著者
加藤 直樹 村瀬 康一郎 益子 典文 松原 正也 伊藤 宗親 興戸 律子
出版者
岐阜大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

情報通信手段を活用した学校改善のための課題解決方略を,高等教育の取組を事例として検討し,より一般的な教育改善に対する教育経営工学の枠組みを検討した。このために,高等教育の取組として,岐阜大学の教育経営戦略について新たに調査分析を行い,学校教育でのこれまでの調査結果と比較検討して,教育改善を効果的に推進するための方略を検討した。具体的には,以下のように実施した。(1)高等教育における情報通信手段を活用した戦略的な取り組みについての調査分析とくに,教育改善の視点から導入された情報通信手段を中核にして検討し,学生や教員等の意識の変容等についての調査を試み,とくに学生からの取組期待が高く,指導者側の意識改革が肝要となることを指摘した。(2)教育課題に対して,情報通信手段に対する利用実態と期待の分析高等教育での取組は,組織的な教育改善と情報通信手段の位置づけ,及び具体的な方略を分析し,総合的な教育改善を支援するシステムとしての重要性が増していることがしてきされた。さらに,学校教育への適用の可能性について検討し,過去の取組経緯と照らしてCMIの取組を近年の情報通信技術の進展に対応させて検討する枠組みの構成が重要となることを示した。(3)情報通信手段の活用による教育改善の方略のための経営的モデルの検討情報通信手段は,情報共有,組織構成員及び関係者のコミュニケーションなどを支援する手法として活用されるが,学校教育における従来からの取組は基本的な枠組に大きな変化はないことから,過去の事例を「課題解決型の学校経営に関する教育工学的アプローチの開発」として研究資料に整理した。
著者
伊藤 健吾 秋山 吉寛 近藤 高貴 岸 大弼
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

希少種カワシンジュガイの保全のため,宿主魚を多く養殖している養魚場の活用を試みた。その結果,養魚場のような高密度で宿主魚が生息している環境であれば,ごく少数の母貝から吐出されるグロキディウム幼生であっても十分な個体群を維持できることが明らかになった。また,幼生の寄生による宿主魚への影響を調べたところ,本調査地におけるカワシンジュガイの個体群維持に必要なレベルの寄生数(宿主魚一尾当たり数百)では成長率及び生残率には影響がないことが示された。以上の結果,イシガイ目二枚貝の保全には,水産業のような宿主魚を高密度で養殖している場所を積極的に活用することが非常に効果的であることが明らかになった。
著者
石黒 直隆 猪島 康雄 柳井 徳磨 村上 智亮 ナイム ムハマド 重村 洋明 川尻 百香
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

アミロイドA(AA)アミロイド症は、血清アミロイドAが構造変換して形成されるAAアミロイドの臓器沈着により発症する疾患であり、同種動物および異種動物に伝播する、本研究では、ウシおよびニワトリ由来のAAアミロイドをマウスに接種することにより、その病態や熱に対する抵抗性について解析した。ニワトリおよびウシのAAアミロイドのマウスへの伝播は、マウスに比べて低率であった。マウスでのAAアミロイドの沈着は、時間の経過と共に消失し、再接種により増加した。AAアミロイド症の初期ではIL-6の発現が増加し,その後IL-10が増加した。また、動物由来AAアミロイドは、熱に極めて抵抗性を示すことが明らかとなった。
著者
安藤 正規 安藤 温子 井鷺 裕司 高柳 敦
出版者
岐阜大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

日本国内に生息する大型の草食動物であるニホンジカ(以下、シカ)とカモシカとの生息域や餌資源を巡る種間競争について、 (1)自動撮影装置を用いた両種の土地利用傾向調査、(2)次世代シーケンサーを用いたDNAバーコーディングによる両種の餌植物構成調査、を実施した。(1)の結果より、森林内の利用傾向は両種間で季節的、空間的に異なることが明らかとなった。また(2)の結果より、特定の餌植物種は種間で出現頻度に偏りが見られたものの、餌植物の種構成自体はほぼ差がないため、シカによる下層植生の衰退は両種の餌資源の競合をより強める可能性があることが示唆された。
著者
寺田 和憲
出版者
岐阜大学
雑誌
戦略的な研究開発の推進 未来社会創造事業 探索加速型
巻号頁・発行日
2022

