著者
前川 健二郎 前田 智雄 大島 千周 鈴木 卓 大澤 勝次
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.315-320, 2006-09-15
被引用文献数
8 8

数種アブラナ科野菜の高機能性スプラウト生産技術を確立するため,抗酸化活性成分含量および抗酸化活性に及ぼす照射光強度の影響について検討した.その結果,栽培中の光強度を高めることで,スプラウトの胚軸長は短くなるものの,フラボノール,アントシアニンおよび総ポリフェノール含量の増加が認められ,抗酸化能(DPPHラジカル補足活性,スーパーオキシド消去活性)も高まった.これらのことから,光を強めた環境で栽培することにより抗酸化活性が高いスプラウトの生産が可能であることが分かった.
著者
別府 まゆみ 北島 宣 長谷川 耕二郎
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.83-88, 2001-01-15
被引用文献数
3 19

'水晶文旦', '晩白柚', '晩王柑', ブッシュカン, '興津早生'ウンシュウミカン, コウジおよび'ダンカン'グレープフルーツの幼葉を用いて, 酵素解離法により染色体標本を作製し, (1)ギムザ, (2)クロモマイシンA_3 (CMA), (3)キナクリンマスタード(QM)で順に染色し, 染色体長の調査およびCMAバンドパターンに基づく染色体の分類を行った.染色体構成は, '水晶文旦'では3A+3C+3D+9E, '晩王柑'では2A+1B+3C+3D+9E, ブッシュカンでは2B+8D+8E, '興津早生'では1A+1C+8D+8E, コウジでは1C+8D+9E, 'ダンカン'では2A+1B+1C+6D+8Eであった.'晩白柚'では17本の染色体構成は1A+2B+2C+4D+8Eであり, 残る1本はA型またはB型のいずれであるか判別できなかった.ブッシュカンを除く種および品種において, A型からE型のいずれかで染色体数が奇数であり, 部分相同染色体を含んでいることが示唆された.ブッシュカンやマンダリンは, 比較的早く分化したと考えられており, ブッシュカン, '興津早生'およびコウジでは, 染色体構成が単純でD型およびE型染色体が多くの割合を占めたことから, D型およびE型染色体がカンキツ染色体の基本型である可能性が示唆された.
著者
Park So-Young Song Jin-Su Kim Hyoung-Deug Yamane Kenji Son Ki-Cheol
出版者
園芸学会
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.77, no.4, pp.447-454, 2008-10
被引用文献数
4

Case studies were performed in two high schools (designated K and J) in Seoul, Korea in order to examine how in-class plantscapes consisting of ornamental plants affected the indoor environment and the stress level of students. Forty-two healthy female students, 16 to 17 years old, were assigned to classrooms with or without plantscapes. Although the differences were small, plants lowered the temperature, raised the relative humidity in the classrooms, and reduced the amount of airborne fine particles. Positive descriptors such as 'clean', 'soft', 'comfortable', and 'fresh' were used by the students to describe the classrooms with plants in both schools after installation of the plants. The stress level of the students was lower in rooms with plants than without in school K and but not in school J; students in control rooms in both schools did not show a significant change in stress. Saliva cortisol content, a physiological indicator of stress, was not reduced by the presence of plants in either school; however, the number of visits to the infirmary was lower for students in rooms with plants than in the control rooms at both schools. The results indicate that the presence of plants improved the physical environment, the general ambience (i.e., appropriate place for classes' and 'relaxed place'), and reduced the level of stress among the students. The role of the interior plantscapes in living spaces is discussed.
著者
村山 徹 箭田 浩士 宮沢 佳恵
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.241-245, 2007-04-15
被引用文献数
1 2

コシアブラ若芽の抗酸化活性をβ-カロテン退色法とDPPHラジカル消去活性で評価したところ,高い活性を示した.主たる抗酸化成分は,クロロゲン酸と同定された.グロースチャンバー試験で,その成分含量に影響する要因を検討したところ,光が強く,穂木が良いと含量が高まることが示された.その結果に基づいて,好適な促成栽培技術を確立するため,ガラス室内で栽培条件が収量と抗酸化成分含量に及ぼす影響を検討した.促成栽培では, 10〜15℃の木に30〜40cmの穂木を挿すことによって,クロロゲン酸含量の多い若芽を収穫できた.
著者
飛川 光治
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.381-385, 2008-07-15

