著者
林 文 吉野 諒三
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告人文科学とコンピュータ(CH)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.8, pp.1-2, 2014-07-26

1970 年代後半に林知己夫が中心となり企画した日本人の基底意識を探る調査は,「お化け調査」 と呼ばれている.お化け,妖怪,超自然ともいうべきものの捉え方を尋ねる質問で,社会一般の様々な意識や意見の根底をなす 「合理・非合理」 の考え方を捉えるものとして,その後,原子力に関する意識調査などでも用いられてきた.2000 年以降,アジア・太平洋地域の国際比較調査でも用いており,国・地域の特徴についても触れる.The set of survey research Chikio Hayashi and his associates have conducted in the late 1970's in Tokyo and Yonezawa to delve into such matters as the religious mind, traditional attitude, and feelings for supernatural phenomena is commonly known as the "ghost research". It was postulated that by asking people about their feelings toward various matters regarded as "supernatural" such as ghosts and spirits, one would create a proxy measure for the degree to which a given respondent possesses a "rational" or "non-rational" mindset - which in turn is to be regarded as one of the fundamental elements of personality that influence his or her thoughts and behavior. The measurement has then been used in other surveys as those studying the attitudes toward nuclear power. After the year 2000 it has also been adopted for the international comparative surveys in the Asia-Pacific region, the notable observations of which we like to discuss in this paper by country or region.
著者
木場貴俊
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告人文科学とコンピュータ(CH)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.9, pp.1-6, 2014-07-26

日本近世における 「妖怪」 について,「情報」 あるいは 「知識」 という視角から考えた場合どのようなことがいえるのか.今回の報告では,発表者がこれまで研究してきた,儒学や本草学など学問上での 「妖怪」 に関する言説を発信・流通・受容などの面から分析することで,当時の情報・知識のあり方について考えてみたい.
著者
松村 薫子
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告人文科学とコンピュータ(CH)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.10, pp.1-5, 2014-07-26

2002 年に公開した 「怪異・妖怪伝承データベース」 は、妖怪研究を行う上でどのような影響を与えたのだろうか。「怪異・妖怪伝承データベース」 を用いた研究事例などをもとにデータベースが人文学研究に与える影響や今後の可能性について考察する。
著者
安井 眞奈美
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告人文科学とコンピュータ(CH)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.11, pp.1-4, 2014-07-26

本発表では,国際日本文化研究センターの 「怪異・妖怪伝承データベース」 (http://www.nichibun.ac.jp/YoukaiDB/) に所収されている怪異に関する膨大なデータの中から身体に関するものを集め,各身体部位に分けて分析を試みる.それを踏まえ,妖怪・怪異に狙われやすい身体部位を紹介し,そこにどのような身体観が表現されているのかを明らかにしたい.また,天理大学の学生たちの創作によるオリジナルの妖怪から,現代の若者たちの身体観を探る試みについても紹介したい.This presentation aims to select data regarding the body from the huge database on "Folktales of strange phenomena and yokai (ghosts, monsters, spirits)" (http://www.nichibun.ac.jp/YoukaiDB/) maintained by the International Research Center for Japanese Studies, and to conduct analyses for each part of body. Based on the results, those body parts thought vulnerable to attack from yokai will be identified, and from this the author seeks to clarify the notion of the body being expressed in folklore. Also, an attempt to understand notions of the body among the younger generation will be introduced using original images of yokai created by students at Tenri University.
著者
西祐貴 床井浩平
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.67, pp.1-6, 2014-03-06

本研究では,ユーザーが指定した任意の二点間に落雷アニメーションを生成するビジュアルシミュレーション手法の開発を行った.提案手法は,方向性を持った放電経路を,雷の進行方向を中心に分布する正規乱数をもとに生成する.また,これを強烈な発光源としてユーザーに知覚させるために,レンダリング時に放電経路に対してグローを生成する.提案手法はこれをリアルタイムで実行することにより,ゲームなどの対話的なアプリケーションの視覚効果として利用できる.
著者
清野 陽一 山田 太造 高田 智和 古瀬 蔵
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告人文科学とコンピュータ(CH)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.4, pp.1-6, 2014-07-26

