著者
白木澤 涼子
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究では、第二次世界大戦を未曽有の人災と捉え、そこでの町内会の働きをソーシャル・キャピタルの観点から捉え直し、そのポジティブとネガティブな二面性を明らかにする。ソーシャル・キャピタルの二面性を前提として、今後のわが国の自然災害・人災を問わず、災害時における人々の生活と生命を守る指針の一つとなることを目指す。従来の研究史では、町内会は第二次大戦下、戦時国家体制を支えたとされた。仮に町内会がなければ、国民生活はより壊滅的でパニック状況に陥り、戦後の復興は遅れたであろう。戦時下の町内会は、人々の生活と生命を守るために、地域の実情と特徴に合わせた創意工夫ある働きを行った。その全国的実態の解明を行う。
著者
日置 幸介
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

GNSS衛星を利用した観測によって地震に伴う電離圏全電子数の異常に関する総合的な研究を行った。本研究では地震十分後に生じる異常の振幅と背景となる電離圏全電子数と地震のモーメントマグニチュードの関係を定式化した。また地震直前に電離圏全電子数に異常が生じることが2011年東北沖地震によって発見されたが、本研究では数多くの地震のデータ解析から、異常が始まる時間がM9クラスで40分前、M8クラスで20分前であること、全電子数の変化率でみた異常の大きさがMwと背景全電子数の関数として表されることを明らかにした。また異常の空間構造から、地震前に地表に発生する正電荷が原因である可能性が高いことがわかった。
著者
中田 北斗
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

鉛はその廉価性や利便性から人類の生活に欠かせない金属である一方、採掘活動に伴う鉛汚染により、途上国を中心に年間23万人が鉛中毒で死亡している。鉛の毒性評価や環境モニタリングは広く行われているが、有効な鉛中毒の治療法や汚染環境の修復法は皆無である。本研究では、世界各地に自生し栽培が容易な植物モリンガを用いて、鉛中毒の治療法および汚染環境の修復手法の開発を目指す。
著者
尾崎 一郎 堀田 秀吾 徐 行 郭 薇 山本 龍彦 町村 泰貴 池田 公博 米田 雅宏
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、ツイッターやフェイスブックに投稿された愚行に関するいわゆる「炎上」に見られるように、近時ネット上で頻繁に見られるようになっている私人間の相互監視と過激な制裁行動を実証的に分析し、個人の自由やプライバシーや適正な手続といった国家法の理念から乖離した一般人の法意識を明らかにする。現代のネットワーク社会において人々が抱いている秩序意識の構造を解明することで、人権を基軸とした法の理念と安全や道義性を重んじる社会の規範意識とを適切にすり合わせることのできる新しい国家法の役割を示すことができる。情報通信技術が高度に発達した現代社会における法の位置付けを再考する研究である。
著者
藤本 貴史
出版者
北海道大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

一部のドジョウでは天然でクローン生殖や倍数性配偶子の産出が認められ、その特殊な配偶子形成を人為的に制御できれば非常に有用な技術となりうるが、その分子メカニズムは未だ不明である。このメカニズム解明において、ゲノム倍加が起こるタイミングの特定とその時期の生殖細胞を単離し解析しなければならず、そのためにはドジョウの生殖腺発達段階のステージングと生殖細胞を解析するための新たな実験系を構築する必要がある。そこで、本年度はサンプルとして入手が容易な通常両性生殖個体を用いて実験家系を作出し、継時的に体長測定を行うとともに生殖腺を採取し、組織学的に解析に供した。そして、本年度の研究によって仔魚期から性分化期までの生殖腺の発達段階のステージングをおおむね行うことができ、生殖細胞の増殖期と減数分裂開始時期の特定ができた。その結果、成長初期の生殖細胞の活発な増殖はメスで顕著に観察され、ある一定の体サイズに成長した段階で、雌の生殖腺では減数分裂に移行し卵形成が開始することが明らかとなった。本知見はクローンドジョウの生殖腺における生殖細胞のゲノム倍加が生殖腺発達段階のどの時期で起こっているかを調査するためには必須の基礎的知見であり、希少なクローン個体を用いた生殖腺サンプリングにおいて、調査に必要なサンプリング時期を定めるためには重要である。しかし、生殖腺ステージングで明らかとなった減数分裂開始時期は、卵巣発達過程においてかなり早い段階で起きており、この発達段階の卵巣を実体顕微鏡下で単離することはかなりの困難を要する。この対策として密度勾配遠心による卵巣細胞の分離が考えられ、本年度はパーコールを用いた生殖細胞の分離・純化技術の開発を遂行し、特定の密度分画における生殖細胞の分離が可能となった。
著者
池田 証壽 鈴木 慎吾 永崎 研宣 大槻 信 斎木 正直
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2019-04-01

