著者
鈴木 潔
出版者
同志社大学
雑誌
言語文化 (ISSN:13441418)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.279-296, 2007-12

E・T・A・ホフマンの『アウトマーテ』という小説は、17、18世紀にヨーロッパで多く作られたからくり人形を題材にした作品である。物語の発端に「喋るトルコ人」という人形がでてきて、この人形に伺いを立てるとお告げをする謎をめぐってストーリーが展開する。人形が人間の運命を透視する謎を二人の若者が追及してゆくが、その過程で当時の様々な自動人形、自動楽器が取り上げられる。二人の推理は人形制作者の何らかの手立てで、未知の世界を覗く霊視者が人形を通じて謎の交信を送っているのではないか、というように進み、物語は、当時これもまた世間の注目を浴びていた動物磁気(催眠術)による魂と魂との不思議な触れ合い、精神の交感というテーマに進んでいく。
著者
廣安 知之 石田 裕幸 三木 光範 横内 久猛
出版者
同志社大学
雑誌
同志社大学理工学研究報告 (ISSN:00368172)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.24-33, 2009-04

一般的な進化的多目的最適化手法は、目的数の増加に伴い、導出される解集合の精度が著しく悪化する。この問題に対し、選択圧の強化、探索領域の削減、評価指標の利用など、様々な進化的多目的最適化手法の改良が行われてきた。そこで本稿では、これら手法の探索の様子を確認することにより、多数目的最適化の問題点について述べた。多数目的最適化における探索の問題点は2種類に分類される。1つ目は、パレート最適フロントへの収束が難しいことである。これは、探索中の選択圧の低下や、目的関数空間の広さに対する探索解数の少なさによってもたらされることを確認できた。2つ目は、探索解集合の多様性維持が難しいことである。選択圧を高めることによりパレート最適フロントへ収束したとしても、解集合の多様性が失われてしまうことを確認できた。これらの問題点を考慮し、探索領域を削減する手法の例として、意思決定者の選好情報を利用する手法の探索を確認したところ、解集合の精度と多様性にはトレードオフの関係がみられた。Well-known Evolutionary Multi-objective Optimization (EMO) algorithms, such as NSGA-II and SPEA2, show rapid degradation of accuracy with increasing number of objectives. To solve this problem, EMO algorithms have been modified by strengthening selection pressure, limitation of search area in the objective space, and use of indicator functions, etc. Here, we describe the difficulties of the search in many-objective space by examining the search of some modified EMO algorithms. The difficulties can be divided into two classes. The first is the difficulty of convergence toward the Pareto-optimal front, which was confirmed to be due to weak selection pressure and disproportion between the extent of search area and the number of solutions. The second is the difficulty of diversity maintenance; it was confirmed that the solutions lost their diversity even if they converged toward the Pareto-optimal front by strengthening the selection pressure. For these difficulties, we examined the search of a preference-based algorithm as an example of a strategy limiting the search area. We demonstrated a trade-off relation between accuracy and diversity through computational experiments.
著者
カーバー リンダ 宮地 ひとみ(訳)
出版者
同志社大学
雑誌
同志社アメリカ研究 (ISSN:04200918)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.39-46, 1999-03-20

記念シンポジウム「ジェンダー・国家・市民権」, Fortieth Anniversary Symposium : Gender, Nation, Citizenship11月24日、アメリカ研究所の公開講座「ジェンダー・国家・市民権」が開催された。パネリストは、リンダー・カーバーアイオワ大学教養学部および歴史学科教授と、上野千鶴子東京大学文学部教授であった。カーバー教授は前全米アメリカ史学会会長で、アメリカ市民としての女性のあり方を歴史的に検証する研究を中心に女性と国家の関係について問題提起し国際的に活躍するアメリカ史研究家である。著書にWomen of the Repubilc: Intellect and Ideology in Revolutionary America, Toward an Inteleectural History of Womenなどがある。また、上野教授は社会学者で、日本を代表するジェンダー論の理論家として国際的に活躍しておられる。近著に『近代家族の成立と終焉』、『発情装置』、『ナショナリズムとジェンダー』などがある。なお、コメンテーターは女性史の分野で活躍する西川祐子京都文教大学教授、『近代的家族と国民化について』の著作で近年脚光を浴びる牟田和恵甲南女子大学助教授、モデレーターはアメリカ研究所の池田啓子が務めた。訳:宮地ひとみ
著者
本井 康博
出版者
同志社大学
雑誌
キリスト教社会問題研究 (ISSN:04503139)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.327-331, 2008-02
著者
權 永錫
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.167-179, 2006-07

