著者
高 哲男
出版者
九州大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

『国富論』第1・2編を「経済発展の理論」として統一的かつ内在的に再構成するという当初の目的は、第2編第2章の長大な信用制度論の実証的・理論再検討に十分手が届かなかった点で、完全には遂行できなっかた。経済発展の理論における「貨幣」の位置や意義の解明については、今後の課題として残ったという事である。しかし、そのほかの目標はほぼ満足しうるほどに達成したと言ってよく、予期していなかった新事実の発見も含めてその要点を箇条書きすれば、以下のとおりである。(1)『法学講義A』でもすでに、『国富論』と同様に、市場社会には必ず「自然的均衡」があるという考え方はあったが、「価格」はまだ財の数量と単純に反比例すると捉えられており、労働価値説は未確立であった。(2)スミス労働価値説は、その基礎にある価値尺度論が「時と所」の異同の組み合わせにおうじてことなる4つの理論次元をもつものとして構想されていた。すなわち「安楽と自由の犠牲」である「労働」は「時と所」を問わずつねに「等しい価値」をもつが、貨幣が正確な価値尺度でありうるのは「時と所」が同じ場合だけであり、異なるときには「穀物」が「近似的な」それであるから、経済成長の理論的解明は労働と穀物を基準に組み立てらるべきであると。(3)スミスは経済成長の推進力を分業の発展にみたが、発展のためのファンドの大きさは「維持しうる労働量」と「維持しえた労働量」との差にあるから、したがって労働の投入産出のエネルギー転換効率がもっとも高い穀物生産の効率性が、経済発展=分業の進展の程度を究極的に規定していると説くことになった。換言すれば、「維持しうる労働量」を実物的に表す「総需要」は、市場での交換・取引をつうじて「維持しえた労働量」内部の社会的配分替え(=分業構造の変化)を引き起こすが、この配分替えの基準が、いわゆる生産3要素の自然率つまり「自然的均衡」に他ならないという主張である。
著者
佐々木 正徳
出版者
九州大学
雑誌
飛梅論集 : 九州大学大学院教育学コース院生論文集
巻号頁・発行日
vol.5, pp.175-195, 2005-03-18

The purpose of this paper is that I suggest a concept and analysis framework that is valid when doing an empirical research about "masculinities" in the men's movement organization. I was doing a fieldwork in the men's movement organization in Korea, so I wrote this paper to make the guideline of the research in the future. This paper takes the following composition. In chapter I, the overview of this paper is described. In chapter II, I explain that the research about concept of masculinities changes. In the recent, the research about masculinities became an area with deep relation with the gender studies, but it had already occurred from before the feminism movements. In chapter II, I try to explain the change of concept of the masculinities to the present from the time when masculinities was remarkable in the field of the science. Then, in to survey the research trend of the men's studies in Korea, I point out some problems and feature of men's studies in Korea. Finally, I consider about the concept of masculinities that it is valid when we are an empirical research about masculinities. In chapter III, I consider about the analysis framework that is valid when applying masculinities concept to fieldwork. I think that the men's movement organization in Korea has nature as the social movement organization. So, I pay attention to the way of cultural analysis of the social movement to become much utilized in the area of the social movement research. Then, I review about the effectivity of assuming that participant is an agency and to analyze a men's movement organization with the frame of the social movement as the culture in Korea. As the conclusion, I write down a view to the concrete research in the future in chapter IV. This discussion was written as the guideline to proceed with the concrete research. I don't know that the frame, which was shown here, can amend how much in future. However, this paper is the indispensable work to do an empirical research that focus on masculinities in Korea.
著者
岩熊 成卓 川越 明史
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

Y系超伝導線材は扁平なテープ形状であり、従来の低温超伝導多芯線・撚線導体で常套手段であった低交流損失化のための多芯化、大電流容量化のための撚線導体化の手法は適用できない。本研究では、独自の概念に基づき、Y系超伝導線材の低磁化・低交流損失化、大電流容量化を図り、線材・導体の基本的電磁特性の評価と解明を行って、低周波から高周波に至るあらゆる応用に適応しうるY系高温超伝導線材・導体・巻線の基本的構成法を提示した。
著者
京谷 啓徳
出版者
九州大学
雑誌
哲學年報 (ISSN:04928199)
巻号頁・発行日
vol.65, pp.91-118, 2006-03-01
著者
島谷 幸宏
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では,小水力発電の減少が生態系に与える影響を定量的に評価した。①加地川(取水率50%)において,減水による底生動物現存量,及び生物の群集構造への影響はなかった.加茂川(取水率78%)において,減水によってハビタットによっては減水区間にて底生動物個体量,及び分類群数が減少した。②減水により高流速地点が消失し,流速が速い,飛沫帯の発生するハビタットの減少,そしてそのようなハビタットを好む種の現存量低下につながる.③鳥類に着目すると,夏季に比べ,平常流量の少ない冬季において取水による減水の影響が大きくなる可能性がある.
著者
脇水 健次 西山 浩司
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

