著者
佐藤 至英 戸澤 希美
出版者
北翔大学
雑誌
北方圏生活福祉研究所年報 (ISSN:1342761X)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.39-45, 2003-10-01
被引用文献数
3

本研究は,予備調査で得られた原尺度をもとに,独居高齢者が日常生活において,どのようなストレスをかかえているのか,身体的健康,精神的健康,サポート,生きがい,経済的満足度と独居高齢者の日常生活におけるストレスはどのような関係にあるのかについて検討することを目的とした。対象者は北海道N市ならびにM市に在住する65歳以上の独居高齢者85名(男性16名,女性69名)。因子分析の結果,独居高齢者のストレスとして,老いへの不安(高齢ストレス),一人で生きていくことへの不安(自律ストレス),家族も含めた対人関係(対人ストレス),そして身体的不調(病気ストレス)の4タイプが抽出された。4タイプのストレスと各要因との関係を分析した結果,(1)身体的にも精神的にも健康を保ち,趣味などの生きがいをもつ人は,老いへの不安や一人で生きていくことへの不安が低い,趣味などの生きがいをもち,家族からのかかわりに満足を覚え,経済的満足度が高い人ほど精神的健康が保たれていること,(2)対人関係や体調不良等によるストレスは,家族も含めたまわりの人からのサポートによって,その程度は変化すること,(3)対人関係と老いへの不安がストレスとなり精神的健康に影響を及ぼしていることが明らかとなった。
著者
中出 佳操
出版者
北翔大学
雑誌
人間福祉研究 (ISSN:13440039)
巻号頁・発行日
no.5, pp.85-92, 2002

イギリスの小学校で,いじめ問題を無くそうとしてるめられたのが,仲間同士の支え合い,すなわちピア・サポート活動である。名称はピア・カウンセリングであったり,ピア・ヘルピングであったりと,未だ定まってはいないが,今や諸外国でこの活動が教育の中に取り入れられ,その効果も既に立証されている。日本においても数年前に,ある中学校に取り入れられ,現在盛んに教育者の間で学習され活用され始められている。筆者は大学生の健康問題に取り組むうちに,大学生同士が,正しい知識を持ち,お互いに支え合うことの大切さを実感した。カナダでの研修を元に,今年度より本学の学生に,ピア・サポーター養成プログラムの実践を開始した。開始後4ヶ月間の成果については,既に報告済みである。今回は,その後の実践の成果とそれに対する考察をまとめ,今後の活動の基礎とするものである。今回のプログラムの中心テーマは,「ピア・サポーターの自己効力アップトレーニング」と,「健康生活についての学習会下である。It was peer support activity that was initiated by a British primary school to solve a problem of bullying. The activity is also sometimes called peer councelling or peer helping. While the naming is not yet established, this activity is now incorporated into education in many countries and has proved its effectiveness. In Japan, the activity was started by a junior high school several years ago, and now many more teachers have been keen on taking it into practice. Facing health problems among university student, the auther realizes the importance that students themselves need to gain correct knowledge and to support each other. Based on studies in Canada, the author started the peer supporter training program for our students this year. A report of the purogram for a period of the four months since beginning was already reported. This report summarizes a result after the earlier report and consideration on the result, leading to further studies. The main themes of the program are "training to enhance self efficacy as a peer supporter" and "study meeting about health life".
著者
大宮司 信
出版者
北翔大学
雑誌
北翔大学北方圏学術情報センター年報 (ISSN:21853096)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-4, 2012

イムは日本の北方の島である北海道に住むアイヌ民族に見られる,行動面並びに言語面における特徴的な状態であ る。もちろんアイヌ民族は日常生活の中でこの現象は見慣れたものであり,病気とみなしてはいなかった。一方西洋 医学の立場に立つ精神科医は,これを精神医学的ないし異常精神症状として記載してきた。その特徴的な症状は,ア イヌ語で蛇を意味する「トッコニ」などの言語的な刺激によって惹起される,エコラリアやコプロラリアといった爆 発的な言語表現,および自動運動や退行した性的行動などを含む乱暴で突発的な制御できない反響症状である。しか し我々が調査した現在では,このような古典的で特徴的なイム現象は既に失われていて,わずかに断片的なエコラリ アや反響行動のみが,あたかも残された足跡のように,アイヌ民族のごく少数の者に見られるだけであった。本論文 では,イムの精神学的側面と,アイヌ民族の歴史の視点からみた文化的な背景,そしてイムの過去から現在への変容 について述べる。
著者
高岡 朋子 大信田 静子 北村 悦子 泉山 幸代 辻 美恵子 富田 玲子 永田 志津子 福山 和子
出版者
北翔大学
雑誌
北方圏生活福祉研究所年報 (ISSN:1342761X)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.47-57, 2003-10-01

