著者
勝山 清次 鎌田 元一 藤井 譲治 吉川 真司 早島 大祐 野田 泰三
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究の目的は、日本中世の聖俗両面において大きな役割を果たした南都寺院の構造、生態を解明すべく、その内部集団のうち、堂衆と院家に着目し、彼らの残した古文書・古記録を調査・研究するとともに、あわせてその史料的性格に関する基礎研究を行うことにある。平成15年度以降、東大寺法華堂・中門堂両堂衆の残した史料である東大寺宝珠院文書(800点余)、並びに興福寺を代表する院家である一乗院の坊官二条家が伝えた一乗院文書(2000点余、ともに京都大学総合博物館所蔵)の史料調査を実施した。質量ともに希有の史料群でありながら、これまで本格的な調査の行われていなかった宝珠院文書については、全点の原本調査と調書作成を終え、目録作成と平安・鎌倉時代分の文書翻刻を完了した。一乗院文書についても同じく原本調査を行い、2287点全部の目録作成を完了した。以上の調査完了に伴い、宝珠院文書・一乗院文書の読解を行い、科研報告書において計七編の関連論文を収録した。
著者
木曽 明子
出版者
京都大学
雑誌
西洋古典論集 (ISSN:02897113)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.1-26, 1996-09-15

この論文は国立情報学研究所の学術雑誌公開支援事業により電子化されました。Euripides the tragedian is often called the inventor of European comedy. Indeed the plays he wrote in the last years of his career, Iphigenia among the Taurians. Helen and Ion, include most of the elements which were to become the stock features of comedies of Menander, Plautus, Shakespeare. Moliere, Oscar Wilde and even Joe Orton of the present day. How can a tragedy be presented as a tragedy but be appreciated as a comedy? I will try to examine the dramatic art of Euripides as shown in Ion, a play which, though an entry in the tragic competition at the festival of Dionysus, shows a treatment of situation and character differing subtly from the tragic norm and introducing a new attitude to human nature and action. The following points will be discussed from the perspective of what is comic (1-14, 16-18) and what is tragic (15) in the play : 1. Hermes' appearance as Prologist in the style of Roman comedy. 2. The introduction of "household matters, things we use and live with, " as phrased by Aristophanes. 3. Parody in the mode of Aristophanic stage. 4. The attitude of watching which causes detachment rather than involvement on the part of the audience. Peace and harmony in mythical prospect. 5. The so-called "Sophoclean irony" in stichomythia utilized to create tragicomic effects. 6. The fall of divine authority-Apollo caricatured. 7. Comic effect through hyponoia. 8. Qui pro quo in the scene of father-and-son recognition. 9. Comic effect through simple gestures on trochaic tetrameter. 10. Xuthus as the prototype of pater iratus and his deception. 11. Topicality treated with satire. 12. Diversion from the main plot in the style of comic parabasis. 13. The significance of paronomasia on Ion as the symbol of the rebirth of Athens. 14. Things contrary to expectation-the archetype of servus dolosus in his role manipulating his mistress. 15. Tragic monody by the heroine, as the centripetal force supporting the dramatic structure. 16. Disjointed structure-contrary to the Aristotelian prescription for successful tragedy. 17. Anagnorisis(discovery) and peripeteia(change of fortune) brought about by accident, not by the neccesity and probability of action. 18. The play as a ritual in celebration of the rebirth of Athens, with Athena ex machina to honour the occasion.
著者
木曽 明子
出版者
京都大学
雑誌
西洋古典論集 (ISSN:02897113)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.1-17, 2002-10-30

