実施されているのかが明確ではない.そこで,2007 年 9 月から 11 月にエイズ診療拠点病院の HIV 診療担当診療科に所属する医師を対象に郵送での自記式質問紙調査を実施し,その実態および促進因子・阻害因子の検討を行い,エイズ診療拠点病院診療担当科に所属する医師 513 名のうち 257 名から回答が得られた (有効回答率 49.9%).HIV 診療経験を有する群では「ほぼ全員の患者にパートナー健診の話をする」医師は 66.5%,その結果として新規 HIV 症例を把握した経験を有する医師は 37% であり,合計 185 例の新規症例が把握されていた.パートナー健診を実施する際の課題として,時間の不足,法的根拠等の未整備,標準化された説明資料の不足が把握されたが,性感染症のパートナー健診制度が未整備の状況下においても医師の多くは積極的にパートナー健診に関わっていることが把握された.パートナー健診の拡大のためには,根拠となる法律や学会ガイドライン等の整備,および手法や資料の標準化とそれを可能にする研修プログラムの開発,医師の負担を軽減するための他職種の診療への参加が重要と考えられた.
著者
狩野 孝之 中村 淳一 藤田 和恵 小橋 吉博 矢野 達俊 沖本 二郎 副島 林造
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.72, no.12, pp.1306-1310, 1998-12-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
11
被引用文献数
2 3

A 44-year-old woman with a history of intermittent fever for several years was admitted because of burn on her leg. On admission, she had hepatosplenomegaly and fever. Antibiotic therapy was started for bacterial infection of the burn. She lost her appetite and IVH was started. During the treatment, high fever appeared and chest X-ray films showed multiple nodular infiltrates throughout both lung fields.Candida albicans was isolated from IVH catheter culture and pulmonary candidiasis was suspected. Her fever and lung involvements were successfully treated with fluconazole. During the course, serum anti-EB-VCA-IgG antibody persisted at a hight iter and anti-EBNA antibody remained negative. EB virus DNA was detected in the peripheral blood and bone marrow. Thus, she was diagnosed as chronic active EB virus infection.
著者
本廣 孝 河野 信晴 富永 薫 石本 耕治 原田 素彦 中島 哲也 今井 昌一 西山 亨
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.49, no.7, pp.296-305, 1975-07-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
9

Urinary tract infection in children is a world-wide problem and some management is required in correct bacteriological diagnosis. Recently, dip-slide culture method is conveniently used in Europe for systematic screening of bacteriuria and its reliability for detection of bacteriuria has been reported by many investigators.The authors tested the accuracy of a dip-slide system “Uromedium” developed in our country by comparing the results with that from the pour-plate method.In 57 to 100 percent of 545 cases, results obtained from Uromedium were accorded with that from the pour-plate method, and the specificity of Uromedium was estimated 73 percent. Bacterial numbers in urine specimens determined by both method ranged below 102 to over 106 per ml and several species of gram-positive cocci, gram-negative bacilli, and fungus were isolated. For all the organisms linear regressive lines were obtained between bacterial numbers determined by both methods and the coefficients (γ) were 0.82 to 0.98. These findings suggest that “Uromedium” is a satisfactory method for systematic screening of bacteriuria and diagnosis of urinary tract infection.
著者
池田 浩 永峰 恵介
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.90, no.2, pp.138-141, 2016-03-20 (Released:2017-08-19)
参考文献数
12

We herein report on a 62-year-old man who presented with symptoms of intermittent fever that persisted after returning from a trip to France. During his trip, he had eaten natural cheese. Although no bacteria could be isolated from blood culture, the serum agglutination test showed a positive antibody titer of 1 : 160 for Brucella canis. The patient responded well to combination antibiotic therapy consisting of gentamicin, rifampicin, and doxycycline, and his symptoms improved. He became antibody-negative after antibiotic therapy. Although the present case may have been a case of B. canis infection, considering the epidemiology of brucellosis in France, serological cross-reactivity with Brucella melitensis infection is also a possibility. Concerns regarding the reemergence of brucellosis have recently been reported in France, and most cases are caused by B. melitensis. Clinicians should be aware of the fact that blood cultures must be incubated for ≥21 days for isolation of Brucella and that in Japan, antibody measurement of B. melitensis cannot be performed on a commercial basis.
著者
徳田 浩一 五十嵐 正巳 山本 久美 多屋 馨子 中島 一敏 中西 好子 島 史子 寺西 新 谷口 清州 岡部 信彦
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 : 日本伝染病学会機関誌 : the journal of the Japanese Association for Infectious Diseases (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.84, no.6, pp.714-720, 2010-11-20
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