日本の平安時代に僧侶の手によって編纂された漢字字書である高山寺本『篆隷万象名義』、天治本『新撰字鏡』、図書寮本『類聚名義抄』、観智院本『類聚名義抄』の四書は当時の日本人による漢字研究の優れた成果であり、人文学研究の基礎資料となっている。しかし、いずれも古写本であるため、崩し字や異体字が多く、解読に困難が多い。上記の四書のうち観智院本『類聚名義抄』は、収録の和訓が『日本国語大辞典』等に多数収録される重要資料であるが、これまでに全文の活字翻刻はなかった。本研究では観智院本『類聚名義抄』の全文翻刻と注釈を作成して、その内容をインターネット上に公開し、自在に検索できるようにすることを目指す。
著者
浅香 卓哉
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

近年、骨吸収抑制薬関連顎骨壊死(ARONJ)に対する治療方針について、様々な検討が実施されている。多血小板フィブリンを用いたARONJの外科的治療を検討したが、再生医療等の法律の影響にて達成困難となった。当科でのARONJ発症率は従来の報告よりも高い傾向にあった。抜歯に伴う休薬は減少傾向にあり、休薬によるARONJ予防効果は認められなかった。ARONJに対する治療法に関しては、悪性腫瘍由来よりも骨粗鬆症由来のARONJの治癒率が高く、保存療法と比較して外科療法の治癒率が高い傾向にあった。FDG―PETによる比較では、ARONJは他の骨髄炎と比較して高い集積を認め、炎症の活動性亢進が示された。
著者
後藤 晃 帰山 雅秀 前川 光司
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究では、北海道の水系に定着したブラウントラウトの生活史と回遊性、また本種の食性と近縁サケ科魚類との種間競争の実態を解明し、本種による在来淡水魚類への影響を評価する目的で、北海道南部の戸切地川、および中央部の支笏湖水系において生態的・集団遺伝学的調査を行い、以下の成果を得た。1.戸切地川において、ブラウントラウトは河口から約7km上流地点に位置する上磯ダム湖で主に生育し、雌では2歳で尾叉長275mm以上に、雄では2歳で172mm以上に達すると性成熟し繁殖に加わることが示された。2.本種の一部の個体は、秋季に尾叉長210-270mmの成長すると、スモルト化し、翌春に川を下って降海型(シートラウト)になること、また降海型は沿岸域で成長・成熟した後、繁殖のために河川に遡上することが確認された。3.本種は尾叉長200-300mmの個体ではトビケラ目幼生、陸生落下動物の他にフクドジョウなどの底生魚類を主に捕食することが示された。4.本種とニジマスが定着している支笏湖水系において、流入河川の美笛川ではブラウントラウトは主に底生型動物、ニジマスは遊泳型動物を摂餌し、2種は餌資源を分割利用していることが示された。一方、支笏湖内では、ブラウントラウトは陸生落下動物が少ない時期に、イトヨ、アメマス、ヒメマスなどの魚類を捕食することが明らかになった。5.餌ニッチの幅では、ブラウントラウトはニジマスより低い傾向を示した。6.ブラウントラウトによる特定魚種への捕食圧が大きくはなかったため、在来魚類の遺伝的集団構造に変化は認められなかった。
著者
川崎 了
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究の目的は,海岸域の自然材料(微生物,海水,海砂,貝殻片など)を用いてCaCO3の析出により固化した人工ビーチロックを作製し,港湾岸壁のコンクリートの一軸圧縮強さ20~30 MPa程度を1カ月程度で達成する基本技術を新たに開発し,その有効性を確認することである。国内の海岸域においてウレアーゼ活性が高い尿素分解菌を探索した結果,沖縄県や北海道などの土質試料よりCaCO3析出に適した菌株が発見された。また,砂供試体の室内加速固化試験を実施した結果,試験開始から3週間後に針貫入試験による推定一軸圧縮強さ約20 MPaが得られた。結論として,新たに開発された技術の有効性が確認された。
著者
千葉 惠
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

