著者
上條 義一郎
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

暑熱馴化は血液量を増加させ高体温時における体温調節反応を改善させる。暑熱環境下・立位では皮膚血管拡張による末梢への血液貯留と発汗による脱水が心臓への静脈還流量を低下させ、心房を介して圧反射性に過剰な皮膚血管拡張を抑制し血圧を維持する。我々は、皮膚交感神経活動には心周期同期成分が含まれ、高体温・起立負荷時に皮膚血管拡張反応とともに抑制されることを示した。さらに、若年男性が5日間の持久性トレーニングを行うと、血漿量の増加と共に皮膚血管拡張や同成分上昇が亢進した。暑熱馴化における血液量増加は同成分を介して皮膚血管拡張反応を改善する可能性がある。
著者
竹山 重光
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

カントが『実践理性批判』で語っている「自己満足」という感情に着目し、『実践理性批判』以外の諸著作をも検討、さらには現代の哲学的感情研究をも参照して、この感情の存在・意義を明らかにした。カントの実践哲学は峻厳なものであるが、同時に、きわめて人間的であり、人間の有限性を厳しく自覚したものである。「自己満足」概念の検討はこの点をはっきりと示してくれる。
著者
金澤 伸雄
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

稀少遺伝性自己炎症疾患の解析によって遺伝子変異に基づく炎症制御シグナル異常を同定し、難治性慢性炎症疾患における異常シグナルの関与を検知し病態解明やテーラーメード治療につなげることを目指し、PSMB8変異が同定された中條-西村症候群、新規IL36RN変異が同定された汎発性膿疱性乾癬、新規LIG4変異が同定された遅発型原発性免疫不全症などについて細胞機能異常の検索を行い、さらに新規遺伝性自己炎症疾患が疑われる症例についてエキソーム解析を行い予想されるシグナル異常の確認を進めた。当初の目標達成には至っていないが、遺伝性炎症疾患における炎症制御シグナル異常の解明が進み、今後の更なる展開が期待できる。
著者
東本 有司 伊藤 秀一 山縣 優子 石口 正 慶長 直人
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

正常ヒト気管上皮細胞にアデノウイルスE1Aをトランスフェクションして、トランスフォームすると、炎症性サイトカインや接着因子の発現が増強されることがわかった。一方、蛋白分解酵素阻害物質のSLPIやelafin/SKALPの発現は著明に抑制することも分かり、アデノウイルスE1Aは肺の炎症を増強するとともに好中球エラスターゼなどの蛋白分解酵素による肺障害を増強させて、肺の防御免疫機構を破綻させ、COPDの病態に関係している可能性が考えられた。また、アデノウイルスE1Aは組織のリモデリングに関係するTGF-βやTIMP-1の発現を増強させることも分かった。一方で、アデノウイルスE1Aは肺胞上皮細胞においてNO産生を抑制した。これは抗ウイルス作用をもつNO産生を抑制することでウイルスが組織内に存続(潜伏感染)できるのではないかと考えられた。また、実際のCOPD患者さんとコントロール患者さんを比較すると、血清TIMP-1濃度は増加しており、細胞実験の結果と類似していた。以上の結果から、アデノウイルスE1Aをトランスフェクションした気管上皮細胞は実際の臨床研究の結果とよく一致しており、アデノウイルスE1Aをトランスフェクションした細胞はCOPDの臨床病態をよく反映していると思われる。これは我々が今回行ったCOPD患者の血清中TIMP-1濃度の測定でも裏付けられている。この血清TIMP-1濃度は気道閉塞のバイオマーカーとしても有望であると思われる。以上の結果から、アデノウイルスE1A遺伝子でトランスフォームした細胞から得られた結果はCOPDの病態解明に役立つとともにバイオマーカーの検索などに利用すれば、臨床に応用できる可能性が示唆された。
著者
辻 久美子 池内 佳子
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
和歌山県立医科大学保健看護学部紀要 (ISSN:18801366)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.37-44, 2005
被引用文献数
2

