著者
黒松信行 松田雄一 上田晴康
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. [ハイパフォーマンスコンピューティング]
巻号頁・発行日
vol.2014, no.3, pp.1-5, 2014-07-21

ユーザが既存の業務アプリを修正することなく Hadoop 上で実行することでバッチ処理を高速化する技術として,富士通は NetCOBOL Hadoop 連携機能を開発した.しかし,Reduce タスクの入力データの偏りが原因で実行時間がばらつくために Hadoop の並列効果が低下する問題があった.この問題は Hadoop の仕組みと入力データ中に含まれるキーの出現数の偏りに起因する Reduce-Skew に原因がある.一般に,業務アプリはキーの種類が少ないため出現数が偏ることが多く,NetCOBOL Hadoop 連携機能では Reduce-Skew が生じやすい.我々は業務アプリを修正せずにバッチ処理を高速化する NetCOBOL Hadoop 連携機能の特徴を損なわずに Reduce-Skew を軽減する割合指定 Partitioner を提案する.割合指定 Partitioner は Reduce タスクの入力データ量の平準化と,タスクスケジューリングの最適化により MapReduce ジョブの実行時間を短縮する.実業務で使われるデータを再現して評価した結果、処理完了までの時間を最大で 30.6%短縮した.
著者
飯塚 太郎 Yonghao Yue 土橋 宣典 西田 友是
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. [オーディオビジュアル複合情報処理] (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.63, pp.99-104, 2008-12-04
参考文献数
8
被引用文献数
2

心理学的知見から、音と映像とのリズムを時間的に同期させると、人間は心地よいと感じると言われており、その同期作業はコンテンツ作成においても頻繁に行われている。本研究では、従来手作業で行っていた同期作業をコンピューターを用いて支援するシステムの構築を目指す。音や映像において急激な変化のある箇所を特徴として検出し、映像の再生速度を調整して音と映像の特徴を同期させる。特徴検出では、まず、音楽や映像の局所的な平均変化率をその区間における信号の分散により測り、特徴検出のための閾値をもとめる。次に閾値を超えた信号を特徴として検出し、その超過度をその特徴の重みとする。音と映像との同期作業では、まず、それぞれの特徴の時間的なずれと、特徴の重みを考慮して、より時間的に接近し、かつ重みの大きいもの同士をマッチングさせる。次に、マッチングされた特徴の各ペアについて、音と映像の特徴が現れる時間の差が、人間が違和感を感じない許容限界よりも小さくなるように、動画の再生速度を調節する。
著者
吉田 由紀 中嶌 信弥
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音声言語情報処理(SLP) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1999, no.14, pp.35-40, 1999-02-05
被引用文献数
6

規則音声合成技術を用いて,MIDI対応の歌声合成システムを開発した.Standard MIDI Fileを利用して入力された楽譜から,各音符のピッチと時間長を自動的に抽出後,付与された歌詞を音素系列に分解,波形編集型音声合成法により歌声を合成,その後,MIDIと同期を取りBGMと合成された歌声を同時に出力する.本システムの特徴としては,単に音符に歌詞を当てはめて歌声を出力するだけではなく,歌詞入力時に,パワー調整や声質変換などの情報を付加することができ,歌声を自由に演出できる点があげられる.さらに,歌詞を付与するトラックを複数用意することで,ハーモニやデュエットなども実現可能とした.We developed a singing voice synthesis system, CyberSingers, based our high-quality text-to-speech synthesis (TTS) technology. Given a standard Musical Instrument Digital Interface (MIDI) file as input, the pitch and duration of each musical note in the input file are extracted automatically. The phoneme series of the typed-in lyrics are passed to the CyberSingers TTS module to synthesize a singing voice. After synthesizing vocal parts of a score, CyberSingers generates an intermediate data that includes timing information. By referring to this timing informed by a MIDI player, CyberSingers supports several options such as power modulation, a voice changer function, and multi-vocal feature. CyberSingers adds a new function to desktop-music technology.
著者
藤井 寛 山中 康史
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.38, no.10, pp.1945-1955, 1997-10-15
被引用文献数
29