頻繁に干ばつ(渇水)が発生する北部九州に位置する九州大学では,1947年からドライアイスやヨウ化銀を用いた人工降雨実験を行っているが,これらの方法は効率が悪いことが知られている.そこで,1999年2月に新しい液体炭酸人工降雨法の実験が,福田矩彦ユタ大学名誉教授との共同で,北部九州玄界灘の冬季積雲に実施され,世界で初めて成功した.今回,数回の実験から,冬季積雲への液体炭酸撒布による地上への降水効果はかなり鮮明になった.そのうえ,冬季層雲への実験による地上への降水効果も鮮明になった(2013年12月26日).これらのことから,今後の液体炭酸人工降雨法の実用化の可能性がかなり高まったと考えられる.
著者
猪股 孟 猪俣 盂 (1992) 向野 利彦 STEPHENJ、RYA ヘライアン NARSINGADUPA ラオ NARSING Adupa Rao STEPHEN J.Ry NARSING A.Ra
出版者
九州大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1991

本研究は、日本人をはじめとして有色人種には多発するが、白色人種にはあまりみられないという人種差の大きな疾患であるフォークト・小柳・原田病について、その病因および発症機序を日米共同で研究し、本症の予防および治療法の確立に寄与することを目的としたものである。まず、アメリカ合衆国南カリフォルニア大学のRao教授が平成3年2月11日から同年3月20日までの38日間、九州大学眼科を訪問し、日本におけるフォークト・小柳・原田病患者の臨床像と病理組織像について共同研究を行った。日本人に多いもうひとつのぶどう膜炎であるベーチェット病についても、その患者の臨床症状と病理組織学的特徴について検討した。次いで、猪股孟が平成3年8月12日から31日までの20日間と平成3年10月8日から20日までの13日間、南カリフォルニア大学を訪問し、フォークト・小柳・原田病患者、ベーチェット患者、さらにエイズ患者の臨床像を観察して、日本におけるぶどう膜炎の臨床像と比較検討した。また、同時に南カリフォルニア大学眼科に収集されているぶどう膜炎患者の摘出眼球やエイズで死亡した患者の剖検眼球を病理組織学的に検討した。さらに、南カリフォルニア大学のRao教授が平成4年12月20日から平成5年1月2日までの13日間、九州大学眼科を訪問し、日本におけるフォークト・小柳・原田病患者の臨床像と病理組織像について共同研究を行った。同時に、フォークト・小柳・原田病の臨床および病理学的特徴について討論し、共同研究の結果をまとめた。この共同研究で下記の点を明らかにすることができた。1.フォークト・小柳・原田病の臨床像はわが国の患者およびアメリカ合衆国の患者(主としてアメリカ合衆国に移住したメキシコ人や東洋人)で著しい差はみられなかった。2.アメリカ合衆国ではエイズ患者に日和見感染としておこるサイトメガロウイルス網膜炎、トキソプラズマ網脈絡膜炎が多発していた。この種の網脈絡膜炎はわが国でも今後重要な問題となる疾患である。3.フォークト.小柳・原田病発症後数年して悪性腫瘍のために死亡した患者の眼球を剖検時に摘出し、病理組織学的および免疫組織学的に検討した。臨床的には夕焼け状眼底を示し、ぶどう膜の炎症は治っているかに見えたが、病理組織学的にはぶどう膜にリンパ球の浸潤を伴った炎症が残存していた。ぶどう膜のメラノサイトは著しくその数が減少していた。このことは、フォーク・小柳・原田病では、ぶどう膜メラノサイトが炎症の標的になっていることを示すものであり、本症における夕焼け状眼底の発生機序を解明する上で非常に重要な知見である。4.フォークト・小柳・原田病患者の皮膚白斑を生検して、免疫組織化学的に検討しぶどう膜おけるものとほぼ類似の炎症反応がおこっていることを証明した。5.べーチェット病患者眼球の病理組織学的な特徴として、初期には網膜血管炎を伴った眼内の炎症がおこり、末期には毛様体扁平部からの新生血管形成を伴った増殖性変化がみられることを明らかにした。6.実験動物としてラットを使用して、視細胞間結合蛋白Interphotoreceptor Binding Protein:IRBP)を構成するペプタイドの一部(R4)をぶどう膜炎誘発物質として用い、内因性ぶどう膜炎をおこすことができた。この実験ぶどう膜炎モデルを使ってぶどう膜炎でしばしば観察される角膜後面沈着物を免疫組織化学的に検討した。その結果、角膜内細胞面における細胞接着分子(Intercellular Andhesion Molecule-1:ICAM-1)の発見を証明することができた。7.今回の共同研究の結果を成書"Ocular Infection Immunity"(分担執筆)にまとめた。本書は現在印刷中で1993年中に出版社"MosbyYear Book"から発刊の予定である。
著者
劉 暁輝
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