この研究の目的は、妊娠中の体脂肪率の変化を明らかにすることと、それに関係する生活習慣因子を同定することである。対象妊婦は、健康診断ごとに体脂肪率を測り、妊娠期間中に3回、生活習慣についてのアンケートに回答した。その結果、以下の4点が明らかになった。1、体脂肪率は妊娠30週まで増加し、その後変化しなかった。2、体脂肪率の変化を部位別で見ると、体脂肪の蓄積しやすい部位は腕部から体幹部、足部へと徐々に広がっていた。3、食生活では、たんぱく質、野菜、果物については適正摂取量の60%しか摂取できていなかった。それは、たんぱく質等は料理に取り込みにくいためと考えられた。脂質は、適正摂取量より多く摂取していた。さらに、脂質摂取が適正量より多いと妊娠中期までに体脂肪率が増えやすかった。4、運動習慣がある人は、体脂肪率が妊娠中期以降に増加しなかった。これらの結果から、妊婦管理において、体重だけでなく体脂肪率に注意を払う必要性が示唆された。妊娠中の指導は、たんぱく質の多い、脂質の控えめな料理を取ることと、適度な運動習慣を付けることを含めて行なう必要がある。
著者
木口 倫一 岸岡 史郎 雑賀 史浩
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

前年度は坐骨神経部分結紮による神経障害性疼痛モデルマウスを用い、主に後根神経節において神経炎症依存的に発現変動する因子に着目した検討を行った。本年度は、傷害坐骨神経に集積するマクロファージが担う末梢性感作と中枢性感作の機能的連関を詳細に検討した。炎症性マクロファージ抑制薬であるニコチン性アセチルコリン受容体α4β2サブタイプ特異的リガンドを傷害末梢神経に局所投与すると、神経障害性疼痛が改善した。また神経傷害後の脊髄におけるミクログリアの形態的活性化ならびに炎症関連因子(IL-1β、CCL3、CD68、IRF5など)の遺伝子発現増加は、マクロファージ抑制薬の末梢局所投与により減少することを見出した。これらのマクロファージ抑制薬は神経傷害の3週間後から投与しても有効であり、その際に脊髄ミクログリア関連因子の減少効果も同時に認められた。すなわち、神経障害性疼痛の形成および維持機構のいずれにおいても炎症性マクロファージによる末梢性感作が重要な役割を果たすことが示唆される。さらに、糖尿病性や抗がん薬誘発性などの異なる神経障害性疼痛モデルにおいても、同様の機序の関与を示唆するデータが得られている。昨年度までの結果を踏まえると、炎症性マクロファージ由来のサイトカインやケモカインが後根神経節における中枢感作調節因子(サイトカインおよび神経ペプチドなど)の発現を亢進させ、脊髄グリア細胞の活性化を調節することを明らかにできたといえる。
著者
上坂 良子 辻 幸代
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
和歌山県立医科大学看護短期大学部紀要 (ISSN:13439243)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.1-16, 2003-03