この論文は国立情報学研究所の学術雑誌公開支援事業により電子化されました。Demosthenes (384-322 B. C.) has kept the unchallenged name as first and foremost of the ancient Greek orators, which means that his speeches well deserve attention not only as delivered "live" to the citizens of the democratic Athens of the fourth century B. C., but also as literary works which stand up to various demands of artistic criticism of different ages and cultures. Among the ancient critics who appreciated Demosthenes' speech was Dionysius of Halicarnassus, who arrived at Rome around 30 B. C. to become a tutor of declamation. Declamation at that time not only constituted part of the educational program for the youth of the upper class Romans but also was very popular as a sort of entertainment in which the performances of professional declamators attracted the audience just as the recitals of popular singers did. In such circumstances Dionysius who used the speeches of Greek orators as model material in his tutorial of declamation was in a favorable position to discover one of the keys to the miraculous power of Demosthenes' speech---euphony. Dionysius examined how his sentences were composed and found that the word arrangement in the composition was the secret of the phonetical beauty and charm of Demosthenes' speech. The orator proved to be the best exploiter of the linguistic characteristics of Greek language which allows considerable license in word order without contravening grammar. The orator could provide euphony in his speech as in poetry without losing clarity of speech which is the vital prerequisite in persuasion.
著者
山崎 昇
出版者
京都大学
雑誌
京都大學結核研究所紀要 (ISSN:04529820)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.34-64, 1965-09

炎症又は外傷による組織障害が結合組織の増殖により修復される場合には, 結合組織, 特に膠原線維が過剰に増殖すると, 生体に却って不利となることがある。例えば, 慢性肺結核の病巣では, 膠原線維性の被膜が形成されると, 病巣の吸収瘢痕化が障害せられ, 瘢痕ケロイドでは, 膠原線維が過剰に増殖して, 完全な瘢痕化が障害される。そこで, その治療に当っては, 結合組織の増殖を何らかの方法により調節することが望ましいが, 結合組織についてこのような目的で検討した報告は殆んどないといっても差支えない。これは病理組織学的並びに組織化学的にみて, 適当な検討方法がなかったためであろうと考えられる。一方, 近年における結合組織や膠原線維についての生化学的並びに電子顕微鏡学的な研究の進歩発達には目覚ましいものがあるが, それ等の成果を実地臨床的に応用する途は, 未だ開かれていない。そこで, 著者は, それ等の諸研究の成果を従来から行なわれている病理組織学的並びに組織化学的な検討方法に応用することにより, 結合組織や膠原線維の性状及び形成状況等を明らかにし, その増殖調節に必要な手掛りを得ようとした。第1篇では, van Giesonの染色法, Malloryの染色法, メタクロマジア染色及びペプシン消化試験等を適宜に組合せ, 組織切片を用いて, 結合組織, 特に膠原線維の性状を明らかにした。即ち, van Giesonの染色により殆んど染まらないか, 又は, 黄赤色に染まり, Malloryの染色により青色に染まる線維は, 多量の可溶性コラーゲンを含む幼弱型であり, van Giesonの染色により赤染し, Malloryの染色により濃青色に染まる線維は, 可溶性コラーゲンが少なく, これに対し不溶性コラーゲン及び酸性多糖類との割合が多く, これらが適当に組合された成熟型であることを知った。成熟型の膠原線維はペプシンに対する抵抗性が大であり, 生化学的にもかなりに安定したものと考えられる。第2篇では, 結合組織, 特に膠原線維についての著者の組織学的研究方法を, 臨床切除材料や動物実験材料の場合に応用し, 著者の研究方法の応用価値について検討した。結核性肺病巣についてゆうと, X線的に硬化性病巣としての所見を示す病巣では, 被膜は一般に3層の膠原線維層からなっており, 最内側のそれは成熟型の線維からなっていて, もっとも強靱である。最内側のこの線維層は寺松, 山本等の所謂メタクロマジア陽性層に相当しており, 本篇ではその性状からみて病巣の安定化に役立つ反面, 病巣の吸収瘢痕化に対してもっとも大きな障害となっていることが明らかにされている。瘢痕ケロイドでは, 成熟型膠原線維の線維腫様増加と, ヒアルウロニダーゼで消化される酸性多糖類の増加とがみられ, この種の過剰な酸性多糖類が線維の層状化, 即ち, 完全な瘢痕化を阻害するわけである。従って, 瘢痕ケロイドの治療には, 従来行なわれている種々の方法を応用するとともに, この種の酸性多糖類を減少せしめる手段を講ずることが必要である。又, 本篇では, 実験的異物性炎における各種の薬剤の作用棧序について検討した結果, コーチゾンは抗炎症作用と線維の成熟化を阻害する作用とを有し, グリチルリチンは投与の初期にはコーチゾン様の作用を示し, ついで線維形成促進作を示すものなること, 及び, オキシフェンブタゾンは, 線維の成熟化は阻害しないが, その形成量を低下せしめ, ヘパリン及びコンドロイチン硫酸は, その作用棧序は多少異なるが, ともに線維形成を促進する作用を有することを知った。以上, 著者は, 著者の研究方法を炎症その他の結合組織の研究に応用して, 在来に比べてより多くの知見を得られることを実証するとともに, これにより結合組織の増殖を調節する手掛りが得られることを明らかにした。
著者
小崎 隆
出版者
京都大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

