著者
並木 誠士
出版者
京都大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:03897508)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.146-157, 1986-03-29
著者
岡田 温司 篠原 資明 鈴木 雅之 小倉 孝誠 並木 誠士 喜多村 明里 水野 千依 柳澤 田実 松原 知生
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

肖像には二重のベクトルがある。ひとつはモデルへと引き戻されるもの(モデルに似ていると思わせるベクトル)、もうひとつはモデルから観者へと表出してくるもの(モデルの性格や内面性が表われていると思わせるベクトル)である。この反対方向の運動は、「肖像」を意味するイタリア語「リトラット」とフランス語「ポルトレ」に象徴的に表われている。前者は、「後方へと引き戻す」という意味のラテン語「レ-トラホー」に、後者は「前方へと引き出す」という意味の同じくラテン語「プロ-トラホー」に由来するのである。かくのごとく「肖像」は、模倣と表出、後退と前進、現前と不在、顕在と潜在、保管と開示、隠匿と暴露、ピュシス(自然)とアレーテイア(真理)、これら両極の引き合いや循環性のうちに成立するものなのである。
著者
苅谷 勇雅
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
1994-01-24

本文データは平成22年度国立国会図書館の学位論文(博士)のデジタル化実施により作成された画像ファイルを基にpdf変換したものである 新制・論文博士 乙第8428号 論工博第2801号
著者
薬師院 はるみ
出版者
京都大学
雑誌
京都大学生涯教育学・図書館情報学研究 (ISSN:13471562)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.253-264, 2005-03-31

この論文は国立情報学研究所の学術雑誌公開支援事業により電子化されました。
著者
ヴォドセク ぺーター 金城 まりえ 河井 弘志
出版者
京都大学
雑誌
京都大学生涯教育学・図書館情報学研究 (ISSN:13471562)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.171-192, 2003-03-31

この論文は国立情報学研究所の学術雑誌公開支援事業により電子化されました。
著者
奥本 素子
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、東日本大震災の被災資料を展示し、その展示物に対する来館者の語りを収集したデータをテキストマイニングで分析し、資料に対する来館者の集りの傾向を明らかにした。その結果、被災資料に対して来館者は単に道具名や形式的な知識を語ることはなく、主語を伴った具体的な経験を語ることが多かった。展示物の解釈は一人称的語りによって展開されることが明らかになったという結果より、今後の鑑賞支援の在り方として知識の提供だけでなく体験に繋がる文脈の提供の重要性が示された。
著者
齊藤 博英 野村 慎一郎
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

生命の起源において、核酸などの化学物質から、進化する生命システムがいかにして誕生したのかという問題の解決は、生命科学が目指す大きな目標の一つである。天然に触媒分子として働く RNA が発見されて以来、遺伝子と代謝(触媒)機能の両者を兼ね備える生体分子として、RNAは生命の起源研究において注目されている。特に、RNA 同士の連結反応を触媒するリガーゼリボザイムの存在が生命初期の進化に非常に重要であると考えられている。本研究では、人工 RNAシステムを基盤として、自己複製反応を触媒する人工酵素をデザインし、人工細胞モデルシステムを創出することを目指した。具体的には人工リガーゼリボザイムを用い、RNA 自己増幅系のモデルを新たに設計・構築することにより、新観点から RNA ワールド 仮説の実験的検証をおこなった。この知見を基に、RNA 構造モチーフを利用した新規 RNA 自己複製システムモデルを設計・構築した。さらに設計した RNA 分子から構成されるμm サイズのコンパートメント(小胞)の構築を試み、RNA のみからなる機能性構造体の創出に向けて前進した。
著者
松沢 哲郎 WATSON C.f. WATSON C.F.
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

Within the last fiscal year I have carried out a complete experimental study investigating cultural transmission of an arbitrary gesture in Japanese macaques using the group diffusion paradigm. I also collected data regarding the observation of a Japanese macaque carrying her dead infant for an unusually long period, followed by mother-infant cannibalism. I will present the findings of both studies at an International conference, this summer, and will write them up as an original research article and an observational case study, respectively, for submission to journals. The JSPS grant has enabled me to collaborate with Japanese researchers. I plan to attempt to carry out a survey of potentially cultural behaviours across Japanese macaques in Japan.
著者
裏出 令子 裏出 良博 柏木 香保里 ラザルス ミハイル
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

