著者
能口 盾彦
出版者
同志社大学
雑誌
言語文化 (ISSN:13441418)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.[65]-84, 2009-08

論文(Article)『ウェールズ・オペラ』とその改訂版『グラブ街オペラ』はフィールディングの初期劇作品で、ロンドン演劇界で十八世紀末まで幕間に演奏された『ロースト・ビーフ讃歌』は、改訂版の第三幕第三場の歌曲である。いずれもウェールズが舞台で、地主一家と召使達が織り成す諷刺を主眼とする喜歌劇と言えよう。市井の下級牧師とは異なる、アプシンケン家付きの牧師に論者が着目したのも、ハノウヴァー王朝ジョージ二世夫妻と時の宰相ウォルポールとの緊密な関係が示唆された為である。特に『グラブ街オペラ』が公演禁止の憂き目を見たのは、 同劇で英国国教会と王室と政界の微妙な関係が、巧妙かつ洒脱にこき下ろされたことで、当局の逆鱗に触れた為であろう。
著者
井ヶ田 良治 山岡 高志
出版者
同志社大学
雑誌
社会科学 (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.78, pp.209-250, 2007

山岡中尉の日清戦争従軍日誌の続編である。1895年1月18日から同年3月7日までの記述を含む。1月22日、吉林軍襲来、撃退、敵敗走する。2月4日山県中尉戦死。2月16日敵軍襲来するも、野砲で撃退。2月22日敵軍襲来、野砲を発射して応戦(海城第四回防衛戦)。敵は負傷兵を車に載せて退却。
著者
伊原木 大祐
出版者
同志社大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

今年度は、初年度の研究から得られた成果をもとに、本研究全体の核心をなす「受肉」概念の哲学的解明に着手する段階として位置づけられる。具体的な成果は以下のとおりである。1、後期アンリによるキリスト教論の基本的な方向性を把握すべく、レヴィナスとの違いを強く意識しながら、情感性の概念に立脚した「法」批判の意義を検討した(「生の現象学による法の批判」、雑誌『理想』に掲載予定)。アンリは、いわば「ユダヤ-カント的なもの」(リオタール)への批判的立場をヘーゲルやシェーラーと共有しているが、スピノザ哲学に想を得つつ、その立揚をいっそうラディカルな内在思想によって先鋭化している。この着眼のおかげで、レヴィナス思想との錯綜した関係もかなりはっきりと捉えられるようになった。2、アンリによる受肉概念は、エロス的関係における欲望の「挫折」という問題を踏み台にして成立している。サルトル受肉論との対比によって、逆にアンリの独自性が明確になってきた。また、前年度にレヴィナスの生殖論を「生の現象学」によって基礎づける可能性を示唆したが、レヴィナスが十分に扱いえなかった「胎児」の哲学的ステイタスという問題に関して、それを極めて特殊な「有機的抵抗」の経験として厳密に内在的な観点から再理解する方途が探求された。これは、パーソン論とは大きく異なる生命倫理学的な視野を切り開くものである。3、本年度の研究目標の一つとしていた「共同体と個体の関係」の解明からは、「種的社会の展開」および「擬態としての現象」(来年度発表予定)という二つの副産物が生まれた。いずれの論考も、現代フランス現象学に固有の考え方と深い親近性をもった分析となっている。
著者
江頭 良明
出版者
同志社大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2010

本研究課題では、自閉症患者から見つかったシナプス接着因子neuroliginの1アミノ酸変異を再現したノックインマウス、及び野生型マウスにおいてRNA干渉によりneuroliginをノックダウンした神経細胞で、シナプス機能を電気生理学的に解析した。体性感覚野での解析から、neuroliginの点変異とノックダウンのいずれにおいても、興奮性シナプス入力と抑制性シナプス入力のバランスが崩れることが明らかとなった。また、海馬での解析からは、ノックインマウスにおいて長期増強現象の後期相が選択的に消失していることが明らかとなった。
著者
福間 浩司 磯部 博志 林田 明
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