ナスの花粉の発芽に及ぼす置床後の培養温度の影響について寒天培地上で検討した.花粉の発芽および花粉管の伸長は,花粉の置床直後に発芽適温の25℃で1時間以土経過すれば,その後に15℃に遭遇しても,常時発芽適温で経過した場合と比べて同等であった.一方,置床後に一時的に15℃に遭遇した場合には,その後に25℃に1時間遭遇しても有意に劣ることが示された.ナスの慣行加湿促成栽培における日中の25℃加温と受粉時間帯の果実生産への影響については,11:00〜14:00の3時間の加湿処理中に人為的に授粉することにより,種子数,正常果収量および果実外観は,加温処理外の時間に授粉した場合に比べて有意に向上した.また,それらは11:00〜12:00の1時間の加湿処理時に授粉することだけでも,加湿処理をしない慣行栽培に比べて有意に向上した.
著者
文室 政彦 宇都宮 直樹
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.1146-1148, 1999-11-15
被引用文献数
4 4

加温ハウス内において根域制限ベッドに植栽した7年生カキ'刀根早生'を供試し, 地中加温が新梢生長と果実発育に及ぼす影響を検討した.1月12日から4月15日まで, 地中に埋設したパイプに温湯を循環させて地温を20℃に維持する区と無処理区を設けた.地中加温は発芽および開花期にはわずかな影響しか及ぼさなかったが, 新梢生長および果実の成熟を促進し, 可溶性固形物含量を増加させた.しかし, 果実の結実率と肥大生長は地中加温によって低下し, 減収した.
著者
長谷 暢一 松浦 誠司 山口 雅篤
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.125-129, 2005-06-15
参考文献数
15

パンジーにおけるHPLCを用いたフラボノイド分析を行った.その結果, それぞれ6種類のアントシアニンおよびフラボノール類が検出された.そのうち, 4種類のアントシアニンはDp3RG, Cy3RG, Dp3pCRG5G(ナスニン)およびCy3pCRG5Gであり, また1種類のフラボノール類はQu3RG(ルチン)であった.黄色および白色系統においてアントシアニンは検出されなかった.青色系統はナスニンおよび6種類全てのフラボノール類が主要色素として存在し, 系統間でその含量の違いが認められたことから, コピグメントによる花色幅の拡大の可能性が示唆された.赤色系統はアントシアニンのCy3RGおよびルチンを含む3種類のフラボノール類が主要色素であり, また赤紫系統では特異的なアントシアニン(Cy3pCRG5G)が多く含まれ, 赤色系統および赤紫系統はアントシアニンの違いにより花色が異なることが示唆された.これらのことから, パンジーの新規花色品種育種おけるHPLC分析の有効性が示された.
著者
近泉 惣次郎
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.13-18, 2002-01-15
参考文献数
14
被引用文献数
2 1

'大谷'イヨの果皮障害の発生原因を明らかにすると共に, 防止対策についても二三の検討を加えた.'大谷'イヨの果皮障害は主に貯蔵中に発生するが, 樹上の果実にも認められた.'大谷'イヨの果皮障害には3種類あることが明らかになった.一つは, 果実が受ける高温並びに日射が主因となった障害である.この障害は樹上の果実に発生する.そこで, この障害に対して"日焼け症"と呼称した.二つめは収穫時には肉眼的には健全な果実でも, 貯蔵中に果実が樹上で受けた果面の陽光部に多数の小さな斑点が発生するものである.この障害に対しては"コハン症"と呼称した.他の一つは貯蔵中に発生するが, この原因は貯蔵中の低温が主因であり, -2℃の貯蔵によって発生した.この障害は果面が赤くただれた火膨れ症状を呈するため"ヤケ症"と呼称した."日焼け症"は高温や日射を軽減する袋かけにより防止できた.20℃の予措処理とポリエチレンフィルムによる個包装を組み合わせることにより, 貯蔵中に発生する"コハン症"や"ヤケ症"の発生を抑制することができた.しかし, 個包装を開封することによってこれらの障害が発生した.
著者
貝塚 隆史 作田 祥司 鈴木 雅人 坂本 俊彦 鈴木 栄 荻原 勲
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.269-275, 2008-04-15
参考文献数
19
被引用文献数
1

