著者
斉藤 春夫 三浦 周 小原 徳昭 岡本 英二 山本 伸一 森川 栄久 小園 晋一 若菜 弘充
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.84, no.4, pp.731-740, 2001-04-01

通信放送技術衛星(COMETS)は, 平成10年2月21日に打ち上げられたが, H-IIロケット第2段エンジンの故障により静止トランスファー軌道への投入に失敗した.その後, アポジエンジンによる7回の軌道変更により, 遠地点高度17,711km, 近地点高度473kmの2日9周回の準回帰軌道にのせることに成功し, 1日当り最長90分間の通信実験が行えることになった.平成10年8月末から通信・放送実験が開始され, 平成11年1月に定常運用段階を終了し, 2月からは後期利用段階に移行した.しかし, 残念ながら平成11年8月6日に, 予定された運用期間のほぼ半分でCOMETSの運用は終了した.本論文では, 軌道変更直後に衛星のテレメトリのみを用いて実施された軌道上における移動体衛星通信用機器(MCE)の初期機能確認試験と, その後, 地球局から実際に通波して行われた軌道上機能評価実験の結果ついて述べる.周回化により懸念されていた放射線の影響による特性の劣化はごく一部に限られ, ほとんどのMCE機器が軌道上においてもほぼ良好に機能していることが判明した.
著者
杉田 馨 中洲 俊信 山内 康晋
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MVE, マルチメディア・仮想環境基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.466, pp.41-44, 2010-03-05

博物館や美術館などミュージアムの展示支援を目的とした実空間拡張型展示ガイドシステムを提案する.展示室に設置された展示物を起点とし,鑑賞者の興味に応じて対話的に解説を提示することや,展示室の空間的な制約に縛られずその場でさまざまな関連情報を提示することで,鑑賞者に新たな発見を促すことが本システムの狙いである.本システムはタッチパネル付ディスプレイと筐体背面にビデオカメラを備え,ビデオカメラで撮影した展示室の実景をディスプレイに表示するとともに,鑑賞者の操作に応じて実景内に含まれる展示物に関連するミュージアムの収蔵品や解説情報を実景映像に重畳して表示する.展示システムの設置位置から展示室のほぼ全ての方向の展示物をガイド対象とできるように,鉛直軸を中心に手動で筐体の向きを変更できる.本システムは東芝科学館の歴史的な家電製品を展示している展示室に試験的に設置した.
著者
菱井 利祐 井原 惇行 徳永 京一 石原 博幸 岸田 俊二 永沼 誠昭
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. R, 信頼性
巻号頁・発行日
vol.96, no.147, pp.19-24, 1996-07-12

4級塩アルミ電解コンデンサはその低インピーダンス・長寿命の特性から広範囲な分野で使われてきた。しかし、4級塩特有の液漏れメカニズムが存在することが明らかになり、各コンデンサメーカーでは様々な対策が講じられてきた。今回、各メーカーの対策品がほぼ出揃った段階となったため、各メーカーの製品について液漏れに対する信頼性評価、各種電気特性及びその経時安定性評価を行った。その結果、一部の製品に関しては良好な試験結果を得た。この結果から実使用状態における耐液漏れ寿命時間について考察し、少なくとも5.6×10^4Hの寿命が期待できるものと推定した。
著者
小山 裕貴 畑 淳 吉田 孝博 増井 典明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EA, 応用音響 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.367, pp.77-82, 2011-01-13

音響機器の特性や音質評価は,開発現場と実使用環境では一致しないことがあり,問題となることがある.また,機器に供給する電源の特性の違いにより,人が知覚する音質や音像が異なる現象が生ずるといわれている.よって,このような現象の測定や解析,発生メカニズムの解明が必要である.本研究では,電源環境がDAIのジッタに及ぼす影響ならびにディジタル音響機器の電源投入からの時間経過がDAIのジッタに及ぼす影響を調査した.その結果,電源の高調波電圧により,TIEの標準偏差では差が2.3%生じ,電源環境がジッタ特性に影響を与えていることが確認できた.また,ディジタル音響機器の通電時間により,RMS値やディジタル音声信号の波形が変化することも確認できた.
著者
曽根 広哲 吉田 泰明 平手 勇宇 山名 早人
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.94, pp.89-94, 2008-06-12
被引用文献数
1

