著者
湯淺 太一 中川 雄一郎 小宮 常康 八杉 昌宏
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.41, no.9, pp.87-99, 2000-11-15
被引用文献数
8

Lispなどの大多数のリスト処理システムでは,不用セルを回収するためにごみ集め(GC)が行われる.一般的に採用されているGCは,ごみ集めの間プログラムの実行が中断されるので実時間処理には適さない.この問題を解決するために,ごみ集めの一連の処理を小さな部分処理に細分化し,プログラムの実行と並行してごみ集め処理を少しずつ進行させる実時間方式のGCが提案されている.代表的な実時間GCであるスナップショットGCは,スタックなどのルート領域から直接指されているセルをGC開始時にすべてマークしておかなければならない.この間の実行停止時間は,ルート領域の大きさによっては,無視できなくなる.そこで,関数からのリターン時にマーク漏れがないようにチェックすることで,スタックから直接指されているセルを関数フレーム単位でマークする方法を提案する.スタック上のルート領域をフレーム単位でマークしていき,ある関数からリターンする際に次の関数フレームがマークされているかどうかをチェックし,マークされていなければその関数フレームをマークしてからリターンする.これをリターン・バリアと呼ぶことにする.ルート領域のマークが終了したら,従来のスナップショットGCと同様に残りのセルをマークする.本論文では,Common Lisp処理系KCL(Kyoto Common Lisp)上でリターン・バリアを実装し,GCによる実行停止時間について,従来のスナップショットGCと比較評価および検討を行った.Garbage collection (GC) is the most popular method in list processing systems such as Lisp to reclaim discarded cells. GC periodically suspends the execution of the main list processing program. In order to avoid this problem, realtime GC which runs in parallel with the main program so that the time for each list processing primitive is bounded by some small constant has been proposed. The snapshot GC, which is one of the most popular realtime GC methods, has to mark all cells directly pointed to from the root area at the beginning of a GC process. The suspension of the main program by this root marking cannot be ignored when the root area is large. This paper proposes ``return barrier'' in order to divide the process of root marking into small chunks and to reduce the suspension time of the main program. The root area on the stack is marked frame by frame each time a new cell is requierd. When a function returns, the garbage collector checks if cells pointed to from the frame of the caller function have been already marked, and marks them if not. After marking all cells directly pointed to from the root area, other cells are marked as in the original snapshot GC .In this paper, we implemented the snapshot GC equipped with the return barrier in KCL (Kyoto Common Lisp). We compare and discuss the suspension times of this GC and the original snapshot GC.
著者
仲谷 善雄 橘 亜紀子
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告情報システムと社会環境(IS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.108, pp.45-52, 2007-11-06
被引用文献数
1

災害時に避難所に避難する人達は、生活に必要な物資を持っていないことが多く、救援物資が重要となる。しかし従来の救援物資受け入れ体制は、必要なものを必要なときに必要な数量だけ受け取れるものではなく、受身であったため、すでに必要でない物資が届いたり、不足や過剰などの問題が存在した。そこで我々は、救援物資の配給を行う都道府県の担当者が使用して、過去の避難所での実績データに基づいて、どの程度の規模や特徴の避難所であれば、いつ頃にどのような物資がどの程度必要になるかを推定し、その情報を Web に掲載することで、タイムリーに必要な数量の物資の確保を支援するシステムを提案する。データとして、都市型地震の典型としての阪神淡路大震災と、中山間地地震としての新潟県中越地震を事例ベース化した。また、必要とされながらも実際には配給されなかった物資については、別途データベース化して利用できるようにした。福岡県西方沖地震を対象とした検証実験により、有効性を確認した。Refugees who evacuate to the shelters usually do not bring their daily essentials with them, and relief supplies are essential for them. A conventional acceptance mechanism, however, has been passive and it is difficult to timely acquire the needed volume of what are needed. What are not needed is sometimes sent. Our approach to meet this situation is to predict what are needed in a certain period of evacuation lives based on the case base which stored actual data of what kind of necessaries were required or delivered in the actual evacuation cases: the great Hanshin Awaji earthquake as an example of an urban-type disaster and the Niigata Chuetsu earthquake as an example of a disaster in an intermediate and mountainous area. This framework is implemented on the PC as a web-based application. When a new shelter starts, the system refers to the case-base and retrieves a most similar shelter case based on the type (urban or mountain), composition of population, season, and so on. The system provides what kind of materials are to be required next week on the web based on the retrieved case. We validate the efficiency of the approach by applying the system to an actual earthquake example, the western Fukuoka earthquake. The system proposed necessaries which were not delivered but were strongly required as well as actually delivered materials.
著者
孫 為華 木谷 友哉 柴田 直樹 安本 慶一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.20, pp.61-66, 2009-02-26