本研究では、児童・学生および一般市民などの利用者を対象として、また、初等・中等教育現場や家庭などのさまざまな生活の場で、グローバルコモンズと地域環境資源を構成する重要な要素である「土」に関わるこれまでの知見を、平易かつ多面的に理解せしめることを通して、人と環境のあるべき姿を考える契機を与えるような環境教育補助ツールであるバーチャルミュージアム「土の不思議館」を試作することを目的とした。本年度は以下の研究を実施するとともに最終年度の取りまとめを行った。1)ペテルブルク大学土壌博物館と京都大学で協同してバーチャルミュージアム「土の不思議館」を製作した。2)海外の研究実施地域で追加資料の収集を行うとともに、国内の研究機関等で上記ソフトウエアの必要な改訂のための意見を聴取した。3)ペテルブルク大学および周辺の科学アカデミー研究機関においてソフトウエア試作版のデモンストレーションを行い、必要な改訂のための意見を聴取した。その後、ペテルブルク大学附属土壌博物館において、研究協力者Aparin館長ならびにAbakumov博士とともに、それまでに得られた評価に基づいてソフトウエアの改訂を行った。4)成果報告書を作成し提出するとともに、収集資料およびこれまでの現地調査で得られた成果を原著論文として公表した。
著者
田中 秀樹
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
2011-03-23

新制・課程博士
著者
村脇 有吾
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

諸言語の系統的な関係を解明するための計算集約的な統計手法を開発した。この問題は長年言語学者が人手によって取り組んできたが、過去に復元する問題は本質的に不確実であり、統計的推論が適していると考えている。成果は多岐に及ぶが、特に言語類型論の特徴列を潜在空間に写像するベイズ統計の手法は、複数の特徴が連鎖的に変化し得るという類型論的特徴の特性を捉えることを可能にしたという点で重要である。
著者
牧野 俊郎 若林 英信 松本 充弘 吉田 英生 花村 克悟 山田 純 MIYAZAKI Koji
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

熱ふく射(thermal radiation)は物質における荷電粒子の熱振動に起因する電磁波であり,工業的にも身近にも得やすいエネルギーであるが,そのままではPlanck分布の及ぶ広い波長域に分散し,また,指向性が弱いぼんやりしたふく射である.そのため,レーザーの場合のように特定の波長にそのエネルギーを集中して工学的な機能を発揮させるためには有効でないことが多かった.本研究は,この熱ふく射を特定の波長帯域のふく射が強調されるスペクトル機能性のふく射に変換し制御する技術の開発をめざすものである.電磁波動論・分光学・固体物性論・伝熱工学を基礎として分光熱工学の実験・理論研究を行い,エネルギー工学と生活環境工学のために有効なハードシステムの実現をめざす.牧野・若林・松本は,(1)薄膜系の放射ふく射の干渉と(2)薄膜系のふく射放射理論を検討し,(3)薄膜系エミッターの試作を行った.さらに,(4)表面の鏡面反射率・半球反射率・指向放射率のスペクトルの同時測定法を提案し,(5)熱ふく射に関するKirchhoffの法則を電磁波のレベルで実験的に検証した.また,牧野は,本研究を総括する視点に立ち国内の講演会や国際会議において本研究に関する多くのKeynote講演などを行った.吉田は,スペクトル機能性ふく射を用いる熱・光起電力発電システムを熱システム工学的に検討した.花村は,(1)矩形マイクロキャビティによる放射率の波長制御に関する分光実験・計算を行い,(2)近接場光によるナノギャップ発電に関する実験装置を設計し,(3)GaSb光電変換素子を自らの実験室において試作した.山田は,(1)薄膜系エミッターからの放射ふく射の計算と(2)人体の皮膚の反射に関する分光実験・計算を行い,(3)色素増感太陽電池の改良を検討した.
著者
牧野 俊郎 花村 克悟 山田 純 宮崎 康次 松本 充弘 若林 英信
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究は,スペクトル機能性ふく射の制御技術開発をめざす熱工学の研究の展開を図るものである.そのような技術は,とりわけ,熱光起電力発電(TPV)システムの開発において重要であり,また,わかりやすい.電磁波動論・分光学・固体物性論・伝熱工学を基礎として分光熱工学の実験・理論研究を行い,熱工学のシステム的な視野をもって,エネルギー工学と生活環境工学のために有効なハードシステムの実現をめざす
著者
中西 竜也
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