リガンド未知の「オーファン核内受容体」に対して、トレーサーとする標準化学物質がないため受容体結合試験ができず、困難な研究課題となっている。本研究では、複数のヒト核内受容体について、表面プラズモン共鳴法(SPR)を利用した分子間相互作用解析装置Biacore T100を用いて低分子量化学物質と核内受容体の結合試験系を確立し、強く結合する化学物質を見出した。そして、放射標識体を用いた受容体結合試験系の構築にも成功し、これまでに全く知られていない化合物が受容体と非常に強く結合することが判明した。
著者
丸野 俊一 堀 憲一郎 生田 淳一
出版者
九州大学
雑誌
九州大学心理学研究 (ISSN:13453904)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.1-19, 2002-03-31
被引用文献数
5

The purpose of this study was twofold: (1) To investigate differences in strategies for scientific reasoning or verification between discussion groups where members share one naive theory (or explanation) for the differences of behaviors between two dogs and those where they do not, and (2) to identify and characterize the functions of metacognitive speeches (e.g., "Well...""Um...""Let see...""But...), which are covert or overt "uttcrance", observed under the reflective or critical thinking in action when subjects often try to clarify their own ideas and to examine evidence for or against their theory from a new perspective, and pose a question and try to give an alternative idea in evaluating other ideas or theories. To investigate college student's naive theories for the difference between the reactions of two dogs to a stranger, we asked them, in a preliminary study, to write down their possible explanation (s) for it. Based upon the explanations (or naive theories) which students gave in this preliminary study, the following 3 groups were formed: Condition A groups where group members commonly held one naivc theory to he true; Condition B groups where menbers commonly held one naive theory to be untrue, and finally, Condition C groups where all member held different theories from one another. One group consisted of 4-5 students, and they were asked to engage in discussion for 30 minutes, under the following instruction: "Please discuss your explanation (naive theory) by evaluating all possible proofs/evidence and decide whether or not it can be concluded to be a valid explanation."Main findings were as follows. (1) Condition A groups were more likely to use "proving" strategies by pointing out the evidence/proofs that demonstrate their theory's plausibility. (2) Condition B groups were more likely to use "disproving"strategies by pointing out the evidence/disproofs that undermine the theory, (3) metacognitive speeches occurred in the two situations: One situation where each member engaged in reflective thinking in action and here covert or overt "utterance"was directed toward oneself, and the other situation where one member posed a question or gave an alternative idea in evaluating other ideas or theories and here covert or overt "utterance"was directed toward other members instead, and (4) five functions of metacognitive speeches were identified and characterized: To show one's consent, to show disagreement, to indicate possible problems (by reviewing the line of discussions that have taken place), to organize one's own understanding, and to create a new idea/perspective or propose an alternative idea/perspective.
著者
高橋 劭 RUTLEDGE S. KEENAN T.D. 守田 治 中北 英一 木村 龍治 藤吉 康志 深尾 昌一郎
出版者
九州大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

