著者
石川 哲郎 三浦 瑠菜 田邉 徹 増田 義男 矢倉 浅黄 阿部 修久 髙津戸 啓介 奥村 裕
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
pp.22-00044, (Released:2023-07-07)
参考文献数
36

長期モニタリングデータを用いて,震災前後で仙台湾の水質環境(水温,塩分,DO,栄養塩類)に変化が生じているか検討した。震災後,震災前と比べ,栄養塩類とDOは低下し,水温と塩分は上昇する傾向が認められた。震災後の栄養塩類(DINとDIP)の減少は底層で大きく,春季に栄養塩に富む親潮系水の波及が減少した一方で栄養塩が少ない黒潮系水が波及するようになった影響や,震災で生じた底質の変化による夏季から秋季の底質からの栄養塩類の溶出の減少が要因として考えられた。
著者
竹垣 毅 藤井 剛洋 石松 惇
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.880-885, 2006 (Released:2006-09-22)
参考文献数
27
被引用文献数
5 6

ムツゴロウ若齢魚の小型個体が冬期に選択的に死亡する減耗現象に与える低温度の影響を,越冬環境調査と急性の低温耐性実験から検討した。越冬中の若齢個体(主に 0, 1 歳魚)が発見された泥干潟の深さは,佐賀県六角川で 5.0~55.0 cm,熊本県唐人川で 4.5~39.0 cm で,いずれも体サイズと関連は無く,小型個体だけが致死温度まで低下する干潟表層部で越冬するわけではなかった。低温耐性実験(3℃, 5℃, 7℃)では,低温度条件ほど早期に死亡したが,全ての温度条件で死亡率にサイズ差は無かった。従って,死亡率のサイズ差は,越冬深度および急性の低温耐性では説明できないと考えられた。
著者
芳賀 穣 屶網 慶 竹内 俊郎
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.782-790, 2005 (Released:2005-10-07)
参考文献数
29
被引用文献数
8 9

真の両面有色の発現過程を明らかにするため,主に F~G ステージ(全長 8.0±0.75 mm)で構成されるヒラメ仔魚を全トランスレチノイン酸(atRA)に 5 日間暴露して,真の両面有色型黒化を誘起後,約 4 日毎に皮膚を採取し,透過型電子顕微鏡で皮膚の微細構造を調べた。孵化後 30 日前後で atRA 区ではメラノファージが見られず膠原繊維層板下に幼体型黒色素胞が見られた。孵化後 40 日目以降,対照区では無眼側皮膚の膠原繊維層板下に虹色素胞のみが見られたが,atRA 区では黒色素胞,黄色素胞および虹色素胞が見られた。
著者
留目 諒 三田 哲也 岩崎 隆志 米山 和良 高橋 勇樹
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1, pp.1-14, 2023-01-15 (Released:2023-02-07)
参考文献数
21

アミメノコギリガザミScylla serrataを対象として,流体解析と行動モデルを用いて,沈降死リスクや摂餌機会を評価可能なシミュレーションモデルを構築し,実際の種苗生産水槽へと適用することで,流場が飼育へ与える影響を評価した。その結果,摂餌には穏やかな流場の方が適しているのに対して,沈降の防除のためには,幼生のステージごとに適切な流場が変化することが示された。今後は同モデルを用いることで,飼育試験によらずに定量的に沈降死リスクや摂餌機会を評価でき,幼生の生残率向上に繋がると期待できる。
著者
魚住 香織 西川 哲也
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1, pp.15-21, 2023-01-15 (Released:2023-02-07)
参考文献数
17
被引用文献数
1

