著者
山根 健治 河鰭 実之 藤重 宣昭
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.798-802, 1999-07-15
被引用文献数
5 18 24

フリーラジカル捕捉剤である安息香酸ナトリウムおよび没食子酸n-プロピル処理により, 切り離されたグラジオラス小花における花被のしおれの開始がわずかに遅れた.花被のスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)活性は花被の完全展開後2日間で著しく低下し, その後, 花被のしおれが開始した.300μMシクロヘキシミド(CHI)処理により花被のSOD活性の低下は緩和され, しおれは抑制された.花被のしおれが開始したとき, カタラーゼ(CAT)の比活性はほぼ一定であり, 花被当たりのCAT活性は低下した.CHI処理によってCAT活性はわずかに低下した.花被のペルオキシダーゼ(POD)活性は完全展開1日後から著しく上昇した.この上昇はCHI処理によりほぼ完全に抑制された.これらの結果から, フリーラジカル, SOD活性の低下およびPOD活性の上昇はグラジオラス花被の老化過程に関与することが示唆された.
著者
ヤンカンマン プラノーム 深井 誠一 市村 一雄
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.337-341, 2005-07-15

STS無処理または処理のカーネーション(品種エクセリア)の切り花を用い, 24℃または32℃で品質保持とエチレン生成を比較した.24℃では, STS処理によりカーネーションの品質保持期間は延長され, STS無処理のカーネーションでは, 処理9日後から花弁のin-rollingが観察された.32℃ではSTS無処理のカーネーションにおいても, 処理14日後でもなお花弁のin-rollingが認められず, STS処理した区と同等の品質保持期間を示した.STS無処理のカーネーションでは, 24℃では処理8-9日後にエチレン生成のピークが認められたが, 32℃ではごく微量のエチレン生成にとどまった.32℃に1日置きその後24℃に移した区では, 24℃一定の区と同様のエチレン生成のピークが認められた.一方, 24℃に1〜5日おき, その後32℃に移した区ではエチレン生成はごく微量であった.以上の結果より, カーネーションの切り花は, 32℃におかれた場合, エチレン生成が抑えられることが明らかとなった.
著者
國武 久登 津田 浩利 高木 良心 大野 礼成 黒木 義一 吉岡 克則 鹿毛 哲郎 伊藤 俊明 小松 春喜
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.105-110, 2006-06-15
被引用文献数
4

北部ハイプッシュブルーベリーの暖地栽培技術の開発を目的として,シャシャンボの台木としての可能性を検討した.3年生実生のシャシャンボに'バークレー','ブルークロップ'および'アーリーブルー'を接ぎ木したところ,活着率は85.7〜100%であった.また,接ぎ木活着の品種間差異を調査するために,ブルーベリー41品種(ハイブッシュブルーベリーおよびラビットアイブルーベリー)をシャシャンボに接ぎ木したところ,すべての品種で接ぎ木が可能であった.接ぎ木部分の不親和症状は接ぎ木4年後でも観察されなかった.シャシャンボ台に接ぎ木した'アーリーブルー'の新梢の第一次伸長量や果実垂は白根殊に比べ有意に高かった.しかしながら,新梢の第一次伸長は,ラビットアイブルーベリー台('ホームベル','ティフブルー')と比較してシャシャンボ台が劣っていた.果実の糖および有機酸分析を行った結果,含量および組成比に台木による大きな差異は認められなかった.以上の結果から,シャシャンボほブルーベリーと接ぎ木親和性があると推測され,南九州などの暖地において北部ハイプッシュブルーベリー栽培の台木として期待できると推測された.
著者
二宮 千登志 西内 隆志 平石 真紀 深井 誠一
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.571-577, 2008-10-15
参考文献数
10
被引用文献数
1