19世紀末、日本にナイティンゲール方式の看護教育が英米の婦人宣教師らによってもたらされた。日本の近代看護教育はここから始まる。この教育を受けた看護婦は少数でトレインドナースTrained-Nurseと呼ばれた。「大関和(ちか)」は、わが国最初のTrained-Nurseの一人である。父は藩の内紛により失脚するが、下野国黒羽(栃木県那須郡黒羽町)の家老職を勤め、彼女は上級武士の娘としての素養を身につけて育った。やがて結婚するが、一夫多妻主義の夫に従えず2児を抱えて自らの意志で離婚した。その後、植村正久牧師に出会い、一夫一婦制に共鳴し、キリスト教精神を学び洗礼を受けた。また、植村を通してナイティンゲールを知るところとなり、看護がキリスト教精神を実践する場として最善と考え看護婦への道を進む決意をした。母校の学長であり、基督教婦人矯風会会頭であった矢島楫子と共に女性の地位向上をめざす社会活動に加わり、衛生面の啓蒙普及活動を担当した。矯風会活動は大関の力量が生かされる場であった。当時、看護婦が社会から必要とされたにもかかわらず資格の法規制がないため、利益追求の低質な看護の出現に憂慮したのである。彼女は行政へ働きかけ、看護婦界ヘ呼びかけ、組織づくりや廓清運動を起こした。彼女の卒業時期から数えて12年目に東京府令看護婦規則(1900)、その後15年を経て内務省令看護婦規則(1915)が制定された。彼女は生存中に集大成としての看護書2冊と多くの著述を残した。これらの史料から窺い知る所は、「看護婦」には社会的使命があり、職業として社会の要請に応えるために自ら看護の質の向上に努め、その質を守るには看護婦自身が団結して行動を起こし、法規則を求めていく必要があるのだと社会活動を通して示し説いたのである。
著者
松下 由美子
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
和歌山県立医科大学看護短期大学部紀要 (ISSN:13439243)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.69-77, 2002-03

他の人間関係では許されないことが、「親密さ」ゆえに、夫婦や恋人の間では許されている。ドメスティックバイオレンスにおける「なぜ逃げないのか」という疑問は、暴力の被害者である女性に、別れるか否かの選択を強いるが、暴力を振るう男性側の責任は問うていない。Gelles,R.J.とStraus,M.A.は女性が逃げ出さない理由を、(1)暴力被害の程度、(2)子ども時代の虐待経験の有無、(3)女性自身の経済力、(4)子どもの有無に分けて述べている。しかし重要なのは、なぜこれらが「女性が逃げ出せない」理由となるのか、という点である。本論文は、「なぜ(女性が)逃げないのか]という疑問に、「なぜ(男性が)暴力をふるうのか」という観点から答えようとした。暴力をふるう方は自分に暴力をふるうだけの正当な理由があると思っている。そうした加害者からの巧みな理由付けにより、被害者は暴力をふるわれた原因が自分にあると思わせられる。そうして、殴った罪悪感の方は女性が負い、男性の暴力行為はそのまま続いてきた。「なぜその時に暴力を振るったのか」という問に対する男性の答えから、実に些細なことで暴力を使うことが明らかとなっている。実は、加害者が暴力をふるうのに、正当な理由が必要なわけではない。自分の非を暴力でカモフラージュし、服従の強要と権威の誇示が暴力をふるう原因として挙げられる。近代産業社会の登場は、生産労働=男、家事労働=女という性に基づく分業と、女性の経済的依存を発生させ、男性による女性の支配関係を碓実にした。そしてこの支配関係は、女性としての役割をおろそかにした、女らしく振る舞っていないという理由で暴力が許される環境を作りだし、被害者側に暴力の原因を認めさせることになり、暴力行為をより促進させていると考えられる。
著者
吉田 宗平 河本 純子 紀平 為子
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