検索エンジンはインターネットで情報を探す手段として欠くことができない.また,ユーザは検索エンジンの検索結果から得られる情報はテレビからの情報とほぼ同等の信頼性があると認知しているという調査報告がある.すなわち,検索エンジンのランキングを調べることによって,あるサイトが社会に与える影響力の一端を把握できると考えられる.本稿では,今やインターネット上の百科事典の代名詞ともなったウィキペディアが社会に与える影響力を調べることを目的として,日本語版ウィキペディアの検索エンジンにおけるランキング解析を行った.実験の結果,全記事のうち,上位10位以内にランキングされた記事はYahoo! JAPANとGoogleでは約9割,MSNでは約7割となった.また,Yahoo! JAPAN,MSNともに,ウィキペディアの新規記事は「はてなダイアリーキーワード」と比べ,最初から上位10位以内に現れる傾向が強く,上位のランキングを維持する傾向があることが分かった.以上のようにウィキペディアの影響力は大きいものであるということが実験結果から確認できた.
著者
中根 愛 中谷 桃子 大野 健彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HCS, ヒューマンコミュニケーション基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.33, pp.11-16, 2010-05-06

ICT機器の普及が進み,家庭内のネットワークに接続される機器間の配線・設定はますます複雑化してきている.これに伴い,ICT機器の配線・設定作業に対してネガティブな心理状態に陥るユーザが少なくない.本研究ではICT機器の配線・設定作業時に生じるネガティブな心理状態の生起プロセスを,インタビュー調査によって明らかにする.またこれを元にして,ネガティブな心理状態生起を抑制するための指針を構築する.
著者
荒木 哲郎 池原 悟 塚原 信幸 小松 康則 田川 崇史 橋本 憲久
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.83, no.6, pp.1516-1528, 2000-06-25
被引用文献数
10

漢字OCR, ワープロ, 音声認識装置などの入力装置を使用して計算機に入力された日本語文には, 通常, 誤字, 脱落・誤挿入文字などの誤りが含まれるため, これらの誤りを自動的に検出し訂正する技術が期待されている.本論文では, 誤字誤り, 誤挿入誤り, 及び脱落誤り(いずれも誤りは1文字以上)を対象に, m重マルコフ連鎖モデルを用いて誤りの種別を識別し, 誤り文字列を訂正する方法を提案する.また, 本手法の効果を検証するため, 2重マルコフ連鎖モデルを利用して, 漢字仮名交じり表記された新聞記事文(1, 200文)を対象に, それらが誤字, 脱落文字及び誤挿入文字を含む場合(いずれも誤りは, 擬似的に生成された1文字または2文字)について, 誤り種別及び文内の誤り位置と文字数を自動的に検出, 並びに訂正する実験を行った.その結果, オープンデータの誤字, 誤挿入, 脱落の誤りを, 単に, 誤りとして検出(これらの3種のいずれかの誤りとして検出)する精度は, それぞれ, 1文字の誤字または誤挿入誤りの場合は適合率77.2%, 再現率95.0%, 2文字の誤字または誤挿入誤りの場合は適合率79.3%, 再現率99.5%, また, 脱落誤りの場合は適合率61.3%, 再現率36.5%の精度で検出できることがわかった.更に, 誤りの種別や誤り長を含めた検出精度は, 誤字または誤挿入の1文字誤りの場合は, 検出が適合率60.1%, 再現率73.0%で行うことができ, 更に訂正は誤字の場合が適合率41.2%, 再現率50.0%, また誤挿入の場合が適合率41.9%再現率52.0%の精度で自動的にできることがわかった.これと比べて, 脱落誤りの検出と訂正は容易ではないが, 検出が適合率54.6%, 再現率32.5%, また訂正が1文字の場合には適合率29.4%, 再現率17.5%の精度で行えることがわかった.オープンデータとクローズドデータによる適合率, 再現率の差は, 標本量の増加に伴い, 新聞記事文5年分の付近で, かなり接近してくることがわかった.
著者
河野 真也 相馬 孝行 植野 美穂 後藤 貴裕 中村 直人 宮寺 庸造 横山 節雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ET, 教育工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.98, no.433, pp.67-74, 1998-11-20
被引用文献数
3

