著者
小林潤平 関口隆 新堀英二 川嶋稔夫
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2013, no.1, pp.37-39, 2013-03-06

読書中の眼球運動は,停留とサッカードの繰り返しであることが知られている。停留中には,中心視野において文字認識すると同時に,周辺視野において次の停留先の選定が行われるため,中心視野と周辺視野の両方の処理を向上させることが,読み効率の向上につながる。しかし,求心性視野狭窄など中心視野は見えるが周辺視野が見えなくなる症例では,周辺視野の処理が強く制限されるために,読み効率が著しく減少する。中心視野のみで読み進めることができる文書呈示手法としてはRapid Serial Visual Presentation(RSPV)が挙げられるが,RSVPは読み損ねた場合に再び戻って読み返す行為が非常に困難であるために読む際に極度の集中を要求し,快適な読書体験を実現することが難しい。そこで本研究では,中心視野のみに視野が制限された状態でも,読者への負担が少なくかつ効率よく読むことが可能な,文章を短く折り返す呈示とともにタッチパネルによるユーザ操作を取り込む読書インタフェースを提案し,その効果を検証する。
著者
鈴木 浩二 松川 徹 栗田 多喜夫
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告コンピュータビジョンとイメージメディア(CVIM) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.29, pp.7-12, 2009-03-06
被引用文献数
2

局所特徴を SVM により背景領域からの特徴と対象領域からの特徴に分類し利用する手法 (初期特徴選択) を提案する.初期特徴選択の有効性を検証するために,UIUC Image Database を用いて SIFT 特徴を車領域からの SIFT 特徴と背景領域からの SIFT 特徴に分類する SVM を作成し,SIFT 特徴を用いた Bag-of-Features の特徴選択に適用する実験を行った.この実験の結果,Bag-of-Features において背景領域からの SIFT 特徴を SVM で選択的に取り除くことにより,クラスタ数が少ない場合において従来手法よりも識別率を向上させることできた.We propose a local feature selection method that classifies local features into background's features and target's features using SVM. We applied this feature selection method to "bag-of-features" method in generic object recognition problem. To verify the effectiveness of the proposed method, we conducted experiments using UIUC Image data base. Experimental results showed the proposed method outperformed the conventional Bag-of-Features representation with a fewer number of clusters.
著者
笠原 要 松澤 和光 石川 勉
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.38, no.7, pp.1272-1283, 1997-07-15
参考文献数
26
被引用文献数
99

人間は,単語の意味を表す「概念」間の類似性を,その単語が扱われる文脈や状況の変化に応じて柔軟に判別する.本論文では,属性とその重みより構成した概念の知識ベース(「概念ベース」)を用い,文脈や状況等を表現する単語(「観点」)を指定したときに,観点に応じて概念間の類似性を判別する方法を提案する.この方式は,概念どうしの類似性判別を行う前に,概念中の属性の重みを観点に基づいて強調することを特徴とする.概念ベースは,まず国語辞書等の語義文から自立語の出現頻度に基づいて属性とその重みを獲得し,次いで得られた概念ベースの自己参照による新たな属性の追加,および不要な属性の統計的な除去からなる精錬を行うことによって,完全に機械的に構築した.実際に作成した約4万の日常語に関する概念ベースで方式評価を行った.この結果,提案の類似性判別方式がシソーラスを用いる従来の方式に比べて有効であり,また,この判別において観点が効果的であることを明らかにした.We propose a method for measuring the semantic similarity berween words using a largescale knowledge base that is automatically constructed from machine-readable dictionaries and is self-refined.This method of measuring similarity takes into consideration the fact that similarity changes depend on situation or context,this is what we call a 'viewpoint.'A feature of this method is that certain parts of the overall concept of measured words,compared with each other,are emphasized by using the viewpoint when calculating the degree of similarity.An experimental knowledge base,which contains knowledge of 40,000 Japanese daily-used words,was employed in order to evaluate the proposed method of measurement.The similarity measurements with the proposed method were closer to those decided by human judges than were similarity measurements made using the conventional way of using a thesaurus.Moreover,it was found that consideration of the viewpoint was effective when measuring the semantic similarity.
著者
助台 良之 大野 悠人 福地 健太郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.66, pp.1-6, 2014-03-06

