著者
鬼柳 善明 加美山 隆 古坂 道弘 宇野 彰二 持木 幸一 篠原 武尚 木野 幸一 佐藤 博隆 長谷美 宏幸 甲斐 哲也 塩田 佳徳 岩瀬 謙二 矢代 航 大竹 淑恵
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2011-04-01

パルス中性子源を用いたエネルギー分析型透過イメージング法の高度化と応用分野の拡大を行った。まず、解析コードを改良し、焼き入れ鉄のマルテンサイト相、日本刀や新材料の結晶組織構造情報の分布を得、硬さ分布の非破壊測定法を見いだした。さらに、CT法の開発を行った。水素貯蔵合金への適応可能性を示すとともに、小角散乱イメージング法を開発し、共鳴吸収スペクトルの定量解析を可能とした。磁気イメージング法の定量性の評価と磁性薄膜への応用、さらに、世界初のパルス中性子による位相コントラスト測定を成功させた。また、高計数率2次元検出器やカメラタイプで短時間チャンネル飛行時間測定ができる検出器の開発に成功した。
著者
阿部 裕
出版者
名古屋大学
巻号頁・発行日
2015

identifier:http://hdl.handle.net/2237/22372
著者
鍋島 直樹
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

2018年度は、現代政治経済学の教科書(単著)の執筆にほとんどを費やした。現代の主流派である新古典派経済学との対抗関係を明らかにしながら、政治経済学の多様なアプローチにもとづき、資本主義経済の基本的仕組みについて解説するものであり、近く公刊の予定となっている。新古典派経済学の理論については夥しい数のミクロ経済学とマクロ経済学の教科書が存在する一方で、政治経済学では入門レベルの教科書はいまだ少ない。これまでマルクス経済学の教科書は数多く刊行されているものの、それらのほとんどは、『資本論』の体系に沿ってマルクスの経済理論を解説することに主眼がおかれている。今日においても、マルクスの経済理論を学ぶことに大きな意味があることは疑いないものの、現代の資本主義経済をとりまく諸問題を理解するためには、マルクス経済学の新しい展開についても知る必要があるし、さらには、ケインズとカレツキを源泉とするポスト・ケインズ派の経済学についての知識も欠かすことができない。本書では、マルクスの経済理論の主要部分についての基本的な知識を得ることができるように配慮する一方で、現代マルクス経済学やポスト・ケインズ派経済学における新しい理論的成果も積極的に取り入れている。しかし、さまざまな学説を並列的に紹介するのみに終わるのではなく、それらの学説のあいだの共通点と相違点、および補完関係についても論じているので、読者は、マルクスとケインズの総合によって新古典派経済学に対する代替理論の構築を進めている政治経済学の今日的な意義と課題について大まかな理解を得ることができるはずである。
著者
阿部 裕
出版者
名古屋大学
巻号頁・発行日
2015-03-25
著者
舟久保 恵美
出版者
名古屋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

