著者
中井 健一
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学地域科学部研究報告 (ISSN:13428268)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.79-103, 1999-03-15

As Japan began to step into a welfare state after World War II, theoretical study of social welfare began to flourish. Why did modern states develop social policies? What are the purpose and functions of social welfare? These theories concerned with the essence of social welfare were presented, and disputes arose. The controversy from 1945 to 1960 was already summed up and a book about it was published as "Disputes regarding the Social Welfare of Japan after World War II". This thesis tried to examine the history of disputes since then, especially controversy about the theory of social policy and the new theory of social policy. (They both belong to the school of the theory considering social welfare of modern times as the system of policies developed by states.) In addition to this, it tried to make clear what emerges from this controversy and what we can learn from that. This work has been indispensable in the process of creating new theories.
著者
章 開訓 大野 勝利 葛野 浩
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.345-351, 1988-12-25

蛇の心臓の解剖学的位置と,これにともなう腹鱗の相対的位置を確認したうえで,誘導電極の位置を設定し,心電図を誘導記録した。本研究に用いた誘導法は操作が比較的簡便で,かつ記録した心電図の各波形は明晰であった。そこで得られた資料をもとに心電図学的に各種の分析を試みた結果,爬虫類蛇科の心臓の系統発生学的な研究および生理学的な検討に有意義な方法であると結論した。1.調律:P波は全例で認められた。したがって,正常な心機能を有する蛇の心臓は洞性調律である。洞性P波はIIIおよびaVFを除く各誘導で陽性を示した。また,陰性および二相性P波は総ての誘導で認められた。2.心拍数:安静状態下の心拍数は32〜46/分で,その平均値は40.5±4.1/分であった。3.電気軸:P波の平均電気軸は-30°〜-166°にあって,その平均値は-89.4°±54.7°であった。QRS波の平均電気軸は60°〜82°にあって,その平均値は72.4°±8.6°であった。したがって,両者の電気軸は相反する方向を指向している。4.P波の持続時間と振幅:持続時間の平均値は60±8.0msecである。振幅は陽性成分ではaVRで106.0±34.4μV,陰性成分ではIIで114.3±24.8μVと比較的優勢に導出された。5.P-R間隔:その平均値は394±6.9msecであった。6. QRS波の持続時間,振幅および形態:持続時間の平均値は151±17.8msecである。振幅はQ波はaVRで,R波はI,II,IIIおよびaVFで優勢である。S波はaVRおよびaVLを除く各誘導で導出されるが,いずれも小さい。形態はaVRおよびaLVでは総てQr型を示し,II,IIIおよびaVFでは総てRs型を示した。また,IでRsおよびR型を示した。7.Q-T間隔:その平均値は926±17.3msecであった。8.T波の持続時間,振幅および形態:持続時間の平均値は114±21.3msecである。振幅は陽性波ではII,IIIおよびaVFで,陰性波はaVRおよびaVLで優勢に導出される。形態はII,IIIおよびaVFでは総て陽性型,aVRおよびaVLでは総て陰性型を示す。Iは主として陽性型を示すが,陰性を示すものもある。9.R-R間隔:その平均値は1466±36.8msecであった。
著者
佐渡 忠洋
出版者
岐阜大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は日本のロールシャッハ法(Rorschach's Inkblot Mehtod: RIM)の歴史、特にその輸入過程と発展過程を明らかにすることである。成果としては、1)1930年以前に導入がいくらか明確になった、2)研究論文は1959年までに273編も報告されていた、3)1930年代は精神科臨床の研究が多く、1950年代は犯罪学や人類学の研究が多かった、4)日本の研究者は11の新図版を制作してきた、5)スイスでのフィールド調査で若干の新事実が見いだされた、6)RIMはバウムテストや風景構成法とは異なる発展過程を経た、がある。今後の課題はRIM史から臨床心理学史の素描することである。
著者
今井 亜湖
出版者
岐阜大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

(1)実践事例における教育的効果の分析超鏡システムは遠隔地にある相手像に自己像を重畳表示し、遠隔地で交流する者同士は同一画像を見ながら対話を行うため、身振り、手振りなどの非言語情報や視覚位置情報を伝達しやすいという特徴に焦点を当てた教育的効果の分析を進めた。これまでに実施した超鏡システムを用いた教育実践のビデオ記録より、時間を入れたプロトコルデータを抽出し、通信回線を使用する場合に必ず生じる映像・音声遅延と超鏡システムを介した情報伝達との関係を分析することにより、超鏡システムの教育活動への利用方法とその教育的効果が明らかになってきた。本年度の見学校の実践においても同様の結果が示唆されている。(2)超鏡システムの利用に適した教育の文脈についての検証研究代表者は初等中等教育における超鏡システムの利用を中心に研究を進めてきたが、これらの実践を行う前に超鏡システムを用いて実施していた教員研修が超鏡システムの利用に適した教育の文脈ではないかとの指摘が研究発表の場でなされ、それを受けて多種の実践データの分析結果より、国際間遠隔授業を実施する際に、両校の教員による指導内容の確認や教材の交流といった教師教育につながる場面において超鏡システムの利用が適しているのではないかと示唆された。以上の研究成果は、論文としてまとめる予定である。
著者
松井 鋳一郎
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.393-402, 1988-12-25