『古事類苑』 および芳賀矢一編 『日本人名辞典』 から抽出した人物等を対象とする 「人名一覧表示システム」 について紹介する.本システムは,近代以前の人名の一覧中に,『日本人名辞典』 に掲載されている 「解説」 を説明文として提示する.また,姓名等をキーワードとして,人間文化研究機構の統合検索システム nihuINT での検索を実行する機能により,人名等に関連した様々な人文科学研究資源にアクセスすることが可能となる.This paper describes a system listing personal names constructed from humanities databases such as "Kojiruien" and "Nihon Jinmei Jiten" by Yaichi Haga. In this system, the source of descriptions about each pre-modern person in the list are referenced in "Nihon Jinmei Jiten". In addition, each personal has links to "nihuINT" search provided by National Institutes for the Humanities, which enables us to access various humanities' resources related to personal names.
著者
安岡 孝一 安岡 素子
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1997, no.80, pp.49-54, 1997-08-29
被引用文献数
1

JIS X 0221 の漢字は、中国・台湾・日本・韓国の漢字コード規格から集められたものである。このうち、中国の GB 8565 からの採録とされている漢字は290字ある。しかし調査の結果、これら290字のうち87字は、実際には GB 8565 には含まれていないことがわかった。本稿では、これらの漢字が一体どのような経緯で JIS X 0221 に採録されることになったのかを、さまざまな漢字表を歴史順に追うことによって明らかにする。CJK characters of JIS X 0221 are gathered from domestic standards of China, Taiwan, Japan, and Korea. And JIS X 0221 insists that 290 characters are from GB 8565 of China. However, in fact, 87 characters of the 290 are not included in GB 8565. In this paper, we reveal why and how these 87 characters are stuffed into JIS X 0221.
著者
佐藤 理史 佐々木 靖弘
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. 自然言語処理研究会報告 (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.153, pp.57-64, 2003-01-20
参考文献数
9
被引用文献数
10 9

与えられた専門用語に対して、その用語と関連する用語をウェブテキストを利用して収集する方法を提案する。提案方法は、コーパス作成、重要語抽出、フィルタリングの3ステップから構成される。コーパス作成では、サーチエンジンを利用して、与えられた用語を説明するテキストをウェブから収集し、その用語に対するコーパスを作成する。次の重要語抽出では、このコーパスから、中川の方法を利用して重要語を抽出する。最後のフィルタリングでは、得られた重要語の中から、関連用語としてふさわしいものを、ウェブのヒット数を利用して、選択する。
著者
奥乃 博 中谷 智広 川端 豪
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.510-523, 1997-03-15
被引用文献数
6

本稿では,一般環境下での音声認識のための前処理として音響ストリーム分離を使用するうえでの問題点について検討する.本稿の前半では,音声ストリーム分離の方法を提案する.提案する方法は,調波構造ストリーム断片の抽出とそのグルーピング,および,入力音からすべての調波構造を除いた残差での非調波構造の補完から構成される.本稿の後半では,分離した音声ストリームを離散型単一コードブック型HMM?LRで認識するうえでの問題点を解明し,その解決策を提示する.提案する音声ストリーム分離方法で方向情報抽出のために用いたバイノーラル入力がスペクトル変形を引き起こし,音声認識に影響を与えることが判明した.この対策として,4方向で頭部音響伝達関数をかけた学習データでHMM?LRのパラメータを再学習する方法を提案した.2人の話者の500組の子音を含んだ発話(SN比0??3dB)の音声認識実験を5種類行い,音声ストリーム分離により上位10候補累積認識率に対する混合音による認識誤りを最大77%削減することができた.This paper reports the preliminary results of experiments on listening to several sounds at once.Two issues are addressed:segregating speech streams from a mixture of sounds,and interfacing speech stream segregation with automatic speech recognition(ASR).Speech stream segregation(SSS) is designed as three processes:extracting harmonic fragments;grouping these extracted harmonic fragments according to their directions;and substituting the non-harmonic residue of harmonic fragments for non-harmonic parts of each group.The main problem in interfacing SSS with HMM-based ASR is how to reduce the recognition errors caused by spectral distortion of segregated sounds mainly due to binaural input.Our solution is to re-train the parameters of the HMM with training data binauralized for four directions.Experiments with five sets of 500 mixtures of two women's/men's utterances of a word(SNR is 0dB to -3dB)showed that the error of up to the 10th candidate of word recognition was reduced up to 77% by speech stream segregation.
著者
塩入 健太 星野 准一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告エンタテインメントコンピューティング(EC) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.125, pp.63-70, 2005-12-17
被引用文献数
2