近代に活躍した著名な中国ムスリム学者、王静斎が著した、コーラン(クルアーン)の漢語注釈、『古蘭経訳解』の内容を、その典拠となったアラビア語・ペルシア語のコーラン注釈と比較しつつ検討し、とくに次の二つの点を明らかにした。第一に、当該漢語注釈書においてその中国ムスリム学者は、聖戦や、それによって防衛すべきウンマ(ムスリム共同体)についての教説を、近代の中国社会やイスラーム世界の歴史的諸状況に応じて、どのように表現したか。第二に、近代イスラーム世界でしばしば批判にさらされた、スーフィズム(イスラーム神秘主義)、とくに聖者崇拝をめぐる問題を、どのように語ったか。
著者
佐治 英郎 荒野 泰 前田 稔 井戸 達雄 大桃 善朗 中山 守雄
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

細胞殺傷性の強い高エネルギーβ線を放出する放射性核種を結合した化合物を体内に投与して癌細胞周辺に送達・集積させることにより、その放射線が透過する範曲内で癌細胞を直接死亡させることが可能となる。この『内用放射線治療薬剤』の開発するために、本研究では、有効な放射性核種の選択とその製造方法、充分な治療効果を得られる放射能のデリバリーシステムの構築・担体分子への旅射性核種の効率的結合法、放射線量に関する放射線生物学的評価等について総合的に調査し、以下の結果を得た。1.癌の治療に十分な飛程、線量などを与える放射性核種の選択を行い、放射性ヨウ素-131、レニウム-186、 188、ルテチウム-177、銅-64等のβ線放出核種が有効であることを認めた。2.1での選択された旅射性核種の製造のための核反応の選択、製造方法、他施設への運搬、院内サイクロトロンによる製造系について、時間、方法を含めてシュミレーション的に調査し、これが可能であることを見出した。3.放射性同位元素を用いた癌の治療には、癌細胞自身あるいはその周辺に多量の放射能を集積させること、および非標的組織からの速やかな放射能の消失を達成するために、放射能のキャリア分子を探索し、抗体、リポソーム、核酸、腫瘍部位に発現受する容体結合物質などにその可能性があることを認めた。4.「がんの内用放射線治療薬剤の開発に関するシンポジウム」を開催し、上記の結果を報告すると共に、それに関して、他の薬学、臨床放射線治療分野、核医学診断分野などの医学、核反応と放射性核種の製造分野の研究者と癌の内用放射線治療薬の有効性について討議した。この結果は今後の内用放射線治療薬の開発研究に有益な情報となった。
著者
佐保 賢志
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