大規模災害により,被災地の通信インフラが破壊された場合,災害情報の収集と共有が困難となり,救援活動に大きな支障をきたす.本稿では,インフラが機能しない災害現場において携帯端末を携えた救急隊員間でDTN (Delay Tolerant Network) に基づいた通信を行うことで災害情報を災害対策本部のサーバにできるだけ早く収集し共有する方法を提案する.提案手法では,救急隊員の行動モデルを考慮し,情報伝送効率を向上させる方法を検討する.The information gathering and sharing are difficult in a disaster area where the commnunication infrastructures are destroyed due to the large-scale disaster. As a result, the rescue operation will be interfered. In this paper, we propose an efficient method for gathering disaster related information to a server at the headquarters in a disaster area, taking into account the mobility of rescue parties based on DTN (Delay tolerant Network).
著者
伊東伸泰 丸山 宏
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.664-670, 1992-05-15
被引用文献数
22

著者らは既存の日本語印刷文書をハイパーメディアなどのデータベースに効率よく入力・運用する目的で文書理解システム(DRS:Document Recognition System)を開発中であるが その機能の1つとしてOCRで認識された文字中から日本語文の制約を利用して誤りを検出 オペレータに警告し 可能な場合はより確からしい候補に置き換える後処理を実現した本後処理は日本語辞書と品詞間接続テーブルを参照して文法的に、成立する文字列の候補を生成した後 各単語の品詞 出現頻度 遷移確率 および認識の確からしさに基づいてコストを計算しその値が最良のものから一定値以内の候補パスを選び出すそして各カラムの文字候補について 自分自身を通る候補パスに付随するコストと他の文字を通るパスのそれから確信度を計算し その値により当該候補の入れ替えや オペレータに対する警告を行う実験によれば後処理なしで95%程度の認識率であったデータで認識率が約99%に向上し 検出されなかった(言い換えれば入れ替え 警告のいずれも行われなかった)誤認識文字は02%程度にとどまった候補パスを見出す探索には動的計画法とピームサーチを用いることで 803866(25MHz)のパーソナルコンピュータ上で約27文字/秒の実行速度が得られた
著者
劉力綺 筒井 茂義 小島 基伸
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告数理モデル化と問題解決(MPS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.86, pp.13-16, 2007-09-03

筆者らは先にカンニングアントシステム(cAS)と呼ぶ新しいACOアルゴリズムを提案し,TSP を用いて評価を行い,cAS の有効性を確認した.本論文は,cASのQAPへの応用と並列化方式に関するものである並列化の目的は大きく二つに分類できる.一つは,与えられた時間内に よりクオリティーの高い解を得ることである.もう一つは,与えられたクオリティーの基準を満たす解を高速に得ることである本論文では第二の目的,すなわち高速化を達成することを目的に,複数のプロセッサを用いるcASの並列化の一方法と QAP における結果について述べる.The previously proposed cunning ant system (cAS), a variant of the ACO algorithm, worked well on the TSP and the results showed that the cAS could be one of the most promising ACO algorithms. In this paper, we apply cAS to solving QAP focusing our main attention on the parallelization of the cAS. Results show promising speedups of the parallel cAS.
著者
高橋 慈子 大和田潤治 大野 邦夫
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告デジタルドキュメント(DD) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.100, pp.45-50, 2007-09-28
被引用文献数
5

