著者
岡部 弘高
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2021-04-01

カーボンフリー社会を実現するために蓄電池は重要であり、蓄電池の材料としてリチウムを確保することが必要である。陸産リチウム資源は南米に偏っており、日本が将来的にリチウムを確保できるかは不透明である。そこで、海水中に稀薄ながら大量に溶存しているリチウムを回収する新規吸着剤を開発し、リチウム資源の確保手段を確立することが本研究の目標である。
著者
大嶋 孝志 小池 隆司 笹野 裕介 高須 清誠 安田 誠 山口 潤一郎 菅 誠治 跡部 真人 外輪 健一郎 滝澤 忍 椴山 儀恵 矢島 知子 宮尾 知幸 小島 諒介 武田 和宏 松原 誠二郎 矢田 陽
出版者
九州大学
雑誌
学術変革領域研究(A)
巻号頁・発行日
2021-09-10

本領域研究は、有機合成に破壊的イノベーションを起こすデジタル有機合成(実験科学と情報科学の異分野融合)の基盤を世界に先んじて築くことを目的とし、有機合成の多様性に対応した独自のデジタル化プラットフォーム(PF)を構築する。A01班、A02班、A03班の3班体制で、人工知能(AI)を徹底活用した自動化法(分子構造自動設計、合成経路自動探索、反応条件自動最適化、バッチ→フロー自動変換、自律的自動合成システム)でムダを徹底排除し、革新反応・革新分子創出の超加速化を実現するとともに、自動化法開発の基盤となる、有機化学の機械学習に最適化した本領域独自のデータベース(DB)の構築を行う。
著者
施 光恒 柴山 桂太 佐藤 慶治
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2023-04-01

本研究では、ポスト・グローバル化時代の日本の国づくりの指針となる「新しい日本型」の社会構想を、政治学や経済学、文化研究の観点から描き出すことを目指す。その際、各国で1990年代以降に本格化し現在まで続く新自由主義に基づくグローバル化の推進の結果として構築されてきた国際政治経済秩序の変革を行う必要がある。そうしなければ各国の政策的自律性が発揮できないからである。それゆえ、本研究では、各国型の国づくりを許容するポスト・グローバル化の多元的国際秩序のあり方を検討し、そこにおける新しい日本型システムをどう描き出すか考察していく。
著者
高橋 勤
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2022-06-30

石牟礼道子の『苦海浄土』三部作は 60年代から水俣病問題を追跡し小説化した長大な作品だが、この作品は公害病を記録したルポルタージュであるばかりではなく、近代産業によってもたらされた権力と差別の構図、そして不知火海の自然と精神風土に対して加えられた暴虐を浮き彫りにする。そうした日本近代をめぐる石牟礼の思想性について考察し、語りの象徴性を検証するのが本研究課題の全体的なねらいである。環境人文学とは、環境教育を含めて、人文学の観点から環境問題を考察する知の枠組みであり、日本における環境破壊の捉え方、意見の対立、その文学的表象を検証する。
著者
笹木 圭子 PAWAR RADHESHYAM
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2017-11-10