播磨灘において2008–2020年の12月上旬から1月上旬にかけて,産卵期のイカナゴを空釣り漕ぎ漁具(文鎮漕ぎ)により採集し,産卵集団としての個体群の繁殖特性を調べた。産卵盛期における産卵親魚密度および産卵量指数は,2010年以降低下し,特に産卵量指数は2016年以降極めて低く,近年の播磨灘におけるイカナゴの個体群産卵量は低水準であることが明らかとなった。また,産卵量指数と産卵から約2か月後に解禁されるイカナゴ0歳魚の漁獲量には正の相関が認められ,産卵量指数に基づく漁況予測が可能であると考えられた。
著者
郷 譲治 永井 清仁 瀬川 進 本城 凡夫
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.82, no.5, pp.737-742, 2016 (Released:2016-10-06)
参考文献数
30
被引用文献数
4 6

近年,三重県英虞湾でKarenia mikimotoi赤潮が発生し,アコヤガイ真珠養殖への被害が懸念されている。K. mikimotoiがアコヤガイに及ぼす影響を調べるため赤潮海水による曝露試験を行った。アコヤガイ稚貝は本種の細胞密度1×104 cells/mLで36時間までに7.5%,6×104 cells/mLでは24時間までに100%がへい死した。成貝は0.5×103 cells/mLから殻体開閉の頻度が高くなり,3×103 cells/mLで頻繁な開閉運動を示した。
著者
南 駿介 髙取 宗茂 白山 洸 沖田 歩樹 中村 柚咲 髙橋 希元
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
pp.20-00014, (Released:2020-08-28)
参考文献数
53
被引用文献数
2 8

寿司店で提供されている13-31日間長期熟成したカンパチ,アオリイカ,マカジキおよびシマアジの熟成前後における呈味成分とテクスチャーの変化を検討した。その結果,イノシン酸(IMP)含量,硬さ,水分含量および圧搾ドリップ率が低下し,遊離アミノ酸含量は増加していた。またK値は46.7-76.5%を示し,SDS-PAGEによるタンパク質分解が観察された。本研究結果は,熟成魚介類が鮮度を重視する既存の生食用魚介類の知見とは大きく異なる特徴を有し,新たな水産食品として利用できる可能性を示唆した。
著者
岡村 明浩 島村 綾 三河 直美 山田 祥朗 堀江 則行 塚本 勝巳
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
pp.20-00070, (Released:2021-05-13)
参考文献数
24
被引用文献数
1

人工種苗由来の完全養殖ウナギの白焼きについて,官能評価および化学・物性分析を行った。成鰻生産,焼成加工は静岡県内の養魚場,加工場で行った。同所で生産した天然種苗由来の従来型養殖ウナギを比較対照とした。官能評価では,完全養殖の方が脂ののり良く,皮がかたいと評価された。一方,化学分析では,脂質含量に差は無かったものの,粗脂肪中の高度不飽和脂肪酸は完全養殖の方が有意に少なく,官能評価に影響した可能性がある。また,物性分析によれば,身と皮の破断強度は完全養殖の方が有意に高く,官能評価の結果と一致した。
著者
大河内 裕之
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.450-453, 2006 (Released:2006-06-07)
参考文献数
5
被引用文献数
4 2
著者
濱野 龍夫 松浦 修平
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.787-794, 1986-05-25 (Released:2008-02-29)
参考文献数
18
被引用文献数
9 11

Examination of the stomach contents of the Japanese mantis shrimp Oratosguilla oratoria showed that this species is a very intensive predator on the Macrura which is a principal component of the benthic megalofaunal community. Thus, the mantis shrimp, by feeding largely on the Macrura, may have a major influence on this community structure in Hakata Bay. The shrimp was also revealed to be an intensive predator on the Pelecypoda despite underestimation of preda-tion intensity, based on the stomach contents, because of its shell-smashing behaviour. Further-more, this study showed that many Macrura were captured during September and November by the mantis shrimp and that female shrimp of reproductive sizes also consume many Pelecypoda, As a prey species, mantis shrimp themselves were found infrequently in the digestive tracts of other predators.
著者
斉藤 英俊 中西 夕佳里 重田 利拓 海野 徹也 河合 幸一郎 今林 博道
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.809-815, 2008 (Released:2008-09-27)
参考文献数
21
被引用文献数
11 18