2007 年3 月初旬,練馬区内の公立高校(生徒数792 人)で麻疹発生が探知された.同校は,練馬区保健所及び東京都教育庁と連携し,ワクチン接種勧奨や学校行事中止,臨時休業を実施したが発病者が増加した.対応方針決定に詳細な疫学調査が必要となったため,同保健所の依頼で国立感染症研究所実地疫学専門家養成コース(Field Epidemiology Training Program : FETP)チームが調査支援を実施した.全校生徒と教職員を対象として症状や医療機関受診歴などを調査し,28 人の症例が探知された.麻疹未罹患かつ麻疹含有ワクチン(以下,ワクチン)未接種者に対する電話でのワクチン接種勧奨や保護者説明会,緊急ワクチン接種等の対策を導入し,以後新たな発病者はなかった.症例のうちワクチン接種群(n=12)は,最高体温,発熱期間,カタル症状(咳,鼻汁,眼充血)の発現率が,未接種群(n=13)より有意に軽症であった(p<0.05).過去における1 回接種の効果を評価したところ,93.9%(95%CI : 87~97)(麻疹単抗原93.5%,MMR 94.3%)であり,製造会社別ワクチン効果にも有意差はなかった.1 回接種群(n=838)に発病者があり,2 回接種群(n=21)に発病者がないことから,1 回接種による発病阻止及び集団発生防止効果の限界が示唆された.集団発生時の対策として,文書配布のみによる注意喚起や接種勧奨では生徒や保護者の接種行動をはじめとした実際の感染対策には繋がり難く,母子健康手帳など記録による入学時の感受性者把握やワクチン接種勧奨,麻疹発病者の早期探知など,平時からの対策が必要であり,発病者が1 人でも発生した場合,学校・行政・医療機関の連携による緊急ワクチン接種や有症者の早期探知と休校措置を含めた積極的な対応策を早急に開始すべきと考えられた.
著者
山崎 勉 遠藤 一博 富永 一則 福田 正高 前崎 繁文 橋北 義一 板橋 明
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.305-311, 2004
被引用文献数
2

埼玉医科大学附属病院では, arbekacin (ABK) 耐性メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) の分離頻度が一定の時期に増加したが, 病棟の担当者に交差感染の防止を指導することなどにより, その後はABK耐性MRSAの検出率は減少した. 多数検出された時期に由来するABK耐性MRSA 22株について, 薬剤感受性を含む生物学的表現型および<I>Sma I</I>を使用したパルスフィールドゲル電気泳動法 (PFGE) を組み合わせて疫学的検討を行った.<BR>ABK耐性MRSA株はA~Jの異なる10病棟に由来し, 外科系のA病棟由来が8株と最も多く, 以下B病棟3株, C, D, E病棟は各々2株, F, G, H, I, J病棟は各々1株であった. A病棟由来の8株では, 6株がPFGEで同一パターンを示した. PFGEにて同一パターンをとった6株は, 同様の薬剤感受性および生物学的性状パターンをとった. B病棟由来の3株のうち2株, F病棟由来の1株およびI病棟由来の1株も, PFGEは同じパターンをとり, 薬剤感受性や生物学的性状もA病棟由来の6株と同様であった.さらに, C, DおよびG病棟で分離された5株は, 各々類似したPFGEパターンをとっていた.<BR>MRSA感染症における治療薬剤を維持するためにも, 各医療施設においてABK耐性MRSAの動向を監視し, 施設内感染防止に努めることが必要と考える.
著者
横田 万之助
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.44, no.7, pp.388-394, 1970
被引用文献数
1