社会情動能力は「長期的目標の達成」「他者との協働」「感情の制御」を可能にする能力であり、IQによって計測可能な認知能力と対比され、客観的計測、定量化が難しい非認知能力と言われてきた。それに対し、本研究開発では、ゲーム理論、進化心理学、社会心理学、認知科学、アフェクティブコンピューティング、人工知能の分野の複合的知見により、本来見えない相手の心や相手との関係を数理的に読み、社会関係を数理最適化する能力、すなわち数理的社会情動能力を算数能力と道徳能力をハイブリッドした能力として定義する。我々は科学技術立国を実現するSTEM能力と同様に、社会構成員が数理的社会情動能力を備えることが重要であると考え、AIエージェントとの社会的インタラクションの中で、子どもがその能力を習得できるシステムを開発し、介入効果およびウェルビーイング向上に資するかどうかを検証する。
著者
別府 哲
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

高機能自閉症の子どもに、佐久間ら(2000)、Hobson & Lee(1998)をもとにした、自己認識の半構造化面接を行った。その自己認識の回答をカテゴリーに分類し、健常児の結果と比較検討した。その際、従来臨床的に自閉症児の問題として指摘されている、他者との関係での自己認識をあらわすものとして、人格特性としての協調性(「だれとでも仲良くできる」、あるいは「いじめられている」など、他者との親密な関係について自己認識するもの)と、人格特性としての外向性(「友だちの中に自分から入っていく」、あるいは「一人でいるのが好き」など、他者と関わりを持とうとするかどうかで自己認識するもの)を指標として取り上げた。その結果、協調性、外向性のいずれの反応を示した高機能自閉症者の割合も、佐久間ら(2000)で示された健常児における反応者の割合よりは少ないこと、一方、高機能自閉症児における発達的変化を検討すると、外向性の反応を示した者の割合は、小学校高学年から中学生になるところで有意に増加することが明らかとなった。これは、高機能自閉症児が、健常児と比較した場合、他者との関係で自己を理解することに弱さを持つが、しかし小学校高学年から中学生になるところで、その弱さを発達的に改善していくことを示すものとなった。それでは、他者との関係での自己認識を促進するためには何が必要なのか。事例研究や実践分析により、仮説として、他者との情動共有経験(感覚を含め、他者と一緒に快の情動を共有できる経験)、他者との認知的共有経験(高機能自閉症児の気持ちを大人が代弁することにより、高機能自閉症児独自の思いを認知的に共有できる経験)の重要陛が示唆された。あわせて、認知的共有経験を生み出すために、高機能自閉症児自身に、自他関係を射程にとらえた自己認識(他者と違うところもあれば、同じところもある、かけがえのない自分)を形成することの実践的意味も明らかにされた。
著者
橋本 慎吾
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学留学生センター紀要
巻号頁・発行日
vol.2000, pp.17-24, 2001-02

本稿は,初級前半教科書である『みんなの日本語I」の各課別の語彙頻度を調査した。特殊モーラについて分析した結果,次の3点が明らかになった。(1)促音登場回数は撥音,長音より少ない。(2)促音は各課の文法項目に関連する語彙に多く現れ,いくつかの大きなグループにまとめることができる。(3)促音について詳しく見ると,促音を含む出現頻度の高い語彙は各課1つ程度である。この3点から,従来から難しい音とされている促音の導入及び音声特徴としての練習は,必ずしも初級前半から行なう必要はないことを主張する。この主張に関連して,音声教育における「音声の問題」と「規則の問題」についても説明する。
著者
石黒 直隆 柳井 徳磨
出版者
岐阜大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

産卵系の鶏でのアミロイド症の発生は、細菌の不活化ワクチン接種により誘発される炎症刺激が原因であることが知られている。今回、多種類のワクチンが接種さえた発育鶏の大規模養鶏場で鶏アミロイド症を確認した。発症した鶏を病理解剖した処、アミロイドの沈着が観察された。特に、サルモネラの不活化ワクチンを接種した鶏でアミロイド症の潜在的病変が存在することを確認した。鶏群間でのアミロイド症の伝播を知る目的で、皮下および経口的に鶏由来のAAアミロイドを投与したところ、効率にアミロイド症が鶏群間で伝播することを確認した。鶏アミロイド症はワクチン接種により誘発され、鶏群間で伝播することが明らかとなった。
著者
和田 久泰 藤井 秀比古 清島 満 斉藤 邦明 山田 泰弘 関川 賢二 和田 久泰
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