広島湾のカキ筏周辺におけるマガキ種苗に対する魚類の捕食の影響を明らかにするために,野外調査をおこなった。クロダイおよびコモンフグの胃内容物中から,マガキは周年出現していたが,夏季にはムラサキイガイの割合が増加した。カキ筏の付着生物と魚類胃内容物中の餌生物の相対重量の順位相関をみると,両魚種とも夏季には有意な正の相関があった。目合いの異なるケージを用いた実験から判定すると,夏季~秋季にはクロダイ,冬季にはコモンフグによるマガキに対する捕食の影響が大きいことが示唆された。
著者
山田 秀秋 佐藤 啓一 長洞 幸夫 熊谷 厚志 山下 洋
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.249-258, 1998-03-15 (Released:2008-02-29)
参考文献数
34
被引用文献数
31 32

Stomach contents of juvenile Japanese flounders were studied from 3 sheltered and 3 exposed bays. Newly settled flounders (15-20mm in TL) mainly consumed mysids regardless of the availability of food organisms. In sheltered bay areas where mysid densities were low, flounders larger than 60mm preyed mainly on juvenile fish. In exposed inshore areas mysids were abundant and con-stituted the major dietary item of flounder until 200mm. The amount of the stomach contents was not significantly different between the two area types. From monthly investigations it was found that seasonal changes in the feeding activity of juvenile flounders is closely associated with water temperature and mysid abundance. Analysis of the relationship between the total length of flounders (from 15mm to 600mm) and the size and number of prey consumed suggest that small mysid individuals are the most suitable prey items for flounders until 50mm and fish prey items are essential for larger flounders.
著者
田中 秀樹
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.345-351, 2011 (Released:2011-10-06)
参考文献数
42
被引用文献数
5 9
著者
野尻 侑 佐橋 栞太 豊原 治彦
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.84, no.5, pp.826-834, 2018-09-15 (Released:2018-10-19)
参考文献数
25
被引用文献数
1 2

短期間にヤマトシジミを高品質化する目的で,給餌条件を検討した。その結果,0.1 g/Lの可溶性糖源では効果がなかったのに対し,同濃度の米粉給餌によりグリコーゲン量が約2.2倍に増強されたことから,懸濁物食のヤマトシジミにとって不溶性餌料が効果的であること,塩分濃度0.5%から1%への高浸透圧処理と環境水中へのアミノ酸投与を併用することでグリシン,プロリン,アラニン及びグルタミン酸を増強できることが分かった。
著者
尾田 昌紀
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.213-215, 2010 (Released:2010-05-13)
参考文献数
12
被引用文献数
4 2

琵琶湖の固有亜種であるビワマスは水産重要種であるため古くから種苗放流が行われているが,自然産卵の実態については明らかではない。ビワマスの産卵実態を把握するために,2008 年の産卵盛期に姉川を始めとする 10 河川において産卵床の分布調査を実施した。産卵床は姉川で最も多く確認され,次いで安曇川,芹川,石田川の順に多かった。いずれの河川においても,産卵親魚の遡上範囲は河川横断工作物や瀬切れによる遡上障害のため河川の中下流域に限られていた。
著者
長谷川 功 北西 滋 宮本 幸太 玉手 剛 野村 幸司 高木 優也
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
pp.19-00028, (Released:2019-12-10)
参考文献数
77
被引用文献数
7

サクラマスとヤマメは,降海するか河川に留まるかというように生活史は異なるが,同種Oncorhynchus masou masouである。ただし,それぞれが利用される水域や目的はサクラマスは主に沿岸漁業,ヤマメは内水面の遊漁と異なる。また,現在の資源管理体制は両者の生物学的な共通・相違点は十分に考慮していない。そのため,一方の放流種苗が他方と交雑し,生活史の変化すなわちサクラマスとヤマメの資源組成が変化し得る等という懸念もある。本総説では,サクラマスとヤマメに関する先行研究から両者の性質を整理し,野生魚主体の包括的な資源管理を提言する。