気圧・気温低下など気象変化により、ヒトの慢性痛が増強する現象が知られている。我々はこれまでに、慢性疼痛モデルラットを日常の気象変化で起こりうる程度の強さ・変化速度の人工的気圧低下環境に曝露し、その痛み行動が増強することを明らかにした。また、ヒ素注入により内耳を破壊した慢性痛モデルラットに対して気圧低下の影響を観察したところ、内耳破壊が慢性痛増強を抑制する結果を得た。これは内耳に何らかの気圧検出機構が存在することを示唆している。そこで、内耳の気圧検出機構を明らかにするため、健常ラット前庭神経核の単一神経放電記録を行い、気圧低下に対する応答を調べた。大気圧から40hPa気圧を低下させ、設定気圧到達後8分間低圧を維持し、その後大気圧に戻し、その間の反応を観察した。昨年度までに合計40例のニューロンを記録し、そのうち17個に気圧低下曝露を行うことができた。そのうちの5つで放電頻度の増加が観察でき、気圧低下に対する反応は以下の3パターンに分類できた。気圧低下により、1)放電頻度が増加し、復圧により元に戻る(3例),2)放電頻度が増加し、そのまま持続する(1例),3)変動のあった放電頻度が一定になる(1例)。5例中4例は前庭刺激(回転、カロリックテスト)にも反応したが、1例は気圧以外の刺激には応答しなかった。従って、気圧にのみ反応するニューロンの存在が示唆される。今年度は上記1)のパターンの二ューロンがさらに2つ記録でき、気圧低下に反応するニューロンの存在が明らかとなった。そこで、気圧をいろいろな大きさ、速度で段階的に変化させたときの刺激反応性、放電数への影響の解析を進めている。また、慢性痛モデルラットの痛み行動を惹起するには5hPa/h以上の速度で5hPa以上の気圧変化が必要であることを明らかにした。気圧検出機構が内耳器官に存在する可能性について、行動実験を主体に論文執筆中である。
著者
金銅 誠之 江口 徹 伊藤 由佳理 伊山 修 馬 昭平 菅野 浩明 長尾 健太郎 向井 茂 島田 伊知朗 小木曽 啓示 吉川 謙一 宮本 雅彦
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2010-04-01

いくつかの方程式の共通零点の集まりとして定まる図形(代数多様体)の構造や対称性および図形のある種の分類(モジュライ空間)を行うことが代数幾何の大きな問題である。楕円曲線の2次元版としてK3曲面と呼ばれる代数多様体が19世紀に発見され、現在、数学および数理物理でも興味を持たれている。本研究において、K3曲面のモジュライ空間の構造の解明や、K3曲面の対称性を表す自己同型群の記述などの成果を得た。またK3曲面の対称性とマシュー群と呼ばれる有限単純群との間の不思議な関係を示唆するマシュームーンシャイン現象と呼ばれるものが関心を集めているが、この方面での研究においても成果をあげた。
著者
金銅 誠之 島田 伊知朗 小木曽 啓示 伊山 修 馬 昭平 菅野 浩明 江口 徹
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2015-05-29

研究代表者は標数2、Artin 不変量1の超特異K3曲面を標準被覆に持つエンリケス曲面は3種類に限ること、およびそれらの具体的な構成を与えた。分担者 馬はジーゲルモジュラー多様体上の普遍アーベル多様体やそのコンパクト化上の多重標準形式とジーゲルモジュラー形式の対応を与え、久我族の小平次元の評価を得た。分担者 菅野は複素 Chern-Simons 理論の正準量子化から導かれる U(1) 同変な変形 Verlinde 代数とある種の 4 次元超共形場理論の超共形指数が定める2次元位相的場の理論の対応関係に関して研究を行った。分担者 島田は超越格子のディスクリミナントが小さい特異K3曲面上のエンリケス対合を分類し、さらに階数10の双曲的ユニモジュラー偶格子の交点形式を2倍にしたものから階数26の双曲的ユニモジュラー偶格子への埋め込みを分類した。分担者 小木曽は複素Enriques曲面の自己同型の正エントロピーの最小値を決定し、さらに素体上超越次数が正である任意の奇素数標数の代数閉体上、K3曲面と双有理な滑らかな射影代数曲面でその全自己同型群が非有限生成であるものの存在を示した。また、素体上超越次数が零である任意奇素数標数の代数閉体上では、K3曲面と双有理な滑らかな射影代数曲面の全自己同型群は常に有限生成であることも示した。近年のCohen-Macaulay表現論は、導来圏・三角圏を制御する傾理論の影響を大きく受けて発展していが、分担者 伊山は主要な研究成果に関するサーベイをICM 2018のproceedingsに執筆した。
著者
池内 了 杉山 直 海部 宣男 土居 守 福島 登志夫 長谷川 哲夫
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