動脈硬化病巣にはコレステロールの蓄積を中心として,マクロファージ,平滑筋細胞,Tリンパ球などが存在しており,これらの細胞群は種々のサイトカインを分泌している.従って,これらのサイトカイン,とりわけproinflammatory cytokineであるTNF-α(tumor necrosis factor-α)は動脈硬化の発症,進展に深く関与していると想定される.しかし,現在までのところ動脈硬化に対するTNF-αの関与を直接的に証明した成績は認められない.本研究では,TNF-αノックアウトマウス(TNF-αKO)とアポリポ蛋白E(ApoE)ノックアウトマウス(ApoE KO)を交配させることによって樹立したダブルノックアウトマウス(TNF-α/ApoE KO)を用い,動脈硬化発症におけるTNF-α.の役割を直接的に証明した.ApoE KOとTNF-α/ApoE KOの血清コレステロール値はWild-type(C57BL/6J)に比べて著明に上昇し,超低比重リポ蛋白(VLDL)コレステロールがその主体を占めていた.しかし,ApoE KOとTNF-α/ApoE KOとの間に有意な差を認めなかった.一方,大動脈基部における動脈硬化病変の大きさを比較すると,TNF-α/ApoE KOはApoE KOに比して動脈硬化病変が有意に減少していた.さらに,大動脈におけるRT-PCR分析および免疫染色により,接着因子(ICAM-1,VCAM-1)やケモカイン(MCP-1)の発現が,ApoE KOに比べTNF-α/ApoE KOにおいて有意に少ないことを認めた.以上の成績より,TNF-αは接着因子やケモカインの発現を誘導してマクロファージの接着・遊走を促進し,動脈硬化病変の形成に促進的に働いていることが示された.
著者
三井 栄
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学地域科学部研究報告 (ISSN:13428268)
巻号頁・発行日
no.8, pp.187-199, 2001
著者
山崎 捨夫 大井 修三 佐藤 亮平
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

我々は,鳴禽類の研究ではセキセイインコを被験体として音声コミュニケーション行動を神経行動学的アプローチで解析し,魚類の研究ではキンギョを被験体として視覚性振動刺激の認知について検討した。インコを被験体とした研究では,雌のインコを防音箱の中に入れ,同種の雄のSong(さえずり)を聞かせ、最初期発現遺伝子Zenkの産生物であるZENKタンパク質(ZENK)の発現を指標として,認知的な情報処理を行っている脳の部位を検討した。初年度の研究では,高次聴覚関連野(neostriatum caudale pars medialis ; NCM)のニューロンが,song(言語性音声)認知に関与していることを明らかにした。また,刺激Songの複雑度が増すにつれて、NCMにおけるZENK発現細胞数が増加した。次年度以降の研究では,この様な関連核としてNILが,また前脳部分ではfield L1,field L3,caudomedial neostriatumが関与していることを明らかにした。キンギョを被験体とした研究では,当初の予定とは異なり,聴覚性振動刺激の認知機構を調べるにあたり,聴覚刺激のみを使用するのではなく視覚的刺激を併用する形で認知機構を検討することが振動性刺激認知の解明に有用であることが分かってきたので,視覚性振動刺激として白黒縞模様を用い,その認知機構の解明を先に行うこととした。その結果,水平あるいは垂直方向の傾向情報の弁別が可能であることが分かった。さらに,この傾向情報からの偏角情報(傾角情報)をも認知情報として弁別方略に使用していることが明らかとなった。ただし,この傾角情報の弁別では,傾角が大きくなるに従い弁別能が低下していた。傾向と傾角の弁別方略においてどちらの情報を主に使っているかについては,被験体ごとでの一定した認知方略が認められなかった。
著者
大場 伸哉 鈴木 祐介 藤本 文弘
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.62, pp.7-13, 1997-12-26

