著者
劉 政安 青木 宣明 伊藤 憲弘 坂田 祐介
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.818-825, 2002-11-15
被引用文献数
6 2

中国ボタン品種群の中原品種グループから9品種と, 対照品種として日本ボタン'連鶴'の合計10品種を供試し, 花芽分化・形成過程と促成能力について調査した.調査開始の6月下旬にはすべての品種においてがく片が観察され, 花芽分化の開始が確認された.その後の中国ボタンの花芽形成パターンは, (1) : 花芽分化スピードが早く, 夏季に花芽形成のスピードが鈍ることなく順調に進み, 10月上旬に雌ずい形成が完了するグループ('白鶴臥雪'など3品種), (2) : 花芽分化スピードが中程度で, 10月中旬に雌ずい形成が完了するグループ('珊瑚台'など3品種), (3)花芽分化スピードが遅く, 雌ずい形成は11月上旬にほぼ完了するグループ('錦綉球'など3品種)の3つに分類できた.促成栽培における中国ボタンの萌芽率は低温期間が4週間と短くても100%を示したが, 日本ボタン'連鶴'は極端に低下した.また, 中国ボタン'白鶴臥雪'は低温期間が短くても開花率は比較的高かった.開花の見られた中国ボタン品種における開花はすべての処理区で年内に終了した.年内促成には, 80%以上の開花率を示した'白鶴臥雪', '鳳丹', '淑女装'の3品種が適すると考えられる.
著者
荒木 直幸 古田 貴音 小原 隆由 山内 直樹 執行 正義
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.230-235, 2003-05-15
被引用文献数
1 2

ワケギ5品種から構成される9系統(ウイルスフリー系統;広島1号〜広島9号)を用いて,16通りのプライマー組み合わせについて,AFLP分析を行い,品種・系統識別の可能性を検討した.ワケギのAFLP分析には,16通りのプライマー組み合わせのうち12通りが有効で,用いた9系統において総数678本のピークが観察された.ワケギ栽培系統を識別するために利用できる11種類のAFLPマーカー(総数の1.62%)が得られた.これらのマーカーの有無により,広島1号('下関')と広島2号('寒知らず'早生系)との識別は不可能であったが,他の系続開の識別は可能であった.ワケギの祖先種であるネギおよびシャロットを用いて,同じ12プライマー組み合わせに関する分析を行ったところ,ワケギ9系統から得られた総ピーク698本は,26.3%がネギに, 23.5%がシャロットにそれぞれ由来していると考えられた.さらに,11種類のワケギAFLPマーカーに関しては,5種類がネギに,3種類がシャロットにそれぞれ由来していることが推定された.これらの結果は,ネギとシャロットがワケギの祖先種であるとするこれまでの報告を支持するものであった.本研究で得られたAFLPマーカーは,ワケギ栽培系統の識別に利用可能で,異品種もしくは異系統の混同防止に役立つものと考えられる.
著者
野崎 香樹 村本 智香 高村 武二郎 深井 誠一
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.123-128, 2006-06-15
被引用文献数
1 6

アプリコット色花系および覆輪花スプレーギクにおける花色が作期または栽培温度により変化する様相を明らかにするため,各作期または各温度下で開花した花色を測定し,舌状花のアントシアニンおよびカロテノイド量を測定した.アプリコット色花系品種では6/30作期または30℃処理区で黄色味の花色を呈し,a値が減少し,bおよびh値が増加した.覆輪花品種は,高温下で赤色部位が淡色化または消失し,作期または温度間で覆輪割合が変動した.覆輪の発現には(1)高温下で赤色部位が減退することで花弁先端に白色部位が出現する品種(2)涼温下で赤色部位が増加することで明瞭な覆輪が出現する品種の2つのパターンが見られた.いずれの品種においても赤色花キクの主要花色素であるCy3-6"-MMGおよびCy3-3",6"-DMGが主要アントシアニンとしてHPLCにより検出された.また,多くの品種ではカロテノイド量は温度による影響は少なく,2つの主要アントシアニンの増減によってアプリコット色花系品種の花色および覆輪花系品種の覆輪割合の変動が生じるものと考えられた.
著者
松添 直隆 山口 雅篤 川信 修治 渡部 由香 東 華枝 坂田 祐介
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.138-145, 1999-01-15
被引用文献数
9 23