本年度の研究では、前年度に提案したUWBドップラーレーダ干渉計法を、複数人体・複数目標へ適用する手法を検討した。まず2人の歩行人体が同時に計測される場合において、ドップラーレーダイメー一ジの判別分析に基づく両人体の分離識別法を提案した。提案手法は、得られたイメージと受信信号電力に基づき、各人体のイメージから教師データを計測毎に抽出し、得られた教師データを用いたサポートベクターマシンを適用する。提案手法を実環境下に適用した結果、ドップラー効果の利用のみでは分離識別が困難なほぼ同速度で歩行する2人体の分離識別に、95%の確率で成功した。本成果は判別分析技術とレーダイメージング技術の融合であり、両者の適用範囲を広げることにも貢献した。続いて、UWBドップラーレーダ干渉計を3人以上の目標に適用し、その特性を調べた。その結果、各人体のわずかな運動の変化に基づき、観測範囲内の4人程度の歩行者をイメージングすることができた。次に、これらの歩行者の分離並びに人数推定のため、得られたイメージのクラスター分析を行う手法を提案した。提案手法により、2~4人の人体の人数推定が実現した。この成果により、通常の会議室や交差点などにおいても、レーダによる監視技術が適用可能となり得ることを示した。さらに、複数目標を分離・追跡するのみでなく、詳細な形状の情報を把握する手法を提案し、数値計算によりその有効性を実証した。提案手法では追尾フィルタにより各目標の運動推定を行い、UWBレーダで得られた散乱点軌道を推定運動で保証することで形状推定を実現する。同手法により、人体の両腕及び胴体を仮定した目標の高精度イメージングが実現し、レーダによる人体識別のさらなる高度化が期待できることを確認した。
著者
荒井 修亮 光永 靖 坂本 亘
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2001

世界に生息するウミガメ類は亜熱帯域から熱帯域を中心に、摂餌・産卵回遊を行っている。現在、ウミガメ類の全種において、その生息頭数が減少していると言われている。特に東南アジアにおけるアオウミガメ、タイマイ、オサガメ、ヒメウミガメについては絶滅の危機に瀕しているとされているが、その生態については全く未解明であった。このため本研究において、これらのウミガメ類の内、特にアオウミガメについてその回遊経路を解明すべく研究を開始した。具体的にはアオウミガメの回遊経路を人工衛星送信機(アルゴス送信機)を甲羅に装着することによって追跡を行った。平成13年度に12台、平成14年度に12台の合計24台のアルゴス送信機をタイ国のタイ湾側とアンダマン海側、並びにマレーシアのタイ湾側で産卵のために上陸したアオウミガメの雌成体に装着して追跡した。その結果、タイ湾側においては湾奥に位置する産卵場から放流したアオウミガメは大きく次の回遊経路を辿った。1.タイ湾を東へ海岸沿いに回遊し、カンボジアないしはベトナム沿岸へ行く経路。2.タイ湾を東へ沖合を横切り、南シナ海へと辿る経路。3.沿岸を回遊する個体。アンダマン海においては、産卵場であるシミラン諸島フーヨン島からの放流個体の殆どがアンダマン海を横切り、インド領であるアンダマン諸島沿岸へと回遊した。このようにタイ湾およびアンダマン海ではそれぞれ摂餌を行う海域が異なっていることが明らかとなった。これらの海域の個体が遺伝的に隔離されているか、あるいは交流があるのかについて、DNAによる解析を行った。この結果、両者には殆ど差違がないことが分かった。本研究期間中、タイ国を中心にアセアン諸国のウミガメ研究者を招き、SEASTAR2000ワークショップを3回(平成13年度プーケット、平成14年度及び15年度バンコク)開催し、プロシーディングスを出版した。更に本研究の成果を下に平成16年3月、タイ側共同研究者1名に京都大学学位が授与された。
著者
加藤 真
出版者
京都大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1992