デジタルテレビを中心に家庭への情報家電製品の普及が進んできた。ネットワークを利用して多様な製品を接続して使うことが前提となっている製品ではあるが、接続方法は複雑で利用者には理解しづらい。また、メーカーを超えた製品については,接続後に何ができるかの情報も少ない。TC 協会 Web コミュニケーション WG では、デジタルテレビ用のポータルサイト「acTVila (アクトビラ)」と連携して、異メーカー間をつなぐ Web マニュアルを試作し、今後の Web マニュアルのあり方を検証した。テレビで検索し、分かりやすく情報提示デザイン、操作性を通して、今後の製品情報提供方法の方向性を考察する。Centered on digital television, the spread of information appliances into households continues. There are products that require connection to other devices using a network, but the way in which these devices connect is complicated and difficult for users to understand. Furthermore, for devices that rely on components from different makers, there is little information about what you can do once you have connected them. The TC Association Web Communication Research & Study WG has been given permission to use the digital television portal site "acTVila" so that Web manuals can be prototyped that cover different makers, ensuring better Web manuals in the future. Through using the television for searching, easy-to-understand information display design, and operability, the way in which product information is provided in the future will be considered.
著者
富樫 雅文
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.30, no.7, pp.839-848, 1989-07-15
被引用文献数
1

新しい和文入力方式として超多段シフト方式を提案する.従来の各種入力方式の長所を継承するために 多段シフト方式からキーヘの漢字の多重配置を コード入力方式から漢字のコード化を また 仮名漢字変換からは 入力のてがかりとしての読みの利用を各々取り入れた.入力には標準鍵盤を使用し あらかじめ 各キーに漢字を多重配置しておく.漢字の入力には まず 読みを入力して鍵盤を仮想的にシフトし 漢字の配置されたキーを次に打鍵して漢字を一意に指定する.これは シフト段数が2 943段に及ぶ超多段シフトである.パーソナルコンピュータ上で 本方式による和文入力システムを実現した.本方式のための漢字配列の決定と 操作性向上のための若干の工夫および使用方法について説明する.また 本方式による和文入力速度を 学習を伴う打鍵モデルに基づいて予測し 200時間の訓練後で毎分137字という結果を得た.超多段シフト方式は 初心者には仮想鍵盤の表示と目視打鍵による対話型のインタフェースを また 熟練者には可変長コードの触指打鍵入力による一方的インタフェースを提供する.
著者
廣安 知之 三木 光範 上浦 二郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.43, no.10, pp.199-217, 2002-11-15
被引用文献数
9

分散遺伝的アルゴリズム(DGA )は遺伝的アルゴリズム(GA )の並列モデルの1 つであり,通常のGA と比較して,高い探索能力を有する.しかしながら,DGA にはユーザが設定すべきパラメータが多数存在し,このパラメータ設定がDGA の利用の際に大きな問題となる.そこで,本研究ではこれらのパラメータの最適な設定を実験計画法を用いて予測を行う.本研究で予測を行ったパラメータは,各分割母集団内の探索に関係する8 種類のパラメータと移住に関係する5 種類のパラメータである.本研究ではまず,これら13 種類のDGA のパラメータの傾向を把握するために,4 種類の数学的テスト関数について実験を行っている.その結果,9 種類のパラメータはこれら4 種類の対象問題すべてにおいて似た傾向を示した.残る4 種類のパラメータに関して実験計画法を用いることにより,少ない実験回数で良質なパラメータ設定を得ることが可能となった.Distributed Genetic Algorithm (DGA)is one of parallel models of Genetic Algorithms GAs) and has a high searching ability compared with the conventional GAs.In DGAs,there are many parameters that users should set and these parameters a ect the derived solutions and the calculation cost.In this study,we presume the best parameters of DGA by using design experiment method.For the preliminary experiment,we studied 13 types of parameters of DGAs by applying 4 numerical test functions.The parameters are classi ed into two groups; the parameters that are used in sub populations and the parameters that are concerned with the migration.From the numerical examples,the best values of nine parameters were derived.Therefore,users can determine the rest values of four parameters by design experiment method.Through the further numerical experiments,it is found that good parameter settings can be presumed with not so many experiments by using design of experiments.
著者
坂村 健
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.26, no.11, pp.p1321-1328, 1985-11-15