北国に住む高齢者の衣生活の質の向上を目指し,衣生活の実態と意識を調査した。道内主要都市6ヵ所に在住する65歳以上の健康な男女132名を対象に,生活の満足度,冬服の着用実態,被服行動の意識等の質問項目を面接形式で実施した。成果:被験者の90%以上が生活に満足し,自分の趣味や老人仲間との交友に生きがいを感じていた。冬服の着用実態として,男性は下着が長袖シャツにブリーフと長丈パンツを着用し,女性はシャツに五分丈パンツや七分丈パンツを着用し,男女ともに保温性を確保していた。室内の上着では男女ともにセーターとズボンスタイルが7割以上をしめていた。また男性の普段着として着用したい服種は,セーターとズボンで外出着としてはスーツまたは,サファリー風ジャケットとズボンの組み合わせであった。女性は普段着としてパンツを選んでいるが,外出着には8割以上がスカートを選んでいた。次に被服行動の意識調査結果から,「着やすく,動きやすく,素材は柔らかいもの」に高い評価があり,肩に負担がかからない着装を好んでいることが分かった。被服行動の因子分析結果では「おしゃれ性」「素材性」「機能性」「着装の好み」「ゆとり性」の5因子が抽出された。さらに被験者の年齢を高低に分け因子得点の平均値を求めた結果,71歳未満の低年齢層は素材を重視し,72歳以上の高年齢層は機能性と着装の嗜好が高い傾向にあり,男女別の因子得点平均値からは女性のほうがおしゃれ性が高く,素材へのこだわりが高い傾向にあることが分かった。マズローの欲求階層理論を応用しての質問からは,生理的欲求と所属の欲求の被服行動が高く,安全性の欲求と自己実現の欲求は低く現れた。
著者
中出 佳操
出版者
北翔大学
雑誌
人間福祉研究 = Human welfare studies (ISSN:13440039)
巻号頁・発行日
no.7, pp.135-143, 2004-03-20

本稿は,ピア・サポーターが性教育普及のために,他大学とのネットワーク作りを行った事に対しての意義と活用について検討したものである。思春期の性感染症や人工妊娠中絶は,わが国において大きな問題となってきている。特に北海道は平成7年より急増し,全国の2倍の数値を示している。本学のピア・サポーターは他大学の学生に呼びかけ,性教育のための思春期学生フォーラムを開催した結果,多くの大学生が参加し,普及活動を継続することとなった。ネットワーク作りは,参加者の意欲を高め,性教育普及活動の基盤つくりの一つとして意義があった。
著者
飯田 昭人 野口 直美 斉藤 美香 丸岡 里香 川崎 直樹
出版者
北翔大学
雑誌
北翔大学北方圏学術情報センター年報 (ISSN:21853096)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.55-65, 2014

本研究報告は,平成26年1月11日(土)に開催されたポルト市民講座『青年期の自殺予防を考える』における3名の話題提供者の文章を加筆修正して,研究報告としてまとめたものである。そもそもこの市民講座は,丸岡里香准教授が代表を務める「思春期教育グループ」と,飯田昭人が代表を務める「学生支援グループ」との共催で開催されたものである。本講座では,特に若者の自死・自死念慮にまつわる思いや背景について考えていくことを目的とし,テーマは「自殺予防」であるが,自殺を"させない"ための対策というよりも,若者年代の人間に自分自身の人生をいかにして生きてもらうか,死を選択する気持ちになってしまった若者に対して私たち大人はどうあるべきかなどを率直に考える時間にしたいと考え,企画したものである。話題提供者は,思春期教育グループより旭川東栄高校で養護教諭をされている野口直美氏に,学生支援グループからは北海道大学保健センター講師でカウンセラーをされている斉藤美香氏に,日ごろの臨床実践を語っていただいた。そして,両グループを代表して,学生支援グループの飯田昭人より,自殺問題に関する統計資料における自殺問題の特徴やいくつかの提言をしたものが本報告に収録されている。なお,当日は約50名の参加者の方々にお越しいただき,質疑応答も多く活発な議論ができたことを付言し,自殺予防活動に少しでも寄与できればと思い,改めてここに当日の市民講座でのやりとりを再現したいと考える。
著者
飯田 昭人 野口 直美 斉藤 美香 丸岡 里香 川崎 直樹
出版者
北翔大学
雑誌
北翔大学北方圏学術情報センター年報 = Bulletin of the Northern Regions Academic Information Center, Hokusho University (ISSN:21853096)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.55-65, 2014

本研究報告は,平成26年1月11日(土)に開催されたポルト市民講座『青年期の自殺予防を考える』における3名の話題提供者の文章を加筆修正して,研究報告としてまとめたものである。そもそもこの市民講座は,丸岡里香准教授が代表を務める「思春期教育グループ」と,飯田昭人が代表を務める「学生支援グループ」との共催で開催されたものである。本講座では,特に若者の自死・自死念慮にまつわる思いや背景について考えていくことを目的とし,テーマは「自殺予防」であるが,自殺を"させない"ための対策というよりも,若者年代の人間に自分自身の人生をいかにして生きてもらうか,死を選択する気持ちになってしまった若者に対して私たち大人はどうあるべきかなどを率直に考える時間にしたいと考え,企画したものである。話題提供者は,思春期教育グループより旭川東栄高校で養護教諭をされている野口直美氏に,学生支援グループからは北海道大学保健センター講師でカウンセラーをされている斉藤美香氏に,日ごろの臨床実践を語っていただいた。そして,両グループを代表して,学生支援グループの飯田昭人より,自殺問題に関する統計資料における自殺問題の特徴やいくつかの提言をしたものが本報告に収録されている。なお,当日は約50名の参加者の方々にお越しいただき,質疑応答も多く活発な議論ができたことを付言し,自殺予防活動に少しでも寄与できればと思い,改めてここに当日の市民講座でのやりとりを再現したいと考える。