フィルム包装して給水処理を行ったコマツナを低温・弱光下に保存したときの新鮮重,葉色などの品質および葉内の硝酸態窒素濃度の変化を検討した.フィルム包装して給水処理をおこなったコマツナは,フィルム包装による蒸散の抑制と,主根からの継続的な吸水が行われるため萎れが観察されず,保存後に新鮮重が増加した.弱光照射によって葉緑体の形成などが行われたため葉の緑色は退色しなかった.光合成,呼吸,葉緑体形成などで窒素が代謝されるので,各葉位および各部位(葉身と葉柄)ともに硝酸態窒素濃度が低下し,特に,14℃の条件で保存4日後に約36%の減少が認められた.以上のことから,コマツナを収穫後にフィルム包装,給水処理,弱光照射および低温条件を組み合わせて保存すると,品質の低下が少なく,硝酸態窒素濃度の低い植物体の生産ができることがわかった.
著者
山下 謙一郎 若生 忠幸 小原 隆由 塚崎 光 小島 昭夫
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.444-450, 2005-11-15
参考文献数
27

ネギのさび病抵抗性を改良するため, '聖冬一本', '岩井2号', '長寿', 'せなみ', '冬扇一本', '豊川太'の6品種を育種素材(C_0)として循環選抜を行った.循環選抜の1サイクルは2段階からなり, 最初の年に自殖および自殖系統選抜を行い, 2年目に相互交配および母系系統選抜を行った.2サイクルの循環選抜により, 10母系系統からなる改良集団(C_2)を得た.さらに, 2世代の自殖と自殖系統選抜を行い, 13のC_2S_2系統を得た.実施した循環選抜の効果を評価するために, 2回の接種検定により上記の選抜で得られた全世代のさび病抵抗性の程度を比較した.春季および秋季の接種検定において, 発病程度の指標であるarea under the disease progress curve (AUDPC)の値は循環選抜が進むにともない明らかに減少し, 抵抗性の向上が認められた.C_1からC_2世代にかけて抵抗性の変化は小さかったものの, C_2S_2世代では大幅な向上が認められ, C_2S_2系統のAUDPCは素材品種の約38%となった.以上の結果, ネギのさび病抵抗性の改良に循環選抜は有効であることが実証された.
著者
藤原 隆広 熊倉 裕史 大田 智美 吉田 祐子 亀野 貞
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.347-352, 2005-09-15
被引用文献数
12 20

1. 京都府綾部市において, 2003年6月〜2004年5月までの1年間に毎月2〜3回の間隔で購入した市販のホウレンソウ(合計127サンプル)に含まれるL-アスコルビン酸(AsA)と硝酸塩の周年変動を調査した.2. AsA含量は, 夏期(7月〜8月)に低く冬期から春先(1月〜3月)にかけて高い傾向が認められた.また, この傾向は可食部上部(葉身側)で特に高かった.3. 硝酸塩含量は, 7月〜9月に高く, 1月〜3月に低い傾向が認められた.また, この傾向は可食部下部(葉柄側)で顕著であった.4. 生体重および葉色(SPAD値)と2つの品質成分(AsA含量と硝酸塩含量)との間に有意な相関が認められたが, これらの相関関係は外観形質から品質成分の多寡を推定するには十分ではないと判断された.
著者
浅尾 俊樹 北澤 裕明 伴 琢也 Pramanik M. H. R. 松井 佳久 細木 高志
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.73, no.3, pp.247-249, 2004-05-15
参考文献数
9
被引用文献数
1 21