ディジタル画像流通においては品質を保持したコピーおよびネットワークによる転送の容易さに起因する,違法コピー氾濫の防止が重要な課題である.違法コピーの危険性から提供者には見本画像の公開に抵抗があり,そのため利用者は事前の内容確認が困難である.我々は画像情報流通を阻害する本問題を解決する,JPEGおよびMPEG1画像データのスクランブル方式を開発した.本方式は暗号を用いて画像データを変換し,品質を劣化させたスクランブル画像を生成する.スクランブル解除は暗号鍵によって制御され,高速な変換に基づくリアルタイム・スクランブル解除によって違法コピーを防止できる.効果的宣伝と違法コピー防止のためにはスクランブルの程度が制御可能であることが望ましい.本方式はブロック内パラメータ,密度,領域の3つのパラメータでこれを制御する.さらに,画像データは複数の鍵によって多重にスクランブルすることも可能である.多重スクランブルは鍵の個数による画像品質制御および複数の著作権の存在する画像の保護に利用できる.During the distribution of digital images,protection against peracy is important because it is easy to duplicate digital data without deterioration and to spread pirated versions through networks.Providers of image data cannot disclose the original data for fear of piracy,yet still need to advertise their products and to allow customers to evaluate a product prior to paying for it.This paper presents a method for scrambling image data encoded in JPEG or MPEG1 in order to solve this problem.Our method uses a cipher algorithm for data transformation to generate a deteriorated version of the image data.Its high-speed transformation enables real time descrambling,thereby preventing illegal copying.For effective advertisements and copyright protection,the degree to which image data is scrambled should be controllable.Using our method,scrambling can be controlled by the intra-block parameters,density and area.The method also allows a single image to be scrambled a number of times using different scrambling keys.Multiple scrambling can be used to determine the image quality based on the level of payment.It can also be used to protect image data composed of several parts,the copyright for each part being owned by different authors.
著者
長谷川 修 金出 武雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.44, no.7, pp.1795-1807, 2003-07-15
被引用文献数
5 3

人と車両が入り混じる,対面通行の一般道路映像中の移動物体を対象に,(1) {車両,人物,その他} の識別および車両ならばその種別の識別,(2)対象が含む主要な色の推定,を同時に行うビジョンシステムを試作した.識別する対象の種別は,実験システムの入力映像中に多く見られた,{小型作業車,セダン,バン,トラック,人物(単数,複数とも),その他(ノイズなど)}とし,また色は {red-orange-yellow,green,blue-lightblue,white-silver-gray,darkblue-darkgray-black,darkred-darkorange} の色グループから選択させた.入力映像として晴天もしくは曇天の午前9時から午後5時の間の映像を用いた実験の結果,種別と色の識別結果が双方ともオペレータの目視による識別結果と合致した場合を正答として,91.1%の正答率を得た.また本研究では,上記の機能を利用し,あらかじめ設定した特定対象(種別と色の組合せから特定される)を映像中から検出させる実験も行った.特定対象を {FedEx社の集配車,郵便車,パトカー} に設定して行った実験の結果,92.9%の正答率を得た.こうした識別や推定の機能は,統計的線形判別法(線形判別分析)と非線形識別則(重みつきK-最近傍法)を組み合わせる手法を導入して実現した.This paper describes a vision system that recognizes moving objects(cars and humans) on general streets. The system classifies objects based on shape appearance and estimates their colors from images of color video cameras set up toward a street.The input images were obtained between 9:00 a.m. and 5:00 p.m. in fine or cloudy weather conditions.The types set up in the system are {human, sedan, van, truck, mule (golf cart for workers), and others}, and the colors are {red-orange-yellow, green, blue-lightblue, white-silver-gray, darkblue-darkgray-black, and darkred-darkorange}.Moreover, the system can selectively extract specific targets, such as FedEx vans, police cars, mail vans and others from objects based on classified and estimated results. For classification and estimation, we cooperatively used a stochastic linear discrimination method (Linear Discriminant Analysis: LDA) and a nonlinear decision rule (weighted K-Nearest Neighbor rule: K-NN).
著者
高橋 静昭 安原 治機 長嶋 祐二
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.28, no.10, pp.1080-1086, 1987-10-15
被引用文献数
1