平成10年〜11年において、まず第1に、紀伊半島全体のALS患者頻度の動向と多発地の状況を把握するため、1973-94年紀伊半島三県の人口動態死亡票データにより死亡頻度の変遷を解析した。この22年間で紀伊半島三県において799例(男性472/女性327名 ; 男女比1.44 : 1)を得た。死亡年齢の高齢化と共に、平均年間死亡率(年齢調整)は和歌山県では最高値から漸次低下を示し、紀伊半島全体としては近年0.9人/10万人へと均一化する傾向が見られた。しかし、和歌山県牟婁郡ではなお高率が保たれていた。第2に、和歌山県における河川・飲料水、特に多発地区古座川町と対照地区串本町大島を中心に、主な微量元素の含有量を分析した。古座川水系の河川・上水道のCa,Mg含有量(平均Ca2.3, Mg0.75ppm)は最も低く、この傾向は日高郡以南のALS多発地帯に見られるが、紀伊半島最南端の離島串本町大島の井戸水のみは(Ca13.3, Mg4.3ppm)と全国平均レベル(Ca8.8, Mg1.9ppm)を上まわった。第3に、house-to-house studyを施行するため、特定疾患医療受給者情報を利用し、地域医療機関や保健所の協力を得て古座川・大島地区の予備調整を行った。1990-99年の10年間で古座川町では、ALS2名、PDC-ALS2名の計4名の発症が確認された。このうちPDC-ALS2例の家系には、共にALSの発症が確認され家族性例であることが判明した。過去この地区にはPDC-ALSの発症の記載はない。古座川の平成12年1月1日現在の時点有病率は、71.5人/10万人であったが、大島にはなお患者は確認されていない。現在、当初のALSのみを対象としたhouse-to-house surveyの計画を再考して、PDCを含めた家系および環境要因分析を中心とした研究課題として考慮中である。
著者
玉井 晃浩
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
和歌山県立医科大学看護短期大学部紀要 (ISSN:13439243)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.25-39, 2003-03

Travis Bogardは「演劇の仮面の'通常の'使用は人間の個性を様式化し、あるいは人間を象徴化、典型化するものである」と述べている。Eugene O'Neillも"Memoranda on Masks"の中でHamletを例に挙げ、仮面を着けることがその劇を「もっぱら'花形役者のたルの芝居'という現在の閉ざされた状況」から解き放つであろうという可能性を示唆している。しかしThe Great God Brownの仮面の使用においてO'Neillが演劇的に追求したものは登揚人物を象徴化、典型化することとは大さく異なっていた。それらの目的を果たすための仮面は観客が創り上げた想像上の空間を壊すことがない様に役者の顔から取り外されることはないが、The Great God Brownの舞台においてO'Nellは敢えて仮面の取り外しを試みたのである。これは"Memoranda"でO'Neillが述べる「新しい仮面の定理。人の外側の長生は他人の仮面に取り憑かれた孤独の中で過ぎて行く;人の内側の人生は自分自身の仮面に追い立てられる孤独の中で過ぎて行く」という理論に基づくものであろう。人は人生において周りの者と調和して生きるために「他人の仮面」を着け、その結果、そうであるべき「自分自身の仮面」を着けた真の自己とはかけ離れた自分を自身の内部に見い出す人間の悲劇をO'Neillはここで語っている。1924年、"Strindbergand Our Theatre"において、従米展開されてきた演劇手法を「使い古された'自然主義'」と攻撃し、「我々現代人が人生のローンに対し支払わなければならない利子である自滅や自己妄想に関し直感的に理解できることを演劇の形で我々が表現し得るのは、何らかの'超自然主義'の形式によってのみである」とO'Nellは主土張した。'超自然主義'の形式」こそが「背後の力」によって生み出された「自滅」「自己妄想」に取り憑かれた人間の姿を表現出来ると考えたO'Nellが、The Great God Brownの舞台において「'超自然主義'の形式」としての仮面の役割をいかに演劇的に展開しているかを本論で考察していく。
著者
上谷 光作 村垣 泰光
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