8種の葉菜類の自家中毒物質を探索するために水耕葉菜類に用いた活性炭に吸着された物質をGC-MS法で分析した.その物質は乳酸,安息香酸,m-ヒドロキシ安息香酸,p-ヒドロキシ安息香酸,バニリン酸,アジピン酸およびコハク酸であった.同定された物質の中で,顕著に生育抑制を引き起こす物質を探るため各葉菜類の苗を使ったバイオアッセイを行った.その結果,パセリではアジピン酸,セロリでは乳酸,ミツバでは安息香酸. p-ヒドロキシ安息香酸およびコハク酸,レタスではバニリン酸,葉ゴボウではコハク酸,シュンギクでは安息香酸,m-ヒドロキシ安息香酸およびコハク酸,チンゲンサイでは安息香酸およびp-ヒドロキシ安息香酸,ケールでは安息香酸,p-ヒドロキシ安息香酸およびアジピン酸が生育抑制を顕著に引き起こす物質として認められた.
著者
加藤 松三 清水 弘子 久松 完 小野崎 隆 谷川 奈津 池田 廣 市村 一雄
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.385-387, 2002-05-15
被引用文献数
2 19

カンパニュラメジウム切り花の受粉花と未受粉花の老化とエチレンとの関係を調べた.カンパニュラの小花の老化はエチレン処理により促進された.受粉により花弁の老化は著しく促進されたが, 柱頭の圧砕ならびに柱頭を含む花柱の除去は老化を促進しなかった.未受粉花では小花全体, 花弁および雌ずいのエチレン生成量は非常に低い値で推移したが, 受粉によりこれらの器官からのエチレン生成量は著しく増大した.エチレン作用阻害剤であるチオ硫酸銀錯塩処理は未受粉花の老化を著しく抑制した.以上の結果より, カンパニュラメジウムの花はエチレンに対する感受性が高く, 受粉はエチレン生成を増加させ, 花弁の老化を促進するが, 未受粉花では老化に対するエチレンの関与は少ないと考えられた.
著者
寺岸 明彦 神原 嘉男 小野 浩
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.715-720, 1998-09-15
参考文献数
12
被引用文献数
4 1

イチジク(品種'桝井ドーフィン')の穂木を12月1日に挿し木し, 加温したガラス室内またはファイトトロン内で異なる光強度下において45日間育苗した.1月15日に底面吸液と潅水チューブによる給液を併用した非循環閉鎖型養液栽培システムに定植した.挿し木1年目から果実生産を行う方法を検討するため, 苗質が着果, 生長ならびに果実品質におよぼす影響を調査した.育苗期間中にファイトトロン内で8.5klxの照明による14時間日長処理を行うことにより, 定植時における葉のクロロフィル含量が増加し葉色値が高くなった.定植時において第3葉の葉色値が25以上の株では5節目までにおける着果数が増加した.しかし, 17klxの照明による処理を行っても葉色値および着果数は8.5klx照明区と差はなかった.ガラス室内で日没後に0.2klxの照明による14時間日長処理を行っても葉色値および着果数は無処理区と同程度であった.収穫は5月27日から始まり, 7月10日までに全着果数の約85%の果実が収穫できた.ファイトトロン内で育苗した区はガラス室内で育苗した区に比較して定植後の栄養生長が促進され, 6月上旬までは果実肥大も促進されたが糖度はやや低かった.両区とも6月中∿下旬の梅雨期間中は光合成速度が低下した.しかし, 蒸散速度と吸液量は低下せず, 果実肥大にも影響はなく, 糖度は著しく低下した.7月には, フアイトトロン内で育苗した区の光合成速度はガラス室内で育苗した区よりも高かったが, 糖度は逆に低かった.
著者
鈴木 誠一 佐々木 厚 吉村 正久 佐々木 あかり 金浜 耕基
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.115-120, 2003-06-15
参考文献数
4

シンテッポウユリを種子親,ヒメサユリを花粉親として育成されたユリの新品種'杜の乙女','杜の精','杜のロマン'の半促成栽培〜超促成栽培の可能性を検討した.これら3品種は,普通栽培では5〜6月に開花する.初めに,新りん茎をプランターに植え付けて自然低温に遭遇させた後,11月1日〜3月1日に加温を開始すると,'杜の乙女'は2月24日〜5月3日,'杜の精'は3月14日〜5月6日,'杜のロマン'は4月1日〜5月10日に開花した.次いで,9月3日に新りん茎を掘り上げて5℃または13℃で4〜8週間低温処理を行ってから温室内に植え付けたところ,'杜の乙女'は12月23日〜1月17日,'杜の精'は1月6日〜1月21日,'杜のロマン'は1月25日〜2月15日に開花した.さらに,新りん茎を7月8〜28日に掘り上げて5℃または13℃で6週間低温処理を行ってから温室内に植え付けたところ,'杜の乙女'は10月16日〜11月11日,'杜の精'は10月17日〜11月15日,'杜のロマン'は11月5日〜12月1日に開花した.
著者
堀江 秀樹
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.135-138, 2008-01-15
被引用文献数
1