Suppositorium, a form of medication, has already been brought into use since old egyptyan andancient chinese era, chiefly for local use. But, practically, it was since 17th century thatsuppositorium became gradually one of usual forms of medication. In Japan, however, it is not so favourable type of drugs, as compared in the countries in Europe or America. But recently, it has become used more widely for systemic purpose to avoid some untoward gastric side effects due to drugs. Thus, I had an oppotunity to administer Erythrosin-suppositorium, newly made and delivered to us, to the patients thought to have bacterial infections. In all, 18 patients were treated as shown in Table 1. They were: 1 c.c.+otitis media, 1 chronic upper respiratory inflamation, 1 pyelitis, 1 bronchopneumonia, 1 alveolar pyorrhea, 4 scarlatina and 9 angina tonsillaris.<BR>All were well tolerated and cured except one with chronic upper respiratory inflamation. These results were thought to be same, as compared with hitherto known results of usual perioral Erythrosin tablet. Moreover, this Erythrosin-suppositorium was well tolerated without any gastric disorder in 2 patients in this series, who always complained of some gastric disorders after oral Erythrosin-tablet. There was no side-effect seen in this series. It was noticed that in some younger children, the relation between their normal defecation time and drug-administration time schould be taken in care, because their anal mucosa becomes a little irritated shortly after insertion of suppository. A new method for evaluation of drug with anti-streptococcal activity was described and shown in coloured figures.
著者
榊原 久雄 田辺 巌 江本 雅三
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.687-693, 1979-12-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
6

A strain of V. cholerae isolated from a cholera patient found in Kobe was proved to have the following charactristics:1) The strain grew very slowly or was distinctly undergrown on TCBS agar which can well support the growth of V. cholerae organisms generally. It took 36-48 hrs before the formation of visible colonies (1-2 mm in diameter). At earlier stages of growth (about 18 hrs after the beginning of incubation at 37°C), the colonies had greenish tone, instead of yellowish tone as generally shown by the V. cholerae organisms. This was due to the lack of ability of decomposing sucroce. However, after 24 hrs of incubation, the colonies became yellowish. The same statement was made as to the results using peptone water. In general properties, this strain resembled those successively cultivated in peptone water.2) Since there are V. cholerae strains which can grow very slowly on TCBS agar, it is absolutely necessary to use additionally other kinds of selective media, such as alkaline agar or Endo's agar, for the purpose of primary isolation of V. cholerae from natural sources.3) Other characteristics such colony morphology, biochemical activities, sugar decomposition capacities and agglutinability against antiserum, etc. were essentially the same as those of typical V. cholerae. However, no Kappa type phage was isolated. Based on these data, we regarded this strain as classical El Tor vibrio of the continental type.
著者
和田 光一 鈴木 紀夫 川島 崇 塚田 弘樹 尾崎 京子 荒川 正昭
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.620-627, 1992-05-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
20
被引用文献数
2 1

1976年より1990年までの最近15年間に, 新潟大学医学部附属病院第二内科で取り扱った208例の菌血症 (単独菌例182例, 複数菌例26例) について, 臨床的に検討した.1981年以降, 菌血症は明らかに増加し, 起炎菌もStaphylococcus aureusを初めとするグラム陽性菌の頻度が, 陰性菌の2.6倍となっている.これらの原因は, 血管留置カテーテルの増加による要因が大きいと考えられた.臨床背景では, 院外で発症した菌血症は18例 (8.7%) のみであり, これらの症例は院内発症の例より, 予後は良好であった.Focusは, カテーテル, 皮膚および軟部組織の頻度が高かった.全体の予後は, 144例 (69.2%) が除菌され, 年度別および年齢別では, 有意差は認めなかった.基礎疾患に白血病および血液疾患, 悪性腫瘍例を有する症例, 肺炎を合併している症例では, 予後が不良であった.起炎菌別の検討では, methicillin resistant S.aureusとPsudomonas aeruginosaの予後が不良であった.死亡例における生存日数は, 平均5.1日で, 3日以内に40例 (62.5%) が死亡しており, 特にP.aeruginosa菌血症の生存日数が短かった.検査所見では, 白血球数10,000/mm3以上の症例が38.3%, 1,000/mm>3未満の症例が25.3%であったが, 除菌率で両群に有意な差は認めなかった.CRP8.5mg/dl以上の症例は63.5%で, CRPの低い群に比較して, 除菌率は有意に低かった.血清ビリルビン値と除菌率は, 有意に反比例していた.以上の検討より, 菌血症においては, 起炎菌判明後の治療では手遅れのことも多く, empiric therapyが重要であると考えられる.
著者
高山 直秀 菅沼 明彦
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.77, no.10, pp.815-821, 2003-10-20 (Released:2011-02-07)
参考文献数
12
被引用文献数
2 1

