著者
志水 泰武 椎名 貴彦
出版者
岐阜大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は、細胞保護作用のある低温ショックタンパク質CIRPに着目し、冬眠動物での発現調節機構を解明することを目的とした。冬眠動物であるハムスターの主要臓器において、平常体温時にPCR法で3本のバンドとして増幅されるCIRP mRNAが冬眠中には1本となること、このような選択的スプライシングは冬眠準備期ではなく体温低下期に起こった。スプライシング調節は、人為的な低体温でも確認できた。非冬眠動物(ラットとマウス)においてもCIRPのスプライシング調節が起こり、低体温に誘導できた。これらの成果は、冬眠の有用な特性を医療応用する基盤となると考えられる。
著者
横川 隆志 大野 敏 能村 友一朗 久野 美由紀
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

真核生物や古細菌では、タンパク質の生合成で主要な働きをするtRNAの遺伝子にイントロンが含まれている場合がある。このイントロンが除去され、成熟したtRNAが生成されるためには、RtcBという酵素がイントロンが除去された後のRNA断片を結合すると考えられるが、その際、イントロンを環状化していることが確かめられた。環状イントロンの働きは未知数であるが、環状イントロンはメタン生成古細菌 Methanosarcina acetivorans の細胞内で安定に存在することがわかった、またイントロンを持たないバクテリアにもRtcBは存在するので、このような環状RNAの機能についてさらに理解を深めたい。
著者
石黒 直隆 岩佐 光啓 佐々木 基樹 本郷 一美 遠藤 秀紀 茂原 信生
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本海外学術調査は、ベトナムの野生イノシシと家畜ブタに関して形態的計測と遺伝学的解析により、東アジアに広く分布する野生イノシシや東アジアの家畜ブタの遺伝的な源流はベトナムにあることを検証することを目的として行った。平成14年〜16年の3年間にわたり、ベトナムの北部、北西部、中部の山岳地帯に生息する野生イノシシとベトナムの山岳少数民族にて長年飼育されているベトナム在来ブタについて調査を行った。形態的計測は、主に各部落の農家に保管されている骨や博物館等に保管されている骨について行い、遺伝学的解析は、骨から採取した骨粉のほかに、現生動物に関しては、毛根や肉片などからDNAを分離してミトコンドリアDNA(mtDNA)の多型解析により系統解析を行った。3年間でベトナム各地にて調査収集したサンプルは248検体であり、それを遺伝的に解析し以下の成果を得た。1)本海外学術調査のきっかけとなったリュウキュウイノシシの起源がベトナムであると言う仮説は、本調査により現在もベトナムにはリュウキュウイノシシと遺伝的に近い野生イノシシが生息していることが証明されたことから、上記仮説を遺伝的に検証した。2)ベトナムに生息する野生イノシシとベトナム各地で飼育されている在来ブタは遺伝的に極めて多型に富んでおり、東アジアの家畜ブタの基層を形成する遺伝子集団であることが証明された。3)ベトナムには粗食に耐えうる在来ブタから形態的に小さいミニブタまで広く飼育されていることから、東アジアのイノシシ属の起源にふさわしい遺伝子資源をベトナムの在来ブタは有していることが証明された。上記成果の一部は英文誌にすでに公表されており、平成15〜16年度に得られた成果については現在投稿準備中である。
著者
坂井 昇 坂野 喜子 中島 茂 郭 泰彦 岩間 亨 吉村 紳一
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