既存のものごとに楽しさの要素を追加することにより自発的な参加と継続を促すことを目指した 「エンタテインメント化 (entertainization)」 の研究の一環として、トランポリン運動を題材に、カメラによる自分撮りの機能を付加したシステムを開発した。このシステムでは、人の、楽しい・面白い写真を撮って人に見せたいという自己表現欲求をくすぐることで、自発的な運動への参加を促すことを狙っている。今回実装したシステムでは、トランポリンで跳んでいる状態の写真を自動で撮影するために測距センサをトランポリンに設置し、跳躍間隔から頂点到達時間を推測する手法を開発した。We developed a novel training system using a trampoline with a automated self-portrait photo system, which encourages the users to take their self-portrait images to entertain theirselves and others. This system implements the idea of "entertainization", encouraging the users to participate and continue less enthusiastic events voluntary, by adding entertaining and attractive elements. This system is designed to appeal to the users to take an entertaining self-portrait image and participate the trampoline exercise voluntary. The system empolys a range sensor to estimate the time at the peak of the user's jump.
著者
伊藤 貴之 梶永 泰正 池端 裕子
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告グラフィクスとCAD(CG) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.89, pp.65-70, 2001-09-13
被引用文献数
5

例えば、計算機のファイルシステム。例えば、大会社の人事組織。例えば、Yahoo に代表されるカテゴリ分類型のウェブサイト。身のまわりには、階層構造で整理されたデータは非常に多く存在する。これらの階層型データを対話的に表現するGUI の大半は、まず上位階層を表示し、ユーザーの選択操作によって徐々に局所的に下位階層を表示させるように構築されている。これらのGUI とは逆に、最初から階層型データ全体を一画面に展開して表示することで、データの分布を一目で理解するような視覚化手法はないものか、ちょうど宝石店のショーケースのようにデータ全体を見渡せる視覚化手法はないものか? という発想が本報告の動機である。本報告で提案する視覚化手法は、まず最下位階層を構成するデータのアイコンを長方形で囲み、その長方形の集合を囲む長方形を作成して上位階層を表現し ? という処理を最上位階層まで反復することで、データを画面空間に配置する。画面空間を有効活用するために、本手法では長方形をできるだけ隙間なく配置して占有空間の最小化を図る。画面空間中の隙間を高速に探し出すために、本手法では長方形の中心点群を連結する三角メッシュを生成し、面積の大きい三角形要素の内部に長方形を配置し、その長方形の中心点を追加することで三角メッシュを更新する・・・という処理を反復している。File systems of computers, company organizations, and category-based search websites such as Yahoo. We see many kinds of large-scale hierarchical data in our daily life. Most of GUI for these data first represent the higher-level of the data, and provide the interface so that users can select their interested portion of the data and locally explore the lower-levels. On the other hand, there are not so many visualization techniques that give the overview of the data by locating whole lower-level data onto a display space. How we can realize such technique that distributes the data like a showcase of jewel shops? … That is the motivation of this paper. The paper presents a visualization technique that locates whole lower-level portion of hierarchical data on a display space. It first generates rectangles that enclose icons of the lowest-level data. It then repeats the process of generating rectangles that enclose the lowest-level rectangles, until the highest-level rectangles are enclosed by the largest rectangle. To minimize the occupation of display spaces, our technique efficiently searches for gaps that rectangles can be located without overlaps with adjacent rectangles. We use Delaunay triangular meshes that connect centers of rectangles to quickly search the gaps.
著者
飯田 仁 有田 英一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.810-821, 1990-06-15
被引用文献数
28

日本語の話し言葉による対話では 述語の代用的表現 格要素の省略 縮小表現等を使った断片的な発話が多く現れる.このような特徴を持つ対話の理解および翻訳を行うには 各発話を対話の進展の流れに沿って解釈することが必要である.本論文では対話を理解するための一つの機構として 4階層のプラン認識モデルを使った目標指向型対話の理解の手法を提案する.4階層のプランとは(1)ある情報の交換が話し手と聞き手の間の順序付けられた発話で表現できるという知識であるインタラクションプラン (2)対話を介した情報伝達のための行為が一連の情報伝達行為で実現できるという知識であるコミュニケーションプラン (3)ある行為が順序付けられた行為の達成で実現できるという知識であるドメインプラン (4)対話が対話展開のための言語運用行為で実現できるという知識であるタイアログプランである.これらのプランを利用すると対話の進展に伴う各発話と話題領域の知識との関係付けを漸次進めていくことが可能となり 対話全体に渡る構造をつくることができる.対話の構造の中で断片的な発話の解釈をすることにより代用的表現 格要素の省略を復元できる.
著者
中川 知香 佐藤 智和 横矢 直和
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータビジョンとイメージメディア(CVIM) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.5, pp.93-100, 2006-01-20