模擬試験の得点や共通一次の自己採点などから 入試における合格最低点を推定する場合 合格者の学力の水準と入学の難しさの2つは 合格最低点とは微妙に異なる.それは 模擬試験の得点等と大学入試得点の相関係数の値が1より小さいことに起因する.もし相関係数が1ならば 合格最低点の入試得点者のみが 最低点に対応する模試の境界得点者となる.しかし 相関係数が1より小さくなるに伴って 合格最低点よりやや高い入試得点者と低い得点者の双方が模擬試験の対応する境界得点となることが多くなる.合格率が1/2以下のときには 高得点者の方が少ないので前者の人数が後者を上まわる.したがって模擬試験の対応境界得点近傍の受験者の合格率は 1/2より小さくなる.さらに同様の関係で 合格最低点近傍の受験者の模試の平均点は模試の境界得点より低くなる.逆に 合格率が1/2を超えているときは 模試の境界得点の受験者の合格率は1/2より大きくなる.これらの関係は 従来公表されている難易度では十分に説明されていない.本論文では 模試得点や自己採点等の変数Xとそれによって評価される大学入試得点Yが 2次元のガウス分布に従うものとしてモデル化し 合格最低点 最低合格者の水準および合格難易度の3つを定量的に定義し検討する.さらにこの統計モデルを用いて 合格者の中の入学手続者の入試得点上の分布を表現し 入学手続の予測に応用することを提案する.
著者
中村 嘉志 並松 祐子 宮崎 伸夫 松尾 豊 西村拓一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.1349-1360, 2007-03-15
被引用文献数
13 8

本論文では,位置センサや方向センサを用いなくても,方向に関連付けられた赤外線タグを複数利用することで,人やモノなどのオブジェクトのトポロジカルな二次元の位置関係および向き関係を推定できる手法を提案する.実世界における人を対象とした状況依存型システムでは,人やモノの位置関係をいかにして手軽に取得するかが重要な課題の1 つである.特に人は,何らかの意図や意味があってそこにいるため,位置や向き関係の情報はその人の状況を反映していることが多い.とりわけ向き関係の情報は,向き合っているのかそれとも背中合わせなのかによって同じ位置関係にあっても意味が異なるように,人対人や人対モノの関係において位置関係だけでは困難なより詳細な状況を反映すると考えられる.そこで本論文では,実世界でのオブジェクトの向き関係に着目し,それらから空間全体でのオブジェクトの位置および方向を推定する新たな手法を提案する.計算機シミュレーション実験と試作システムの実機実験を通じて,本手法が位置および向き関係を実世界において推定できることを示す.This paper proposes a method for estimating an object's two-dimensional (2D) position and orientation based on topological information collected using infrared tags without any special location sensors or direction sensors. Estimating a user's location and articles irrespective of circumstances is an important issue for context-aware systems. Because users are present in a location with some purpose or intention, a user's position and orientation clearly reflect their context. Especially, orientation information can reflect a more detailed context than that obtained merely according to the location: people standing face-to-face or back-to-back would have vastly different contexts. In this paper, we particularly examine an object's orientation and describe a new method for estimating an object's position and orientation in an indoor, real-world environment. With a simulation and an implemented prototype system, the experimental results demonstrate the feasibility of our estimation method.
著者
岡田 直之 中村 順一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.34, no.11, pp.1385-1394, 1993-11-15

初心者を対象とした講座の開始にあたり、自然言語処理技術の目標、技術の現状について述べるとともにその歴史を概観する。また、本講座の対象範囲・構成について説明する。
著者
井上拓哉 山本邦雄 乃万司
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.3, pp.1-8, 2014-07-28

本稿では,広域での経路案内において事前に経路全体を確認したいユーザに向け,曲がる場所など経路案内する上で重要なところを拡大しつつ,重要でないところは簡略化して経路全体を示す案内地図作成システムを提案する.提案システムの特徴は,重要地点周辺を拡大した部分地図を抽出し,それらを画像として上手く貼り付け,いわば,コラージュのように組み合わせて経路全体を表示する点にある.提案システムの開発により,案内地図が上手く作成できるかを検証した.
著者
庄司文由 長登 康 隅谷 孝洋 中村 純 永井 克彦
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータと教育(CE) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1999, no.104, pp.17-23, 1999-12-06
被引用文献数
1