本研究は、地球の気候変動に重要なアジア多島域の巨大積乱雲の組織化過程、降水機能についての国際共同プロジェクトに参加、研究を行うことを目的としている。観測は、オーストラリア・ダ-ウィン沖のMelville島で行ったが、この島は平坦で研究には理想的である。ここではモンスーン直前島全体を覆うような大きな雲システムの発達が知られているが、昼過ぎ海陸風の収束域に雲は発達し始め約1時間で雲頂が18kmにも達する雲、Hectorが東西方向に発達する。強い雨と1分間に数百回もの雷をもたらし面白い事に急に雲は南北に並びを変え、ゆっくり西に動く。このHector雲の組織化過程と降水についての研究のためオーストラリア気象局を中心に国際プロジェクトが組織化された。多くの大学・研究所が参加、オーストラリア側ではドップラーレーダ、エ-ロゾンデ、ウインドプロファイラー、ゾンデ観測が行われ、米国もウインドプロファイラーでの観測を行い、我々のグループはビデオゾンデを持って参加した。ビデオゾンデはHector雲内の降水粒子の分布の直接測定を行うもので、このプロジェクトでも大きな比重を持つものである。観測は常にドップラーレーダと緊密な連絡を取りながら行われた。平成7年夏、研究代表者はオーストラリア気象局のJasper氏とMelville島でのSite Surveyを行い、観測地、宿舎、輸送に伴う税関手続きなどについて調査を行った。平成7年10月、約1トンにも及ぶ観測資材を船で輸送、同年11月15日より1ヶ月間、大学院生4名と研究代表者がMelville島での観測を行った。観測は朝7時から夕方まで日曜なしで行われた。内陸の観測地までは宿泊地から車で40分であった。連日35℃を越す暑さで、幸いレンタルの観測室は冷房はあるが、外は蚊やブヨ、ヒルが多い湿地帯であった。気球格納庫を設置、すぐそばに気球飛揚のため水素ボンベを並べた。ヘリウムは高価なためこの予算では購入できなかった。昼過ぎHector雲が発達、真っ黒い雲列が東に現れ、ドンドンという雷の音とともに接近、一旦Hector内に入ると大変である。激しい雨と突風があり雷はすぐ近くに落ち続ける。一度はすぐ10m先に落雷、強電流が地面から流れ、すべての器械を破壊してしまった。日本に連絡を取り、パ-ツを輸送させ修理をしたが、4日間費やした。この激しい雨と雷の中、水素
著者
鈴木 昌和 池田 秀人 飯高 茂 玉利 文和 大友 正英 菅沼 明
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

1.本研究では、数式を含む日本語のLaTeX文書の自動点訳システムの構築した。(1)Extraによる日本語のひらがな変換と分かち書き処理(2)平仮名化されたLaTeX文書の点字への変換と、点字文書としてのレイアウト整形(3)点訳結果の校正(ビューアとエディタ)これらの作業を統合された環境で行えるWindows95上のアプリケーションとして構築した。更に、約7000語の数学用語の点字による読みと分かち書きの位置及び品詞コードを記した辞書を作成した。これにより、2.の処理が数学の専門書に対しても高精度で行えるよになった。2.自動点訳における数式入力の負担を軽減する為に、数式を含む文書の光学読取りシステムの研究を行った。Texで印刷した文書については非常に高い精度認識が出来ることを実験で示した。但し、現時点では行列には対応できていない。3.Texのバ-ジョンによる差や複雑なユーザーマクロによる記述などの根本的解決の為、Texが出力するDviファイルから標準的なTexコマンドのみを用いたTEX形式のソースファイルを再構成する研究を行った。章節や定理、箇条書きなどの構造への対応も可能なアルゴリズムを求めた。数式記述部分については上記2.の数式認識アルゴリズムを適用して、非常に高い精度で再現が可能であること確認した。
著者
中野 和典
出版者
九州大学
雑誌
Comparatio (ISSN:13474286)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.1-10, 2002