Influenza A/Aichi/2/68, H3N2亜型のみならず, H1N1型(PR8)、H2N2型(Okuda)インフルエンザウイルスの増殖・精製を行い,ヒト肺腺癌細胞株A549細胞と初代培養されたヒト正常気管支上皮細胞NHBE細胞を用いて, M. O. I. 10以上でin vitroの感染実験系を構築した.これにより流行株の全ての亜型ウイルスにおいて,正常呼吸上皮細胞おける宿主免疫応答の解析が可能となった.インフルエンザウイルスを感染させた8時間後,細胞をインターフェロン(IFN)-α1,000 U. mlで刺激すると, IFNシグナル伝達経路の最下流に位置するSTAT-1の701チロシン残基のリン酸化は,驚くべき事に消失していた.つまりインフルエンザウイルス感染細胞ではIFN-αのシグナル伝達は遮断されていた. IFN-γで刺激するとやはりSTAT-1のリン酸化は抑制されていたが, IFN-α程では無かった.この実験結果によって, IFNが持つ抗ウイルス作用はインフルエンザウイルスには無効であることが示唆された.即ち,インフルエンザウイルスはIFNが持つ抗ウイルス作用に拮抗すメカニズムを有することになる.このメカニズムを解明すれば, IFNが持つ抗ウイルス作用にインフルエンザウイルスを回帰させることも可能となり,新規治療法の開発に繋がるものと考えられた.次に,最初にIFN-γシグナル伝達経路構成分子である,(1) IFNGR1,(2) IFNGR2,(3) Jak1,(4) Jak2,(5) STAT-1の5つ分子についてmRNAと蛋白発現を検討した. PCRによるmRNA発現量の検討ではウイルス非感染細胞と感染細胞で顕著な差を見出せなかった.しかしウェスタン分析による蛋白発現量に関しIFNGR1とJak1がウイルス感染細胞では選択的に抑制されており、他の分子の発現量には有意差は認められなかった。次にこれらの分子の蛋白発現量の違いがウイルス感染細胞内で発現されるウイルス蛋白分子に起因するものか検討をおこなった.ウイルス感染細胞内ではHA, NA, M1, M2, NP, PB1, PB2, PA, NS1, NS2の10個のウイルス蛋白が作られる.この中でどのウイルス蛋白がIFNシグナル伝達を遮断する原因分子であるか検討した.最初, IFN antagonistとして知られるNS1蛋白がIFN刺激によるStat1チロシンリン酸化を抑制する原因分子と想定し, NS1蛋白発現プラスミド(pCAGGS-NS1)をA549細胞に導入を試みたが効率が悪く,ヒト胎児腎細胞HEK293細胞に導入し, NS1蛋白を十分量発現させ,その後IFNで刺激しStat1チロシンリン酸化を検討した.その結果, NS1蛋白はStat1チロシンリン酸化を抑制しなかった.即ち, NS1蛋白はIFNシグナル伝達遮断のメカニズムは関与しないことが証明された。
著者
吉益 光一 宮下 和久 福元 仁 竹村 重輝 清原 千香子 山下 洋 宮井 信行 吉川 徳茂 清原 千香子 吉川 徳茂 篠崎 和弘 宮井 信行 山下 洋
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

児童の注意欠陥多動性障害(ADHD)の原因として、妊娠期間中の母親の飲酒や喫煙などのライフスタイル要因が注目されている。今回、ADHD の子どもを持つ母親とそうでない子どもの母親に聞き取り式の面接調査を行い、これらの要因がADHD に関連しているかどうかを検討した。結果、妊娠中の喫煙のみADHD の子どもの母親に多かったが、妊娠中の精神的なストレスや母親自身のADHD 傾向の影響を除くと、統計学的に意味のある違いは認めなかった。
著者
三井 利仁 田島 文博 中村 健 伊藤 倫之 馬渕 博行
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

頸髄障害者(CSCI)は副腎髄質への交感神経支配が障害されているために運動時アドレナリン分泌が胸腰髄損傷者(LSCI)より抑制されている。今回の研究で、当初運動による上昇を予想していた酸化LDLがLSCIに比べCSCIで抑制されていた理由として、このアドレナリン分泌の低下が一因であると推察される。下部胸髄節交感神経障害があるLSCIには末梢性交感神経障害が存在すると考えられる。結果よりoxLDLがLSCIよりCSCIの方が抑制されていた理由は、このアドレナリン分泌の低下が原因であると推察する。酸化LDLの有意な増加がないことからは、この運動はたとえCSCIにおいても安全であることが示唆された。
著者
竹山 重光
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
紀要 (ISSN:03852741)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.29-55, 2003