本論文では90年代の技術水準を考慮に入れたパーソナルコンピュータのための新しいアーキテクチャ体系BTRONについて, 新たに提案する統一的操作モデルを中心に述べている. 現在のコンピュータがエンドユーザにとってわかりにくいと言われる原因の一つとして, コンピュータの操作モデルが一定でないことが挙げられる. そこで, BTRONでは「実身/仮身モデル」と呼ぶエンドユーザのための新しい統一的な操作モデルを作った. プログラムの起動, ファイル管理, テキストエディタなど従来別個の操作モデルを導入する必要があった局面でも「実身/仮身モデル」により設計でき, このモデルが広い範囲のマン=マシン・インタフェースの操作モデルを統一するのに有効であことがわかった.
著者
遠藤 和昭 小谷 善行
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告ゲーム情報学(GI) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1999, no.53, pp.63-70, 1999-06-24

環境の変化が急速な場合、組織のリーダーのリーダーシップが問題になる。また、リアクティブプランニングを用いたエージェントの行動は、そのエージェントが得る情報によって大きく左右される。通信を行うエージェントの行動は、その通信の内容に行動が左右される。そのため、情報を発するエージェントは、集団に対して大きな影響力を持ち、集団の中で特別な役割を演じていると考えられる。さらに、情報を発する者が相応しくない場合、集団の性能に対して悪い影響を与えると考えられる。本論文では、情報を発し集団をある状態に導く者をリーダーと呼び、RoboCupシミュレーション部門のサッカークライアント(エージェント)を対象としてリーダーの統制によるシステムを作った。その結果、勝率の向上、得点の増加、失点の減少など、集団の性能を向上されることができた。A leadership of the leader in the company is important in dynamic environment. The action of the agent with a reactive planning depends on the messages in the communication. So the agent who sends the message has much influence on the agents who get the information and have a special role in the group. If the agent who sends a message is not suitable, he may give bad influence on the agents. In this paper, we call the agent who leads the agents with the information "Leader" and discuss his role on the RoboCup Soccer client in the simulation league.
著者
三宅 真紀 佐藤研 赤間 啓之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1999, no.85, pp.25-30, 1999-10-15
参考文献数
8

本論文では、聖書学の分野に、コーパス言語学的な統計的解析を用いた方法論を導入をすることを目的としている。そこで、新約聖書学において、福音書の成立上の相互関係を整合的に説明しようとする「共観福音書問題」に着目し、その最も説得的な解決法と考えられている「二資料説」について、数量化モデルを立てた。統計処理については、特異値分解(Singular Value Decomposition SVD)を基盤とするLSA (Latent Semantic Analysis)を用いて仮説を検証し、数量化モデルを用いて「二資料説」を実証した。LSAは、膨大な量のテクストを扱うのに非常に適している。また、解析ソフトウェアの開発も同時に行い、将来的に聖書学研究者の統計的研究をサポートすることを目的としている。In this paper, it is our aim to use a statistical analysis for the study of Bible. We deal with the "synoptic problem" in New Testament Studies. For the first step, a statistical model is created for the "two sources theory" which plays a important part in this problem. Then, the hypothesis is explored by a mathematical technique called Latent Semantic Analysis (LSA). This thechnique uses Singular Value Decomposition (SVD), a mathematical generalisation of factor analysis. And also it is applied to a large corpus of text. Finally the hepothesis is proved by the satistical model. In addition we develop a application applied to the statistical analysis for the study of Bible.
著者
藤井 薫和 重信 智宏 吉野 孝
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.63-71, 2007-01-15
被引用文献数
23

異文化間コミュニケーションにおいて,言語や文化の違いは大きな障壁である.多くの人にとって,新たな言語を習得することは大きな負担であり,お互いの母国語で円滑なコミュニケーションが成立することが望ましい.本研究では,機械翻訳機能と語句への意味づけ(アノテーション)機能を持たせたチャットシステムAnnoChat を開発し,日本人,中国人,韓国人の間のコミュニケーションに適用し,異文化間コミュニケーションにおけるアノテーションの評価を行った.実験の結果,被験者によって付与されたアノテーションの約7 割は,チャットのコンテキストに依存しない知識情報であり,蓄積し共有することで異文化間コミュニケーションにおける有用な知識情報になると考えられる.また,約2 割はチャット中に説明できなかった情報を補足するために利用されており,リアルタイムコミュニケーションにおいてチャット中のアノテーション付与が有効な例であると考えられる.In intercultural communication, there are large barriers because the languages and cultures are different. We think that it is preferable for people to communicate smoothly with their own mother tongue. Therefore, we have developed a chat system named AnnoChat. AnnoChat has an annotation function for smooth intercultural communications. AnnoChat was applied to experiments carried out among the Japanese, Chinese, and Koreans. From the results of the experiments, about 70% of the added annotations are reusable for intercultural knowledge information. About 20% of the added annotations are used to supplement information that could not be described while chatting. It is thought that this is an effective example of applying the annotation in real-time communications.
著者
三浦憲二郎 王國金
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.436-446, 1993-03-15
被引用文献数
1