有機金属構造体(MOF)は、中心金属とリンカーの組み合わせによって、高分子のような連続構造をとり、比表面積が高く、安定なだけではなく、中心金属やリンカーの特性により、さまざまな機能を付与でき、吸着材や触媒など機能性化学物質として、近年最も注目されている。なかでもガスフィルターとしての用途が最も実用化に近いといわれ、とくにCO2吸着剤としての開発研究が盛んである。しかし、本研究では、あまり研究例のない水溶液溶媒でのMOFの活用、とくに有害水溶性物質の光分解、光触媒機能による還元、陰イオンの吸着除去を目指して、水溶液中でのMOF合成法を開発および最適化し、合成したMOFの特性化、応用までを行った。ソルボサーマル法に代わる水溶媒での合成法の開発では、超音波法、マイクロ波法を試み、モジュレーターおよびリンカーの選択、モジュレーター量、、周波数、官能基の導入など300を超える実験条件をこなし、アプリケーションにおける反応効率の向上をめざした。さらに、MOFと粘土鉱物により複合体を合成し、可視光域で水溶液中での色素物質の分解、Cr(VI)の還元に機能する光触媒効率を評価した。本申請課題の中心であるMOF/粘土鉱物複合体による色素分子ローダミンBの光触媒分解では、MOFとしてZr6O4(OH)4(ABDC)6 (ABDC = 2-aminobenzene-1,4-dicarboxylic acid)を合成し、粘土として針状結晶のセピオライトを選び、複合材料の最適混合比を認めた。合成MOFは2.83 eV のバンドギャップをもつ可視光触媒で、光励起電子はセピオライトの導電帯に移り、スーパーオキシドラジカルを生成し、色素分子を酸化分解する機構を提唱した。このように、粘土鉱物は単なる支持体ではなく、光触媒反応の電子輸送にかかわっていることを示した。成果は国際学術誌4編にまとめられた。
著者
小池 裕子 松石 隆 西田 伸
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

本研究では、鯨類の特に座礁集団および個体に着目し、座礁の原因究明の一つの手段として、ウィルス感染の有無とその動向のモニタリング、および検出されたウィルスの系統解析をおこない、宿主-ウィルスの共進化関係の有無と、免疫遺伝子MHCとの相互関係について探ることを目的としてきた。本年度も引き続き日本各地において座礁・混獲された鯨類より試料の収集をおこない、10鯨種・47個体の試料を得た。これは北海道ストランディングネットワーク・北海道大学・国立科学博物館・大村湾スナメリネットワーク(仮称)・宮崎くじら研究会との連携によるものであり、本プロジェクトもこれらネットワークの構築・運営の一部に携わっている。これまでに蓄積された試料について、DNA診断によるウィルス検出をおこなったところ、4鯨種・4個体よりヘルペスウィルスが検出された。本年度は特にこれらの系統解析と病理学的所見との関連性について解析を進めた。系統解析の結果、カズハゴンドウの鼻腔粘膜およびオキゴンドウの肺より検出されたウィルスは、それぞれ新たな系統のアルファヘルペスで、オウギハクジラおよびマッコウクジラのリンパ節からのものは、同じく新たな系統のガンマヘルペスと同定された。鯨類から検出されたアルファヘルペスウィルスは単一のクレードを形成し、種1分類群特異的な進化が示唆された。一方で、ガンマヘルペスウイルスの鯨類クレードは大きく2つに分かれており、これらウィルスの起源が複数あることを示した。またアルファヘルペスウィルスは主に呼吸器系統から、先行研究におけるガンマヘルペスウイルスは主に生殖器から、そして本研究によるガンマヘルペスウィルスはリンパ節から検出され、これらの系統のウィルスがそれぞれ異なる組織をターゲットとし、潜伏感染をおこなっていることが示唆された.なおこれらの結果は学術誌に投稿中である。
著者
竹田 雄一郎
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

高次算術的リーマン・ロッホの定理の定式化とその証明に向けて,研究を行った.具体的には,iterated doubleと呼ばれる既約でない多様体上の計量つきベクトル束に付随する高次解析的トーションの理論を構成することを試みた.そして証明を完成させるために必要な高次解析的トーションに関する十分条件を見つけた.また筆者は,t-コア分割と呼ばれる特別な性質をもつ自然数の分割について研究を行った.そして,t-コア分割に関係する興味深い2次形式を発見して,その2次形式やそれに関連する有限体上の幾何を用いて,t-コア分割の分割数の間の関係式を導出するための,組み合わせ論的な手法を見出した.
著者
山村 ひろみ 渡邊 淳也 GIBO LUCILA 鈴木 信五 藤田 健 黒沢 直俊 岸 彩子 小熊 和郎 大森 洋子
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は現代ロマンス諸語のうち代表的な、フランス語、イタリア語、スペイン語、ポルトガルポルトガル語、ブラジルポルトガル語、ルーマニア語のテンス・アスペクト体系の対照研究である。これら6つの言語のテンス・アスペクト体系を記述的に考察するために、本研究はまずAgatha ChristieのThe Thirteen Problemsの各言語訳と原本のパラレルコーパスを作成した。次に、同コーパスを用いて、①各言語における「大過去」の記述および分析し、従来指摘されることのなかったロマンス諸語間のテンス・アスペクト体系の異同を具体的に示すと同時に、②各言語に特有のテンス・アスペクト現象の再検討を行った。
著者
縫田 光司 山下 剛
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