アジア・太平洋地域(オセアニア、南北アメリカも含む)における天文学研究は、多くの先進的観測装置を有する国から観測装置が未整備な国まで、さまざまな研究環境条件にある。そこで、国際天文学連合(IAU)が主催して、これらの諸国の天文学研究者が一堂に集まり、最前線の研究成果を交流しつつ、若手研究者の育成、共同研究の推進と相互援助、天文学普及のための活動、などについて情報交換を行う「IAUアジア・太平洋地区会議(略称APRM)」を開催してきた。本研究課題は、2002年7月2日から5日まで東京の一橋記念講堂で開催された、第8回APRMの準備費用・会議運営経費・報告集発行経費を賄うことによって会議の成功に寄与したものである。会議には、総計462人が参加し、うち148人は23カ国からの外国人研究者であった。会議は、全体会議行われた(1)大型観測装置、(2)大規模サーベイ、(3)太陽系外惑星、(4)天文学教育の4つのセッションと、(5)星・惑星系形成、(6)星・太陽活動、(7)高エネルギー天文学、(8)活動的銀河核、(9)重カレンズ、(10)系外銀河・宇宙論の6つのセッションが分科会で行われ、約30の招待講演、約100の口頭発表、約320のポスター発表があった。加えて、(11)情報交換のためのネットワーク形成と研究雑誌の発行、(12)今後の地域集会の予定、の2つのビジネス・セッションを持ち、アジア・太平洋地域における天文学研究のよりいっそうの発展のための討論を行った。会議の報告集として、全体会議については太平洋天文学会(ASP)の国際会議録シリーズ、分科会およびポスター論文は日本天文学会(ASJ)の国際会議録として出版した。なお、最終日の翌日の6日には4つのサテライト集会が持たれ、これにも多数の研究者が参加した。
著者
池内 了
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

研究の3つの柱として、(a)星密度の高い星団におけるスターバースト現象、(b)スターバースト後の恒星レムナントの重力相互作用による中間質量ブラックホール(IMBH)の形成、(c)IMBH間の重力相互作用による超巨大質量ブラックホール(SMBH)への成長、を考えてきた。これら3つの段階は、それぞれ独立した項目として切り離して進めることができる。まず、(a)の段階では、スターバースト現象において、どのような恒星レムナントが残されるかを検討した。通常の質量関数ではブラックホールや中性子星のレムナントは少なすぎるので、フラットな質量関数を仮定しなければならないことが判明した。続く(b)の段階では、恒星レムナントを観測されている星の分布と同じ空間分布を仮定し、通常のガウス型の速度分布とすると、レムナント系は遠隔2体重力相互作用でコア・ハーロー型構造へ進化する。やがて、3体衝突が効き始めて高密度レムナント団となるが、問題は、それ以後断熱的となるために収縮が極端に遅くなり100億年の間にIMBHへと進化しないことである。そこで、ガスが共存していると仮定し、ガスの粘性効果を取り入れ、また超音速で運動するレムナントによる衝撃波の形成とその散逸効果を考慮したが、十分な冷却効果にはならず、半径10pcの球内に10万太陽質量が集積する程度となった。(c)の段階では、重力相互作用によって100億年の間でSMBHになりうる条件を求めたところ、半径1pcの球内に100万太陽質量が集積することが必要と結論が得られた。とすると、(b)の段階で得られた高密度レムナント団とは、4桁の差があり、このギャップを埋めることができなかった。従って、(b)から(c)に至るプロセスで、ここでは考えなかった新しい物理過程を想定しなければならず、この研究は今後の研究への指標となると考えている。
著者
釘貫 亨
出版者
名古屋大学
巻号頁・発行日
1997

identifier:http://hdl.handle.net/2237/16644
著者
野依 良治 斎藤 進 伊丹 健一郎 大熊 毅
出版者
名古屋大学
雑誌
学術創成研究費
巻号頁・発行日
2002