肝臓特異的なER-60のノックアウトにより、肝臓での膜糖たんぱく質の構造形成が部分的に遅滞することを見いだした。このため、高脂肪食による高度肥満にすると、ER-60の欠失により肝臓で小胞体ストレスが惹起されやすくなることを示した。脳特異的なER-60の欠失により、ER-60によるアルツハイマー病の原因タンパク質であるアミロイドβの毒性抑制作用の検証を試みるとともに、ER-60とアミロイドβとの複合体の構造解析に成功した。
著者
押川 文子 日下部 達哉 佐々木 宏 牛尾 直行 伊藤 高弘 南出 和余 村山 真弓 黒崎 卓 柳澤 悠
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

近年南アジア諸国では、多様な供給主体による教育の普及がみられる。本プロジェクトでは現地調査と統計分析に基づき、多様な教育供給が広範な人々の教育への期待を活性化させているものの、教育格差はむしろ再生産される傾向があり、雇用市場の制約のもとでとくに中等教育~非エリート高等教育のモビリティ拡大機能は限定的であること、教育改革では市場原理の導入とともに格差是正や子どもの権利が重要課題となっていること、を明らかにした。
著者
谷口 晴香
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

本研究では落葉樹林帯に属し冬季に積雪がある青森県下北半島(以下、下北)と照葉樹林帯に属す鹿児島県屋久島低地(以下、屋久島)に生息するニホンザルを比較し、環境に呼応した離乳の様式が存在するかを明らかにすることを目的とした。採用2年目は、以下①②③を行った。①夏季に下北において個体数調査およびニホンザルの食物の硬度計測を行った。②下北と屋久島において、食物の物理的性質(大きさ、操作数、高さ、かたさ)が母子の食物利用の差に与える影響を、一般化線形混合モデルを用い総合的に分析した。その結果、母親と比較しアカンポウは、1口で食べられる食物、抽作を伴わない食物、低い位置にある食物に採食時間を費やしていた。両地城ともに2000J/㎡以上. のかたさの品目に関しては、アカンボウは母親と比較しあまり採食しない傾向にあった。環境条件が異なっていても身体能力が未熟なアカンボウは、共通し利用しやすい食物に採食時間を費やす傾向にあった。③母子の別れに関して分析を行った。下北では採食場面での母子の別れが多く観察され、アカンボウの母離れのきっかけとして、「食物」が大きく関与していた。一方で、屋久島では、採食が母子の別れのきっかけになることもあったが、他のアカンボウとの合流をきっかけに母親と別れるという社会的な要因も影響していた。屋久島は、冬季を通し、アカンボウ同士の交流が多くみられ、また採食場面においても母親より食物利用が類似している他のアカンボウと共食することが多かった。この違いは、おそらく屋久島のアカンボウが下北より栄養や体温維持の面で母親に依存する必要が少ないためと考えられる。生息環境により離乳の様式は異なっていた。分析②と③の一部を、ニホンザル研究セミナー、および第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会において発表を行った。また、②の内容の一部を、国際学術雑誌に現在投稿中である。
著者
小沼 順二
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

巨頭型と狹頭型の形態分化をみせるマイマイカブリに焦点をあて、外部形態多様化の生態的メカニズムや形態の遺伝・発生基盤解明に取り組んだ。マイマイカブリの巨頭型と狹頭型変異は比較的少数の相加遺伝効果によって生じていること、また頭部と胸部の強い形質遺伝相関によって生じていることを示した。行動実験から中間型形態が巻貝採餌において不利な適応形質であることを実証し、マイマイカブリの形態分化において上記の遺伝・発生的特徴が重要な役割を果たしている可能性を示唆した。
著者
佐藤 義明
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