学習指導案にはこれまで慣習的な形式しかなく, 指導者によって形式や着目する点が異なるものであった.そのため, 初めて学習指導案を作成する教育実習生徒にとって, 指導案の作成は極めて困難であり, また有効な授業設計のデータとなり得る指導案のデータベース化も困難になっている.そこで本研究では, 学習指導案を作成する際の文法を定めることにより指導案を形式化し, それに基づいた学習指導案作成支援システムを設計した.本システムを用いて作成された指導案は文法的に正しく(健全性), さらに, 任意の正しい指導案は本文法により作成することができる(完全性).また作成しながらデータベース化を行うので一度作成した指導案の再利用も可能となる(汎用性).
著者
矢野 健二 小林 直彦 堀田 順平 清水 明生 松崎 泰裕 谷沢 智史 山下 静雨 吉田 幸二 鈴木 雅人 市村 洋
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ET, 教育工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.703, pp.1-5, 2005-02-26

インターネットの普及と相俟って遠隔教育は, 企業社員教育や学校教育の場において, 試用から実用の段階に入ろうとしている. これらの教育の対象は論理・科学技術分野である. 学問・教育には, 論理や科学分野以外に芸術・体育・技能等の分野がある. この分野の遠隔教育は現在実用期に入ろうとしている論理・科学分野の次にくる次世代遠隔教育と言えよう. これらでは感覚的な事柄が重要視されるため, その遠隔教育においては, 質問事項のメモ及びその意思伝達が困難である. そこで筆者は, 質問事項のメモ及びその意思伝達を容易にするために, 疑問や質問を思いついたときの前後の環境を保存し, 学習者のコンピュータにアイコン画像を表示, 後にその環境を復元・共有し, 質問・疑問の連想を支援するシステムの設計と実装方法を報告する.
著者
吉田 紘二郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SSS, 安全性 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.279, pp.9-12, 2002-08-20
参考文献数
4

航空機や医療現場などでいち早く問題化していEMC(Electromagnetic Compatibility)について、高度な電子機器の搭載が進みつつある船舶現場での実情を調べた。航行中の船舶が外部からの電界にさらされるのは陸岸に接近した場合であり、例として大阪湾岸の電磁波環境を調査した結果、搭載電気機器に求められる耐性限度に迫る電磁界の存在を確認した。また船内においても、特に生産年度の古い機器などに、IECの規定を越える電磁輻射が測定された。特に、金属壁に囲まれた船室内では、各機器から漏れる電磁波が反射し重畳する結果、思わぬ電界強度分布を示すことも確認した。
著者
船木 麻由 西垣 桂 齊藤 明紀
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SITE, 技術と社会・倫理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.459, pp.167-172, 2009-02-26
参考文献数
5

PC端末を並べた教室で全端末を常時稼働させると電力を無駄に消費する.逆に原則電源オフで使うときだけ利用者が電源を投入するという方式だとOS起動の待ち時間が生じ,利便性が低下する.そこで,端末室の利用状況に応じて自動的に端末の稼働台数を増減させるシステムを開発した.管理サーバは端末状態を監視し,起動済みの空き端末の台数が指定数を保つように,余分な空き端末を停止したり,不足分の端末を起動したりする.端末室の講義使用時や昼休みなど利用者が多く来室することがあらかじめ分かっている場合には,その数分前に一時的に指定数を増やすことにより,過渡的な新規来室者増加にも対応できる.
著者
小吹 健太郎 守屋 宣孝 上田 博唯
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MVE, マルチメディア・仮想環境基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.35, pp.21-26, 2010-05-07
被引用文献数
4