本邦の6品種およびバングラデシュの8品種・系統のナス(Solanum melongena L.)を供試して, 果実への暗黒処理が果色および果皮のアントシアニン組成に与える影響を調査した.本邦の栽培品種と'Singhnath'の果色は"紫みの黒", 'KL purple'と'Borka'は"暗い赤みの紫"および'Uttara'は"くすんだ赤紫"であった, SL系統のうち'SL 28', 'SL 32'および'SL 50'は"黄緑"と"緑"の縞に一部"赤紫"の着色, 'SL 65'は"黄緑"に一部"赤紫"の着色がみられた.'早生米国大丸'以外の品種・系統の果皮の主要アントシアニンはdelphinidin 3-p-coumaroylrhamnosylglucoside-5-glucoside (Nasunin)で, その含有率は69.1∿87.7であった.一方, '早生米国大丸'の主要アントシアニンはdelphinidin 3-rhamnosylglucosideで, その含有率は79.5%であった.暗黒処理により, '早生米国大丸'の果色は"暗い赤紫"になったが, 果皮のアントシアニン組成は対照区と違いがなかった.また, 暗黒処理により, '千両2号', '庄屋大長'および'Borka'は"黄みの白"に一部"赤みの紫"を含む果色に, そして'SL 50'は"黄みの白"に一部"灰黄赤"を含む果色に変化したが, 果皮の主要アントシアニンの含有率には変化は認められなかった.'久留米長', '十市', '御幸千成', 'KL purple', 'SL 28', 'SL 32'および'SL 65'は暗黒処理下では果皮におけるアントシアニン系色素の発現は認められなかった.
著者
市村 一雄 川端 善彦 岸本 真幸 後藤 理恵 山田 邦夫
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.292-298, 2003-07-15
被引用文献数
10 37

道管閉塞と糖質の不足がどの程度バラ切り花の花持ちが短い要因となっているか検討するため,'ソニア'切り花を200mg・liter^<-1>8-ヒドロキシキノリン硫酸塩(HQS),20g・liter^<-1>'スクロースおよびHQSとスクロースを組合わせた溶液で処理した.切り花は23℃,相対湿度70%,12時間日長,光強度10μmol・m^<-2>・s^<-1>の条件下で保持した.どの薬剤も花持ちを延長させたか,スクロース単独処理の方がHQS処理よりも花待ち延長効果が高かった.スクロース処理はHQS処理よりも花弁の展開を促進し,切り花の新鮮重の低下とブルーイングの発生を抑制した.茎の水通導性は,スクロース処理により収穫後2日目以降急激に低下した.それに対して,HQSおよびスクロースとHQSを組み合わせた処理では収穫直後とほぼ同じ値で推移した.茎の細菌数はどの区においても次第に増加した.スクロース単独処理は細菌数の増加を促進したが,HQSおよびスクロースとHQSを組み合わせた処理は細菌数の増加を抑制した.花弁中のグルコース,フルクトースおよびスクロース濃度はスクロースおよびスクロースとHQSを組み合わせた処理により,HQS処理よりもはるかに高く維持された.以上の結果より,本実験条件下においては可溶性糖質の供給不足のほうが道管閉塞よりもバラ'ソニア'切り花の品質を低下させる重大な原因であることが示唆された.
著者
坂田 好輝 杉山 充啓 小原 隆由 森下 昌三
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.135-140, 2006-03-15

台木品種がキュウリ穂木のうどんこ病抵抗性に及ぼす影響を明らかにするため,台木用品種そのもののうどんこ病抵抗性,また,抵抗性のレベルの異なる台木品種に接ぎ木されたキュウリ穂木の抵抗性について評価した.近年発表されたブルームレス台木'ときわパワーZ'および'ホワイトパワー'は,子葉から第10本葉に至るまで,20℃程度の冷温から26℃,加温ハウスレベルの適温条件まで,高いレベルのうどんこ病抵抗性を示した.PPMR-1は,成育が進むにつれ,高度な抵抗性を示した.従来から利用されているブルームレス台木'ひかりパワーG'及びブルーム台木の'新土佐'は罹病性であり,'ひかりパワーG'はより激しく罹病した.うどんこ病抵抗性が異なる台木を用いた場合にも接ぎ木されたキュウリ穂木の子葉の抵抗性には有意な差異はなく,幼苗期においては台木品種が抵抗性に及ぼす影響はないまたは小さいと考えられた.一方,接ぎ木キュウリの成育に伴い,PPMR-1あるいは'新土佐'に接ぎ木された穂木(第5本葉,あるいは17本葉)は,うどんこ病に対して抵抗性あるいは耐性を増した.うどんこ病に高度な抵抗性を有する'ときわパワーZ'および'ホワイトパワー'を台木に用いた場合には,キュウリ穂木が抵抗性になることはなかった.ブルームレス台木の'ひかりパワーG'は穂木の抵抗性を弱めた.これらの結果から,台木品種は穂木のうどんこ病に対する抵抗性または耐性を変え,PPMR-1のような抵抗性または耐性を付与することのできるカボチャ台木品種を利用することにより,うどんこ病被害を軽減できることが示唆された.
著者
深井 誠一 辻 恵太
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.447-452, 2004-09-15
被引用文献数
2 5