ホウレンソウの葉の表面に白色で球状の穎粒が頻繁に観察される.異物ではないかとの消費者の疑問に答えるため,解析を行った.本頼粒の直径は0.1〜0.2mm程度であり,葉の表面から出た突起に接続していた.白色穎粒は水には溶けず,クロロフォルム/メタノールで破壊された.硫酸アンモニウム溶液中で球にくぼみが観察された.水分は約90%含まれていた.このことから,本穎粒は,脂溶性の半透膜中に水溶液が閉じこめられたものと推定できる.本顆粒の水抽出液を分析した結果,遊離糖は含まれず,シュウ酸,クエン酸,リンゴ酸を含んでいた.
著者
黒田 治之 千葉 和彦
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.91-99, 2006-01-15
被引用文献数
3

無剪定状態で管理した樹齢11〜13年生のわい性および半わい性台木を利用したリンゴ'スターキング・デリシャス'樹を用いて, 根の成長に及ぼす栽植密度の影響について検討した.330樹/ha区の根系は太い側根と下垂根で構成されていたが, 3178樹/ha区では主に側根であった.根系幅は栽植密度の増加に伴って減少したが, 隣接樹の根系における交差深度は増加した.3178樹/ha区では隣接樹の根系間で根組織の癒着現象が観察された.根系幅/樹冠幅比は栽植密度の増加に伴って減少し, 根系幅の方が樹冠幅より密度効果を受けやすいことが示された.根重の垂直分布比率は栽植密度による影響が認められなかったが, 1樹当たり根重は各層とも栽植密度の増加に伴って減少し, その減少は0〜30cm層の大根で著しかった.1樹当たり根重(R)は各台木樹とも, 栽植密度(ρ)の増加に伴って減少した.Rとρの関係は, 次の逆数式によって表された.1/R=A_<Rρ>+B_R (1)ただし, A_RとB_Rは樹齢や台木によって変化する係数.幹断面積(θ)と1樹当たり根重(R)の関係は各台木樹とも, h>1である次の相対成長式で表された.R=Hθ^h (3)ただし, Hは台木によって変化する係数.1 ha当たり根重は1樹当たり根重と異なり, 各層とも栽植密度の増加に伴って増加し, その増加は小・細根で顕著であった.1 ha当たり根重(R^^-)は各台木樹とも, 栽植密度(ρ)の増加に伴って増加した.R^^-とρの関係は, 式(3)のR=Hθ^h, 式(4)の1/θ=Aρ+Bおよび式(5)のR^^-=Rρから導かれる式(6)によく当てはまった.R^^-を最大にする栽植密度(ρR^^-_<pk>)は式(7)で与えられる.R^^-=Hρ/(Aρ+B)^h (6)ρR^^-_<pk>=B/A(h-1) (7)ただし, AとBは樹齢や台木によって変化する係数.以上の結果から, 1 ha当たり根重は栽植密度の増加に伴って増加するが, ρR^^-_<pk>において減少に転じることが示された.
著者
片岡 郁雄 杉山 明正 別府 賢治
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.1-6, 2003-01-15
被引用文献数
1 56