研究ノート(Note)この20年余りは新自由主義に基づいたNPM論が行政改革の基本理念として位置づけられた。政府部門に競争と市場原理や成果主義人事管理の導入、構造改革の推進、企業型政府の模索などあまりにも激しい変化が続く中、行政学の本来的な研究領域が経営学や経済学に侵害されているのではないかとの不安を持ち、韓国で行われている行政革新プログラムを事例に上げ、行政の本来の役割とNPM論の関係を考察してみようと思った。 先ず、韓国における行政改革の歩みを現代史を中心に歴史的な観点からみたうえで、各時代の主な改革の動きと特徴の検討を通じて、現在、行われる韓国の行政改革に対する理解を助けようとした 。 第3章と第4章では韓国行政自治部の政府革新プログラムの柱を成していると思われる、政府樹立以降初めてのチーム制導入の動きとバランス∙スコアカードを用いた成果主義業績評価システム導入、顧客志向の行政システム整備などNPM的な改革政策について詳しく説明した。 第5章は行政自治部の政府革新が抱えている問題や、今後の研究の方向を、NPM論の批判的な立場から考え、公務員に求められるのは管理能力ではなく政策能力であることと政策的能率を求める成果主義が必要であること、多面的能力評価が人気投票化する恐れ、顧客志向行政の現実的な難しさなどに触れた。 最後の第6章では、政策の意味や政策能力と成果主義をどう結びつけるのか、成果を引き出すための政府組織のあり方や行政に対する成果評価システムの構築など、行政学の理論と管理手法を築き上げていくことがこれから先に力を入れていくべき研究課題であることを打ち出した。
著者
田口 哲也 ソルト ジョン
出版者
同志社大学
雑誌
文化情報学 (ISSN:18808603)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.37-42, 2007-03

2006年1月28日にタイのナショナル・アーチスト(日本の人間国宝に相当する)である伝統音楽家、ジャエン・クライシトン氏とのインタヴューを世界で最初に行った。これはそのときの模様を忠実に再現した記録である。インタヴューを行ったのはマハチューラロンコン大学、タマサート大学などで比較宗教学や哲学を講じた経験のあるハーバード大学ライシャワー研究所のジョン・ソルト博士。通訳を担当したのはバンコクのイタリア大使館勤務、ソムスリ・ポップピプグトラ氏で、同志社大学文化情報学部の田口哲也が同行した。ジャエン氏はどのようにして伝統音楽の道を選ぶようになったのか、また、どのような経緯でナショナル・アーチストの栄冠を獲得したのか、また、珍しいヨーロッパ、アメリカ公演のときの模様、タイの伝統音楽の特徴、さらには現在の音楽状況などについて詳しく語っている。
著者
水原 紹
出版者
同志社大学
雑誌
社会科学 (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.84, pp.33-55, 2009-07

本研究は『社会科学』第78号で検討したランドマーク商品としての携帯音楽プレーヤー(ウォークマン)に現在主流となっている携帯音楽プレーヤーのiPodを加え,比較を試みたものである。既に「ランドマーク商品」としてウォークマンをはじめとする携帯音楽プレーヤー(前回は携帯「オーディオ機器」と表記)のランドマーク性について検討してみたが,携帯音楽プレーヤーは今も進化の途中であり,特に2001年に発売されたアップル社のiPodの与えた影響というものは大きい。そこで同じ携帯の音楽プレーヤーではあるが,実際かつてのウォークマンとはどう違うのか,その社会的影響力はウォークマン以上に大きいと考える。ウォークマンが音楽の聴き方を変え,若者のライフスタイルを変えたのは周知の事実であるが,iPodはこれに加えてソフト産業そのもののあり方にまで大きな影響を与えた。またそれはアップルとソニーというコンピューター会社と家電会社という製品の種類の異なった会社だからこそできた発想の違いであり,コンピューター会社だからこそできたアプローチでもあった。携帯音楽プレーヤーは予想外の全く次元の違う分野から高度に発展をすることでそれまで予想もしなかったランドマーク商品を生み出したと言えよう。
著者
田原 昭四
出版者
同志社大学
雑誌
經濟學論叢 (ISSN:03873021)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.29-53, 2006-03

5大工業国を中心にして、歴史的観点から景気循環の周期性を検証した。また、物価変動の面から、戦前のデフレ不況と戦後のインフレ不況の相違を考察した。さらに、世界三大不況である欧米大不況、世界大恐慌、平成大不況を取り上げ、それぞれの特徴と形態を分析した。そして、大不況はいずれも複数個の景気後退から構成されており、原因は大規模なバブルの発生と崩壊であり、かつこの現象は数十年間隔で発生していることなどを解明した。This paper examines the following phases of three great depressions in the world on business cycle history: the periodicity of business cycle seen from a historical point of view and differences in price variation between the prewar deflationary depression and the postwar inflationary depression. In addition, the forms and characteristics of three world major depressions―depression in Europe and America, the Great Depression, and the Heisei depression―are analyzed with a comment that a great depression consists of the plural number of regression and is caused by the outbreak and breakdown of bubble economy, an occurrence which has been seen at intervals of several decades.
著者
宮本 勝浩
出版者
同志社大学
雑誌
經濟學論叢 (ISSN:03873021)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.240-255, 1995-03
著者
新関 三希代
出版者
同志社大学
雑誌
經濟學論叢 (ISSN:03873021)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.373-401, 2006-12

