- 著者
-
櫻井 靖久
- 出版者
- 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
- 雑誌
- 高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
- 巻号頁・発行日
- vol.42, no.2, pp.197-201, 2022-06-30 (Released:2022-08-30)
- 参考文献数
- 23
後天性読み書き障害について, 認知心理学的な分類と病巣研究に基づいた神経解剖学的な分類を整理して紹介した。認知心理学では, 失読を中心性 (視覚認知から意味, 音声にアクセスする段階での障害) と周辺性 (単語の視覚認知レベルの障害) に分け, 中心性失読はさらに音韻性失読, 表層性失読, 深層性失読に分けられる。失書も同様に, 中心性 (語彙, 音韻処理にかかわる過程での障害) と周辺性 (視覚・運動覚イメージを書字運動に変換する段階での障害) に分けられ, 中心性 (言語性ともいわれる) 失書は音韻性失書, 語彙性失書, 深層性失書に, 周辺性 (運動性ともいわれる) 失書は失行性失書, 異書性失書にそれぞれ分けられる。神経解剖学的分類では, まず純粋失読, 失読失書, 純粋失書に分け, それぞれが細分類されている。 さらに選択的音読み障害と意味性認知症にみられる訓読みに顕著な読み障害に関する筆者らの最近の研究を紹介した。これらの事実は, 音読みにかかわる経路と訓読みにかかわる経路が独立した二重回路をなすことを示唆している。