光学活性ジホスフィンと1,2-ジアミンをともに配位子とする一連の塩化ルテニウム(II)錯体は,2-プロパノール中,塩基の存在下,様々な単純ケトン類の不斉水素化反応において極めて高い活性と立体選択性を示す。平成18年度は、RuCl_2(diphosphine)(pica)やRuH(h^1-BH_4)(diphosphine)(pica)がt-アルキルケトン類の不斉水素化に有効であることを発見した(pica=α-picolylamine)。これまでかさ高いケトン類の不斉還元におけるアルコール生成物の鏡像体過剰率は不十分であったが、この問題を解決する新しい手法を提供できたといえる。さらに、η^6-arene/N-tosylethelenediamine-Ru錯体が、水素移動型還元のみならず水素化反応、にも有効な触媒前駆体であることを明らかにした。この手法により、非塩基性と酸性、いずれの条件下においても、ケトン類の高効率かっ高選択的な不斉水素化が可能となった。得られた結果は、基質適用範囲を大幅に拡大するとともに、ケトン基質の水素化遷移状態における金属-配位子二官能性機構を改めて支持した。核酸や糖医薬,および液晶材料等の合成において有用な原料となり得るβ-ヒドロキシニトロアルカン化合物やβ-アミノニトロアルカン化合物、およびβ-ヒドロキシカルボニル化合物を,金属を含有しない環境調和型触媒存在下効率よく合成することにも成功した。特に、分子構造が精密に制御された酸あるいは塩基を意味する「形ある酸」および「形ある塩基」触媒を開発した。これら分子触媒を用いることで、水溶液中での高活性・高選択的化学変換に新局面をもたらした。さらに、独自に設計・開発したロジウム錯体が、芳香環やヘテロ芳香環の炭素-水素結合を直接アリール化する優れた触媒となることも見出した。本反応はチオフェン、ビチオフェン、フラン、ピロール、インドールなどのヘテロ芳香族化合物のみならず、ベンゼン誘導体でも進行することが明らかとなった。反応機構をより詳細に理論的に解明し、今後の触媒設計指針に重要な知見を提供した。
著者
池辺 幸正 任 天山 王 作元 永峰 康一郎 飯田 孝夫 WANG Zuoyuan
出版者
名古屋大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1992