The subject matter of Abe Kobe's "The Face of Another" is the loss of a man's face. "I" was seriously injured in the face in an accident. What is the meaning of the loss of a man's face in contemporary society where people are asked to show their identities? What becomes clear through his hard struggles in making an elaborate mask and tempting his wife is how man is influenced by his face. "I" goes into the city with the mask on and knows that the world is a prison and people are its prisoners. Why did he say, " The world is a prison?" And on one hand he has some sympathy for Koreans in Japan, Blacks in America and a girl from Hiroshima, who are alienated in the community on account of their faces, on the other he feels that something is wrong. How is this related to his recognition that the world is a prison? In this essay I try to make clear the extension of the representation of the face in "The Face of Another".
著者
森 貴教
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は、北部九州弥生時代および韓半島青銅器・初期鉄器時代における石器の生産・消費様態を地域間で比較しつつ社会システムの一端として明らかにすることである。平成24年度は2012年9月から2013年3月まで大韓民国・釜山大学校博物館を拠点として長期間現地で滞在調査したことにより、韓半島南部の青銅器時代・初期鉄器時代における石器生産や消費形態に関する情報を悉皆的に収集することができた。以下、本年度の研究活動の内容を具体的に記述する。(1)韓半島南部の青銅器時代・初期鉄器時代における石器生産遺跡を中心に発掘調査報告書を閲覧し、これまで研究を行ってきた弥生時代北部九州地域の石器生産・流通と比較するための基礎的な情報を得た。また石器生産遺跡出土石器類の資料調査を行い、使用石材、製作技法について確認した。(2)青銅器時代・初期鉄器時代における石斧に関し、慶尚南道地域(南江流域)を中心に代表的な遺跡出土品について各所蔵機関に直接赴き資料調査を行った(晋州・大坪里遺跡、草田遺跡、平居遺跡、沙月里遺跡など)。特に研究史上注目されてきた片刃石斧に関して、形態・使用石材・製作技法などに着目して詳細に観察しデータを収集したことにより、石器生産や消費形態を分析する上での基礎となる編年や地域性に関する貴重な情報を得ることが出来た。(3)弥生時代後半期および青銅器時代から初期鉄器(原三国)時代における利器の材質変化(鉄器化)と石器生産との関連性について、研磨具である砥石の分析からアプローチした。北部九州においては弥生時代中期後半以降、鍛錬鍛冶技術が導入されるが韓半島南部ではその前段階に鍛冶技術が認められることや、砥石目の細粒化が達成されていることなどが明らかになった。以上のように、当該年度は北部九州の弥生時代との比較対象地域である韓半島南部の青銅器時代・初期鉄器時代における石器生産や鉄器化に関して、非常に多くの情報を収集できた。
著者
宅間 真紀 (山内 真紀)
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