It is through ordinary activities that human being gets into relations with the world. Those day-to-day activities are not conspicuous, but basic for the human-being. A tiny tale in The Gospel according to St. Luke, Martha and Mary shows us an impressive figure of those activities. Meister Eckhart's exegesis of this tale, of which we treat mainly in this essay, puts forward a noteworthy thought about those activities. He considers them as a manifestation of human perfectness. Martha, not Mary, embodies human perfectness, which has a dynamic double structure. Martha is a woman. This fact gives us another problematique. We deal with it also.
著者
辻 繁勝 大河内 英作 澤田 均
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
特定研究
巻号頁・発行日
1986

Jimpyマウスは中枢神経系に著しいミエリン膜形成不全を発現するがCNS中の成熟オリゴデンドログリアが極端に少ない事および発症期に対応してミクログリア或いはマクロファージの数が著しく増加している事が認められている。我々は発病期のJimpyマウス中枢神経系に起こる種々のプロテアーゼ活性の変動を探る事に依って、この疾患の病因を追求しようと考えて実験を行い以下の結果を得た。1.トリプシン用基質であるBoc-Phe-Ser-Arg-MCAを基質として酸性(pH6.8)プロテアーゼ活性を脳ホモジネートの各細胞分画に就いて測定したところ発症期のJimpyマウス脳のミトコンドリア分画中では対照マウスに比較して有意に活性上昇している事が認められた。然し細胞質画分中の活性には差異は見られなかった。2.キモトリプシン用基質のSuC-Leu-Leu-Val-Tyr-MCAを基質とする中性(pH7.4)プロテアーゼ活性もJimpyマウス脳中ミトコンドリア画分で有意な増加を示した。この活性を更にミエリン膜画分に就いて測定したところ【Ca^(++)】-非依存性の中性プロテアーゼ活性と【Ca^(++)】添加によって活性が現われる【Ca^(++)】-依存性中性プロテアーゼ活性が存在する事が認められいずれもJimpyマウス脳中で、対照マウスに比較して有意に増加している事が確かめられた。3.【Ca^(++)】-非依存性プロテアーゼ活性には中性域の他に酸性域(pH5.5)にも活性のピークが在る事が判った。4.【Ca^(++)】-依存性中性プロテアーゼに就いて種々のインヒビターに対する感受性を検討したところ、EDTA,E-64,Leupeptin,Antipainなどによって強く阻害される事が判った。従って、この酵素はいわゆるCANP酵素に極めて類似した性質を有する事が推定される。以上の結果からJimpyマウス脳では発症期に対応してミエリン膜自体の自己破壊傾向が高進している事が推測された。
著者
佐々木 美津代
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

現在保存されている120家系(ダウン症者とその両親)のリンパ球樹立細胞株に加えて、新たに30家系の細胞樹立を行った。DNA抽出はGenとるくんにて行い、蛍光標識したprimerでPCRを行い、dinucleotide repeatの多型を検出する方法を行った。ALF expressシークエンサーにて電気泳動し、Fragment managerを用いてband patternを解析した。ダウン症者の21番染色体3本の由来に関しては、4群(maternal hetero or homo-disomy,paternal hetero or homo-disomy)を判定すべく、2種のprimerで検討した結果、hetero-disomyに関しては有意な結果が得られたがhomo-disomyに関してはslippageによる2bpおきのピークが存在するため量的な判断が行いにくい。さらに、tetranucleotide repeatの2種のprimerを検討中である。primerはIFNAR-IVS5-5',IFNAR-IVS5-3'1でproductsの大きさは195〜215bp、条件は論文と異なり、95℃30s-54℃30s-72℃30s 40cycles。もう1種のprimerはVS17T#3',VS17T#4でproductsの大きさは172〜264bp、条件は論文と異なり、95℃30s-55℃30s-72℃30s 40cycles。VS17Tに関してはバンドがラダー形成するためさらに条件の設定変更が必要である。また、RFLPによる量的な検討も平行して行う。平成11年、大阪でダウン症フォーラムが開催され、ダウン症児の健康管理に関して情報交換、健康手帳の執筆に参加した。
著者
山上 裕機 谷 眞至 川井 学
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