周年生産されているグロリオサの花芽分化と温度との関係を把握するため,'ミサトレッド'と'トロピカルレッド'および'ローズクイーン'を用いて,地温や催芽の温度・期間が花芽の分化に及ぼす影響について検討した.'ミサトレッド'と'トロピカルレッド'では19.1℃,31.6℃のいずれの地温でも同様の節位で花芽分化したが,'ローズクイーン'の花芽分化節位は19.1℃に比べて31.6℃の地温条件下で著しく高かった.15~40℃で56日間催芽すると,'ミサトレッド'では30℃以下,'トロピカルレッド'では35℃以下で催芽中に花芽分化した.'ローズクイーン'ではいずれの温度でも催芽中には花芽分化せず,基本栄養成長量の大きな品種と考えられた.いずれの品種においても葉分化には30℃かやや低い温度が適したが,花芽分化節位は催芽温度が低いほど低く,花芽分化のための好適温度は葉分化の好適温度より低いと考えられた.さらに,'ミサトレッド'では30℃で25日間,'トロピカルレッド'と'ローズクイーン'では30℃で15日間催芽した後に15℃で15日間処理することにより,30℃で30日間催芽した場合よりも花芽分化節位が低下した.すなわち,30℃条件下に一定以上の期間を置かれると基本栄養成長を脱するが,30℃そのものは花芽分化を抑制する温度であることから,15℃に移すことで速やかに花芽分化したものと考えられた.このように,茎葉の成長を促進させる温度域より,栄養相から生殖相への相転換を促進する温度域が低いことや,相転換に要する期間や基本栄養成長量,高い温度域での相転換の抑制温度が品種によって異なることが,催芽や定植後の温度に対する反応性の品種間差を生じ,花芽分化節位の品種間差異として現れたものと考えられた.<br>
著者
原田 久
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.271-277, 1984 (Released:2007-07-05)
参考文献数
14
被引用文献数
6 6

カキ‘平核無’における新梢生長, 腋芽の発育と花芽分化の関係について調査した.新梢は主として節間伸長によって伸長し, 新梢茎頂で葉を分化しながら伸長するといったことはみられなかった. 新梢伸長の停止は, 新梢茎頂部が生長を止め, 枯死することによって起こった. 新梢伸長停止後, 腋芽内の葉原基数が急速に増加した. 葉原基数の増加は新梢の肥大生長の影響を受けた. 7月上旬になると, 腋芽茎頂での葉原基の分化が次第に抑えられ, それとともに葉原基の腋部分裂組織が隆起し, その後多くは花芽へと発達した. 花芽分化は腋芽の発育や腋芽の茎頂分裂組織の活性低下と密接な関係をもって起こっていると考えられた.
著者
早田 保義 坂本 隆行 河塚 寛 坂本 宏司 筬島 豊
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.517-525, 2002-07-15
被引用文献数
2 7

メロンの香気成分分析においてPorapak Qカラム濃縮法(PQM)の有効性を明らかにするため, 従来の抽出方法である直接ヘッドスペースガス採取法(DHSM)および減圧連続蒸留抽出法(SDEM)と成分の回収量や回収率および再現性等について比較・検討した.検出された揮発成分数はPQMが103成分で最も多く, 次いでSDEMが66成分, DHSMが8成分であった.同定された揮発性成分は76成分であり, アルコール類では, 2-Methyl-1-propanol, 2-Methyl butanol, 1-Hexanol, 1-Heptanol, 1-Nonanol, (Z)-3-Nonen-1-ol, (Z)-6-Nnen-1-ol, (Z, Z)-3, 6-Nonadien-1-ol, Benzyl alcoholおよび2-Phenethyl alcoholなどがPQMで比較的多量に検出された.アルデヒド類では2-Methyl butanal, 3-Methyl butanal, Nonanal, (E, Z)-2, 6-NonadienalおよびDodecanalが, PQMで多く回収された.エステル類では両抽出法でPropyl acetate, 2-Methylpropyl acetate, Butyl acetateおよびBenzyl acetateが比較的多量に回収されたが, 回収効率はEthyl propionateおよびMethyl butyrateなど低沸点成分の多くがほぼ同程度であり, 中高沸点成分はPQMが良好であった.含硫化合物はEthyl (methylthio) acetateおよび2-(Methylthio) ethyl acetateがPQM, SDEM共に, Ethyl 3-(methylthio) propionate, 3-(Methylthio) propyl acetateがPQMでのみ検出された.成分の抽出変動係数はPQMでは平均11.90%であったが, SDEMでは平均37.13%とPQMの安定的な再現性が得られた.また, PQMで得られた香気濃縮物そのものの香りはメロン特有の自然な香りであったが, SDEでは煮え立ったような重い匂いに変性した.PQMは従来の抽出方法に比べ操作が簡便・迅速に行え, 更に幅広い沸点範囲の香気成分を変性させること無く回収でき, 再現性が高いことからメロンの香気抽出法として優れた方法であると判断された.
著者
小池 安比古 井上 知昭 鈴木 重俊 樋口 春三
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.69, no.6, pp.770-772, 2000-11-15
被引用文献数
8 4