対戦型コンピュータゲームをプレイヤー1人でプレイする場合,人間のプレイヤー相手にプレイする場合と比較してつまらないと感じるプレイヤーが多い.その主な理由のひとつに「対戦相手のAIの反応が乏しい」といった問題がある.その改善のために本稿では,ゲーム映像からゲーム状況を読み取り,プレイヤーからの干渉や環境変化に対して発話音声によって反応を返す「仮想対戦プレイヤー」を提案する.またそのとき,感情的な内容や声の調子,発話頻度の出力をするために2つの内部パラメータ値を参照して音声ファイル選択を行う.これらはプレイ中にゲーム状況によって動的に変化させ,現在に至るまでの心理状態変化の蓄積として扱う.最後に手法の有意性を評価実験により確かめる.A player feels bored when he play the match-up type computer game without adversary person. One of the main reasons is "The reaction of adversary AI is scarce". To improve this problem,this paper proposes "The Virtual Adversary Player" that reads the game situation from game image and returns the reaction by the utterance voice when the player interferes or the environmental is changed. Moreover, in order to output emotional content, voice condition and the utterance frequency,the voice file selection is done referring to two internal parameter values that dynamically change by the game situation while playing and are treated as accumulation of the psychological condition change. At the last, the evaluation experiment of the technique is conducted.
著者
真野洋平 高田敏弘 齋藤洋典
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告エンタテインメントコンピューティング(EC) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.70, pp.1-6, 2014-03-06

本論文は、複数のユーザによって楽曲に付与された時間区間アノテーション (コメントや評価) の集約によって得られる楽曲のダイジェストを用いた、楽曲推薦システムを提案する。本システムは、ユーザが楽曲内の気に入ったフレーズを検索クエリとして選択すると、そのクエリと各楽曲のダイジェストとの類似度を計算し、クエリによく似たダイジェストを持つ楽曲を推薦する。本手法は、時間区間アノテーションに基づいたダイジェストに着目することで、部分的フレーズに対する楽曲推薦を可能にする。このダイジェストは、計算機による構造抽出とは異なり人の音楽に対する感性を反映しているため、よりユーザの嗜好に適した推薦を行うことができると考えられる。楽曲推薦実験を通じて、提案手法が正解率とセレンディピティ (思いがけず価値のあるものを発見する能力) に関して優れた推薦能力を持つことを示す。
著者
太田 賢 増田 彰久 渡辺 尚 水野 忠則
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告モバイルコンピューティングとユビキタス通信(MBL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1997, no.117, pp.69-74, 1997-12-04
被引用文献数
2

PHS、携帯電話のワイヤレスデータ通信機能を利用してマルチメディア通信を行いたいという要求がある。しかし、ワイヤレス通信には帯域幅が狭く、バースト誤りにより転送が途切れる、帯域幅、誤り率などの品質が頻繁に変化するといった問題があり、比較的大容量の帯域幅とスムーズな転送を必要とするマルチメディア通信の扱いは難しい。我々はこれまで、コンテンツ内の重要な情報を優先して受信者に提供する選択的マルチメディア通信方式SMAPを提案してきた。SMAPは、マルチメディア情報の各映像フレーム、音声ブロックに対して、その意味的な重要度に基づき優先度を4段階で与える。帯域幅が不足している状態においても、優先度に基づく選択的転送により、重要な部分は比較的高い時間的解像度で提供することができる。本稿ではさらに優先度に基づいた空間的解像度の制御を加えることで、帯域幅が狭く品質が頻繁に変化するワイヤレス通信環境においても、重要なフレームをより確実に、かつ高品質で受信者に提供することを可能にする。Users desire to use multimedia applications such as browsing WWW and VoD in not only desktop computing environment but also wireless or mobile computing environment. A wireless link, however, is generally poor in quality to accommodate multimedia communication. We have proposed a content-based multimedia access protocol SMAP for wireless environment. It adopts the selective transport service according to content-based priority, assigned to each video frame and audio block of multimedia data, so that a user can get important information even if available bandwidth is insufficient for the multimedia data. This paper introduces the spatial resolution control for video into SMAP. When available bandwidth is so poor, degrading spatial resolution of video frames allows the selective transport to choose more high-priority frames to deliver. Since the spatial resolution control delivers high-priority frames in higher spatial resolution, a user can perceive important frames in higher quality.
著者
桃原 岳史 宮里 智樹
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告ユビキタスコンピューティングシステム(UBI) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.39, pp.1-5, 2014-03-07