中国沿岸部や韓国などの東アジアの湿潤地域では, アジア大陸内部からダストが間断なく供給されると同時に, 過去から現在まで人類が継続的に活動してきた痕跡が数多く残されており, 人類の活動と気候変動の影響を研究するための理想的なフィールドである. 中国沿岸域や韓国の旧石器遺跡のダスト堆積物について交流磁化率や磁気ヒステリシス特性の測定を行い, 磁性ナノ粒子の種類・含有量・粒径分布を求めた. 乾燥地域のダスト堆積物との比較から, 従来の磁気測定では解明できなかった湿潤地域の気候と磁性ナノ粒子の対応関係を明らかにすることができた.
著者
服部 伸
出版者
同志社大学
雑誌
社会科学 (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.74, pp.47-72, 2005
著者
枝光 泉
出版者
同志社大学
雑誌
基督教研究 (ISSN:03873080)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.209-227, 1999-03

論文
著者
橋本 誠志
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.45-64, 2003-03

論説ブロードバンドサービスの普及に伴い我が国は本格的なインターネット常時接続時代へと突入している。インターネットに長時間接続するユーザーが増加するにつれ、インターネット上にユーザーの個人データが流出する危険性は拡大する。精度の高い個人データが一旦、ネットワーク上に流出すれば、データ主体は、たとえ犯人が逮捕された後も私的生活の平穏を脅かされるリスクを常に背負う。個人データの流出予防策に加え、実際にデータが流出した際の被害拡散防止策の充実が今後のインターネット上の個人データ保護政策にとって不可欠である。現在のプライバシー侵害の主な救済手法である不法行為構成には、要件上の限界が存在し、権利保護に費用と時間がかかるばかりでなく、(1)賠償額も低額しか認容されない、(2)立証責任、時効面で柔軟性に欠ける、(3)権利保護の程度が貧富の差に左右される等の問題がある。近時では、情報主体と事業者間において契約関係が存在する場合、事業者がデータ主体の同意した範囲を超えた情報取扱をした場合に債務不履行責任を認める契約アプローチが提唱され、米国では、既にインターネット上での個人データ保護政策のフレームワークとして利用されている。しかし、我が国では事業者のプライバシーポリシーの監視制度やプライバシー保護団体のサポートが機能しておらず、契約アプローチの実効性は期待できない。本稿では、近時のプライバシー保護技術の動向に鑑み、インターネット上への個人データ流出した際の被害拡散防止手法として、財産権的アプローチの有効性を検討し、インターネット上での個人データの交換にライセンス制の導入を提案する。
著者
鹿野 嘉昭
出版者
同志社大学
雑誌
經濟學論叢 (ISSN:03873021)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.1-41, 2006-06

本論文は、ベンチャー企業育成のための環境整備のあり方について、主として金融面から日米比較の視点を織り交ぜつつ検討するとともに改善の方向を具体的に示すことを目的とする。アメリカの場合、上場を目指すベンチャー企業に対しては、その発展段階に応じて資本市場調達の途が開かれている。実際、エンジェル、ベンチャーキャピタルなどがベンチャー企業の資金調達を支えており、成功した暁にはリスク負担に相応した報酬を得る。ベンチャーキャピタルの原資は年金基金や金融機関に運用委託された個人マネーであり、そういった機関投資家の資産運用行動がベンチャー企業による果敢な投資行動を支えるとともに監視・規律づけているのである。個人によるリスク負担はまた、総合課税を原則とするアメリカに独特な投資家にやさしい税制により支えられている。 それゆえ、日本においてベンチャー市場、資本市場の活性化を促すに際しては、ベンチャー企業経営者を監視・規律づけるメカニズムを強化すると同時に、税制についても投資家にやさしいものへと改変することが強く求められる。そのためにも、東証マザーズ等の新興株式市場についてはマーケットメーカー制の導入を義務づけることにより、新興市場の担い手である証券会社の引き受け・売買行動を監視・規律づけるメカニズムを強化する、という措置の実施を提案したい。それはまた、日本の金融が長年にわたって銀行を中心として構成・運営され、資本市場の健全な育成・発展が政策目標の視野に入っていなかったことを意味している。そうした事態を改善すると同時に日本版ビッグバンが究極の目標としていた奥行きの深い資本市場を日本のなかに作り上げるためにも、政府においてはベンチャー市場の全体像をも見据えて金融制度の改革に取り組む必要があるといえよう。In this paper, policy measures for promoting venture business activities in Japan are discussed from a comparative perspective with the U.S. In the U.S., activities of venture businesses after the IPO are closely monitored by their market makers, in addition to venture capitalists whose investment activity is positively supported by investor-friendly tax rule. Taking these institutional aspects into account, we propose that equity market in Japan for venture businesses like TSE Mothers should be organized into one led by market makers modeled after NASDAQ and that the tax rule should be modified to be friendly with investors for ventures.
著者
田口 哲也[司会] 萩原 健次郎[詩朗読] ソルト ジョン[解説]
出版者
同志社大学
雑誌
文化情報学 (ISSN:18808603)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.[25]-31, 2008-03