宿根スイートピーの開花に及ぼす日長の影響を調べた.8&acd;12時間日長の短日条件では開花せず, 16時間日長ないしは暗期中断で開花が促進される長日植物であることが明らかになった.なお, 早期に播種して最低15℃の温室で16時間日長として栽培すれば, 周年開花が可能と考えられた.
著者
長島 時子
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.231-241, 1985 (Released:2007-07-05)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

キエビネ, カ•エルメリ及びトクサランの3種のランを供試し, 胚珠形成及び受精後の種子形成過程を組織学的に観察するとともに, 種子形成過程と種子発芽との関係を追究した.1. 子房の大きさは, いずれのランにおいても, 受粉すると急速に増加した. 子房の大きさは, キエビネ及びトクサランでは受粉後50日ごろに, カ•エルメリでは同60日ごろにそれぞれ一定値に達した.2. 種子及び胚の大きさは, いずれのランにおいても, 受精すると急速に増大した. 種子の大きさは, キエビネ及びトクサランでは受粉後80日ごろに, カ•エルメリでは同60日ごろにそれぞれ一定値に達した. 胚の大きさは, キエビネでは受粉後95~100日ごろに, カ•エルメリでは同65~70日ごろに, トクサランでは同87~90日ごろにそれぞれ一定値に達した.3. 胚珠形成は, キエビネでは受粉後43~45日ごろに, カ•エルメリでは同35~37日ごろに, トクサランでは同30~31日ごろにそれぞれ完了した. 重複受精は, キエビネでは受粉後48~50日ごろに, カ•エルメリでは同40~41日ごろに, トクサランでは同34~35日ごろにそれぞれ行われた. 胚のうは, キエビネ, カ•エルメリ及びトクサランのいずれにおいてもそれぞれ5~6個が観察された. 受粉から胚発生完了までに要する日数は, キエビネでは95~100日, カ•エルメリでは65~70日, トクサランでは87~90であった.4. 胚発生の様相はキエビネ, カ•エルメリ及びトクサランのいずれにおいても同様であった. すなわち, いずれにおいても4細胞期ではA2型であり, 4細胞期以降の胚発生過程はE型 (Liparis pulverulenta 型) に類似していた. また, いずれのランにおいても胚は主としてca細胞から形成された.5. 受精後の胚乳核は, キエビネ, カ•エルメリ及びトクサランのいずれにおいても3~5個が観察された.また, いずれにおいても胚柄の存在が観察された.6. 種子の発芽能力は, キエビネ及びトクサランでは8細胞期 (前者では受粉後70日ごろ, 後者では受粉後55日ごろ) 以降に, カ•エルメリでは前胚の4細胞期以前(受粉後45日ごろ) にそれぞれ認められた. なお, いずれにおいても胚発生完了前後において発芽率が最も高かった. 培地としては, MS培地及びKC培地に比較して, H培地が優れていた.
著者
谷脇 満 花田 貴紀 桜井 直樹
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.410-414, 2006-09-15
被引用文献数
2