カメラ付き携帯機器におけるユビキタスARの実現には,カメラの位置・姿勢情報の取得が必要である.また計算コストなどの点から入力データとして静止画像を用いることが望ましい.本稿では,特徴点追跡に基づく三次元復元によって得られる広域環境の自然特徴点ランドマークデータベースを用いることで,1枚の静止画像からカメラの位置・姿勢を推定する手法を提案する.提案手法では,まず入力画像内の特徴点と類似度が高いランドマークを1対多で対応付け,各ランドマークと同じ見え方で撮影できる領域に投票することにより入力画像が撮影された可能性が高いカメラ位置候補を特定し,誤対応を排除する.次に,カメラ位置候補に投票したランドマークと入力画像の特徴点の組を複数用いて,カメラの位置・姿勢を推定する.実験では,屋外環境のランドマークデータベースを構築し,データベースの撮影経路付近で撮影した画像を用いて提案手法の推定精度を評価した.Position and posture estimation for a camera embedded in a mobile device is very important for ralizing ubiquitous augmented reality. In this report, we propose a novel method for estimating camera position and posture from a still image based on feature landmark database. In the proposed method, firstly, candidates of corresponding points of feature landmarks are searched in an input image. Secondly, camera position from which candidate points are visible is roughly computed by a voting approach. Finally, camera position and posture is determined by using pairs of landmark and feature point voted for the roughly computed camera position. The validity of the proposed method has been shown through experiments for an outdoor environment.
著者
山崎 利治
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.25, no.9, 1984-09-15
被引用文献数
31 21
著者
花井俊介 灘本明代 難波英嗣
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.26, pp.1-7, 2014-11-11

近年,「クックパッド」 や 「楽天レシピ」 に代表されるようにユーザ投稿型レシピサイトが普及している.これらユーザ投稿型レシピサイトには,非常に酷似したレシピや,特殊な器具を用いているレシピ,説明がほとんどなされていないレシピ等,一般のユーザにとってあまり有用でないと思われるレシピが多数存在しており,ユーザのレシピ検索の妨げとなっている.本研究ではこのようなレシピをスパムレシピと呼び,これらスパムレシピの内,酷似したレシピを自動抽出する手法の提案を行う.本論文では,酷似レシピを抽出するはじめの一歩として,ユーザ実験を行い酷似レシピの特徴を抽出しユーザはどのようなレシピを酷似レシピと思うかの分析を行う.さらにその結果を考慮してユーザ投稿型レシピサイト中のレシピをクラスタリングする手法の提案を行う.
著者
横山 晶一 菅野 崇 西原 典孝
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.76, pp.1-6, 2003-07-25
被引用文献数
1 1

数多くの文章の中から情報を抽出したり、文章要約のために重要文を抽出したりする手法は、自動化が望まれ、また、さまざまな研究手法が提案されている分野である。我々は、すでに、主題・焦点を用いたキーワード抽出システムを作成して、抽出されたキーワードが有効であることを確認した。本研究では、この手法で抽出されたキーワードを用いた重要文抽出システムについて述べる。抽出されたキーワードを文の重み付けに用いる手法は、従来類似の研究がいくつかある。このシステムでは、要約する文章の中での重み付けされた文の割合を基本要約率として指定し、それらの文と、主題・焦点リンクを通じて抽出される文とで相補って重要文を抽出するところが従来研究とは異なる。本稿では、重要文抽出結果を示すとともに、小規模な評価も行ってこの手法の有効性を示す。Information extraction of some sentences and extraction of important sentences are requested for automatic processing, and proposed with many methods and systems. We have already proposed a keyword extraction system using themes and focuses, and confirmed the effectiveness of them. This paper proposes an extraction system of important sentences using the keywords extracted from the above method. There are some studies with keyword weighting for important sentences. Uniqueness of our system is that weighted sentences are specified as the fundamental summarization rate, and that related sentences with theme-focus link from these sentences are derived. We show the results of important sentence extraction with different types, and also show the effectiveness of this method with results of human evaluation.
著者
吉池 紀子 北端 美紀 武藤佳恭
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告数理モデル化と問題解決(MPS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.85, pp.61-64, 2000-09-21