劣通信環境とよばれる,通信インフラが貧弱,あるいは存在しない環境化においては,通常のネットワークとは異なるアプローチでの通信様式が求められている.途絶耐性ネットワーク (DTN:Delay Tolerant Network) とは,そのような環境での情報伝達を目的とした通信技術である.DTN の形態のひとつに蓄積運搬型通信があり,移動する端末が移動経路の近辺に存在する端末と相互に情報を転送することで情報伝送を行う.蓄積運搬型通信においては,ノード間の通信可能時間内に転送できるデータ量が限られるため,効果的な伝送制御法が研究されている.本論文では,地域コミュテイでの情報サービスの災害時運用として,DTN の概念を取り入れた情報サービスを設計,平時から非常時までをシームレスにサポートするサービス形態を提案.その概念を実証するためのテストベッドを構築した.転送するデータのメタ情報をもとに通信ノードとの転送ファイルを決定する手法を提案し,提案手法を実装したテストベッドでの性能計測を行い,有効性の検証を行う.In the environment with a poor or no inteernet infrastructure, the communication style in different approach from usual is searched for. DTN:Delay/Disrupt Tolerant Network is the Communication technology aiming at such environment. Store-Carry-Forward is one of the style of DTN. At Store-Carry-Forward,mobile node makes communication by moving between a node and a node. In that case, since traffic is restricted, the various control methods are devised. In this research, the communication service using the technique of Store-Carry-Forward was created and the performance measurement was performed.
著者
金持 徹也 桧垣 博章
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.3, pp.1-6, 2013-10-10

無線マルチホップネットワークにおいて,データメッセージ群を複数の異なる経路を用いて配送する秘密分散通信を行なうための隣接独立ルーティング手法を提案する.ここで,盗聴無線ノードを含むすべての無線ノードが高々単一経路を配送されるデータメッセージ群のみを取得し,複数経路を配送されるデータメッセージを取得しないことを実現するために,異なる経路に含まれる中継無線ノードの無線信号到達範囲の共通領域に無線ノードが含まれることを回避する.ただし,送信元無線ノードと送信先無線ノードの近隣では複数配送経路が近接することから,これらの無線ノードの近隣は盗聴無線ノードが存在しない安全領域であることを適用条件とする.また,簡易実験結果により,提案するルーティングプロトコルに従った制御メッセージ送信を行なわない盗聴無線ノードが複数経路を配送されるデータメッセージ群を取得できる領域は 1% 未満であり,これを可能とする経路が検出される可能性を考慮すれば,実際にデータメッセージ群を取得できることはほとんど考えられないことを示す.This paper proposes a novel routing protocol called neighbor-disjoint routing protocol in wireless multihop networks for secret sharing communication where data messages are transmitted along multiple wireless multihop transmission routes. Here, all wireless nodes including wiretapping wireless nodes receive data messages transmitted along at most one transmission route, i.e., they never receive data messages transmitted along multiple transmission routes. This is realized by the proposed protocol which ensures that there are no or less wireless nodes whose locations are included in wireless transmission ranges of intermediate wireless nodes included in different wireless multihop transmisison routes. In order to assure this security property, it is assumed that there are no wiretapping wireless nodes around the source and the destination wireless nodes since multiple wireless transmission routes are neighboring. A result of naive experiments show that an area where wiretapping wireless nodes are included in wireless signal transmission ranges of intermediate wireless nodes in different wireless transmission routes is less than 1% under our neighbor-disjoint routing environments.
著者
高橋大斗 中村嘉隆 高橋修
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告高度交通システム(ITS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.16, pp.1-6, 2013-11-07