アリストテレスの体系の頂点に形而上学が位置する。これは存在としての存在を研究する存在論であり、また第一の永遠の不動の存在者を研究する神学でもあるが、「第一のものであるが故に普遍的である」という仕方で両者は総合される。彼の体系は壮大で緻密なカテドラルに比すことができる。尖塔は天界の証人として神学であり、基礎およびネイブは弁証術と自然学である。本研究は弁証術と自然学の相補性を方法論上明らかにしている。弁証術の方法と実践は区別されるべきであり、その方法は「弁証術的に(dialektikos)」にではなく「ロギコースに(形式言論構築上)」形成されていることを明らかにした。従来はこの二つの方法が区別されていなかった。そして存在の形式言論構築的な分析としての「ロギコース」という手法は自然学の探究のみならず、神の存在の探究にいたるまで用いられる手法であることを明らかにした。(報告書第一論文)彼の重要な形而上学的概念である「本質(toti en einai)」もロギコースに、非因果論的に論じられることを明らかにした。実体に自体的同一性が端的にあることがロギコースに主張される。ロギコースに自体的同一性として特定される本質を現実世界で因果論的に実現しているものの理解を可能にするものが質料形相論である。従来は実体の一性を構成する因果論上基礎的な特徴を本質として理解してきた。本質は形式言論上存在要請され、それを満たすものが自然のうちに因果論的に探究される。(第二論文)さらに、この因果論的展開を可能にし、弁証術と自然科学を架橋するのが彼の論証と定義の理論であることを明らかにした。因果性を明らかにする論証をソクラテス以来の「何であるか」の探究の延長線上に種々の定義を判別する定義論に組み込む様式を明らかにした。(第三論文)
著者
望月 恒子 諫早 勇一 中村 唯史 岩本 和久 谷古宇 尚 越野 剛 井澗 裕
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

「辺境と異境」という視点からロシア文化の研究を行った。具体的には、第一に、極東、サハリンなどの辺境と中央(モスクワ、ヨーロッパ・ロシア)との文化的相互作用を研究した。第二に、中国・日本やヨーロッパにおける亡命ロシア社会の文化活動について、文学、美術、宗教など多岐にわたる分野で、その特徴を調査研究した。非中心といえる「辺境と異境」を視点とすることによって、ロシア文化を包括的に捉えることができた。
著者
田口 茂
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

第一に、現象学的観点から見た「現実の手応え」とも言える明証論を追究し、現実を自然に生きる態度と、それについての「超越論的な気づき」との間の密接な関係を明らかにした。第二に、田辺元の「媒介」概念の研究により、現象学を媒介論的に展開するアイデアを複数の論文等で発表した。第三に、神経科学者、数学者、認知科学者との共同研究により、「意識」の学際的研究を推し進め、量子論とも整合的で、数学の「圏論」のアイデアを採り入れた新しい現実観を書籍等で提示することができた。
著者
田中 佐織 宮治 裕史 井上 加菜 田中 享 谷野 美智恵 加藤 昭人 金山 和泉 西田 絵利香 村上 秀輔 川本 康平 宮田 さほり
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

歯根破折歯接着治療法の予知性向上を目的として,封鎖材料のレジン表面を改変し培養細胞シートを貼ることでレジン上に歯周組織再生を目指した.レジン表面をカーボンナノチューブ(CNT)とナノβ-TCPでコーティングした.細胞付着試験では,CNTコートした試料に付着した細胞はコントロールと比較すると多く,細胞伸展が良好であった.また細胞増殖性試験でも高い細胞増殖性がみられた。皮下埋植試験では著明な炎症反応は認められず,CNTコートした試料に培養細胞シートを貼った試料周囲に骨様組織形成が認められた.以上よりレジン表面を改変することにによりレジン上に歯周組織再生の可能性が見出された.