野菜などの生鮮食品の食感を数値化する方法を開発した.この方法はナイフ形プローブを食品サンプルに突き刺した際の食感信号を,圧電センサーを用いた装置で測定するものである.この際,単位時間当たりに含まれる食感信号の振幅を積算した振幅密度を計算し,これを食感指標として定義した.得られた食感信号を周波数領域で解析するためにオクターブマルチフィルタを使用し,0Hzから6400Hzまでの範囲で解析した.また,食感信号に含まれている周期的なノイズを取り除く技術も開発した.これはプローブが動き始める前のノイズのデータを,食感信号とノイズが混在している生データから差し引くことによって周期ノイズを取り除くものである.以上の方法を根深ネギに適用し,その食感の特徴を明らかにした.さらに,低周波領域(0-50Hz)の食感信号を解析することによって,根深ネギの葉鞘構造を確認することが可能であった.
著者
本杉 日野 山本 恭久 鳴尾 高純 山口 大介
出版者
園芸学会
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.271-278, 2007 (Released:2007-10-19)
参考文献数
30
被引用文献数
9

コルヒチン処理により作出したブドウ台木 ‘Riparia Gloire de Montpellier’(‘Gloire’, Vitis riparia Michx)および ‘Couderc 3309’(‘3309’, V. riparia × V. rupestris)の四倍体に接ぎ木した‘巨峰’(V. × labruscana Bailey × V. vinifera L.)ブドウ樹の成長と果実品質について,もとの二倍体台木に接ぎ木した‘巨峰’と比較した.組織培養により育成した台木と‘巨峰’を試験管内で接ぎ木し,発根させた.接ぎ木後の発根期間と順化期間において四倍体台木に接ぎ木した‘巨峰’は二倍体台木のものと比べ新梢長および節間長が短かかった.ポット育苗期において,四倍体台木における成長はもとの二倍体台木より弱くなる傾向が認められた.圃場定植後においても,四倍体台木に接ぎ木した‘巨峰’における主梢摘心後の副梢成長量,幹断面積および剪定枝重は二倍体台木と比べて小さくなった.四倍体台木に接ぎ木した‘巨峰’樹の果実は二倍体台木に比べ濃い着色を示した.
著者
糠谷 明 増井 正夫 石田 明
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.73-81, 1979 (Released:2007-07-05)
参考文献数
21
被引用文献数
2 8

希釈した海水が, トマトの発芽, 生育, 収量に及ぼす影響について調査した.(1) 発芽試験開始2日後, Cl濃度の100ppmにより発芽率は減少した. 6日後の発芽率は0から1000ppm Cl間で有意差がなかったが, 2000ppm Clでは80.5%, 3000ppm Clでは21.5%で, 0から1000ppmClより低かった.(2) ホーグランド液で希釈された海水で育てられたトマトの蒸散量は, 海水濃度が増すにつれ減少した.(3) トマトを本葉2枚のステージより40日間, ホーグランド液で希釈された海水で育てた. 葉の新鮮重は250, 500ppm Clで0,100ppm Clより大であったが, 果実収量は0ppm Clで最大であった. 6000ppm Clで枯死株がみられた. 葉の浸透ポテンシャルは海水濃度の増加により減少した.(4) トマトを砂耕で栽培した結果, クロロシスとネクロシスは2000ppm Clでは下位葉にみられた. これらの症状は3000ppm Clではさらに激しく, 下位葉から上位葉にまで認められた. 3000ppm Clでは枯死株もみられた. また, 海水濃度の増加とともに, 葉の新鮮重と果実収量は減少し, 葉のCl, Na含量は増加した.(5) トマトを土耕で栽培した結果, 葉の周縁ネクロシスは海水の濃度が高い場合, 下位葉にみられたが, 3000ppm Clにおいても枯死株はなかった. また, 海水濃度の増加とともに, 葉の新鮮重と果実収量は減少し, 葉のN, P, K, Na, Mg, Cl含量は増加する傾向がみられた. 実験終了時の土壌のCl, 置換性Na, Mg含量及びECは, 海水濃度が高まるにつれて増加した.
著者
清水 丸雄 かほり 渋谷 俊夫 徳田 綾也子 瓦 朋子 杉脇 秀美
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.23-26, 2008-01-15
参考文献数
9
被引用文献数
1 2