広島大学における一般情報教育の現状を報告し、Linux端末を用いた一般情報教育のためのシステム構築状況を紹介する。また、その中で明らかになった一般情報教育にLinux端末を用いることのメリット、デメリットを詳細に検討し、現時点における問題点を考察する。We report the status of computer literacy education at Hiroshima university and present our preparation for computer literacy education with Linux machine which will start at April 2000. We consider problems when using Linux machines for computer literacy education.
著者
舟澤慎太郎 北市 健太郎 甲藤二郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告オーディオビジュアル複合情報処理(AVM) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.22, pp.1-5, 2008-03-06
被引用文献数
1

本稿では,楽曲の音響的特徴と歌詞情報を利用した類似楽曲検索手法を述べる.典型的なContent-based楽曲検索において,楽曲の特徴はベクトルで表現され,それらの類似度を基に検索をする.この際に,楽曲の特徴ベクトルを構成する要素には,"ユーザが楽曲から受ける印象に影響を与える特徴量"を用いることで,対応できる検索要求の幅を広げ,検索精度の向上につながる.そこで本稿では,楽曲波形から得られる音響的特徴量に加えて,歌詞情報を特徴量として利用する.そして,ユーザによる評価実験を行い,この手法の有効性を評価した.This paper presents similar music retrieval that uses acoustic features and lyrics features of musical pieces. In typical content-based music retrieval, the features of music pieces are expressed by vectors, and music pieces are retrieved based on their similarities. When generating the features vectors, using "features that influence impression that users receive from music" as elements improves retrieval accuracy. Therefore, in this paper, we use lyrics features in addition to acoustic features that are extracted from music signals. Furthermore, we estimate the efficacy of this music retrieval method by a subjective evaluation experiment.
著者
小田将之 橋本健二 楫勇一 関浩之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告コンピュータセキュリティ(CSEC) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.37, pp.1-6, 2014-02-27

近年,利用者の位置に応じた情報を提供する位置情報サービスが注目されている.しかし,位置情報の改竄によりサービス提供者や他のユーザが不利益を被ることがある.また,位置情報はユーザのプライバシー情報であるため,その保護についても十分配慮しなければならない.このような理由から,ユーザの位置情報が正しいことをユーザのプライバシーをできるだけ開示せずに証明するための位置証明プロトコルが提案されてきたが,改竄防止等のため位置証明書生成に関わる参加者全てに PKI 等の基盤を仮定しており運用面からは必ずしも簡便とはいえない.本研究では,位置証明プロトコルとデバイスペアリングを組み合わせたプロトコルを提案し,従来手法と比較してプロトコルの軽量化が可能であることを示す.また,提案プロトコルの安全性やプライバシーなどの性質について議論する.さらに,我々が既に開発済みの,人間の動作に基づく共通鍵生成法をデバイスペアリングとして利用し,Android モバイルデバイス上で動作するアプリケーションとして提案手法を実装した.実証実験の結果,正当なユーザに位置証明書を発行できる確率は 93.2%,正当でないユーザに発行してしまう確率は 0%であった.また,位置証明書の生成と検証にかかる実行時間はそれぞれ平均 37 ミリ秒,7 ミリ秒であった.
著者
佐藤 淳
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告グラフィクスとCAD(CG) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1999, no.31, pp.25-30, 1999-04-22

従来のコンピュータビジョン研究では、画像データから如何にユークリッド幾何的情報を得るかが盛んに議論されてきた。ロボットを誘導したり対象物を認識するためにはユークリッド幾何的な情報が必要であると考えられて来たからである。これに対し、近年のヨーロッパのコンピュータビジョン界においては、アフィン幾何や射影幾何などのより一般化された幾何をもとに視覚研究を見直そうとする動きが出てきている。このようなより抽象的な幾何のもとに視覚を考えることにより、画像から対象物固有の不変量を計算したり、カメラを校正せずに複合現実感やヒューマンインターフェイスを実現する方法などが次々と示されてきた。本稿では、このような視覚の非ユークリッド幾何的な取り扱いについて論じ、これが画像メディアの研究において如何に重要な役割を果たすかについて述べる。In computer vision, the recovery of camera geometry and object shape has traditionally been studied in the Euclidean geometry. This is because the Euclidean geometry is required for object recognition, visual navigation and other computer vision applications. However, it was shown recently that the Euclidean geometry is not always required for many computer vision applications. Furthermore, it was shown that the non-Euclidean geometry can be recovered from images without using camera calibrations. In this paper, we consider the projective and algebraic geometries for computer vision and graphics, and show that they provide new approach in the research of computer vision and image media.
著者
若林 啓
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌データベース(TOD) (ISSN:18827799)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.61-69, 2014-06-30