近年、脳虚血による細胞障害にアポトーシスが関与することが報告され注目されている。そこで我々は脳虚血の病態を解明するために、低酸素刺激による神経細胞死に注目し、アポトーシス関連因子を中心として細胞内シグナル伝達機構についての解析を行ってきた。従来、低酸素や虚血による細胞死はネクローシスと考えられてきたが、近年一部の細胞死がアポトーシスであることが報告されており、我々もこれまで神経系細胞のモデルとしてラット褐色細胞腫細胞株(PC12細胞)を用いた低酸素負荷でのシグナル伝達経路の解明を行った結果、低酸素によりアポトーシスとネクローシスの両方の細胞死が誘導され、その過程でセラミド産生とカスパーゼの活性化の関与を唱えてきた。さらにその後の研究でPC12細胞に存在するPLD2が低酸素刺激によって細胞が死に向かう前段階で活性化される知見を得ており、外因性のPLDによって細胞死が抑制されたことから、PLD2が虚血性脳血管障害において今後治療のターゲットとなる可能性が示唆された。また、抗酸化剤であるグルタチオン(GSH)の前投与によりセラミド産生に重要な中性スフィンゴミエリナーゼ(SMase)活性とともにその下流のカスパーゼ3の活性化が抑制されることで細胞死が有意に抑制されることが判明し、細胞の酸化・還元のレドックス制御をしているGSHが中性SMase活性の上流で細胞死を調節していることが推測された。これは一方で神経細胞死への活性酸素(ROS)の関与も示唆しているが、活性酸素種のひとつである過酸化水素によるPC12細胞の細胞死は低酸素刺激による細胞死とはセラミド産生の有無で異なり、同じ細胞でも低酸素と過酸化ストレスに対する細胞死の誘導には異なった経路が存在することとなり、低酸素負荷による神経細胞死のROSの発生との関連も併せて、今後の重要な検討課題考えられた。
著者
佐々木 嘉三 田阪 茂樹
出版者
岐阜大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

岐阜県北部の跡津川断層直近の東京大学宇宙線研究所神岡地下観測所奥の坑道で、ボ-リング孔より噴出している地下水を導水し、水中ラドン濃度の測定をしてきた。1990年12月以降の予備的観測および本年度の観測からは次のような成果が得られている。震央距離(△)50km以内,マグニチュ-ド(M)3.5以上の地震活動とラドン濃度の変化を対比すると,東側の北アルプスに沿う地震活動,すなわち烏帽子岳,焼岳,乗鞍岳周辺に発生する群発地震の活動に対しては,△が小さいにもかかわらず,ラドン濃度の変化は明確ではない。跡津川断層,午首断層に沿う地震活動では,Mが3.0程度のものも含めて、ラドン濃度に変化が現われるものもあった。特に,1991年2月28日のM=3.9の地震に関連した変化は,2日前から減少し,地震後の振動変化と増大、そして5日後に通常のレベルにまでもどっていることが分かった。さらに多くのデ-タを得るため,観測は現在も継続している。又,根尾谷断層に近い岐阜大学の上水道(地下水)についても断続的であるがラドン濃度の観測を行い,人工的原因による変動を検出し、その影響を除外することが可能となった。火山噴火予知の基礎的デ-タを得るため,活動の活発な桜島周辺で,大気中ラドン濃度の測定を鹿児島市内(鹿児島大学),と有村(桜島)で行なってきた。鹿児島市内では,12月16の噴火と降灰にともない2日間に渡って20%のラドン濃度増大があった。有村では,噴煙の降下に伴い,2倍にまで濃度が増加することが知られた。白根火山での11月の約10日間の観測では,噴気の高温ガスの冷却および導引方法を考慮した観測容器を製作し、1日以下の大気圧の短期変動とラドン濃度が逆相関にあるという結果を得た。又,トリウム系列のThC'も高濃度で検出され,ウラン系列のもとの対比等で,火山深部の活動情報が得られることも分ってきた。
著者
纐纈 朋弥 後閑 容子 石原 多佳子 玉置 真理子
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

地域で保健師・助産師が協働し妊娠判明期から育児期まで継続して行う禁煙サポートプログラムの開発を行った。主な研究成果は,1)妊娠判明後のパートナーの喫煙行動に関連する要因の検討,2)家庭における受動喫煙曝露状況に関する調査及び受動喫煙防止啓発用教材の制作,3)禁煙支援者へのサポート:保健師・助産師を対象に禁煙サポートに対する重要度,自信度についてインタビュー調査を行い,支援者に必要なサポートを検討,4)プログラムの試行実施:平成25年3月から1年間,岐阜県B市で妊娠届け出書を提出した全妊婦とパートナーを対象にプログラムを提供しアンケート調査を実施した。
著者
井關 敦子 中塚 幹也 山口 琴美 山田 奈央 大橋 一友
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