本論は、日経225株価指数、及び追加型株式投資信託の日次データを用いて、価格収益率とボラティリティの関係について実証分析を行っている。危険資産のリターンが負の場合は、正の場合に比べてそのリスクが大きいという負の因果性が見られるか否か、ノンパラメトリックな回帰分析を用いて実証するとともに、その理論的分析をプロスペクト理論を用いて行っている。結果、日本の株式インッデクス、及びインデックス連動型の投資信託にはこの負の因果性が見られ、プロスペクト理論における価値関数がその投資家行動を説明しうることを示した。しかし、分配回数の多い人気投資信託や収益性を重視した投資信託には両者の明確な因果性が見られず、特に、前者はリターンの大きさに関係なく、低いリスク水準を一定に保っていることがわかった。これは、分配型投資信託が人気商品になっている要因の一つであると考えられる。
著者
小林 龍馬
出版者
同志社大学
雑誌
經濟學論叢 (ISSN:03873021)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.157-191, 1987
著者
杉本 純子
出版者
同志社大学
雑誌
同志社法學 (ISSN:03877612)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.4267-4296, 2009-02

論説(article)債権者が人的担保を設定するのは、究極的には債務者の倒産時に備えて、債務者以外の責任財産からも債権の回収を図るためである。破産法は、そのような債権の効力の強化を図った債権者に対して開始時現存主義を適用している(破産法104条2項)。近時、この開始時現存額主義の適用範囲をめぐって、大阪高裁にて相反する二つの裁判例が出現した。本稿では、これらの裁判例について研究し、検討を加えている。
著者
井上 史
出版者
同志社大学
雑誌
社会科学 (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.84, pp.1-19, 2009-07

先に発表した拙稿「一九六〇年代の同志社生協--機関誌『東と西と』を通して」(『社会科学』第八一号、二〇〇八年七月)に続き、一九六〇年代末から一九八〇年代前半の同志社生協の足跡を整理し、大学生協運動史の一斑を考察する。資料とするのは、同志社生協の機関誌『東と西と』一九六七年一一月号から一九八六年一月号までの一九年分であり、これらは設立五〇年発祥一一〇年を記念して発行された『同志社生協史料集II「東と西と」第二期(一九六七〜一九八五)』(発行・同志社生協、編集監修・同志社生協五〇年史編纂委員会、二〇〇九年二月)に復刻されている。一九七〇年代、八〇年代は、九〇年代以降の現代の目から見れば、中間的な移行期であり、かつ現代の種が蒔かれた時代といえる。同志社生協の事業と運動も、七〇年代末に提起され、今日の大学生協運動の基本路線とされる「学園に広く深く根ざした大学生協」へと歩み出す変化と模索の渦中にあった。一九六七年六月の第一八回総代会を契機に運動偏重型・闘争型からの脱却に踏み切ったものの、大学、地域、職域を含むオール生協運動の民主的発展・強化に重点が置かれ、その結果、大学当局とも、また学内自治組織とも根深い緊張関係が続いた。日本経済は高度経済成長の最高潮から終焉期を迎えて、「狂乱物価」、インフレが学生生活を直撃し、産業構造・生活意識のすべての局面で「重厚長大から軽薄短小へ」「消費社会化」「情報化」が進むなかで、同志社生協は時代の変化の即応に苦しみ、経営的には停滞を余儀なくされた。一九八六年四月の田辺校地開校に至る、そしてその後も続く、長い模索の始まりでもあった。その変化と模索の中から今日的な意義や希望を見出すことができるか。本稿の狙いであり、課題である。
著者
西尾 昭
出版者
同志社大学
雑誌
同志社法學 (ISSN:03877612)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.82-93, 1985-01-31

判例研究
著者
杉本 究
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.73-91, 2006-07

論説(Article)近時の司法制度改革の一環として、訴訟手続によらず、公正な第三者たる専門家の活用により紛争の実情に即した解決を図ろうとする裁判外紛争処理手続(Alternative Dispute Resolution;ADR)の拡充・活性化が必要とされている。その潮流からすれば、事業再生版の裁判外紛争処理手続と言える私的整理(事業再生ADR)が、その現場においても利害関係者の総意では圧倒的に好まれる傾向とも相俟って、将来的にはさらにその意義並びに重要性が増すであろうと考えられる。本稿では、まず、筆者のアドバイザー業務経験に基づき、実務的視座からする私的整理の作業工程並びに作業負担について時系列的に俯瞰するとともに、私的整理、法的整理及び私的整理と法的整理の連続性にかかる課題について検証した。次に、以上の検証結果を踏まえつつ、事業再生ADR活用に向けての一試論として、ADR基本法に定める認証機関に関して、その導入効果も含めた政策提言を行うとともに事業再生ADRの機能について検討した。認証機関に認定される基準としては、英国のインソルベンシー・プラクティショナー(Insolvency Practitioner)を範とした資格制の導入により、当該人材を擁する民間事業者が認証機関として認定されることとし、その機関活用の効果として、認証機関が関与・策定した私的整理の場合は、仮に法的整理に移行した場合においても、私的整理の過程で合意形成が可能となった部分について一定の法的効果を供与する仕組みが検討に値する。そして、事業再生ADRの機能としては、(1)コスト削減機能(2)早期着手機能(3)権利調整機能を有することが期待され、その活性化は事業再生全体の効率性・実効性に資するものと言えよう。