著者
辻 謙次
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.86, no.7, pp.481-486, 1991-07-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
17

洋酒の代表であるウィスキーは蒸留酒であるが, あのすばらしい香味の発現は熟成過程を経過することにより得られる。特に樫樽との関係は切っても切れない関係にあり, 品質を左右する大きな鍵を握っていると言っても過言ではない。そこで, ウィスキーの熟成等の研究を通じて, 最高級のウィスキー造りに情熱を燃やしておられる筆者に, 樫樽貯蔵中における熟成のメカニズムについて解説していただいた。
著者
荒木 計雄
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.82, no.3, pp.182-185, 1987-03-15 (Released:2011-11-04)

500年前に讃岐の国の一村に麹の組合があったという。本稿ではこの室本麹座を中心として当時の社会, 政治, 経済の動きを解説して頂いた。筆者が御当地の出身で習俗参考館を設立開館されるなど, 民俗研究家, 郷土史家として活躍されているだけに, 古文書等による裏付けも豊かで, 往時を彷彿させる古い資料が消失してゆく現代においての貴重な資料であり, 讃岐という思いがけない地方からの興味あるレポートである。
著者
宇都宮 仁
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.101, no.10, pp.730-739, 2006-10-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
14
被引用文献数
9 13

清酒の香味に関する評価用語はこれまでにも幾度か見直し・整理されてきたが, 今回, 筆者らを中心とするグループの並々ならぬ尽力により, 本格的な評価用語の体系化と訓練のための標準見本が完成した。ビール, ワインやウイスキー等では, 早くから香味特性の見本が完成しており, 清酒でもそれが待望されていたが, ようやく出来上がったことで, 今後の若手清酒技術者の育成や清酒の評価等がより効率的, かつ効果的に行われるものと期待される。
著者
橋本 直樹
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.8, pp.508-511, 1982-08-15 (Released:2011-11-04)

昨年, 筆者らは「ビール5000年の旅」の映画製作を機に, 古代エジプトのビールづくりを再現した。本稿ではその際の資料の収集, 体験をもとに, 古代と現代のビールづくりの手法を比較, 対比しながら, 5,000年にわたるビールづくり発展の歴史を平易, かつ興味深く解説していただいた。
著者
岡 智
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.72, no.9, pp.631-635, 1977-09-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
12
被引用文献数
1

エチルα-D-グルコシド (α-EG) は清酒にのみ特異的に多量に含まれている成分で, その清酒中における存在が明らかにされたのはつい数年前のことである。α-EGが清酒の香味構成の上で果す役割と, その生成機構を知ることは, 麹に替えて酵素剤が多く用いられる傾向にある時, 意義あることといえよう。
著者
吉田 重厚
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.71, no.7, pp.505-510, 1976-07-15 (Released:2011-11-29)
参考文献数
33

ビールの醸造成分について, 業界の専門各氏が, それぞれ分担して本誌に連載, 解説することになった。個々の成分に関する各論に立ち入る前に, ビールの一般的な成分や, その特微を, 総論的に明らかにしておくことが, 以後連載予定の各章をより良く理解して頂くために, 役立つのではないかと考えたのが, 本章執筆の意図である。
著者
稲橋 正明 吉田 清
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.87, no.12, pp.858-863, 1992-12-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
17

最近, 各地の研究機関やメーカーで優良酵母の開発が盛んに行われているが, 新規な酵母であることを主張するためにはメルクマールが必要である。本稿はオリゴ糖の発酸性の違いから各種の協会酵母をそれぞれある程度特定できることを解説していただいたものである。オリゴ糖の多い清酒を醸造する上で参考になることが多い。
著者
檜作 進
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.12, pp.1005-1010, 1972-12-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
59
被引用文献数
1 1

酒造の重要な課題は, 米のでん粉をいかに巧みに処理するかということであろう。しかし, 酒造の工程がでん粉の状態変化の面から明らかにされ, 管理されているだろうか。酒造を例にあげたが, でん粉を主原料とする他の工業においても大同小異である。この原因は, 老化の評価の方法にあるように思われる。ここに老化の評価に用いられる種々の方法を紹介していただいたので, 問題点などを考えてみたい。
著者
永谷 正治
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.7, pp.424-428, 1982-07-15 (Released:2011-11-04)

プロセス設計というのは製造工程を開発する仕事のことである。プロセスにもいろいろあって, 石油コンビナートを構成する巨大かつ複合したプロセスもある一方, 洗濯物を乾かすというシンプルなものも含まれる・本稿は, 醸造を構成するプロセスの中から適当な題材を選び, それを叩き台にして “多種多様な考え方” を次々と演出して見せる, という趣向と見受けられる。専門書の定義によるとプロセスとは “物理操作の集合” である。したがって著者は醸造を応用物理の一種だと考えるのであろう。そこでは何がどう語られるのか, 他人の目を通して自分を見るのに似たいろんな発見がありそうである。
著者
秋山 裕一
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.85, no.10, pp.731-735, 1990-10-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
28