C2Gregoryパッチは,曲率が連続となる曲面を生成する目的でMiuraらによって開発された自由曲面表現式である。Gregoryパッチの部分領域がGregoryパッチで表せないのと同様、C2Gregoryパッチの部分領域もC2Gregoryパッチにならず、分割法によってパッチと直線やパッチと平面、パッチ同士の交点、交線等を算出することができない。そこで本研究では、それらのパッチの部分領域に対する境界額を提案し、それを用いてパッチと直線との交点を算出する薪しいアルゴリズムGregoryクリッピングを開発した。その応用例としてC2Gregoryパッチに対してレイトレーシングを行い本研究で提案した境界箱の有効性を示した。
著者
熊本 忠彦 太田 公子
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.4, pp.35-40, 2002-01-21
被引用文献数
8

我々は、音楽作品に関する知識が乏しい人でも簡便に利用できる「印象に基づく楽曲検索システム」を構築している。楽曲検索には、曲名や作曲家名、演奏家名といった書誌的な情報に基づくものや、(鼻歌)や歌声などの音響情報を用いたもの、歌詞(テキスト)情報に基づくものなどがあるが、これらの検索手段では、知らない曲や内容を忘れてしまったような曲など必要な情報を提示できない曲は検索できない。これに対し、印象に基づく楽曲検索は、楽曲の印象という曖昧な入力でも検索できるので、音楽情報に疎い人でも利用することが可能である。楽曲検索システムへの入力(すなわち印象)は、複数の印象尺度(楽曲印象を表現する形容語の対からなる尺度)とその評価値(7段階評価)の組合せによって表現される。したがって、楽曲検索システムがユーザフレンドリーであるためには、ユーザの検索意図を表現できるような印象尺度を用いる必要がある。本稿では、そのような印象尺度の設計方式を提案する。なお、楽曲のジャンルとしては、いわゆるクラシック(古典的西洋音楽)を対象としている。We are developing a system that will retrieve a music piece based on the user's impressions of it. People who have extensive knowledge of music can easily retrieve a specific music piece from a large music database by inputting concrete information such as the title, the names of the performers, or the name of the composer. However, people who lack such knowledge have difficulty in retrieving a specific music piece because they cannot give concrete information about it. Our music-retrieval system will enable anyone to easily retrieve a specific music piece by inputting expressions that describe their impressions of it. We have defined ten pairs of words the system will accept as input and have designed an impression scale for each one. Each scale has two words representing contrasting impressions, e.g. "sad" and "happy," and seven scale values between the two words. Users select a scale value for one or more scales to represent their impressions of the target music piece.
著者
岡田 直之 佐野 渉二 寺田 努 塚本 昌彦
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.28, pp.25-32, 2009-03-06