四種のアジア原産トランペットユリ(Liliumcentifolium centifolium, L. sargentiae, L. wallichianum, and L. regale 'Album')をシンテッポウユリ(L. × formolongi)品種ホワイトランサーに花柱切断法で交配した.子房胚珠培養法と胚培養を行い雑種植物体の獲得数を比較した.いずれの交配組合せでも子房胚珠培養法でより多くの交雑植物が得られた. rDNAのPCR-RFLP分析により,幼植物の雑種性が確認された.得られた交雑植物は,いずれも白色トランペット型の花をつけ,花粉稔性は低かった.
著者
稲葉 善太郎 大塚 寿夫
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.1, no.4, pp.263-267, 2002-12-10
被引用文献数
7

冬期の夜温がキンギョソウの開花特性に及ぼす影響を明らかにするために, 摘心栽培および無摘心栽培で検討した.摘心栽培においては, 夜温が高いほど'初春'と'ライトピンクバタフライII'は第1節以下分枝, 'ヴェルン'では第2節分枝の開花が早まった.採花本数は'初春'と'ヴェルン'は夜温16℃で最も多くなり, 'ライトピンクバタフライII'の採花本数には夜温の影響はみられなかった.無摘心栽培の'ライトピンクバタフライII'では, 夜温が高いほど開花が促進された.供試品種に好適な冬期夜温は, '初春'では6&acd;11℃, 'ライトピンクバタフライII'では11℃, 'ヴェルン'では16℃と考えられた.
著者
杉山 慶太 菅野 紹雄 森下 昌三 岩永 喜裕
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.108-116, 1999-01-15
被引用文献数
1

耐裂果性スイカの果皮特性を明らかにすることを目的として, 果皮の硬い品種と柔らかい品種の果皮の組織・細胞構造を調査した.また, 果皮の柔らかい栽培品種'紅こだま', 果皮の硬さが中程度の品種'嘉宝', アフリカ西部から導入した野生種で果皮の硬い系統'Africa 22857'など, およびその交雑後代を材料として果皮の硬さの遺伝と組織・細胞構造との関係を調べた.1. 果皮の硬い品種, F_2, BC_1個体は, 果皮の柔らかい品種, F_2, BC_1個体に比べて緑色組織が厚い傾向があった.また, 表皮から約2000μmまでの細胞は小さくて丸味があり, 単位面積当たりの細胞数が多いことが明らかとなった.緑色組織の内側に存在する厚壁細胞は果皮の硬い品種, F_2, BC_1個体では層状に厚く存在し, 一方果皮の柔らかい品種, F_2, BC_1個体では観察されないかまたは層数が少なかった.2. 細胞壁の厚さと果皮の硬さとの関係は認められなかった.3. '紅こだま'と'Africa 22857'を交雑親とし, このF_1, F_2およびBC_1の果皮硬度を調査したところ, 果皮の硬さは柔らかい側に部分優性遺伝した.4. 果皮の組織・細胞構造は遺伝的特性であり, 果皮の硬い'Africa 22857'の組織・細胞構造がF_2, BC_1個体からも観察された.
著者
礒崎 真英 小西 信幸 黒木 誠 野村 保明 田中 一久
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.354-363, 2004-07-15
被引用文献数
5 10