霊長類が左右の手のうちどちらをよく使うのか(側性)については、ヒトの利きや脳皮質の非対称性と関係づけて論じられてきた。オマキザルは、非常にさまざまな探索行動や操作技能を示し、ナッツを樹木の幹に叩きつけるといったように、周囲の環境の表面を利用することがある(基盤面使用)。本研究では、オトナメスのオマキザル(Cebus apella)5個体において、基盤面使用で手の側性がみられるかどうかを調べた。実験者は、部屋のなかを自由に動いている各個体にクルミを1個ずつ与え、その時点からクルミを割るまでをビデオカメラで記録した。すべての個体が片手への側性を示していて、2個体は右に、3個体は左に偏っていた。側性の強さに個体差があり、側性は1個体では非常に強く、3個体では中程度で、残りの1個体では弱かった。オマキザルに典型的である基盤にナッツを叩きつける行動に関しては、手の使用に側性があり、個体によってそれが一貫していることが示唆された。移動のあいだクルミを保持している手についても調べたところ、3個体に偏りがみられ、ナッツを割っているときの手の偏りと個体内で一致していた。移動時の保持の手は、直前の行動であるナッツの叩きつけに影響されていたことが示唆される。また、手の側性と割るのにかかった時間、叩きつける頻度や速さとの相関から、個体によって手の側性にかかわるクルミ割りの戦略が異なっていることが示唆された。手の柔軟な使用を含む行動で側性がみられ、それが行動の能率と関係しうるということは、チンパンジーやヒトの道具使用の進化のなかで獲得されたはずの行動の適応を評価するために、重要な参照点を供する。
著者
服部 良久
出版者
京都大学
雑誌
京都大學文學部研究紀要 (ISSN:04529774)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.91-211, 2004-03-31

この論文は国立情報学研究所の学術雑誌公開支援事業により電子化されました。
著者
小川 正
出版者
京都大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2010

ヒトや動物は未知の藁境下にあっても、「環境とのコミュニケーション」によって、生存するための「新しい知識」を確立することができる。例えば、初めて遭遇した未知の森で、さまざまな色の木の実を食べたとき、「赤色の実は美味しかったが、他の色の実は不味かった」という試行錯誤的な経験を繰り返せば、「赤い色→美味しい」という新しい知識を獲得して、最初から赤い木の実を探すようになるだろう。このような柔軟な適応的行動の形成は、(1)「環境との試行錯誤的なコミュニケーション(刺激情報-行動選択-結果)を繰り返すことによって、問題解決のための新しい知識を見つける過程(試行錯誤による探索)」から、(2)「明示的に新しい知識を学習したあと、知識にもとづいて問題解決する過程(知識ベースによる探索)」への遷移と見なすことができる。我々は「試行錯誤を伴った視覚探索課題」を開発することによって、試行錯誤による探索をサルに繰返し行わせることに成功した。前頭前野(背外側部)のニューロン活動は、現在遂行している探索方略の状態(試行錯誤探索or知識ベース探索)と、方略変換を行うべきタイミングを表現していた。さらに注目すべきことに、方略変換のタイミングを正しく見つけるために前頭前野ニューロンは,エラーが生じた要因によってエラーを「複数のエラータイプ」に区別し、その後の探索方略を決定していた。先行研究において、このような複数のエラータイプとそれにリンクした方略変換の神経機構は報告されていない。なお、研究成果の一部を英文雑誌で公表した(Fulimto et al. Robotics and Autonomous Systems, 2012)。
著者
宮地 良樹 黒沢 元博 石川 治
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

アレルギー炎症の組織修復過程においは、線維芽細胞、肥満細胞、好酸球,マクロファージなどが参画すると考えられるが、とくに肥満細胞はその発症と遷延化を考える上で重要である。従来、肥満細胞は単に即時型アレルギー反応を惹起する細胞としてのみ評価されてきたが、近年肥満細胞由来サイトカインやメディエーターが解明されるに及んで、そのアレルギー炎症過程への干渉や炎症後リモデリング過程への介在などが極めて注目されるようになった。今回の研究ではアレルギー炎症後のリモデリング過程における肥満細胞の関与を検証するため、臍帯血から樹立したヒト肥満細胞を用いて、線維芽細胞との相互作用、とりわけ肥満細胞由来トリプターゼによる線維芽細胞増殖やコラーゲン産生への影響、さらには肥満細胞が産生する各種成長因子などを検討する中で、炎症後の修復過程における肥満細胞の役割を解明した。肥満細胞と線維芽細胞の共存培養系において線維芽細胞の増殖能が亢進したことから、肥満細胞由来トリプターゼやその抗体を用いた実験で、その本態は肥満細胞由来トリプターゼである可能性が示された。また、肥満細胞は、TGF-βやbFGFなどの成長因子を産生することで線維芽細胞の増殖を制御していることも判明した。線維芽細胞と肥満細胞が相互に干渉することでリモデリングを修飾するとすれば、その制御の視点から、ステロイド剤、抗アレルギー剤、抗酸化剤などがその制御にどの程度有用かを調べることも意義深い。また、皮膚に限らず、気道炎症をはじめとする他のアレルギー炎症性疾患、肺線維症や肥厚性瘢痕を含む線維化、強皮症における硬化などの線維化疾患の序と制御における肥満細胞の役割などが今後検討されるべきであろう。
著者
小山 哲 小田中 直樹 佐々木 博光 橋本 伸也 長谷川 貴彦 長谷川 まゆ帆
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、日本における「西洋史学」の過去と現在を史学史的な視点から再考すると同時に、「西洋史学」を東アジアに固有の学問領域として捉え直すことによって、国境を越えた研究者間の交流と議論の場を構築することを目的として行なわれた。各年度に研究会を実施したほか、公開シンポジウム、国際会議を主催した(詳細ついては、添付した研究成果報告内容ファイルを参照)。最終的な成果の一部は、『思想』(第1091号、2015年3月)に特集「東アジアの西洋史学」として掲載されている。また、日本と韓国の西洋史研究者の交流の場として「日韓西洋史フォーラム」を組織した。
著者
井波 輔
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