本稿では対話ロボットの目を逸らす仕草が、対話者に与える印象についての実験結果について述べる。本研究の目的は、人が対話ロボットに感じる不安感をなくす事である。実験は目を逸らす方向と目を逸らす時間の2種類のパラメータを選び、それぞれを変化させて印象評価を行った。その方法と結果を示す。不安感を最も低減できるのは下に0.2秒目を逸らす場合であるという結果となることなどが明らかとなった。
著者
高橋 直人
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ET, 教育工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.507, pp.17-21, 2007-01-19
被引用文献数
1

少子化が進む現代、出生率は低下し続けているが、逆に子供一人にかける親の期待と関心は増え続けている。しかし一方で、核家族化、地域社会の崩壊による"お母さんたち"の孤立化は、児童虐待などの新たな問題を引き起こしている。本研究における調査の過程においても、幼い子供を持つ母親たちからは、初めての育児のなかで、常に不安と焦りと孤独を感じているという声は非常に多く聞かれた。本研究では孤立化する母親たちを繋ぐネットワークとしてSNSを構築し1年間にわたって実際に運用をしながら、子育てに悩む母親達の交流を通じて子供たちの健全な育成にITシステムの側からアプローチを試みたものである。
著者
大平 哲也 服部 司 佐藤 真人
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. DE, データ工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.293, pp.9-14, 2009-11-12

サイバーエージェントが展開する「Ameba」は650万人の会員ユーザーを集めるブログを中心とした国内最大規模のインターネットサービスであるが、ユーザー数に比例して日々蓄積されるデータがブログ記事のテキストデータで30GB/月(2009/10月現在)を超える膨大なものになっている一方、社内でのデータ解析やその再利用が遅れていた。対策の一環として、2009年1月に研究開発を行う組織(インキュベーションラボラトリー)を新設し、社内に蓄えられた膨大なデータの解析と、解析結果を基にしたコンセプトアプリの開発ならびに現場への応用を進めている。その一例として、ブログサービス内でのトレンドワードの解析を実施している「Keyword Tracker」と、汎用的なspamフィルタリングプラットフォームとして構築を進めている「spamフィルターAPI」について、採用している技術的なアプローチの紹介とデータを解析してみて得られた結果ならびに知見の報告を行う。
著者
入江 一樹 山下 洋史 荒川 豊 岡本 聡 山中 直明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PN, フォトニックネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.233, pp.25-30, 2008-10-02

本論文では,大容量コンテンツ配信におけるコンテンツサーバ側の負荷軽減を目的とし,コンテンツの一部を,すでにダウンロード済みのコンテンツ保持ノード(協調ノード)から受信し,それらをコンテンツを要求するノード(要求ノード)間において協調し,互いにコンテンツの残りの部分を補完しあう二段階配信方式を提案する.提案方式を用いることによりコンテンツサーバの配信負荷を軽減すると共に,複数の協調ノードおよび要求ノードのアップロード帯域を有効利用することによりダウンロード速度向上を実現可能である.シミュレーションにより特性評価を行い,ダウンロード時間の低減の効果を明らかにした.
著者
馬場口 登 栄藤 稔 佐藤 真一 安達 淳 阿久津 明人 有木 康雄 越後 富夫 柴田 正啓 全 柄東 中村 裕一 美濃 導彦 松山 隆司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.155, pp.69-74, 2002-06-20
被引用文献数
35

電子情報通信学会パターン認識・メディア理解研究会の下で検討,作成した映像処理評価用映像データベース(VDB:Video Data Base)について述べる.このデータベースは編集効果(シーン切替),カメラワーク,テロップの出現,音声品質という点においてテレビ放送に匹敵する品質の素材映像をもち,ニュース,ドラマ,ドキュメンタリー,情報番組(料理,観光)などのジャンルの映像からなる.また,ショット境界やシナリオ情報をMPEG7形式のメタデータとして付与している.各種の映像処理アルゴリズムを比較評価するためのベンチマークデータとして利用されることが期待される.