ナス接ぎ木挿し穂の低温(5-10℃)貯蔵中に挿し穂下端部を温水に浸けるボトムヒート(BH)処理を行うことで,挿し木後の発根促進を試みた.ナス台木(<i>Solanum torvum</i> Sw.)挿し穂の挿し木後における根の成長は,BH処理温度26-31℃で最も促進され,その効果はBH処理期間が長くなるほど大きくなる傾向がみられた.BH処理を5日間継続したところ,処理開始4日目において貯蔵中に発根する挿し穂がみられた.発根した挿し穂は,挿し木する際に根を痛める可能性があることから,最適BH処理期間は3日間程度と考えられた.ナス接ぎ木挿し穂を貯蔵開始直後に処理温度27℃でBH処理を3日間行った結果,挿し木14日後おいて,BH処理した挿し穂の根部生体重はBH処理しなかった挿し穂の1.4倍,貯蔵せず直接挿し木した挿し穂の2.8倍であり,BH処理の効果が認められた.<br>
著者
稲葉 善太郎 大城 美由紀
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.273-276, 2004-09-15
被引用文献数
4

キンギョソウ2品種'メリーランドピンク'および'ライトピンクバタフライII'を育苗方法と夜温とを組み合わせて摘心栽培を行った。育苗方法では、いずれの品種も無仮植で育苗して定植後に摘心することで第2節分枝の開花が早くなるとともに採花本数が増加した。夜温は、'メリーランドピンク'では11月中旬からの夜温11℃が適していた。'ライトピンクバタフライII'では11月中旬から夜温11℃以上、12月中旬から夜温16℃とすることで採花本数は増加するが、切り花長は減少した。
著者
工藤 暢宏 木村 康夫 新美 芳二
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.9-12, 2002-04-01
被引用文献数
2 11

カシワバアジサイの有用形質をセイヨウアジサイに導入することを目的として, 種間雑種の作出方法を検討した.1. セイヨウアジサイを種子親, カシワバアジサイを花粉親にした種間交配では, 受粉後2週間ほどで子房が緑化肥大し, さく果を形成するが, 完全な種子はできなかった.2. 交配後のさく果から胚珠を取り出し培養すると胚が発達して, 肥大した胚が出現することが確認された.しかし, 'ハルナ'を種子親にした場合では, 出現直後に胚が生育を停止し枯死した.'ブルーダイヤモンド'を種子親にした場合には, 非常に低い割合であるが, 順化可能な雑種と思われる個体が得られた.3. 順化後温室で栽培した再性個体にはカシワバアジサイ特有の鋸歯が観察され, 雑種であると判断された.しかし, 雑種個体の全体的な形態は種子親の特徴を多く受け継いでいた.培養開始から2年後に胚珠から再生した雑種6個体のうち1個体が開花したが, 花序は中心がやや山型に盛り上がったテマリ型で, 種子親の'ブルーダイヤモンド'の特徴が強く現れていた.
著者
山川 祥秀 守屋 正憲
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.16-21, 1983 (Released:2007-07-05)
参考文献数
17
被引用文献数
4