チャンキングは,単語の系列から名詞句や前置詞句といった浅い統語構造を抽出する技術であり,固有表現抽出や機械翻訳などで重要な前処理であると考えられている.これまでに提案されている多くのチャンキング手法は教師あり学習に基づいており,教師データに現れない文章表現を多く含むWeb上の文書には適用が難しい.本研究では,依存構造解析モデルの平坦近似に基づいた平坦近似依存文法モデル(FADG)を用いることで,チャンク間の局所的な統語構造を考慮した教師なしチャンキング手法を提案する.FADGは線形鎖モデルを階層的に接続した階層型隠れマルコフモデル(HHMM)の枠組みで形式化するため,HHMMの効率的な教師なし学習アルゴリズムを適用できる.実験により,提案モデルが局所的な統語構造を効果的に推定し,これによって高い精度で教師なしチャンキングを行えることを示す.Chunking is a natural language processing task to extract shallow syntactic structures like noun phrases or prepositional phrase, and it plays an important role in various applications such as named entity extraction and machine translation. Most chunking algorithms proposed so far are based on supervised learning, but they depend on the domain of supervision documents that often consist of news articles and are not effective for analyzing Web documents or microblogs. In this paper, we propose an unsupervised chunking method based on the Flat Approximated Dependency Grammar model (FADG) to capture local syntactic dependency structures between chunks. The FADG is formalized as a Hierarchical Hidden Markov Model (HHMM) and we can conduct the unsupervised learning of FADG efficiently by using a sophisticated inference algorithm for HHMMs. The experimental results show the effectiveness of the proposed method in chunking accuracy comparison.
著者
灘本 明代 服部 多栄子 近藤 宏行 沢中 郁夫 田中 克己
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌データベース(TOD) (ISSN:18827799)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.103-116, 2001-01-15
被引用文献数
35

本論文では,膨大なWeb情報を容易に閲覧することを目的とし,チャンネルを選択するようにWebページを選択し,テレビ番組のような番組を作成し,Watch and Listen型インタフェースを通じて視聴する方式を提案する.受動的視聴とは,これまでテキストや画像で表示されていたコンテンツに代わり,音声やキャラクタアニメーションを用いた番組風コンテンツを作成して見ることである.この番組を作成することを我々は番組化と呼ぶ.これまでのWebブラウザと異なり,番組化においては,時間軸的同期や演出が問題となる.本論文では,この同期と演出に着目し,Webコンテンツの受動的視聴のための番組化の方法として,(1)現在のHTMLベースのWebコンテンツを自動で受動的視聴向けコンテンツに変換する自動変換方式,(2)受動的視聴コンテンツ作成のためのスクリプト作成マークアップ言語を提唱する.This paper proposes a passive Watching-and-Listening approach that makes it easier to view Web information. This approach utilizes a Watching-and-Listening interface that allows the user to choose Web pages in a similar way as we select TV channels, by converting the pages into TV-program-like cartoon animations. During the conversion process, which we refer to as programmization, voice and image-data presentations must be synchronized carefully so that they effectively convey the original information. Moreover, the overall presentation needs to follow a particular presentation structure, such as news and variety shows, in order to improve the familiarity of the program. Our approach solves these issues by developing a novel method of converting HTML documents into programs, and designing a new mark-up language, Scripting-XML (S-XML), which is suitable for describing programs. This paper also addresses the preliminary evaluation results of the current implementation.
著者
富士谷康 吉田拓磨 中村明順 安積卓也 望月祐洋 西尾信彦
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告ユビキタスコンピューティングシステム(UBI) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.5, pp.1-8, 2014-05-22