本論文では,ニューラルコンピューティングの組合せ最適化手法の応用として,現代語を組み合わせた現代風「いろは歌」の作成方法を紹介する.ここでは,現代風「いろは歌」作成問題を二種類の組み合わせ最適化問題として捉えることによりニューラルコンピューティング手法により解くことを可能にした.一つ目の問題はすべての仮名を重複なく用いるような文節の組を選ぶ問題である.二つ目の問題は日本語の係り受け制約に基づいて語順を決める問題である.シミュレーションでは,あらかじめ語群として用意した964語の文節の中からいろは歌作成を行なった。その結果,自然な日本語に近い現代風「いろは歌」を生成できることが示された.We present a neural computing approach for composing a new version of Iroha-Uta using modern Japanese words and grammar. A new Iroha-Uta can be composed by satisfying the following tow restrictions. ura One of restrictions is how to chose words that satisfy the rule of Iroha-Uta and the other is how to order these words for making sentence based on Japanese grammar. In our simulation, 964 preset words are used for making Iroha-Uta. Our experimental results shows that the proposed algorithm can compose variations of Iroha-Uta as natural Japanese sentence.
著者
片岡 崇 川村 秀憲 車谷浩一 大内 東
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告知能と複雑系(ICS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.29, pp.77-82, 2004-03-16

ユビキタス環境の発達に伴い,混雑状況の提示サービスが行われるようになると考えられる.しかし,必ずしも提示された混雑状況をもとに混雑を回避することが最適ではないということが明らかになっている.本稿では,混雑状況を提示する上でその効果に影響を与える要素であると考えられる,目的地の選択とそこへの到着までの間の時間的な遅れと混雑度合いに注目し,テーマパーク問題に対してマルチエージェントシミュレーションによって混雑状況の提示はどのような状況で効果的であるのかその効果を検証する.Recently it is considered that the congestion information services will provide with a development of ubiquitous environment. But it has bacn Cleared that congastion avoidance behnvior based on congestion information is not always optimum. In this paper, we investigate effect of congesiion information with multiagent simulation in theme park problem. Then we focus On degree of congestion and delay time between selecting destination and arriving. which is considered to affect the effect of congesion information.
著者
塚本 修一 増田 英孝 中川 裕志
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.87, pp.35-42, 2002-09-17
被引用文献数
1

本研究は、HTMLの表形式データの構造の認識とその後の利用を目的とした変換のために、表の項目名と項目データの境界を認識するシステムを実現した。表はデータを整理し、見やすくする性質がある。しかし、携帯端末などの低解像度小画面にHTMLの表を表示する場合、スクロールすると項目名の部分が見えなくなってしまう。また、罫線が引かれている為に、表示領域にも制限が出来、単語途中の折り返しにより可読性が低下する。そこで、本研究では、表のデータをユーザが要求する形に出力するための基礎技術として、HTMLの表の構造を認識するアルゴリズムを提案する。提案手法は、表の行間あるいは列間の類似度による。すなわち類似度が低い場合には、行間あるいは列間に内容的な切れ目があると認識する。このアルゴリズムを実際のWebページ上の表データに適用したところ80%程度の認識率を得た。We implemented a recognition system to identify the boundary between attribute names and values of a table in HTML in order to obtain its structure. Table in HTML is aimed at displaying information clearly and understandably. However, users can't see the attributes of the table by using PDA, because of its small and low resolution display when they browse the Web pages. Its low readability is caused by the phenomena such that only a small portion of table is shown on the screen at once, and original one line is usually broken up into many lines on display screens. We propose an algorithm to recognize the structure of tables in HTML for the purpose of transforming them into forms of high readability even on a small screen of mobile terminal. Our method utilizes a similarity between rows(or columns)of the table. Precisely speaking, if we find an adjacent pair of rows(or columns) having low similarity, they probably are boundaries between item name row(or column)and item data rows(or columns). We achieved approximately 80% accuracy of recognition by applying our algorithm to existing tables on the Web.
著者
吉井和佳 糸山克寿 後藤真孝
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.9, pp.1-8, 2014-08-18