‘カベネル•フラン’のウイルスフリー樹と汚染樹の果汁成分の経時的変化を, 1982年に, それぞれ4年生の自根樹を用いて調査し, 次の結果を得た.1. 9月下旬, ウイルスフリー樹の果粒は果重2.15g, 果径14.5mm (果房重240g), 汚染樹のそれらは1.80g, 14.0mm (果房重170g) の最大値に達し, ウイルスフリー樹の果粒の方が重かった.2. 汚染樹の果汁糖度は9月上旬12%に達した後, 全く増加が見られなくなった. 一方, ウイルスフリー樹の果汁糖度は9月上旬以降も順調に増加し, 9月下旬18%に達し, 汚染樹のそれを5~6%も上回った.3. 9月30日, 汚染樹のグルコースは5.75%, フラクトースは5.49%であった. 一方, ウイルスフリー樹のグルコースは8.43%, フラクトースは8.96%であって, 汚染樹のそれらを大きく上回った.4. 果汁酸度は9月下旬, 汚染樹の0.90g/100mlに対し, ウイルスフリー樹は0.60g/100mlと低く, 低酸度であった.5. 9月30日, 汚染樹の酒石酸は0.900g/100mlと高く, リンゴ酸は0.388g/100mlであった. 一方, ウイルスフリー樹の酒石酸は0.664g/100ml, リンゴ酸は0.284g/100mlで, 共に汚染樹より低かった.6. 完熟期, ウイルスフリー樹の果汁pHは3.30, 汚染樹のそれは3.20であった.7. 仕込み5か月後の利き酒によると, ウイルスフリーー樹のワインは品種特有のアロマが強いが, 酸味, 渋味がやや不足した. 一方, 汚染樹のワインはアロマが劣るが, 酸味, 渋味は強く, 赤色も濃かった. したがって, 低酸含量となりがちなウイルスフリー樹の場合, 原料果実の収穫, 仕込み時期の選択に問題があるものと思われた.
著者
山川 祥秀 清水 均 櫛田 忠衛
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.454-460, 1982 (Released:2007-07-05)
参考文献数
30
被引用文献数
1 1

‘甲州’ブドウの昭和55年の味なし果と健全果について, 果実の粒径及び粒重と, 主要成分である糖と酸の経時的変化を調べて, 次の結果を得た.1. 味なし果の粒径と粒重の増加曲線は成熟過程中, 健全果とほとんど同じ形を示した. ただし, 味なし果の方が粒径, 粒重ともに終始わずかに大きい値を示した.2. 味なし果の糖度は9月初めの着色の時期までは健全果と全く同じ上昇を示したが, その後は上昇が止った. 健全果はその後も順調な上昇を示し, 収穫期には18~19%まで上昇し, 味なし果との差は6~7%に達した.3. pH の変化については, 味なし果はゆっくりとした直線的な上昇傾向を示したが, 健全果は典型的なS字曲線を示した.4. 還元糖は幼緑果期を除けば上記糖度の場合と同様であった.5. 滴定酸度は8月上旬に味なし果で5.00g/100ml, 健全果で5.15g/100mlの最高に達し, 以後急減して, 収穫期には逆転し, 味なし果0.95g/100ml, 健全果0.86g/100mlとなった.6. ブドウ糖と果糖の総量の変化は還元糖の場合と同様であったが, 収穫期に味なし果ではブドウ糖5.2%, 果糖5.7%, 健全果ではブドウ糖8.4%, 果糖9.4%となった. また, G/F値は成熟初期は1で, 9月初めになって1を割り, 収穫期に味なし果で0.92, 健全果で0.89となった.7. 酒石酸とリンゴ酸の総量の変化は滴定酸度の変化と同様であったが, 成熟初期では酒石酸よりもリンゴ酸が多く, 両酸とも味なし果の方が健全果よりも少なかった. しかし, 収穫期にはリンゴ酸よりも酒石酸が多く, 味なし果では健全果よりわずかにリンゴ酸が多く, 酒石酸は少なかった. また, 結合型の酸の割合を計算し, 味なし果で17.4%, 健全果で24.6%の値を得た.‘甲州’の味なし果樹の外見的生育経過と収穫量は健全果樹とほとんど違いはなく, 強いて言えば, 味なし果実の方がわずかに着色が劣る程度であった. しかし, 成分的には味なし果の言葉が示すとおり, 糖分が極端に低く, 酸が高く, ‘水っぽい’ものであって, この変化は着色の始まる9月になって突然に起こるものである.
著者
松尾 英輔
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.373-378, 2005-12-15
被引用文献数
1
著者
渡邉 慎一 中野 有加 岡野 邦夫
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.725-732, 2001-11-15
被引用文献数
6 7