中国・日本を含むアジア地域における大気中トリチウム動態の解明に資するために、中国で実施されている環境トリチウムの全国組織による調査の機会に合わせて、中国における水蒸気中トリチウムの全国規模調査を実施した。1.測定法水蒸気のサンプリングにはモレキュラーシ-ブスを用いた。従来用いられてきたポンプを用いて捕集するactive法のほか、新たに開発した動力を用いないpassive法による捕集を行った。これは、アクリル製容器にモレキュラーシ-ブスを入れ、ふたに設けたフィルターを通して自然換気により一定速度で空気中水蒸気の捕集を行うものである。モレキュラーシ-ブスに吸着した水蒸気を加熱により水として回収するための装置を作成し、北京の衛生部工業衛生実験所に設置した。回収した水の蒸留および液体シンチレーションカウンター(Aloka LB-1)を用いた放射能計数は北京で行われた。上記の予備実験として、passive法とactive法による同時採取サンプルの放射能測定値の比較および同一水試料の中国側と日本側でのトリチウム濃度測定値の比較を行い、それぞれほぼ良好な一致を見た。passive法に用いた容器の気密性が完全でなく、月単位の期間では外気中の水蒸気の混入が問題となることが判明したため、サンプリング前後の容器は常に鉄製の密閉容器に保管した。2.passive法による地域分布の測定東アジア地域の水蒸気中トリチウムの地域分布をみるため、passive法によるサンプリングを二ヶ月毎くり返し実施した。採集期間は1992年6月から1993年9月までの16か月間(8回)、採集地点は中国全域にわたる13市(ハルピン、長春、北京、蘭州、武漢、西安、上海、杭州、福州、成都、深〓、ウルムチ、ラサ)および日本の5市(札幌、仙台、名古屋、熊本、那覇)である。得られた測定値の誤差についての最終的評価には至っていないが、測定の結果は以下の通りである。(1)中国・日本を含む東アジア地域の水蒸気中トリチウムの大略の地域分布が二ヶ月毎に得られた。また年平均値の地域分布を得た。(2)濃度レベルはウルムチと蘭州が最も高く、年平均濃度は約15Bq/lである。次に高いグループは、ハルピン、長春、北京、西安、ラサ(8〜11Bq/l)であり、武漢、成都がこれに次ぐ。沿岸部(杭州、福州、深〓)は数Bq/lで低濃度であり、日本の5地点は1〜2Bq/lで最も低いグループに属する。(3)地域分布には内陸効果および緯度効果が認められる。また過去の核実験の影響も検討すべき要素と思われる。(4)全体的に、濃度は秋、冬に高く、春、夏に低い傾向が認められる。(5)水蒸気中トリチウム濃度は、降水中濃度の推測値よりも高いレベルである。3.active法による日々変動の測定濃度の日々変動を見るため、active法によるサンプリングを地理的に特徴のある北京、蘭州、福州の3地点で実施した。サンプリングは春夏秋冬の各季節毎に10日間づつ、2日毎に実施した。北京では1992年9月の訪中時にもサンプリングを行い、水の回収および放射能測定を日本で行った。北京の9月、秋および冬のデータについては、2層流跡線モデルによる計算値との比較を行った。9月と秋のデータに関しては、測定値と計算値の濃度レベルはかなり近い値を示したが、1月の測定値は計算値の約3倍であり、今後に問題を残した。モデル計算においては、地表水のトリチウム濃度分布を過去の中国の文献値等から推測して発生源分布(蒸発による)として与えているが、今回の中国側の全国規模調査によって現在の発生源分布が測定によって得られるものと期待される。この研究で得られたデータと中国側が得ているデータに基づいて、今後トリチウムの広域環境動態の解析が進むものと期待される。
著者
井上 稔 阿座上 孝
出版者
名古屋大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1990

マイクロ波の熱作用と放射線が複合して作用した場合,単独被曝とは異なった生体影響が現れる可能性がある.本年は,マウスにマイクロ波を照射するためのアプリケ-タを設計・製作し,マウスのSAR(比吸収率)を測定した.この装置では実験者が漏洩電波に被曝する恐れは無い.50匹のSlc:ICRマウスに,マイクロ波に影響を受けないファイバ-センサ温度計をもちいてリアル・タイムで直腸温測定をしながら,体温が42.5℃になるまでマイクロ波照射を行った.体温の上昇直線とマウスの体重,比重,頭臀長,腹囲の測定値よりSAR(比吸収率)を計算した.マウス胎仔の大脳が最も高い障害感受性を示す妊娠13日の母獣に2.45GHz,0.5W(非妊娠マウスを用いて計算したSAR:134W/kg)のマイクロ波照射を3分間行い,胎仔の脳に及ぼす急性影響を検索した.この時,直腸温は42.3±1.3℃に達した.マイクロ波処理1ー12時間後に母獣を殺して胎仔の脳を採取し,一部71kdの熱ショック蛋白の検索に用い,他は組織切片にした.大脳外套脳室帯の細胞死の頻度を調べたところ,対照群の0.14%に対して照射5時間後には1.0%の増加し,生体影響が検出された.熱ショック蛋白hsp70は検出されなかった.つぎに複合被曝の実験として,マイクロ波被曝1ー12時間後にさらに0.24Gyのγ線照射を行い,γ線被曝8時間後に同様に胎仔を採取し,大脳の細胞死頻度を観察した.マイクロ波被曝1ー9時間後のγ線被曝では,γ線単独被曝による細胞死8.3%と比べ有意な差はなかったが,12時間後のγ線被曝では6.8%(p<0.05)と,わずかながら低抗性がみられた.