講演これは2007年10月11日(木曜日)に同志社大学室町キャンパスで開催された「大野一雄フィルム・フェスティバル at 同志社」においてなされた、ハーバード大学ライシャワー日本研究所のジョン・ソルト博士による暗黒舞踏と大野一雄に関する講演録である。ゲスト詩人、萩原健次郎による朗読詩も掲載されている。This is the full transcription of a lecture given by Dr. John Solt, associate in research of Edwin O. Reischauer Institute of Japanese Studies, Harvard University on the occasion of Kazuo OHNO Film Festival at Doshisha University, October 11, 2007, with the full text of the poem the honorable guest poet Kenjirou Hagiwara read at that time.
著者
松本 秀輔
出版者
同志社大学
雑誌
同志社大学留学生別科紀要 (ISSN:13469789)
巻号頁・発行日
pp.93-104, 2001-12

本稿では,受動文において動作主をニ格で示すことについて,カラに置き換えられるような格助詞ニの働きとはどのようなものか,という疑問から考察を進めた。その中で,「母親は息子に牛乳を飲ませた」のような使役文・「太郎は先生にほめてもらった」のようなテモラウによる受益文・「彼の仕事ぶりに満足している」「突然鳴ったベルに驚いた」といった一部の自動詞述語文の,それぞれに用いられる格助詞ニとの共通性について論じた。また,「本が猫にいたずらされた」のような無生物主語の受動文ではニ格動作主が現れにくいという事実について,主語とニ格名詞句の関係や表現者の視点という側面から論じた。その結果,受動文においてもニ格名詞句が表すのはガ格名詞句(主語)の側から見た対象と呼ぶのがふさわしく,そのため,動作の受け手を主語として事象の中心に据えて表現する受動文では,無生物主語の側を視点の中心,有生物動作主をその対象,とすることが相対的に困難なためにニ受動文が成立しにくいのだと考えられた。そして,受動文においてニ格で表されるものが主語に対する働きかけの主であることから,カラに置き換えられるような起点の意味が生まれることを述べた。
著者
三井 斌友 齊藤 善弘
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では, 数学定数であり超越数でもある円周率πの数値表現を, 擬似乱数生成に用いる提起を行い, その実現のため数値的な検証を行った. πの超多数桁10進表現を適宜な桁数ごと区切ったのち規格化し, [0,1]区間に分布する一様乱数とみなしたとき, 他の生成法と比較して統計的優劣があるかどうかを検定した. この結果, πを用いる方法は他の方法と比較して決して劣ることはなく, むしろいくつかの優位さが見られることを示した.
著者
加藤 良太
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.145-157, 2006-12

2005年11月末に始まった、小泉政権におけるODA(政府開発援助)一元化議論は、ODA政策に対するアドボカシーを行なってきた市民・NGOにとって、ODA政策形成への「市民・NGO参加」を自ら問い直す契機となった。経済財政諮問会議の決定に基づき、2005年12月から開催された「海外経済協力に関する検討会」(以下、「検討会」)では、内閣に「ODAの司令塔」となる「海外経済協力会議」を設置し、ODA実施機関であるJICA(国際協力機構)とJBIC(国際協力銀行)の一部を統合、一元化することが決定されたが、市民・NGOはこのプロセスに公式に参加することができなかったのである。 市民・NGOはこれに抗議し、検討会への働きかけや提言、報道関係者や国会議員などとの連携を通じて、市民・NGOの意見がODA一元化議論に反映されるよう取り組んだものの、結果的には、市民・NGOの意見が十分に反映されず、国益志向の強いODAの流れを後押しする報告が検討会から出される結果となった。一方で、ODAの話題が報道で広く取り上げられたこと、報道関係者や国会議員との新たなつながりなど、市民・NGO参加の今後に資する成果も残された。 こうした結果を受け、今後の新たなODA政策形成の枠組みの動向を見極めながら、市民・NGOとして、新たな参加のあり方を模索していくことが必要である。
著者
瀬川 晃
出版者
同志社大学
雑誌
同志社法學 (ISSN:03877612)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.1-53, 1986-09-30

論説