光感受性の高いブドウ品種'グローコールマン'果実のアントシアニン蓄積における紫外線の関与について,成熟開始期の果実切片を用いて調査した.果実切片を太陽散乱光のもとで各種の資材;ガラス板,ポリオレフォンフィルム,ポリ塩化ビニール,紫外線除去塩化ビニールフィルム,エチレンテトラフルオロエチレンフィルム,ポリカーボネート樹脂板,ガラス繊維強化アクリル板で被覆して,72時間培養した.果皮のアントシアニン含量は,紫外線透過率の低い資材で被覆した場合,大きく減少した.人工的な紫外線照射(ピーク波長352nm)はアントシアニン蓄積を著しく促進させた.UV-A領域(320-400nm)での0.4W・m^<-2>までの紫外線照射によりアントシアニン含量は急増し,2.3W・m^<-2>まで高いレベルで平衡状態を保った.一方,白色光も8.5W・m^<-2>までの照射はアントシアニン含量を緩やかに増加させた.紫外線に4.1W・m^<-2>の白色光を組み合わせて照射した場合,アントシアニン含量はさらに増加した.以上の結果から,ブドウブローコールマン'果実のアントシアニン蓄積には紫外線成分が関わっており,施設の被覆資材の選択には,紫外線透過特性を考慮する必要があることが示された.
著者
市村 一雄 上山 茂文 後藤 理恵
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.534-539, 1999-05-15
被引用文献数
5 6

バラ切り花における可溶性炭水化物, 特にミオイノシトール, メチルグルコシドおよびキシロースの役割を調べるため, 30g・liter^<-1>スクロースと200mg・liter^<-1>8-ヒドロキシキノリン硫酸塩(HQS)の連続処理によるバラ切り花の器官別の炭水化物含量の変動を調べた.この処理により, 品質保持期間は延長し, 切り花全体の新鮮重は高く維持された.これは花弁の新鮮重の増加によっていた.花弁では, 収穫時にはフルクトース, グルコースおよびスクロースが主要な構成炭水化物であった.キシロース濃度は収穫時には低かったが, 収穫後3日目には著しく増加した.処理の有無によりそれぞれの炭水化物濃度に著しい差はなかった.花弁を除いた花器では, グルコース, フルクトースおよびスクロースが主要な炭水化物であったが, 処理により著しく変動することはなかった.茎ではスクロース, フルクトース, メチルグルコシドが主要な炭水化物であった.これらの炭水化物濃度は時間の経過にともない減少したが, スクロース処理はこの減少を抑制した.葉ではスクロースが最も多く, ミオイノシトールがこれに次いだ.スクロース濃度は収穫後著しく減少したが, 処理によりこの減少は抑制された.ミオイノシトールは処理の有無による変動はほとんどみられなかった.つぼみに各種炭水化物を処理したところ, メチルグルコシドとキシロースは開花を促進したが, ミオイノシトールは促進しなかった.以上の結果より, メチルグルコシドとキシロースはバラ切り花において代謝糖として機能していることが示唆された.
著者
矢野 隆 新開 志帆 井上 久雄 森口 一志
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.69, no.6, pp.711-717, 2000-11-15
被引用文献数
4 3

ユスラウメ台木を用いたモモ栽培においては, '川中島白桃'では衰弱症状が発生しやすいが, 'あかつき'は衰弱症状の発生が少ない.そこでユスラウメ台木樹における衰弱症状発生に関わる要因を炭水化物栄養の面から明らかにするため, 普通台木とユスラウメ台木に接いだ両品種について, 細根, 1年生枝, 新梢, 葉のデンプンと可溶性糖類の季節的消長を比較した.休眠期のデンプン, 可溶性糖類の消長は, 同じ台木では, 品種による明らかな差はみられなかった.ただし, 両品種ともにユスラウメ台木樹では開花前の細根のデンプン含量が普通台木樹の半分程度であった.果実生育期のユスラウメ台木の'川中島白桃'における細根, 新梢のデンプン含量は果実生育期間を通じて普通台木のものより低かった.これに対して, 'あかつき'の細根, 新梢のデンプン含量は両台木間で顕著な差はみられなかった.これと同様な傾向は細根の総糖およびソルビトール含量についてもみられた.なお, 新梢の糖含量や1年生枝, 葉のデンプン, 糖含量等については, 両品種間で樹勢衰弱につながる顕著な差は認められなかった.これらの結果から, ユスラウメ台木の'川中島白桃'で衰弱症状が発生しやすい一つの原因は, 果実生育期における細根のデンプンおよびソルビトールや, 新梢におけるデンプンの欠乏によるものと考えられる.