慣行的なかけ流し方式のロックウールシステム(慣行区)と、我々が開発した培養液をできる限り栽培系外への廃棄量を減らすロックウールシステム(改良区)を用いて、トマト'ハウス桃太郎'の9段穫り栽培を行った。改良区の栽培系外への廃液量は慣行区の9.8%で、大幅に廃液量が削減された。各成分の廃棄量も著しく削減され、削減率はNO3-N 93%、P 99%、K 98%、Ca 87%、Mg 89%、NH4-N 99%であった。改良区の茎長、茎重、葉重および収量は慣行区のそれらと差異がなかったが、茎径は慣行区よりやや細くなり、3果房より上位の果房の平均果実収穫日が3-7日遅れた。改良区では、培地中のCa、Mg、S、Bは、慣行区より2-3倍高い濃度で推移したのに対して、Pは栽培全期間を通して、Kは栽培前半において、それぞれ慣行区より低い濃度で推移した。このPおよびK濃度の低下が茎径が細くなり果実収穫日が遅れた要因の一つであると考えられるので、給液の最適PおよびK濃度についてはさらに検討する必要がある。また、Na濃度は、慣行区では20mg・lier-1前後で推移したのに対して、改良区では栽培後半から次第に上昇し、栽培終了時には135mg・lier-1に達した。今後、改良ロックウールシステムでのトマトの生育・果実収量と原水のNa濃度との関係について明らかにする必要がある。
著者
小森 貞男 副島 淳一 伊藤 祐司 別所 英男 阿部 和幸 古藤田 信博
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.569-577, 1999-05-15
被引用文献数
2

日本で栽培されているリンゴ主要品種の不和合性遺伝子型を交雑試験によって決定する目的で, まず果樹試験場リンゴ支場育成の2品種'はつあき'および'いわかみ'の戻し交雑実生群を用いて実験を行った.'はつあき'戻し交雑実生群には'はつあき'の親である'紅玉'と'ゴールデン・デリシャス'を, 'いわかみ'戻し交雑実生群には'ふじ'と'紅玉'をそれぞれ交雑し, 各交雑組合せごとに和合 : 不和合の分離比を調査することにより, 'ゴールデン・デリシャス'と'紅玉', 'ふじ'と'紅玉'のS遺伝子の共有状態を推定した.その結果'紅玉'と'ゴールデン・デリシャス'はS遺伝子を共有していなとが明らかとなった.一方'ふじ'と'紅玉'はS遺伝子を1つ共有していることが判明した.
著者
河鰭 実之 韓 尚憲 崎山 亮三
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.480-484, 2002-07-15
被引用文献数
3 10

果実による水の蓄積が糖の蓄積と濃度に与える影響をトマト'Brehem's Solid Red'と'81L1204-2'果実において評価しようとした.開花14日後で直径30-35mmの果実を選び, これをアクリル製のパイプで覆って肥大生長を機械的に抑制した.この処理によって開花35日後の果実新鮮重は対照果実の30から40%となった.乾物の果実あたりの蓄積も抑制されが, 乾物率は処理によって増加した.このことは, 糖の流入よりも水の流入の方が処理によって強く抑制され, さらにそれらの流入が独立に変動しうることを示唆した.処理果, 非処理果いずれもフルクトースとグルコールが主要な糖で, スクロースは非常に少ないか検出できなかった.ヘキソース(フルクトース+グルコース)濃度は, 'Brehem's Solid Red'では処理果の方が非処理果より有意に高かったが, '81L1204-2'では有意差は認められなかった.短期間の肥大抑制効果をみるため, 果実を直径30-35mmの果実をアクリル製の容器で覆い, さらに果実と容器の間の隙間をガラスビーズで埋めた.この処理によって果実の肥大は直ちに抑制された.5日間の処理の間, 乾物率はほとんど変化しなかった.ヘキソース濃度は, 非処理果ではほぼ一定だったのに対し, 処理果では, はじめのうちは増加し, その後増加はみられなくなった.糖濃度の変化は, 乾物率の変化とは一致せず, 果実に流入した糖が不溶性の炭水化物ではなく水溶性の糖として優先的に蓄積した可能性が考えられた.
著者
池田 英男 田上 恵子 福田 直也
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.839-844, 1996 (Released:2008-05-15)
参考文献数
15
被引用文献数
2

培養液を流動させない水耕法である培養液静置法(パッシブ水耕) は, 栽培中の培養液管理が不要とされるが, 栽培法は十分には確立していない、本研究においては, 栽培装置を地表面下に設置して春, 秋にそれぞれ施与培養液の濃度を変えてメロンを栽培し, 好適培養液濃度を検討した.メロンは本栽培法で良く生育し, 十分に大きな果実が収穫できたが, メロン植物体の生育や果実の収量,品質からみた好適培養液の濃度は, 栽培時期によって異なった. 春作では園試処方標準濃度の3倍でのみ高糖度の果実が得られたが, 秋作では培養液の濃度の影響は少なかった. 栽培装置を地表面下に設置したために, 根圏の温度は気温の高くなる夏では比較的低く,冬は逆にあまり低下せず, 日変化も少なかった. 本装置は, 簡易な水耕法として, メロン生産には有効であると考えられた.
著者
稲葉 善太郎 大城 美由紀
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.303-306, 2003-12-15
被引用文献数
6 3