MtF当事者は社会適応が低くqolが低いと報告される.MtF当事者2名にインタビューを行った.共通する点は,性別違和についてネガティブな価値観を持つとは限らずその価値観も多様であった.日常生活において他者の配慮があれば大きな困難なく生活でき,就業や経済状態が安定していること,家族がいることは重要であった.その他,29年度は,性の多様性に関わる以下の活動や研究を行った.29年9月に看護職,教育,研究職向けの講演会「LGBTを理解する」を岐阜大学は開催し,研究責任者は講師となった.LGBT支援団体からの協力も受け,科学研究費を活用しこの講習会を遂行した.この講習会は看護,教育,医療従事者のLGBTに対する認知を促した.29年12月には中部地方の看護職の.GBTに対する認識について質問紙調査を実施し,その結果は30年3月のGID学会で発表した.また,28年12月に実施した「岐阜県内の小中学校に勤務する養護教諭のLGBTに対する認識」に関する質問紙調査の結果が、30年3月GID学会誌に論文として掲載された.これらの調査や活動から,今後の研究を遂行するうえで重要な情報を得た.また研究を遂行するうえで,協力者を得る機会になっている.
著者
福士 秀人 小川 晴子 森腰 俊亨 奥田 恭之 島倉 省吾 平井 克哉
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
no.50, pp.p259-263, 1985-12
被引用文献数
2

クラミジア補体結合抗体の保有状況を愛知および岐阜両県のウシ1,048頭,ブタ544頭,ならびに茨城県,岐阜県および東京都のウマ1,103頭について調査した。ウシの平均抗体保有率は30.2%で地域差が認められた。ウマでは茨城および岐阜両県で2.8%および1.0%にそれぞれ抗体が認められた。ブタでは主に種雄豚で0.7%が抗体陽性であった。このように,わが国の家畜にクラミジア感染症が存在することが示唆された。
著者
松井 鋳一郎 禿 泰雄
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.49-55, 1994-12-28
被引用文献数
3

Dendrobiumのピンク品種,Den. xChristmas Chime 'Asuka' と黄色品種,Den. xYellow Ribbon 'Delight'の花弁の形質と花色に及ぼす気温と光およびアブシジン酸の影響を調査した。両品種とも低温(昼夜温,18-15℃)で中温(25-20℃)や高温(32-25℃)より開花が遅れた。ピンク品種は中温で長い花弁となったが黄色品種は高温でその発達がよかった。ピンク品種の花弁先や唇弁目玉でのアントシアニンの生成は低温で多かったが黄色品種花弁では高温で著しく多かった。カロチノイドはピンク品種の唇弁では低温で多く,黄色品種の唇弁周辺部や花弁では高温で少く,唇弁は多かった。光のある条件で咲いたピンク花は幅の狭い花弁と広い唇弁となり,唇弁先の紅は大きくなった。黄色の品種にはほとんど影響がなかった。花弁のアントシアニン生成は両品種とも光のある条件で暗黒条件より優れていた。カロチノイドの生成は光条件でピンク品種の唇弁は著しく多かったが,黄色の品種では影響がなかった。蕾へのアブシジン酸の処理は唇弁の生重が高ったことアントシアニンの生成に阻害的であったことを除くと他の形質には影響がなかった。
著者
清水 弘之 HO John H.C. KOO Linda C. 藤木 博太 松木 秀明 渡辺 邦友
出版者
岐阜大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1990