本研究は、網羅的DNA1次構造異常解析と網羅的遺伝子発現プロファイリングを統合することで、膵癌特異的遺伝子の同定を試みた。まず膵癌摘出標本における凍結サンプルを薄切した後、マイクロダイセクションにより膵癌細胞のみを回収した。そのDNAとRNAを抽出し、DNAはGeneChip Mapping Array10OKに、RNAはGeneChip Human plus U133arrayにかけ、網羅的遺伝子解析を行った。膵癌1次構造異常解析において、homozygous deletionを認めた領域はch3p24.1-p23, ch9p21.3, chgp22.3, ch9q22.32, ch17p12, ch18q21.1の6カ所であった。このうち2サンプル以上(10%)で認めたのは2カ所で、ch9p21.3が9サンプル(45%)とch18q21.1が5サンプル(25%)であった。この2領域の候補遺伝子は前者がCDKN2A(p16),CDKN2B(p15)およびMTAPで、後者はSMAD4であった。次に膵癌におけるLOH領域の同定を試みた。LOH領域のうち、最も頻度が高い領域はch17p13.3-p11.2で18サンプル(90%)、ch9p23-p22.3, ch18q22.1, ch18q22.3で17サンプル(85%)、ch9p21.3, ch18q12.3-q21.1で16サンプル(80%)であった。そのうちch17p13.3-p11.2の18サンプルのうち1サンプルで一部homozygous deletion領域を認め、ch9p21.3ではLOHの16サンプルに加え3サンプルにhomozygous deletionを認め、ch18q12.3-q21.1では16サンプルのうち5サンプルの一部にhomozygous deletion領域を認めた。3copy以上の増幅を認めた領域はch18q11.1-q11.2で9サンプル(45%)と最も頻度が高く、続いてch1q21.1-q23.1, ch1q23.3-q24.1, ch1q42.2-q44, ch7p, ch8q24.21, ch17q12-q21.32で5サンプル(25%)であった。Homozygous deletion領域における候補遺伝子群のRNA発現量の絶対値はいずれも200未満で、ほとんど発現を認めず、DNA1次構造とその発現に矛盾を認めなかった。Hemizygous deletion領域における候補遺伝子群のうち、CDKN2A, CDKN2B, SMAD4の遺伝子発現プロファイルを検討した。SMAD4における1copyサンプルの発現量は、2copyサンプルと0copyサンプルの平均発現量の間に認め、また最大発現量サンプルと最小発現量サンプルとの比は2.1であった。一方、CDKN2AとCDKN2Bにおける1copyサンプルの発現量には、サンプル間で大きなばらつきを認め、最大発現量と最小発現量の比はそれぞれ5.2と3.0であった。このことは、SMAD4の発現量はcopy数に大きく影響を受けるのに対し、CDKN2AとCDKN2Bの発現量はcopy数のみならず、メチル化などのeventに左右されていることが示唆きれた。
著者
松丸 大輔
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

泌尿生殖系器官など胎児後端の器官群は、隣接する器官群が相互に関連して発生・成り立っていると考えられる。これはいくつかの先天性疾患で複数の器官群に同時に症状が現れることからも推察されるが、そのメカニズムは殆ど明らかになっていなかった。本研究では、臍帯下部領域から外生殖器上部領域への細胞移動現象の存在を器官培養実験により示した。Hhシグナル関連遺伝子改変マウスでは、この過程に異常を呈する可能性を示唆した。これらの結果は、臍帯下部領域が細胞を供給することによって外生殖器や膀胱、腹壁といった広範囲の協調的器官形成に寄与し、またその破綻が先天性疾患へとつながる可能性を示唆する。