ソバ属(Fagopyrum spp.)栽培種は収穫時に脱粒しやすい。そこで本研究では,小枝強度を指標にしてソバ属2種の脱粒性を調査した。供試した材料は,日本産,ソ連産およびネパール産の普通ソバ(F. esculentum Moench.)3品種2系統とソ連ならびにネパール産のダッタンソバ(F. tataricum Gaerutner)2系統である。開花・結実後3日毎に小枝の抗張強度と抗曲強度を測定し,登熟に伴う小枝強度の変化を調べた。また,登熟程度の目安とするために,痩果の生鮮重を測定した。結実直後の抗張強度ならびに抗曲強度は,全品種・系統とも10g程度と小さく,登熟するに従い次第に増加した。しかし,登熟が終わると,日本産やソ道産の普通ソバでは抗曲強度が顕著に低下した。登熟後の普通ソバとダッタンソバの小枝強度を比較すると,ダッタンソバの強度は普通ソバの半分程度に過ぎなかった。一方,抗曲強度の最高強度を普通ソバの品種・系続開で比較すると,最も強いネパール産ソバと最も弱いソ連産ソバとの差は11gで,その差は比較的小さかった。また,ダッタンソバの場合は,系統間に有意な差はなかった。抗張強度の測定時に痩果が離脱した部位を調べたところ,痩果の基部付近から小枝の中央部にかけて離脱しやすいことがわかった。これは,イネ科植物で見られるような特定部位での脱粒とは異なっている。
著者
花村 克悟 西野 近
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究は多孔質体内部の超断熱燃焼を用いてメタンを水素に変換する直接改質(部分酸化改質)についてその反応特性を理論的及び実験的に明らかにすることを目的としている。メタンと空気と水蒸気の混合気は周期的に流動方向を反転させながら、多孔質体内部に供給される。これにより混合気は多孔質体を通過する間に予熱される。一方中央部に設置されたNi系多孔質触媒内部で反応を終えた生成ガスが多孔質体出口に達する前にその顕熱は多孔質体に蓄熱される。そして、流動方向が反転するとこの蓄熱された熱エネルギーは混合気の予熱に供される。このエネルギー循環によって、火災最高温度が理論燃焼温度(断熱燃焼温度)を上回り、燃料過濃可燃限界を超える当量比約5まで可燃限界が拡張された。この時、供給されたメタンの約90%が水素へと転化され、生成ガス中には40%以上の水素が含まれることが明らかとなった。さらに、系全体のエネルギーバランスから、燃焼反応熱の約90%が改質反応熱に費やされることがわかった。さらに、反応処理速度を表す空間速度(SV値)が2600/hと従来の管式加熱炉に比べて5倍以上となることから、極めて効果的に水素が生成されることが明らかとなった。
著者
花村 克悟
出版者
岐阜大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

本研究は、将来の軽量耐熱合金として期待されているTi-Al系金属間化合物(特に超格子構造を有するTiAl_3を中心として)の燃焼合成における反応機構について微視的な立場から燃焼反応を凍結させ、その凝固過程も含めて反応経路を明らかにすることを目的としている。平均粒径約20μmのTiとAlの粉末をモル比1:3の割合で混合した後、ステンレスダイと圧縮試験機により圧縮し圧粉体試料とした。これを予熱ヒーターを兼ねた断熱流路に設置し、Arガスを流しながら、400〜650℃に予熱した後、試料の一端に点火する。この場合の最高温度と燃焼速度から、アレニウスプロットを描くことによってその勾配から総括活性化エネルギーを得た。その値は、347kJ/molである。また、燃焼途中で圧縮窒素ガスを吹き付けることにより反応を凍結させ、その断面を鏡面研磨した後、電子顕微鏡にて元素分析を行った。その結果、島状の断面内部中央ではTiがほぼ100%であり、その中心から同心状にTiの原子%が減少していることがわかった。したがって、融点665℃のAlが溶融しTi粒子を覆うと同時に反応が両者の界面から始まり、反応速度はTi原子とAl原子の拡散現象に支配されている。すなわち、アレニウスの拡散係数に従った燃焼現象であり、そのときの活性化エネルギーが上記の値であると言える。なお、最高温度は化合物TiAl_3やTiAlの融点より低く、Ti表面に固相の化合物が生成されると考えられるが、Al濃度が高い領域では液状に近いことが相図からわかるので、比較的容易に拡散できるものと考えられる。さらに、固相であるとしてもCuの固体中にNiやZnが拡散する際の活性化エネルギー200kJ/molとオーダー的には等しく、このような固相をAlが拡散するとの見方も、それ程物理現象から逸脱するものではないことがわかった。
著者
花村 克悟
出版者
岐阜大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