ホンコンでは、わが国と比べ鼻咽頭がんの罹患率が高く、EBウィルスと関係、あるいは塩魚との関係が注目されてきた。しかし、一般集団のEBウィルスへの感染率は日本、ホンコンとも極めて高く、EBウィルスのみでは、日本とホンコンとの差、あるいは発病すめ者としない者の差を説明しきれない。つまり、別の因子の介在している可能性が充分に考えられる。今回、気道内の細菌のプロモ-ション活性に注目して、研究を実施した。ホンコン・バプティスト病院へ通院中の鼻咽頭がん患者5名(男子4名、女子1名、年齢40ー68歳)の鼻咽頭部から粘液を採取、直ちにGAM寒天培地を用い、好気・嫌気両方の条件で37℃、48時間培養を行った。また、コントロ-ルとして、同病院で働く職員を5名(男子3名、女子2名、年齢36ー64歳)選び、鼻咽頭部粘液を同様に培養した。それぞれの培養菌体を一旦凍結乾燥したのち、その溶解物を用い、プロテインキナ-ゼC、^<32>PーATP、Ca、フォスファチジルセリンの存在下で、ヒストンに取り込まれる^<32>Pの量を測定することにより、プロテインキナ-ゼCの活性を観察した。プロテインキナ-ゼCの活性(mU/10μg)は次の通りであった(平均値と標準偏差):鼻咽頭がん患者からの検体の好気培養…20.0 ±11.0鼻咽頭がん患者からの検体の嫌気培養…13.2 ±11.0対照者からの好気培養………5.18 ±6.16対照者からの嫌気培養………10.4 ±17.16つまり、好気培養・嫌気培養の結果とも、鼻咽頭がん患者からの菌体の方で高い活性値が認められ、特に好気培養でその傾向が顕著であった。また、ホンコンにおいては、女性の喫煙率が低いにもかかわらず、女性肺がんが高率であり、一般集団での慢性の咳・痰も日本の約10倍と推定されている。そこで慢性痰を有する女性3名の喀痰を37℃、好気および嫌気条件下で48時間培養後、一旦凍結乾燥し、以下の燥作を行い、nonーTPAタイププロモ-タ-であるオカダ酸クラスが示す、プロテインキナ-ゼの活性作用を検討した。すなわち、凍結乾燥菌体を酵素で消化、凍結乾燥後、メタノ-ルで抽出し、その抽出液をジクロロメタン/イソプロパノ-ルに溶解する分画Iと、その沈渣である分画II、さらにメタノ-ル抽出の沈渣をジクロロメタン/イソプロパノ-ルに溶解した分画IIIに分け、酵素活性への影響を観察した。好気培養で発育した菌は、どの分画においてもプロテインキナ-ゼの活性作用であるオカダ酸様作用を示さなかった。しかし、2名から得た嫌気培養発育菌は比較的強い活性(特に分画Iにおいて)を示した。分離同定の結果、その菌は Streptococcus sanguis であることが判明した。以上、鼻咽頭患者の腫瘍部あるいはその近辺から採取した細菌の菌体(あるいはその分泌物)に何らかのプロモ-ション活性を示すものが存在する可能性を示唆する結果を得た。しかし、診断後時間経過の短い患者を選んだが、既にがんが発生した後の鼻咽頭部からの菌の分折であり、がん発生以前の状況は不明のままである。また、ホンコンの肺がん患者10例から喀痰を採取し、凍結乾燥を終えているので、慢性の咳・痰を有する患者の成績と比較すべく、分折を継続中である。
著者
北出 幸夫
出版者
岐阜大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

本研究により得られた知見を述べる。1)アデノシンの6位置換体の場合では、アデノシンの場合に比較し反応性が低下した。また、プリン環7位窒素原子がメチン基に置き変わった、7-デアザ体ではイノシン型、アデノシン型ともに本条件下では反応が進行しなかった。この事実は本還元反応が、DIBAL-Hのプリン環7位窒素原子への配位により惹起されることを示唆するものである。このことより、O^6-置換体のDIBAL-H還元に於いてはDIBAL-Hと酸素原子との親和性が高いためにDIBAL-Hが先ず6位酸素原子に配位し、更に7位窒素原子に配位したために好効率に進行したと考えている。2)一方本反応をプリミジン系アシクロヌクレオシドの合成に適用したが反応が複雑に進行し、期待するするアシクロピリミジンンヌクレオシドを得ることはできなかった。3)著者は、DIBAL-Hによるピリンヌクレオシドの糖部開環反応を用いて、強力なSAdenosyl-L-homocysteine(SAH)hydrolase阻害剤として知られるNeplanocin Aの糖部開環体の合成に成功した。その他、SAH hydrolase阻害が期待されるアシクロ系アデノシン誘導体も合成した。本反応を用いることにより様々なアシクロプリンヌクレオシド誘導体の合成が可能であることを示すことができた。以上の如く本研究に於いて、著者は、DIBAL-Hによるヌクレオシド類の糖部開環反応を種々検討した。その結果、本反応はプリン系ヌクレオシド誘導体に有効であることを明らかにした。また、詳細な反応性の検討によりプリン塩基部の置換基効果と配位の重要性を明らかにした。更に、本還元反応を利用した種々の抗ウイルス活性の期待されるプリン系アシクロヌクレオシド類への誘導に成功した。
著者
大橋 麗子
出版者
岐阜大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

平成28年度及び平成29年度は産前産後の休暇及び育児休業の取得に伴い補助事業を中断していた。