近年のモバイル端末の高性能化に伴い,モバイル端末が扱うファイルサイズは肥大化している.ファイルサイズの肥大化への対応のため,アドホック通信を用いたモバイル端末間のファイル転送方式は今後さらなる改良が求められる.また,モバイル端末間でのファイル転送の際には,中継役を不要とするアドホック通信が適していると考えられる.本研究ではアドホック通信におけるファイル転送効率化の手段として,マルチホーミングと TCP マルチコネクションに焦点を当て,モバイル端末間における効率的なファイル転送方式を提案・実装した.本提案方式の有効性を示すべく,無線通信環境の変化時におけるスループットの変動などにも注目し,その評価を行った.
著者
與那嶺 諭宏 王 家宏 児玉 英一郎 高田 豊雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告モバイルコンピューティングとユビキタス通信(MBL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.11, pp.1-6, 2013-12-12

2011 年 3 月 11 日に東日本大震災が発生し,岩手県を含む広域にわたり電力設備や通信設備が機能しなくなった.被災地では,既存の通信インフラを用いたコミュニケーンョンが行えず,情報の入手が困難であった.しかし,被災地にいる人々が所持していた無線通信機能を有する通信端末は機能しており,アドホックネットワークの構築は可能であった.このことから本研究では,無線による端末間通信を行うアドホックネットワークを用いた緊急用コミュニケーションシステムモデルを提案する.本システムを利用することにより,通信インフラの復旧までの間,人々のコミュニケーションのサポートが可能である.On March 11, 2011, Tohoku earthquake and tsunami occurred, which caused extensive and severe damages to the power supply system and communication supporting system in north-eastern Japan, including the Iwate. Due to the damage, communication based on the existing communication infrastructure became impossible, and it became hard for people to obtain information. It is found that, however, most people at the disaster-hit area held wireless mobile terminals, and the ad hoc network could be constructed to support obtaining information. In this paper we propose approach to constructing a wireless ad hoc network based communication supporting system, which can be used for the emergency use at a disaster-hit area until the communication infrastructure becomes restored.
著者
小原 知也 若原 恭
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告ユビキタスコンピューティングシステム(UBI) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.29, pp.1-6, 2014-03-07

近年の車車間通信によるネットワークへの期待や自然災害に対する救助等への応用により,アドホックネットワークの利用の可能性が増えてきている.そのような多彩な環境の上で信頼性ある通信が求められる際には TCP を利用することが考えられるが,アドホックネットワーク上で TCP を用いた場合,グッドプットが大きく低下してしまうことが知られている.アドホックネットワークでは,ノードの動きによってリンクが途切れやすくなりルートの入れ替わりが激しく,またマルチホップ無線通信によってパケットの衝突が頻発する.これによって輻穰が生じていない場合でも TCP によって輻韓だと誤認されてしまい,不適切な再送タイムアウト (RTO) を引き起こしグッドプットが低下してしまう.そこでこのような不適切な RTO を回避するために,RTO よりも早期のルートの再セットアップ及びパケット再送を行い,グッドプットの改善を行う.シミュレーション実験によりこの手法が最も良く働くパラメータの調整を行い,グッドプットの低下を抑えるために有効性があることを確認した.In recent years, the expectation of networks for inter-vehicle communication, the utilization for natural disasters relief etc. have widened the applications of ad hoc networks. When a reliable communication is required under a variety of such a network, TCP is to be used. However, it is well known that the goodput of TCP degrades significantly in ad hoc networks. In ad hoc networks, a route is likely to change because of link breakage by node mobility, and there will be frequent packet collisions in multi-hop wireless communication. This leads to the misjudgment of congestion by TCP, and as the result, there will be inappropriate RTO (timeout) to decrease its goodput. Therefore, we propose early route re-setup and early packet re-transmission, to improve the goodput by avoiding inappropriate RTO. By some simulation experiments, we adjust the parameters of proposed method, and demonstrate the effectiveness of the proposal in suppressing the decrease in the goodput.
著者
山田 英史 中居 祐輝 山根 智
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.1-19, 2013-12-20