本研究は流路内に充填された多孔質触媒に、メタンと水蒸気と空気を周期的に流動方向を反転させながら供給し、メタンの一部を燃焼反応させ、残りのメタンを効率良く改質(直接改質)させることを目的としている。実験装置は内径70mmの流路に流れ方向300mmの均質なセラミック多孔質触媒が充填された構造である。混合気は4つの電磁弁により周期的に流動方向が反転される。装置は、その中央流れ方向に100mm隔てて埋設された2本の電気ヒーターに通電することにより、まず、窒素ガスを用いて昇温され、150℃前後に達した後、水蒸気に切り替えてられる昇温される。所定の温度に達した後、メタンを徐々に加えて電気ヒーターによる改質を行う。さらに投入電力を増加させて温度を上昇させる。そして、空気をわずかに加えて点火させた後、電気ヒーターへの通電を止める。多孔質触媒に流入した混合気は、その内部を通過する間に予熱され、その中央近傍でメタンの一部が燃焼され、残りのメタンが改質される。生成ガスの温度はその下流側で、その顕熱が多孔質体に蓄熱されるので出口に達する前に低下する。流動方向が反転すると、この蓄熱された熱エネルギーが混合気の予熱に供される。可濃限界以上の混合気による点火が困難であったため、限界以内の混合気で点火したところ、多孔質体の耐熱温度を混合気の調節をする間もなく越えてしまい、実験不可能となったため、本年度は電気ヒーターによる改質結果に留まった。それによれば、熱損失が大きい上に、電気ヒーターの出力が小さく改質に適した温度まで達しておらず、メタンの転化率は10%程度であった。しかしながら、触媒多孔質体と不活性多孔質体との組み合わせにより、高効率直接改質器となる可能性も示唆された。
著者
花村 克悟
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

本研究は、高分子における赤外線の吸収過程および熱への緩和過程を、赤外域に拡張された温度変調分光法を用いて光学的に把握することを目的としている。水冷された銅の研磨表面に厚さ1μmのポリスチレン薄膜を付着させる。この表面にパルス状のCO_2レーザー光(波長10.6μm)を照射し、加熱すく。このパルス光は、シンクロナスモーターに取り付けられた、可変スリットを有する歯車により得られる。パルス幅は2μs、パルス間隔は14μsである。この周期で、ポリスチレン薄膜は加熱・冷却を繰り返す。これに連動して、同じ歯車でパルス光となったHe-Neレーザー光(波長3.39μm)が同じ加熱面に照射される。この反射光強度が検出器により測定される。この時、歯車に垂直に入射するCO_2レーザー光をその接線方向へ平行移動させることで、2つのパルス光の時間遅れが設定できる。この時間遅れを300ナノ秒毎にパルス間隔時間(1周期間)まで変化させた実験の結果、ある特定の時間遅れにおいてのみ反射光強度が高くなった。この立ち上がりから、完全に初期の値まで戻る時間はおよそ2μsであり、この近傍で2つのパルス光が同調していることがわかった。すなわち、温度変調分光法が赤外域においても利用できることが明らかとなった。さらに、パルス光の時間遅れに関する時間分解能は3×10^<-7>秒であり、数百ナノ秒オーダーの加熱過程が光学的に検出できることを明らかにした。なお、CO_2レーザーの振動数はポリスチレン内のベンゼン環にあるC=C-Hの面外変角振動に近い振動数であり、He-Neレーザーの振動数は2つのベンゼン環の間にあるH-C-Hの伸縮振動に一致している。本実験の時間遅れに関する時間分解能は振動の緩和時間10^<-9>〜10^<-7>秒オーダーに極めて近いことから、本実験においてレーザー光吸収後の熱への緩和過程が捉えられる可能性が示唆された。