キンギョソウ品種'メリーランドピンク'と'ライトピンクバタフライII'を10月に播種し,定植後から加温開始時期と夜温を組み合わせて栽培した.'メリーランドピンク'では同一夜温において加温開始を早めることで開花が早くなった.切り花品質からみて,'メリーランドピンク'では11月中旬からの夜温11℃が適していた.'ライトピンクバタフライII'では11月中旬から加温を開始して夜温16℃とすることで開花が早くなった.いずれの品種も夜温が高いほど開花が早くなった.'メリーランドピンク'と'ライトピンクバタフライII'ともに夜温が低いほど開花時の草丈が高くなった.
著者
高尾 保之
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.778-784, 1998-09-15
被引用文献数
3 4

ホウレンソウの夜間照明について, 施設栽培における生育, 抽だいへの影響を検討した.また, 夜間照明下における品種の限界照度を推定した.1. 照度が高いと草丈, 葉数は増加し, 葉は小型化した.また, 5月播種は11月播種にくらべ照度に対する草丈の増加が少なく, 低照度(2&acd;3lx)から葉長の減少や葉数の増加がおこった.2. 1&acd;25lxの照明下では照度が高いほど抽だい, 開花が促進された.11月播種においては, 'おかめ'など5月播種に用いられる品種の抽だい開始照度は高かった.3. 'パレード'など11月播種の適品種では, 限界照度は3&acd;5lxであった.また, 'おかめ'など5月播種に用いられる品種の限界照度は2&acd;3lxであったが, 'トニック'などの晩抽性品種を加えると13lxと高くなった.
著者
田中 政信 中島 寿亀 森 欣也
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.162-168, 2003-03-15
被引用文献数
3 6 6

サトイモ葉柄用品種育成のための効率的選抜法を確立するために、シュウ酸カルシウム結晶の形成過程、発生時期および組織内分布について検討した。シュウ酸カルシウム結晶は、極めて若いステージの実生の胚軸や葉柄組織の結晶細胞中に、短い針状結晶や砂粒状結晶として出現した。細胞の分化に伴い、これらの結晶は細胞の中央部で、一方は柱状の束晶へ、他方は金平糖状の集晶へと分化した。束晶細胞はその形態的特長から、大型で不整形の非防御的束晶細胞と細長いキュウリ様で、細胞の一方の先端に乳頭状突起を有する防御的束晶細胞とに区別された。また、防御的束晶はわずかな刺激によって崩壊し、多数の針状結晶を細胞外へ飛散させる特性を有していた。実生の幼苗では、非防御的束晶細胞がまず出現し、その後、やや遅れて防御的束晶細胞が出現した。集晶は植物体の生長が比較的進んだ時期から出現した。播種後約60日目に葉柄中の束晶細胞密度は安定した。サトイモの各器官における束晶細胞の分布は、葉身が最も高密度であり、葉柄、球茎の順に低密度となった。また、外部組織は内部組織に比べ束晶及び集晶細胞の分布密度が高くなった。結晶細胞の密度は各器官の通気組織や表皮の近傍の柔組織、細胞分裂の盛んな組織で高くなった。また、結晶細胞の密度は、若い組織が高く、古い組織が低かった。
著者
工藤 陽史 山口 茂 福田 直子 菊池 竜也 佐渡 旭 深井 誠一
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.343-349, 2012-07-15