本研究はニッケル触媒を用い、従来は報告例の少なかった遷移金属触媒による含硫黄複素環化合物の簡便な合成法を確立することを目的として行ってきた。最終年度である今年度は、これまでの2年間で得られた知見を基にして、これまでに報告例のなかった、硫黄を含むヘテロ芳香環の直接的な切断を伴った環化付加反応を2つ見いだした。一つ目は炭素2位にトリフルオロメチル基を有するベンゾチアゾールとアルキンの環化付加反応である。本反応の直接的な生成物は7員環のベンゾチアゼピンであるが、反応系を加熱することで硫黄の脱離が促進され、6員環であるキノリン環を得ることができる。本反応は形式的に硫黄原子とアルキンの置換反応と見なすことができ、非常に興味深い反応である。また、反応機構解明のために当量実験を行った結果、鍵中間体である酸化的付加体を得ることに成功し、その構造を単結晶X線構造解析によって同定することができた。これによって本反応が芳香環の直接的な切断を伴って進行していることを実験的に確認した。さらに。この反応で得られた知見を基にして、ベンゾチオフェンを基質として用いた場合にも同形式の反応が進行することを見いだした。ベンゾチオフェンを基質として用いた場合、7員環生成物であるベンゾチエピンを良好な収率で得ることができた。本反応では、2位の置換基として、一般的に電子供与性の置換基と見なされるメトキシ基や、電子求引性基として見なされるフルオロ基のどちらも用いることができることを明らかとした。これら二つの反応は、これまで全く報告例のなかった芳香環の直接的な切断を経る環化付加反応であり、得られる生成物が重要な構造を有しているだけでなく、学術的にも非常に興味深い反応である。
著者
末次 健司
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012-04-01

従属栄養植物は、開花期以外は地上に姿を現さないため、分布情報すら明らかではない種が多く、生態学的な研究を行うには困難が伴った。そこで私は、従属栄養植物の精力的な探索と記載分類を地道に行い、詳細な研究を遂行するための土台を作成した。その上で、野外観察から分子生物学的手法に至る様々な手法を駆使し、従属栄養植物の実態に迫る研究を展開してきた。特筆すべき点として、これまで注目されていなかった地上部での適応を含め検討したことが挙げられる。例えば、大半の従属栄養植物は虫媒の植物から起源しているが、それらの生育場所は薄暗い林床であり、ハナバチなどの訪花性見虫の賑わいとは無縁の世界である。このような環境に生育する従属栄養植物は、薄暗い林床で受粉を達成しなければならない。そこで従属栄養植物の送粉様式を調査したところ、多くの種類が昆虫に受粉を頼らずにすむ自動自家受粉を採用していることを明らかにした。こうした自殖の進化は暗い林床で確実に繁殖するのに役立つたと考えられる。しかし、暗い環境に進出可能な見虫を送粉者として利用できれば、林床でも他殖を行うことが可能かもしれない。このような例として、私は、ヤツシロラン節の多くの種が、ショウジョウバエ媒を採用していることを発見した。また従属栄養植物の種子散布様式についても興味深い知見が得られた。そもそも従属栄養植物は、その寄生性ゆえに、胚乳などの養分を持たない非常に小さな種子を作る。そのため、従属栄養性と風による種子散布の間には関連があると考えられてきた。しかしながら暗く風通しの悪い林床では風散布は不適であるため、完全に光合成をやめた従属栄養植物の一部は、液果をつけ、周食動物散布を再獲得していることが明らかになった。