Web 上での活動支援のためにユーザ個人の閲覧履歴を分類する研究が行われている.分類の際にはユーザの閲覧意図を考慮する必要があるが,時刻やページ本文を用いた既存手法では複数の意図が混在したり,本文が存在しないページの分類ができない.本論文では新たな意図の出現を捉え,閲覧意図の階層性を反映した閲覧履歴の分類を目指し,2 段階の分類手法を提案する.第 1 段階では閲覧の起点とタブ切替に注目した履歴間の関連性を用い機械的に分類する.第 2 段階ではまとめた履歴に含まれる本文の類似度によって階層的クラスタリングを適用することで,分類結果が表す閲覧意図の粒度操作を可能にする.評価では,被験者が意図ごとにまとめた履歴と提案手法による分類結果の一致性が,本文のみによる比較手法より幅広い閾値で高く,閲覧の起点で意図の出現を一定程度の正確性と網羅性で捉えられることを示した.Many researches have been performed on clustering methods for personal web browsing history. Existing clustering methods using the visit time and/or text contents cannot reflect user's intentions. This paper proposes a two-phased clustering method suited for capturing the appearance of a user's new intention along with reflecting the hierarchical structure. In the first phase, we create groups of history by applying a clustering method based on the relationship in browsing history. In the second phase, we apply a hierarchical clustering method using the similarity of text contents in order to control the granularity of an intention. The conformance rate was evaluated between the results grouped manually by research participants and grouped automatically by proposed method. The results show the effectiveness of proposed method compared with a method only using a document clustering. Moreover, proposed method can capture the appearance of intentions in a precise and comprehensive manner.
著者
郷健太郎 JohnM.Carroll 今宮 淳美
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.82-87, 2000-01-15
被引用文献数
11

ユーザに視点を置いた設計プロセスに関するISO13407や,製品の品質保証に関するISO9000のような国際標準,さらに製品の安全性に関する製造物責任法(PL法)の制定により,ユーザの視点をシステム設計に反映させる手法の重要性が増している.そこで本稿では,シナリオが積極的に用いられている4つの分野について紹介し,それらの関係を説明する。
著者
野田悠介 阿原正弥 杉浦稜介 横井優斗 濱川礼
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2012, no.1, pp.927-929, 2012-03-06

本システムはTwitterのつぶやきを解析し,ユーザにバッジを付与する.それを元にデータベースを作成し利用する.バッジとは,特定の単語ごとに用意され,ユーザがそれに合致するつぶやきを行った際に付与する機能である。これは,自作の言語解析エンジンとサーバによるデータベース操作で行う.現在Twitterは1億人を超えるユーザが利用している.その中で自分が求めるユーザを探すことが困難である.そこで,バッジを利用することで効率よく条件に合致するユーザを見つけることを目的とする.また,ユーザ間のコミュニケーションの円滑化に繋がると想定する.
著者
工藤 卓哉
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.1217-1220, 2013-11-15

【背景と目的】公共データのオープン化が進んでいる.しかしながら,その定義は提供サイドによりばらつきがあり,利用側も真の利用価値を見出していないケースが多い.しかし,データの利用においては,利便性だけではなく,信憑性や品質,鮮度等の複合的な評価項目が満たされなければ,利用者側で価値を訴求することは難しい.本寄稿の目的は,提供サイドである行政機関やオープンデータ提供事業者が意識すべき事項と,利用者となる企業側においても,最低限求められる素養が存在することを明らかにし,双方に求められる視点をバランスよく紹介することで,真の意味でのデータ利活用を促進することにある.
著者
高木 聡一郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.1238-1243, 2013-11-15

日本では「電子行政オープンデータ戦略」の制定から1年余りが過ぎ,政府・自治体,また民間でもオープンデータへの取り組みが見られるようになった.海外諸国には,日本より数年先行して様々な取り組みを行っている国々がある.こうした国々では,高い理想を掲げる一方,利活用を推進するにあたって様々な課題にも直面し,それらの課題を克服するための方策を模索している.本稿では,海外諸国での経験を紹介するとともに,今後日本でも課題になると考えられる点についての示唆を導出する.