ガラス温室内でスイカを土耕栽培し, 立体栽培および地ばい栽培における個体当たりの総葉面積と果実重の関係について検討した.1. 'ハニー・シャルマン', '吉野', '早生天竜'の3品種を用いて仕立て本数を1本または2本として立体栽培(3月播き6月どり栽培)を行ったところ, いずれの品種においても個体当たりの総葉面積と果実重の間には高い正の相関関係が認められた.2. '早生天竜'を用いて仕立て本数1&acd;3本で立体栽培および地ばい栽培(8月播き11月どり栽培)を行ったところ, 立体栽培, 地ばい栽培のいずれにおいても個体当たりの総葉面積と果実重の間には高い正の相関関係が認められた.3. 立体栽培と地ばい栽培を比較すると, 個体当たりの総葉面積が同じ場合でも, 立体栽培区の果実は地ばい栽培区より明らかに小かった.4. 果実糖度に対する誘引法や個体当たりの総葉面積の影響は小さかった.5. 以上の結果, スイカの果実重は基本的に個体当たりの総葉面積によって決定されるが, それに加えて受光態勢も関与していることが示唆された.
著者
斎藤 秀幸 斎藤 隆
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.79-83, 2004-04-01
被引用文献数
3 2

カブ'ひかり'の花房形成に及ぼす24時間の日長処理期間の影響について調査するとともに,ジベレリンあるいはウニコナゾール施与の影響について調査し,長日によるカブの花房形成に対するジベレリンの作用について花成強度(斎藤・斎藤,2001)を求めて検討した.24時間の日長処理を0, 10, 20, 30, 40および75日間行った結果,頂花房の形成株率は処理期間の長くなるにつれて順次高くなり,側花房の形成節数は多くなり,花成強度も処理期間の長くなるにつれて高くなった.24時間日長による花成誘導の作用は徐々に累積され,低温に比べて小さいものと考えられた.ジベレリン施与によって,頂花房の形成は全株で認められ,頂花房までの節数は減少し,側花房の形成節数は増加した.花成強度はジベレリン施与によって高くなり,花房形成が助長された.一方,ウニコナゾール施与によって,花房の形成は著しく抑制され,花成強度は著しく低下した.ジベレリンは長日による花房形成の助長作用を代替するが,その助長作用は低温に比べて小さく,あまり大きくないものと考えられた.
著者
間藤 正美 工藤 寛子 山形 敦子 佐藤 孝夫 柴田 浩
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.201-208, 2009-04-15

7月下旬咲き小ギク'小雨'、'みちのく'、'やよい'の生育に及ぼす気温とエセフォン処理の影響について調査した。開花期は、各年の気温によって大きく変動した。変動の要因は、花芽分化期の低温や花芽発達期の高温であり、特に後者の影響が大きかった。'小雨'は、これらの時期の高温や低温によって発蕾後の花芽発達が抑制されて、開花が遅延しやすい品種であった。'みちのく'は、花芽分化期の低温により花芽分化および発蕾前の花芽発達のみが抑制され、開花の年次変動の小さい品種であった。'やよい'は、花芽発達期の高温で発蕾後の花芽発達が抑制され、開花の年次変動が供試3品種中で中位の品種であった。7月下旬咲き小ギクの開花は、エセフォン処理によって遅くなるが、その程度も品種間差があった。供試3品種において、エセフォン処理は、主に花芽分化および発蕾前の花芽発達を抑制した。しかし、'小雨'および'やよい'に対するエセフォン処理では、気温によって発蕾後の花芽発達の抑制程度に大きな変動が見られた。7月下旬咲き品種のエセフォン散布処理による盆出荷作型の開発において、'みちのく'の様に気温による開花の年次変動が小さい有望な品種があることが判明した。今後、適応する品種を選抜して、盆出荷のための適正な散布方法を開発する必要があると考えられた。