2000年1月から2002年12月までの間に当院に入院した113名の成人麻疹入院患者について年齢, 麻疹ワクチン接種歴, 感染経路, 最高体温, 有熱期間, コプリック斑や発疹の有無などの臨床症状を調査し, 同時期に入院していた1~5歳の小児麻疹患者と比較した. 患者の年齢分布では20代前半の若年成人患者が最も多く, 大多数の患者は麻疹ワクチン未接種, 麻疹未罹患であり, 感染経路は不明者が最も多かった. 臨床症状では咽頭痛を除いてコプリック斑, 咳嗽, 発疹などの出現率において小児麻疹患者と差がみられず, 入院期間はやや長い傾向がみられたものの有意差はなく, 有熱期間や最高体温にも有意差がなかった. 合併症は113例中17例にみられた. 成人患者では脳炎3例, 急性散在性脳脊髄炎1例と中枢神経系合併症が相対的に多く, 肺炎は4例と比較的少なかったが, 小児患者では中枢神経系合併症例はなく, 気管支炎・肺炎が45例中16例に, 仮性クループが1例に, 中耳炎が6例にみられた. 後遺症を残した小児例はなかったが, 軽度の後遺症を残した成人麻疹例が3例あった. 以上より, 成人麻疹入院患者の症状は小児期麻疹入院患者と同等ないしやや重症といえる.
著者
池松 秀之 鍋島 篤子 山家 滋 山路 浩三郎 角田 恭治 上野 久美子 林 純 白井 洸 原 寛 柏木 征三郎
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.70, no.12, pp.1259-1265, 1996-12-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
24
被引用文献数
5 4

高齢長期入院患者における発熱や死亡のハイリスクグループのマーカーを検索するために, 観察病院において1年以上入院した患者478名を対象として, 血清アルブミン値と発熱及び死亡との関連について検討を行なった.対象の平均血清アルブミン値は3.79g/dlで, 加齢と共に漸減傾向を示した.延べ504,189日の発熱の調査結果より得られた各患者の平均年間発熱回数と血清アルブミン値の関連は, 血清アルブミン値4.1g/dl以上の群の平均発熱回数が最も低く1.8回/年で, 血清アルブミン値の低下に従って段階的に上昇し, 3.0g/dl以下の血清アルブミン値著明低下患者では5.3回/年であった.年齢補正後の死亡率は, 血清アルブミン値3.0g/dl以下の群が40.4%で, 他の3群の13.0%~19.8%に比し著しく高率であった.血清アルブミン値3.0g/dl以下の群では死亡率はどの年齢層においても高率であったが, 他の3群においては, 80歳以上で死亡率が高かった.血清アルブミン値4.1g/dl以上の群をcontrol群として求めたrelativeriskは, 血清アルブミン値3.0g/dl以下の群では発熱で2.9, 死亡では2.0であった.以上の結果より, 血清アルブミン値は, 高齢期入院患者における, 発熱や, 1年後以降に生じる死亡の予測因子として有用であり, 特に血清アルブミン値3.0g/dl以下の患者は発熱, 死亡のハイリスクブループであると考えられた.
著者
所 光男 長野 功 後藤 喜一 中村 章
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.64, no.7, pp.861-865, 1990

SS寒天平板上で赤痢菌が疑われた集落由来株を培養時間24時間で簡易に鑑別できる培地を改良するための基礎実験を赤痢菌23株, <I>Escherichia coli</I> 129株を用いて行なった. その結果, 合成培地に酢酸ナトリウム0.3%, ブドウ糖0.02%, クエン酸ナトリウム0.3%を加え改良したCA培地 (Citrate-Acetatemedium) は, 従来我が国で常用されているクリステンゼンのクエン酸塩培地に比べ, 赤痢菌と<I>E. coli</I>の鑑別に優れていることが確認された.<BR>健康者検便のSS寒天板上で赤痢が疑われた集落由来株130株を用い赤痢菌との鑑別性をCA培地, クリステンゼンのクエン酸塩培地, 酢酸ナトリウム寒天培地を用いて比較した結果, 24時間の培養の時点では, CA培地はクリステンゼンのクエン酸塩培地, 酢酸ナトリウム寒天培地より鑑別性が優れていることが確認された.<BR>更に, 使用した130株の同定を行い上記3培地の菌種による鑑別性を検討した結果, 赤痢菌の鑑別培地としてCA培地は<I>Escherichia sp.</I> の鑑別ではクリステンゼンのクエン酸塩培地より優れており, <I>Hafnia sp.</I> の鑑別では酢酸ナトリウム培地より優れていることが確認された.