西南暖地におけるトルコギキョウの冬出し栽培では,開花の遅延回避と草丈の確保が問題となる。西南暖地の冬出し栽培では,定植後の一定期間に加温を必要としないことに着目し,高昼温管理による生育促進技術を検討した。夜温を15℃一定とし,昼温25または30℃に設定した自然光型ファイトトロンで,中早生品種'ボレロホワイト'を定植~切り花収穫まで栽培した。昼温25℃区に比べて昼温30℃区で主茎伸長が促進され,早期に発蕾して開花した。定植60日後までの茎葉の乾物重は,昼温30℃で重い傾向にあった。また,下位節の節間伸長は,定植40日後までに決定されていた。これらの効果を実際の栽培で確認するため,施設の換気温度を25と30℃に設定したガラス温室で,初期生育と発蕾日に及ぼす影響を検討した結果,30℃が25℃と比較して生育は促進したが発蕾日に差はなかった。さらに,9月22日定植と9月29日定植の2回の栽培で,定植から約40日程度の施設の換気温度を30℃に設定した高昼温管理が,収穫日と切り花品質に及ぼす影響の検討を行った結果,初期生育が促進し,9月22日定植で2月上旬,9月29日定植で2月中旬に切り花長80cm以上,切り花重40g以上確保された切り花が得られることが明らかとなった。
著者
岡本 章秀 池田 廣 須藤 憲一
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.270-272, 2006-05-15
被引用文献数
1

常緑性ツツジ(種子親)と,キレンゲツツジ(花粉親)との交雑について,花粉親として優れる交雑母本の選定を試みた.キンゲツツジ個体間の各交雑阻害原因および交雑能力の変異を調査するため,キレンゲツツジ9個体の花粉を供試し,マルバサツキ1個体に交雑した.その結果,受精率,種子数/果,白子率,生存率および交雑能力について,キレンゲツツジ個体間に有意差が認められた.キレンゲツツジ遺伝資源番号27026136および27026139を用いた交雑では他を用いた場合に比べて,交雑花当たりの生存可能な実生数が多かった.以上から,花粉親に用いるキレンゲツツジ個体を選定することは,常緑性ツツジ×キレンゲツツジの実生獲得において重要であることが示唆された.
著者
土橋 豊
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.87-91, 2009-01-15

栽培期間中の上白糖(スクロース98%以上含有)葉面散布が切り花用トルコギキョウおよびキンギョソウ花壇苗の品質に及ぼす影響を検討した.0.1%上白糖の4回葉面散布により,トルコギキョウの花数が有意に増加するとともに,切り花長と花数に基づく階級別品質指数が増加した.一方,0.1%上白糖の2回葉面散布により,キンギョソウ花壇苗の暗黒条件下の葉色の退色の軽減,および無加温ガラスハウスの開花数の増加が認められた.以上の結果,栽培期間中の上白糖葉面散布処理は,両植物の品質保持,または向上に有効であることが明らかになった.
著者
Sayumi Matsuda Mitsuru Sato Sho Ohno Soo-Jung Yang Motoaki Doi Munetaka Hosokawa
出版者
園芸学会
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
pp.MI-009, (Released:2014-09-20)
被引用文献数
3 14

For determination of the endogenous and exogenous causes of somaclonal variation in in vitro culture, a bioassay system was developed using the variegated Saintpaulia (African violet) ‘Thamires’ (Saintpaulia sp.), having pink petals with blue splotches caused by transposon VGs1 (Variation Generator of Saintpaulia 1) deletion in the promoter region of flavonoid 3',5'-hydroxylase. Not only true-to-type but also many solid blue and chimeric plants regenerate in vitro-cultured explants of this cultivar. Using multiplex PCR that enables the determination of these variations, we attempted to evaluate the effects of four candidate triggers of mutation: pre-existing mutated cells, shooting conditions in vitro or ex vitro, cutting treatment of explants, and addition of plant growth regulators (PGRs) to the medium. The percentages of somaclonal variations among total shoots regenerated from leaf segments and stamens were 46.6 and 56.5, which were higher than the percentages expected from pre-existing mutated cells (3.6 and 1.4, respectively). These results indicate that pre-existing mutated cells are not a main cause of somaclonal variations. The percentage of somaclonal variation was independent of culture conditions for mother plants; the mutation percentages of adventitious shoots regenerated from ex vitro- and in vitro-grown leaves were 9.2% and 8.5%, respectively. In addition, the percentage of somaclonal variations of adventitious shoots regenerated under in vitro conditions from the in vitro grown mother plants was also low, at 4.9%. This indicates that the in vitro condition itself is not a main cause of somaclonal variation. However, when adventitious shoots were regenerated from 10 × 5-mm cut-leaf laminas on a PGR-free medium, the percentage of somaclonal variation was 26.4%. In addition, the percentage of somaclonal variations dramatically increased when PGRs were added to the medium for both leaves and leaf segments (39.9 and 46.6, respectively). The bioassay system using Saintpaulia ‘Thamires’ will enable the screening of many environmental factors because of its rapidity and ease of use and will facilitate the development of a new tissue culture technology for avoiding mutation.