近年,携帯電話の高性能化が進み,その用途が広がっている.これに伴い携帯電話に写真編集やウェブブラウジングなどのアプリケーションが搭載され,携帯電話上でもポインティング操作が必要不可欠となりつつある.しかし,携帯電話には表面にボタン型入力装置が設置されており,片手で操作する場合には手で把持しながら範囲指定やドラッグなどのポインティング操作を行うことは困難である.そこで本研究では,デバイスの背面にポインティング装置を設置して利用する背面ポインティングに着目する.本研究では,携帯電話の背面にタッチパッドを装着し,前面でキー操作を行いつつ背面タッチパッドによるポインティングを行う環境を想定する.背面タッチパッドの利用により効率的な入力が実現できるが,予備実験により背面でポインティングを行う場合には操作しにくい方向があり,ポインティングが安定しないという問題があることがわかった.そこで提案方式では,ユーザが行う操作に対して方向別にカーソル移動量を調整する操作量フィルタと操作方向を 8 方向に強制的に変換するフィルタを提案し,操作性の改善を実現する.評価実験により,提案方式を用いることで背面タッチパッドの操作性が改善されることがわかった.Recently, portable devices such as mobile phone are used in various purposes because of explosive popularization of mobile phones with high efficiency. Accordingly, various applications such as photo editor and web browser have become to be used on mobile phones. Although these applications need pointing operations for effective use, it is difficult to do pointing operation on mobile phones because users operate the device with their one hand while holding the device by the hand. Therefore, the goal of our study is to construct a pointing operation specialized to a back touch pad. In our using assumption, users input characters with front keys on a mobile phones and operate a pointer with the back touch pad. We achieve the efficient input with the proposed method. However, as the result of pilot study, the proposed using style has a difficult direction of pointing. To resolve this problem, we propose a filter which adjusts distance of cursor according to a direction and that forcibly converts direction of operation into eight directions.
著者
松田健希 大澤幸生 谷内田 正彦
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告知能と複雑系(ICS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1996, no.4, pp.1-6, 1996-01-17

知識ベースシステムは大きいだけでなく,ユーザが知りたい情報を素早く,的確に提供してこそ価値がある.そこで,ユーザの意図に応じて,重要な知識に注意を絞る手法として,推論に用いる知識を適切に注視する知識ナビゲーションを提案する.本手法では,ユーザにとって重要な項目のうち深く関連し合うものを近くに配置した文脈空間から,別に用意された知識ベースに射影する.ここでは,この手法を仮説推論によってユーザの最適なプランを得るための知識ベースに適用する.パイパーテキスト上での連想網が知識上でのユーザの興味の流れ支援を目的としていたのに対し,ここでは論理的な基盤性を有する知識処理に文脈への柔軟な適応性を持たせることをねらう.A knowledge-base system should serve the user with satisfactory information quickly, besides its rich content. For the purpose of focusing attension to the noteworthy portion of a large-sized knowledge, we propose here a new knowledge navigation method. The presented method project the topology of relational network, which is obtained directly from the user's arrangement of terms in a context space, on to the knowledge-base network. We apply this focusing to knowledge-base for hypothetical reasoning, which obtains the optimal plan for achieving the user's goal. Thus a flexible adaptability to context is achieved for logic-based knowledge processing.
著者
浅川 智恵子
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.34, no.8, pp.1844-1852, 1993-08-15
被引用文献数
6

パーソナルコンピュータの普及に伴い、福祉の世界で、コンピュータを使えば障害の一部もしくは、多くの部分が代行できるのではないかという期待が高まっている。実際、障害者を支援する目的で、さまざまな機器の研究、開発が進められている。筆者らはその中で、視覚障害者の情報源の拡大、職域の拡大および教育環境の改善を目標にソフトウェアの研究、開発を進めてきた。本論文では、教育環境の改善を目標に試作した点字英和辞書検索システムについて、点字データの作成からシステム開発に至るまでの経過を報告する。一冊の図書を点訳すると、そのぺ一ジ数は数倍から数十倍になる。辞書のような1ぺ一ジ当たりの情報量の多い書籍になると、数百倍になるといわれている。そのため、点字本をどうやって保存、利用するかは視覚障害者にとって大きな問題である。また、数百巻に及ぷ点字辞書を引くことは大変な作業である。そこで、量的な問題から、中級クラス以上の英語辞書の点訳および出版はこれまで行われていない。そのため、大学や大学院等の高等教育機関で英語を勉強していくことは大変困難であり、語彙数の豊富な、内容の充実した英和辞書をコンパクトな形で使用したいという強い希望があった。このような問題を解決するため、筆者らが開発した点宇編集プログラムBEを使ってコンピュータ点訳された、小学館発行のプログレッシブ英和中辞典を利用して、点字英和辞書検索システムの研究開発を行った。本システムの使用にあたっては6点点字が完全にサポートされており、視覚障害者は通常のキータッチを知らなくても使用可能であるまた、検索した内容を確認するため、点字ピンディスプレイの接続を可能にした、これにより、視覚障害者は、通常読み書きしている点字と全く同様の形で、本システムを利用することができる。辞書データのサイズは約15MB、トライ法を参考に作成したインデックスは約3MBとなり、全体で20MB必要とするだけである。これは、ノート型のパーソナルコンピュータでも稼動可能な容量であるため、上記にあげた問題点をすべて解決することができた。点字ビンディスプレイはパーソナルコンピュータのディスプレイとは違い、一回に一行しか表示できないため、検索された単語の説明文をすばやく読めるよう、いくつかのジャンプコマンドを用意し、調べたい意味や熟語等をすばやく捜し出せるようにした。本システムは現在全国69の盲学校および10人の盲学生に利用されている。
著者
住田 智雄 土田賢省 伊東克能
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.544-554, 2008-02-15