本稿では,多数の楽器音が重畳している音楽音響信号を,音の三要素である音高 (基本周波数)・音色 (スペクトル包絡)・音量に分解するための確率的ソース・フィルタモデルについて述べる.ソース・フィルタ理論は楽器音分析に広く利用されており,楽器音のフーリエ変換スペクトルは,音源信号の基本周波数に起因するスペクトル微細構造と楽器音の音色を表すスペクトル包絡との積に分解される.このとき,スペクトル包絡が全極型モデルで表現できると仮定すると,理論的には線形予測分析 (LPC) を用いて,線形周波数領域でスペクトル包絡を推定することができる.しかし,実際には,調波構造のピークのみがスペクトル包絡からの信頼できるサンプルであるとみなせるため,スペクトル包絡推定に全周波数帯域を利用することは適切ではない.この問題の解決法のひとつに離散全極型モデルが知られているが,多重音に対して適用することはできなかった.本研究では,離散全極型モデルを LPC の多重音拡張である複合自己回帰モデルの枠組みに組み入れることで,調波構造が複数重畳した音響信号を扱うことができる無限重畳離散全極型モデルを提案する.本モデルは,人間の聴覚特性に則した対数周波数領域で定式化されるノンパラメトリックベイズモデルであり,適切な個数のスペクトル包絡とそこからサンプルされた適切な個数の調波構造を推定することができる.実験の結果,提案手法の有効性を確認した.
著者
井手上慶 河村慎二 津邑公暁
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. 計算機アーキテクチャ研究会報告
巻号頁・発行日
vol.2014, no.1, pp.1-9, 2014-09-29

スマートフォンなどの普及に伴い,ガベージコレクション (GC) の性能が与える影響範囲が拡大している.一方,GC は主にアルゴリズム面で改良がなされてきたが,GC 実行時のレスポンス低下など,重要な問題の根本的解決には未だ至っていない.これに対し我々は,ハードウェア支援により GC を高速化する手法をこれまでにいくつか提案しており,その有用性について検討してきた.本稿では,まず我々が提案している二つの手法を取り上げ,それぞれ評価結果を示すとともにその有用性について述べる.これらの手法はいずれも,GC における基本的な構成処理要素に着目し,その高速化を図るものである.その後,現在我々が取り組んでいるハードウェア支援を用いたコンパクション機能について述べる.コンパクション機能を実装している既存の GC アルゴリズムはいくつか存在しているが,オブジェクトの移動時には当該オブジェクトを参照しているポインタを張り替える必要があり,これは一般にコストが比較的大きい.そこで本手法では,オブジェクト間の参照関係を記憶する専用の表をプロセッサに追加し,これを利用することで高速なポインタの書き換え,およびコンパクション機能の実現を目指す.そして最後に,この手法により期待される効果について考察する.
著者
西村章宏 土方嘉徳 三輪祥太郎 西田正吾
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告情報基礎とアクセス技術(IFAT)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.14, pp.1-6, 2014-07-25

マイクロブログサービスの 1 つである Twitter では,その時々で話題になる政治家や芸能人など有名人に関する一般ユーザの発言を豊富に得ることができる.さらに近年では,SNS から得られる評判情報をマーケティングやその他サービスに応用しようという試みが活発に行われている.そこで本研究では,Twitter から得られる評判情報のうち,一般ユーザの有名人に関する発言とその発言を行ったユーザのプロフィール等に着目する.これらの各情報源から得られるデータに対し,抽出の妨げとなるノイズへの前処理を経て,一般ユーザの観点が反映された特徴量であるトピックの抽出を行う.そして得られたトピックの分布を元に人物の類似関係を獲得し,それを基に各人物を平面上に配置することで,人物関係の可視化を行う.この可視化結果に対しては使用した情報源毎に妥当性と発見性に着目して特徴の分析を行う.
著者
梶 克彦 平田 圭二 長尾 確
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.127, pp.33-38, 2004-12-12
被引用文献数
7

現在、プレイリスト(楽曲推薦リスト)の生成技術は、ユーザを楽曲配信サービスや楽曲の購入サイトに誘導することができるため音楽業界の活性化につながる有力な手段の一つと考えられている。本研究では、楽曲の類似度、ユーザ嗜好の類似度を判別するために、歌詞とアノテーションを利用し、視聴時のユーザの状況にあわせたプレイリストを生成する仕組みを提案する。またプレイリスト中の気に入った曲などをフィードバックすることにより、インタラクティブに好みのプレイリストを作成することができる。このようなプレイリスト作成のやり取りから、ユーザごとに嗜好、状況に関する特徴量を変化させ、個々のユーザの嗜好、かつそのユーザが置かれた状況に合った選曲ができるように適応していくことができる。Automatic playlist generation is one of the powerful intermediaries for music providing services. Many people can be promoted to music contents. In this paper, we propose a playlist generation scheme. Be using lyrics and annotation, musical similarity and user's similarity is found. Then it generates a plylist according to a user's preference and situation. Additionally, the user can provide a feedback such as a favorite music and whether the playlist is recommendable. The system transform the characteristic values concerning the user's preference and situation so that it adapts to each user.
著者
布目光生 黒田由加 水岡良彰 森田眞弘
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告音声言語情報処理(SLP)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.23, pp.1-6, 2013-12-12