現代の暗号分野では、数値を秘匿しつつ任意の演算を可能とする「完全準同型暗号」の研究が進み、プライバシー保護やビッグデータ解析など応用面での期待も高まっている。本研究代表者は、同技術の効率的な構成を可能とする新原理を既に提案しているものの、その実現に必要な諸条件を満たす代数構造の具体的構成にまだ成功していない。本研究ではこの問題に対して、群論、代数学、組合せ論など数学の観点および暗号理論的な安全性解析という両面から解決に取り組む。
著者
小野 太雅
出版者
九州大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2021-04-01

現在、インプラント治療で用いられる歯根膜を持たないインプラント体は、歯根膜由来のバリア機構や固有感覚が存在しないため、細菌感染を生じやすく、過度な咬合圧の原因となることもある。これらの欠点を補うため、歯根膜とインプラント体との複合体である「バイオハイブリッドインプラント(BioHI)」の開発が進められている。申請者は既に、バイオ3Dプリンタを応用し、未分化なヒト歯根膜由来細胞の細胞塊を三次元的に積層した歯根膜様のチューブ型構造体と、インプラント体との複合体の作製に成功している。そこで本研究では、この複合体をラットの顎骨内に移植することで、BioHIとして機能するかを検証することを目的とした。
著者
金 美廷
出版者
九州大学
雑誌
Comparatio (ISSN:13474286)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.71-82, 2001

In this paper, I discuss the characteristics of, and differences between Kawabata's literary work entitled "The Izu danser", with its "opened first person", and other Japanese "I-novels", based on "I". In particular, I compare and analyze the two types of novels focussing on their unusual points of view and objectification of "I". In conclusion, the characteristic of the "opened I" in "The Izu danser" is the change of "I" which can reach self-liberation (mental growth) through self-reflection and self-impurity experienced by objectification of "I".
著者
中立 悠紀
出版者
九州大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2021-03-01

本研究は、1952年のサンフランシスコ講和条約発効後における、戦争犯罪者の釈放過程を解明する。特に、①当時、日本国内で盛り上がっていた戦犯釈放運動が、関係国との外交交渉に与えた影響を分析する。また②主にアメリカとの懸案事項であった再軍備・MSA協定の締結に、戦犯釈放問題がどのように関わっていたのかも考察する。この二つの分析は、日本、アメリカ、イギリス、オーストラリアなどの外交史料などを用いて行う。
著者
木下 直子
出版者
九州大学
巻号頁・発行日
2013

元資料の権利情報 : Fulltext available.
著者
清水 靖久
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

この研究では、丸山真男の政治思想を戦後民主主義との関連で思想史的に解明してきた。丸山は、戦後民主主義は虚妄だったと論じられるようになった1964年、「大日本帝国の「実在」よりも戦後民主主義の「虚妄」の方に賭ける」と記した。丸山にとって大日本帝国は良心の自由を侵す超国家主義の体制だったが、それからの歴史的転換において人民主権の思想を選んでから、たえず民主化する「永久革命」として民主主義を説いてきた。戦後民主主義に「虚妄」の面があったことはよく知りながら、民主主義を日本社会に根づかせるための思想的営為を続けたが、大日本帝国を経験していない若い世代には伝わりにくかったことを明らかにした。