本稿では,高能率大容量ファイル転送方式NBT on XCAST とその視覚化手法を提案する.著者らのNBT on XCAST は,蓄積型大容量ファイルを効率的に配信し,サーバにおけるファイル転送処理の軽減とネットワークの帯域消費量の最小化を目的としている.しかしながら,ただ単に,NBT on XCAST を採用するだけでは,サーバや各ルータの個別の動作状況は別にして,全体の状況は把握しにくい.このことから著者らは,さらにこのプロトコルの視覚化手法を開発し,従来は把握しにくかった全体像,特にデータの流れやサーバ,ルータ,各クライアントの動作状況を把握することを目指す.著者らの提案する視覚化方法においては,クライアントやルータを頂点,通信媒体を辺,帯域幅を辺の重みとするグラフを用いて表現する.また,本稿では,提案する視覚化手法によりどのように効率化されるかについても考察する.We propose a method to visualize the non-ordered block transfer on XCAST (NBT on XCAST) protocol. This protocol efficiently transfers large-capacity files by reducing file transfer processing in the server and minimizing the bandwidth consumption in the network. However, it merely uses the individual operation status of the server and each router, but the status of the whole system is difficult to understand. We developed our visualization method to understand the operation status of the whole structure, especially the data flow, server, router, and each client. In this visualization method, vertices, edges, and weight of edges represent clients and routers, communication lines, and bandwidths, respectively. Moreover, we investigated how to make the protocol more efficient using this method.
著者
鈴木 克典 建部 修見
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.14, pp.49-54, 2009-02-19

本稿は我々が想定する並列ファイル転送システムにおける,ファイル転送タスクのスケジューリングアルゴリズムに関する提案である.想定システムはグリッド環境においてクラスタ間でファイル転送を行うものであり,各ノードに複数の複製が存在することを仮定する.このとき適切な複製選択,転送順序の決定,複製の動的作成を行うことで,最適な転送時間を求める.我々は,この問題を定式化し,リストアルゴリズムを基本とした手法として実装した.提案手法を評価した結果,特定のノードにのみにファイルが偏って分布している場合でも予想転送時間を短縮できることを確認した.We present a task scheduling algorithm of the parallel file transfer system. It is asuumed that the system does file transfer to and from clusters in grid environment, and two or more replicas exist in each cluster. In this situation, to optimize the transfer time, proper transfer scheduling including replica selection and dynamic replica creation should be investigated. We build a model to solve the problem and implement algorithms based on the list-algorithm. Performance evaluation shows that the proposed replica selection algorithm and the replica creation algorithm provide better result than a simple list scheduling in unevenly file distributed case.
著者
中山 寛 曽根 光男 高木 幹雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.91-100, 1989-01-15
被引用文献数
24

気象衛星画像では 雲頂高度の低い雲と積雪とが同程度の輝度温度になるので 輝度温度のみを用いて雲と積雪とを分類することは難しい.そこで 本文では気象衛星NOAAの赤外画像を対象とし 雲と積雪との分類 雲の種類の分類をフラクタル次元と低次統計量とを用いて階層的に行う手法を提案する.なお フラクタル次元とは 形状の複雑さを表す非整数次元であり 本文では 画像濃度面の起伏の複雑さを表す特徴量とする.本手法の有意性をグランドトルースを用いて検証する.また 従来の統計的なテクスチャー特徴量を用いる手法と本手法とを認識率 処理時間で比較して 本手法の有効性を示す.