弱視者や識字障碍者でも読みやすいとされる DAISY コンテンツは,電子書籍端末や音声合成技術の普及により教科書などのコンテンツで徐々に広がることが期待されている.しかし,そのコンテンツ作成作業は,ボランティアベースで多くの時間がかかっていたため,エンドユーザが必要とする図書を,簡単に手早く作成することが困難だった.本報告では,こうした課題に対応するための音訳支援システムを提案する.音声合成技術の活用と,テキスト解析誤りに依存する読みやアクセント誤りの修正手段を Web アプリとして提供することで,視覚・識字障碍者のための朗読コンテンツを,音訳ボランティアや保護者・教職員などの作業者が簡単に作成できる環境の提供を目指す.また,従来の作業手順と比較し,本提案システムを活用した場合の作業期間に関する予備評価の結果についても述べる.DAISY content is expected to gradually gain popularity among the visually impaired according to the prevalence of e-book reading devices and the development of text-to-speech technology. However, the development of DAISY-formatted e-books, which is undertaken by volunteers, is a time-consuming process, making it difficult to meet the needs of end users. In this report, we propose a content transliteration system that can convert plain text to DAISY content including formatted HTML and audio data via automatic text-to-speech technology. Furthermore, using the GUI of the proposed system, users can correct text and accent information by inputting "ruby-type" data. Through this functionality, we aim to target support from transliterate workers such as volunteers, teachers, and parents to make and edit contents easily and quickly for the people with visually impaired. Finally, we present the results of a preliminary evaluation using the proposed method in order to compare it with the conventional method.
著者
須賀 圭一 山原 幹雄 中田 尚 中島 康彦
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.83, pp.17-22, 2007-08-03
被引用文献数
2

近年,携帯情報機器に対しても高度なマルチメディア処理が要求されてきており,性能向上のために専用プロセッサが搭載されている.しかし,複数プロセッサの搭載は消費電力の増大を招くため,組み込み機器として用いる場合は問題になる.そこで我々は,既存のマルチスレッド実行を拡張して,複数アーキテクチャを同時実行する OROCHI プロセッサを提案している.ただし,本プロセッサを厳密に性能評価するためには OS の搭載が必要であり,入出力や主記憶など周辺機能を装備しなければならない.本論文では,異種命令セットを同時実行するプロセッサを想定し,OSが稼働する実験環境構築のために必要な検討課題と解決策について報告する. また,予備的評価として,クロックアキュレートなシミュレータを用いて OS を動作させ,ソフトウェア割り込みの処理形態に応じた挙動について評価を行った.Recently, mobile devices and embedded equipments are required to execute multimedia programs which have much IPL. Equipped with application specific processors, high performance can be achieved. However, this solution leads to power consumption problem. Thus we proposed a heterogeneous SMT processor OROCHI, which can support multiple instruction sets simultaneity. To estimate the processor performance under working OS code, we developed the experimental circumstance which has the peripheral, I/O and main memory.In this paper, we discuss the OS environment for an SMT processor executable with multiple instruction sets. As a consequence, we estimate cache performance under working OS code using clock accurate simulator.
著者
岩崎 陽一 白柳 龍一 中村 京子
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告人文科学とコンピュータ(CH)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.5, pp.1-4, 2014-10-11

放送局の保有するラジオ番組の録音には,音楽史を知るための貴重な資料が含まれているにも関わらず,わが国ではそのほとんどが一般には公開されていない.本稿は,NHK アーカイブスの放送音源の一部をデジタル配信および高品位 CD で提供する,NHK エンタープライズとナクソスの共同事業を紹介する.そのなかで,人気ではなく資料価値を重視した場合のデジタル配信の優位性を明らかにし,また実演家の許諾取得に伴う法的および 「道義的」 課題とを論じる.Each broadcasting station has broadcast archives, which contain audio recordings that may be valuable materials for research in music history. Nevertheless, in our country, most of such archives are not available to the third party people. This paper introduces the joint projects of NHK Enterprises and Naxos for distributing a part of NHK radio broadcast archive digitally and physically. We will focus on the advantage of digital distribution as a means for spreading valuable but less popular materials, and legal and moral issues concerning rights handling.