日本に産する潜葉虫のファウナとその寄生植物がおおむね明らかになった。潜葉虫は鞘翅目でタマムシ科44種、ハムシ科52種、ゾウムシ科53種、オトシブミ科1種、双翅目でクロバネキノコバエ科約20種、ハモグリバエ科282種、ショウジョウバエ科2種、ミギワバエ科34種、ミバエ科23種、フンバエ科5種、ハナバエ科16種、膜翅目ではハバチ科16種、鱗翅目で田スイコバネ響4種、モグリチビガ科79種、マガリガ科11種、ツヤコガ科13種、ムモンハモグリガ科6種、ハマキガ科20種、チビガ科10種、ハモグリガ科19種、ホソガ科242種、コハモグリガ科20種、アトヒゲコガ科5種、スガ科2種、ササベリガ科1種、メムシガ科5種、アカバナガ科1種、クサモグリガ科15種、ツツミノガ科34種、カザリバガ科14種、キバガ科20種、メイガ科5種、シジミチョウ科2種、ヤガ科1種、合計1013種とみつもられた。潜葉虫の羽化を待ち、分類の仕事が進めば、この種数はさらに増えるものと思われる。潜葉虫の寄主植物は、147科605属に及んだ。今年度新たに寄主植物として記緑されたのは、ヒルギ科とタコノキ科であった。潜葉虫は利用されていない植物の科は68科(29,7%)あり、そのうちわけは以下のとおりであった。A.葉が極めて小さいか全くない科(12科)、B.水草(6科)、C.国内の分布が極めて限られる科(38科)、D.その他(12科)である。最後の12科は、キジノオシダ科、フサシダ科、サンショウモ科、ソテツ科、イヌガヤ科、ドクダミ科、ドクウツギ科、ケマンソウ科、ケシ科、カツラ科、フウチョウソウ科、ジンチョウゲ科であり、これらは強い化学防衛によって潜葉虫から解放されたらしい。採集された潜孔葉の標本は、すべてさく葉標本として保管されている。潜葉虫の潜孔様式と寄主範囲について、現在記載をしつつある。植物と寄生植物の共進化の歴史をふまえつつ、これらのぼう大なデータも群集生態学的に解析中である。
著者
仲尾 周一郎
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

平成25年度は、2013年9月~10月に南スーダン共和国・ジュバに渡航し、現地調査を遂行した。この調査では、引き続きジュバ・アラビア語の文法調査・ドキュメンテーションを行った。まず、現地調査に際しては、ジュバ・マラキア地区に古くから在住する都市民を対象に加えたことで、これまでに得られていなかった古風な特徴を残すジュバ・アラビア語変種を発見するに至った。また、彼らの語りに注目することで、ジュバが建設され、南スーダンの首都へと発展していく社会史的背景の一部が明らかにし、論文としてまとめた。次に、研究発表に関しては、現地のジュバ大学において研究発表を行い、上で述べた現地調査の成果の一部を速やかに公表することで、研究者らと意見交換を行った。また、昨年度までに収集した文献資料や、本年度の現地調査をもとに、国際アラビア語方言学会(Association Internationale de Dialectologie Arabe)にて、ヨーロッパ人植民地行政官らの言語行為がジュバ・アラビア語の発生に影響を与えた可能性について発表し、反響を得た。さらに、本年度までに行ってきたドキュメンテーションの結果得られたデータをもとに、民話などの「語りの談話」に頻出する継起等を表す言語形式と、その文法化の過程を論文にまとめた。以上に加え、昨年度までの研究成果をもとに、ジュバ・アラビア語中層話体(Mesolect)の文法体系について発表した。また、ジュバ・アラビア語を含むアフリカで話されるピジン・クレオール諸語に関して、日本アフリカ学会編『アフリカ学事典』(近刊)に記事を執筆した。
著者
都築 拓也
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
1995-03-23

本文データは平成22年度国立国会図書館の学位論文(博士)のデジタル化実施により作成された画像ファイルを基にpdf変換したものである
著者
横山 茂雄
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
1998-05-25

要旨pdfファイル:学位授与日「平成10年11月24日」
著者
森 信介 飯山 将晃 橋本 敦史 舩冨 卓哉
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

前年度までに構築したレシピフローグラフコーパスと収録した調理映像を用いて調理映像からのレシピ生成の手法を提案し、実験結果とともに国際学会にて発表した。手法は十分一般的であり、調理映像とレシピに限定されない。これにより、本研究課題「作業実施映像からの手順書の生成」が国際学会採択論文とともに完了したといえる。課題終了後も、写真付きの手順書などのような、マルチメディア教材の自動生成などの発展的研究に取り組んでいる。