本年度は主に以下の点に関して研究を行った。1.日本語書記意識史を研究する際、時代、書記者、ジャンル、社会背景など様々な要因を考え併せ、各資料ごとに見られる書記意識を掴む必要があるが、書記意識が強く反映される仮名遺書や文字研究書を調査対象にするのが先決であると考えた。調査対象を拡げながら、作業を積み重ねることで、時代、書記者の流派(学派)など諸要素内での書記意識史を大まかに捉え、それら個別の書記意識史を統合させることで、日本語全体の書記意識史を捉えることができよう。今年度は、その初歩的な作業として、九州大学音無文庫、松濤文庫に所蔵されている書物の調査・目録の作成に努めた。2.今年度は、「仮名字体の規範意識」に注目した。従来、変体仮名は、明治33年の小学校令施行規則により定まった、現行平仮名字体以外を指す名称とされてきた。しかし、本研究では、空海真筆のいろは歌が要因となって、既に近世期から、仮名の正体である基本字体(空海真筆いろは歌の書写字体)とそれ以外の字体(変体)を区別する意識が存在していたことを明らかにした。具体的には、岡島隆紀『仮字考』(享保11年)に(基本字体:仮字正字/それ以外の字体:四十七字之外平仮字並イ呂ハ異體)、伴信友『仮字本末』(嘉永3年)に(空海の書定めたるいろは假字/いろは假字ならぬ草假字)、中根淑『日本文典』(明治9年)に(平假名/中假名)といった二分類が見られる。本研究により、新たに「変体仮名」の定義として、以下の説明を加えた。仮名の正体に対して変体(別体)とされる仮名。古くはいろは歌所用の仮名字体が正体とされたので、それ以外の字体の仮名を指した。小学校令施行規則により現行の平仮名字体が正体とされた明治33年以降は、現行の平仮名字体以外のものを指す。(以上の内容は、第197回筑紫国語学談話会、第91回訓点語学会研究発表会にて口頭発表を行った)
著者
綿貫 茂喜
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は暑い・寒いという印象による視覚刺激が、実際の体温調節反応に影響を与えるかを明らかにすることを目的とした。その結果、常温環境下では暑い映像、寒い映像を呈示した時に、心拍変動や総末梢血管抵抗が有意に変化した。すなわち暑い映像条件では実際の暑熱曝露時の血管が拡張する傾向があり、寒い映像条件では血管が収縮、心拍数が低下する等の反応が見られた。さらに環境条件を寒くし、かつ暑い映像を呈示した場合、深部体温が寒い映像を提示した場合よりも有意に低下した。一方で、映像の効果が体温に見られない被験者もおり、印象の寄与には個人差があると考えられた。
著者
橋本 公雄 丸野 俊一 徳永 幹雄 西村 秀樹 山本 教人 中島 俊介 杉山 佳生 藤永 博
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、運動・スポーツで経験されるドラマチックな体験が、青少年の生きる力にどのような影響を及ぼしているのかについて、質的および量的側面から検討することを目的とした。ここでは、ドラマチック体験を「練習や試合を通して体験した心に残るよい出来事や悪い出来事を含むエピソード」と定義し、試合場面における、たとえば逆転勝利などの劇的な瞬間だけでなく、普段の練習の過程でもみられる様々なエピソードも含めて捉えることとした。また、生きる力は、ライフスキルの概念と類似しているため、量的側面の分析では、スポーツドラマチック体験の学校生活におけるライフスキルに及ぼす影響を分析した。質的研究は、大学生(一般学生と体育部学生)を対象に、自由記述およびインタビューによって、どのような場面でドラマチックな体験が生じているのか、またその体験が心理、社会、身体、および生活上にどのような影響をもたらしたかを分析した。その結果、ドラマチック体験として、成功体験、失敗体験、試合体験、出会い体験、克服体験、課題遂行体験、役割遂行体験などが抽出され、心理的(自信や意欲)、身体的(技能向上)、社会的(協力や他者への思い)、人生・生活観(将来の見通しや人生観)にポジティブな影響を及ぼし、ドラマチック体験が生きる力に寄与していることが明らかにされた。また、ドラマチック体験尺度(Inventory of Dramatic Experience for Sport : IDES)の開発を試み、「努力の積み重ねへの気づき」「技術向上への気づき」「対人トラブルによる自己反省」の3因子、13項目からなる尺度を作成した。ドラマチック体験(独立変数)と学校生活スキル(従属変数)との関連では、時間的展望、QOL,自己効力感を媒介変数とする共分散構造分析を行い、モデルの検証をした。さらに、本研究では運動・スポーツ活動ばかりではなく、自然体験なども生きる力には関連するものと思われ、グリーンツーリズムや野外キャンプにおけるコミュニケーションに関しての考察を行った。
著者
高橋 里美
出版者
九州大学
雑誌
言語文化論究 (ISSN:13410032)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.109-128, 2000

1970年代後半、 第二言語習得における母語転移研究は新しい局面を迎え、それまでの母語転移の発生を確認することのみを目的とした研究(transfer study)に代わり、どのような条件の下で母語第二言語コンテクストへ転移しうるのかを探る研究(transferability study)に焦点が当てられるようになった。しかし、第二言語習得の一領域としての中間言語語用論では、90年代前半まで、母語転移があるのかどうか、あるとすれば何が転移されているのかという研究が大半を占め、母語転移の可能性を探る研究にはほとんど関心が寄せられてこなかった。本研究では、中間言語語用論における母語転移の研究を概観し、これを基に今後の研究課題について考察する。具体的には、母語転移の発生の有無に焦点を置いた研究を、社会語用的母語転移(sociopragmatic transfer)と語用言語的母語転移(programalinguistic transfer)の各視点から概観する。その後、語用論レベルでの母語転移の可能性を暑かった研究を紹介し、その調査研究方法等を考察する。最後に、これまでの研究を踏まえ、中間言語語用論の領域において今後必要と思われる研究課題を具体的に掲示する。
著者
園田 高明 三島 正章 小野 泰蔵 深谷 治彦 脇坂 昭弘 岩上 透 中川 美樹
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

環状、非環状、および、かご状構造を有する種々の多フッ化炭化水素(炭素酸)や多フッ化アルコール(酸素酸)を合成し、これらの化合物の気相酸性度をFT-ICR-質量分析法を用いて測定した。密度汎関数法を用いた気相酸性度の計算予測と既知のヘテロ原子を有する無機酸や有機酸との比較を行い、多フッ化炭素化合物が示す特異な物性と反応性について議論した。