近年の組込み機器の多機能化を受け,消費電力の抑制や小型化のために動的再構成可能プロセッサ(DRP)が注目されている.本稿では,CPUとDRPから構成される動的再構成可能システムを対象とした仕様記述言語を提案する.提案する仕様記述言語では,線形階層ハイブリッドオートマトンとオブジェクト指向を組み合わせることで,システム構成の動的変化を表現している.また,提案言語を対象とした検証器を開発し,その有効性を実証する.Recently, embedded systems begin to have various functions, Dynamically Reconfigurable Processor (DRP) draws attention to solution for the miniaturization and saving energy. In this paper, we propose the specification language for Dynamically Reconfigurable System, which is composed of CPU and DRP. The proposed language describes dynamically changing the system using Hierarchical Linear Hybrid Automaton and Object Orientation. Then, we develop the verifier for the proposed specification language, and verify the system.
著者
追川 修一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.1153-1164, 2013-03-15

近年,不揮発性のnon-volatile(NV)メモリの性能向上が著しく,高速化,大容量化,低価格化が進んでいることから,それらをメインメモリとして用いる研究,またストレージデバイスとして用いる研究が,それぞれ別個に行われてきた.しかしながら,メインメモリおよびストレージの両方としても用いることのできるNVメモリは,その両方を融合できることを意味する.融合により,メインメモリとして使用できるメモリ領域が増加し,これまでメインメモリ容量を超えてメモリ割当て要求があった場合に発生していたページスワップが不要になることで,システムの処理性能が向上する.本論文はLinuxを対象とし,NVメモリから構成されるメインメモリとファイルシステムの具体的な融合方法を提案する.そして,Linuxをエミュレータ上で実行する評価実験を行い,融合が可能であること,また性能面でも有効であることを示す.Recent advances of non-volatile (NV) memory technologies make significant improvements on its performance including faster access speed, larger capacity, and cheaper costs. While the active researches on its use for main memory or storage devices have been stimulated by such improvements, they were conducted independently. The fact that NV memory can be used for both main memory and storage devices means that they can be unified. The unification of main memory and a file system based on NV memory enables the improvement of system performance because paging becomes unnecessary. This paper proposes a method of such unification and its implementation for the Linux kernel. The evaluation results performed by executing Linux on a system emulator shows the feasibility of the proposed unification method.
著者
佐伯 裕治 清水 正明 白沢 智輝 中村 豪 高木 将通 Balazs Gerofi 思 敏 石川 裕 堀 敦史
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.15, pp.1-7, 2013-04-18

メニーコアプロセッサ向けの OS として,Linux カーネルと軽量カーネルが連携して管理するヘテロジニアス構成の OS を開発している.軽量カーネル上においても Linux カーネルのシステムコールを提供するために,軽量カーネルで実現されない Linux システムコールの処理は Linux カーネルに委譲する.引数がデータ領域を示すシステムコールの場合,転送が必要なデータの構造は API 仕様に依存するため,300 種類以上の Linux 互換システムコールに個別に対応したデータ転送を実装する必要がある.本稿では,システムコール処理対象となるデータを同一仮想アドレスへのメモリマップを行う方式により,軽量カーネルに個々のシステムコール処理を実装することなく Linux カーネルに委譲する機構と,その基本評価結果について報告する.We have been developing a heterogeneous OS composed of Linux and lightweight kernels for manycore processor. In order to provide all Linux system calls in the lightweight kernel, those primitives which are not provided by the lightweight kernel are delegated to the Linux kernel. Each system call differs in the number of arguments and argument types, and thus the code transferring arguments and results is implemented in each delegating system call. It is impractical to implement all Linux APIs, i.e., more than 300 system calls. Therefore, we developed a delegation mechanism of system calls without individual implementation to pass the data between the lightweight kernel and Linux using a memory mapping technique. In this technique, a user-level virtual address space in the lightweight kernel is mapped to the same position in a Linux process. We report the result of basic evaluation of system calls on lightweight kernel developed on Intel(R) Xeon PhiTM Coprocessor.