日本の酒造りは中国大陸から伝来したとされている。両者とも, デンプンの糖化にカビを利用するという共通点はある。しかし, 日本では蒸した粒のままの米に黄麹菌を, 中国では生のままの粉にした麦にリゾープス菌を生やして麹を造るという点で大きき異なる。歴史的にみても, 古代日本で中国式麹が造られたという報告はないという。永年, 酒造りの研究に携わってこられた著者が,「生米麹と石臼」からこの謎がとけるのではないかと指摘されている。二千年のロマンに思いを寄せて-読されたい。
著者
矢嶋 端夫 乙黒 親男 松土 俊秀 奥田 徹 高柳 勉 横塚 弘毅
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.93, no.8, pp.671-676, 1998-08-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
11
被引用文献数
1

ワインから分離した産膜酵母(S. cerevisiae 6菌株およびCandida sp. 1菌株)および産膜酵母標準3菌株に対するパプリカ種子抽出物, 亜硫酸, ソルビン酸およびいくつかのフェノール化合物の抗菌性を検討した。分離7菌株およびCandida krusei(RIFY YTd3)を除いた標準2菌株(S. Serevisiae(RIFY3012)とCandida vini(RIFY2024))のいずれに対してもパプリカ種子抽出物は高い抗菌性を示し, そのMICは50~100μg/mlであった。また, 標準株C. kmsei(RIFY YTd3)はパプリカ種子抽出物に対して耐性を示したが, 亜硫酸には感受性を示し, そのMICは25μg/mlであった。パプリカ種子抽出物に対して耐性が弱い標準株Candida vini(RIFY2024)は, ソルビン酸および亜硫酸に対するMICが300μg/mlと高く, 菌株により特徴ある生育抑制傾向が認められた。分離したS. cerevisiae 2菌株とCandida sp., 標準株C. krusei(RIFY YTd3)およびC. vini(RIFY 2024), 計5菌株に対するパプリカ種子抽出物とソルビン酸, 亜硫酸あるいは種々のフェノール化合物とを併用したが, 顕著な相加あるいは相乗効果は認められなかった。ソルビン酸および亜硫酸は, pHが低いほど, またエタノール濃度が高いほど, 供試5菌株に対するMICは低下したが, パプリカ種子抽出物の抗菌性に対するpHの影響は小さかった。以上の結果, パプリカ種子抽出物はワインの産膜酵母に対して強い抗菌効果が認められ, さらに亜硫酸あるいはソルビン酸との併用により抗菌スペクトルが広がり, ワインの産膜酵母による汚染を防止できる可能性が示された。
著者
土谷 紀美 西村 賢了 岩原 正宜
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.97, no.12, pp.878-882, 2002-12-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
11

本報告では, 液体培養で得られる麹菌体を利用したリアクターにより, 菌体結合型グルタミン酸脱炭酸酵素 (GAD) の作用でGABAを生産させることを試みた。さらに, 通電透析により基質であるグルタミン酸との分離も試みた。また, 生産効率を高めるため, 高いGAD活性を有する菌体を得る条件を検討した。その結果, 液体培地のpHが5.0であること, 培地中への50μMのPLPの添加が効果的であることが明らかとなった。液体培養によって得られたペレット状の麹菌体 (乾燥重量6g) のGAD活性を低温処理によって高め, 反応液pHを5.3-5.5にコント'ロールした撹拝槽型リアクターに麹菌体を担体として用い, 菌体上のGADに500mMグルタミン酸と0.5mMピリドキサール5-リン酸を反応させた。今回, 菌体の破砕処理や固定化は行わず, ペレット状の菌体をそのまま用いた。その結果, 100分反応後のGABA濃度は340mM, 200分後には400mMに達し, 基質からの変換率は約80%と高かった。生産効率は8.5mmol-GABA/g麹菌体/hr (0.9g/g/hr) と, 極めて高く, 短時間で高濃度のGABA溶液を得ることができた。その際, リアクターの反応温度は, GADの熱安定性から37℃ が望ましかった。また, グルタミン酸とGABAの分離には, イオン交換膜を利用した通電透析が効率的であることがわかった。
著者
小林 信也
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.84, no.12, pp.818-822, 1989-12-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
7
被引用文献数
3

製造技術の向上により, 全国的に高品質の清酒が醸出される現在において, 減点法による品質評価法は, 酒質の均一化, 平凡化を助長するという欠陥がみられるようになった。また, 専門家間の酒質の表現法から, 一般消費者も理解できる表現法への脱皮も要請されるようになった。このような背景から, 加点法という新しい清酒の評価法の作成に携わられた筆者にその内容について解説していただいた。