Cattleyaおよび近縁属の交配種約210について原種と同様に花色素の花被内分布,花披色および表皮細胞の形状について調査し,原種との相関について検討した。1 花被内のカロチノイドとアントシアニンの分布様式は原種より多く,12のパターンに分類した。ラベンダー系のCattleya, Brassocattleya, BrassolaeliocattleyaやLaeliocattleyaは親と同じ分布様式P_2を示したが,C. intermedia var. aquiniiやC. trianaeとL. pumilaの子孫で表皮にアントシアニンを含む(P3)交配種があった。また,Sophronitisの子孫でもカロチノイドを欠く"ソフロレッド"のものはP3であった。赤色花はカロチノイドとアントシアニンを共に含んでいた。アントシアニン色素を表皮に含むSophronitisの子孫が多かった。しかし,表皮にアントシアニンを含まない赤色のSophronitisの子孫も少数あった。2 Brassavolaの子孫は黄緑,白,ラベンダー色と色度図上原点を通って分布し、赤色の交配種はなかった。色度図上から,ラベンダー系の交配種より,楔花,楔花より"ソフロレッド"の花の方がより赤味が強かった。S. coccineaはLaeliaと交配したとき,その親となる種によって広く分布した。3 交配種の表皮細胞の形や大きさは両親の性質を強く受けた(回帰係数で,形,0.32〜0.56,花弁・高さ,0.40〜0.50,唇弁・高さ,0.37〜49)。また,種や種を構成するグループによって影響の表われ方は異なった。 C. aurantiacaは交配相手の影響が出やすく,C. labiataグループはグループの形質の影響が強く出た。
著者
小谷 康弘 桜井 宏紀 照屋 匡 伊藤 嘉昭 武田 享
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.51-57, 1991-12-25

ウリミバエのガンマー線照射による不妊化の機構を組織学的に検討した。電子顕微鏡による精巣の観察では,照射虫の精原細胞,精母細胞は崩壊し,自由精子のみが存在していた。照射虫と交尾した雌の産下部の胚子発生過程の光学顕微鏡による観察では,卵割異常,胚盤葉形成阻害など発生初期の段階での異常がみられ,それ以降の胚子発生過程は認められなかった。ガンマー線照射により雄の生殖細胞は大部分が崩壊するものの,残った精子は受精には関与した。しかし,受精に関与した精子は胚子発生過程を停止させる異常精子であり,このことがほぼ100%の不妊化率を引き起こすものと推定された。光学顕微鏡による中腸の観察では,照射虫の中腸上皮細胞の萎縮や崩壊がみられた。このことから,ガンマー線照射により中腸組織に阻害を生じ,消化機能が阻害されることが,成虫の寿命低下の一因になっていると思われる。
著者
吉澤 寛之
出版者
岐阜大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究では、犯罪や非行、攻撃行動などの反社会的行動に至る行動決定過程を意図性の観点から分類し、各過程による説明力の差異を明らかにした。さらに、行動決定過程と常習反社会性との関連を、再犯者と非再犯者や一般少年との比較分析や、サイコパシーとの関連分析により明らかにした。続いて、再犯性の予測や矯正プログラムの改善への貢献を視野に入れ、行動決定過程についての査定バッテリーを開発した。
著者
高木 伸之 王 道洪
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

冬季雷雲下の風力発電設備において上向きに開始する落雷の前兆現象を3つ確認した。一つは落雷開始の数秒前から数アンペアの電流が流れる前兆電流である。二つ目は落雷前に発生する微弱な発光を伴う放電現象で風車先端から数メートル程度進展して停止する現象である。三つ目は落雷前に風力発電設備周辺での地上電界強度が正または負の極性に偏る現象である。前兆電流については2秒前には落雷の発生を予測できることを確認した。
著者
池田 尚志 松本 忠博
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

古典的な方式であるが、パターン変換型の機械翻訳エンジンを構築し中国語を始めベトナム語、シンハラ語、さらに日本の手話への機械翻訳システムjawを試作した。C++言語のオブジェクトのパラダイムを利用した相手言語の"表現構造"を介する翻訳方式が特徴である。また、jawにおいて用いる日本語解析システムとして、文節構造解析に基づく解析システムibukiCを開発した。
著者
王 道洪 高木 伸之
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

落雷の最終雷撃過程の観測に特化した高時間分解能・広ダイナミックレンジ・高感度・超ワイドビューを有する超高速光学イメージングシステムを開発した。このシステムをフロリダロケット誘雷実験場に4年間設置し、100個を超す雷撃の最終雷撃過程の観測に成功した。これらの観測データを解析して、最終雷撃過程、とりわけ、帰還雷撃の開始過程を明らかにした。これらの結果に基づき、帰還雷撃のモデルの改良を行った。
著者
高橋 弘 山内 克典
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

1.チョウセンゴミシ雌花、雄花ともに約1週間の寿命を保ち、柱頭もその間receptiveのように見えた。双翅類と鞘翅類の多種多様な昆虫が有効なポリネーターであるとともに、アザミウマも重要なポリネーターであった。これらのことから、この種はジェネラリスト型の受粉様式を持つと言える。自家和合性があることが分かった。2.マツブサ雄花は1日の寿命、雌花は開花2日目の夕方までに花被片を落下させる。主要なポリネーターはタマバエ(種は未同定)であった。マツブサは雄花の雄蕊群と花被片、及び雌花の花被片をタマバエの産卵場所として提供する共生関係にある。開花期間は2週間以内で、一度に多数の花を咲かせた。タマバエは開花期間中、世代が変わるように見えなかった。3.サネカズラ雄花は1日の寿命、雌花は開花2日目の夕方までに花被片を落下させ、主要なポリネーターはタマバエ(種は未同定)であり、雄花の雄蕊群と花被片、及び雌花の花被片をタマバエの産卵場所として提供する共生関係にある、という点でマツブサと同様に受粉様式をもっていた。しかし、タマバエの種類は明らかに異なる。開花期間は2ケ月に及び、少しずつ花を咲かせた。また、開花初期は雄花のみが開き、雌花は1週間以上後に咲き始めた。タマバエは約10日で世代交代をするので、開花期間中数世代が出現すると思われる。4.シキミ花は両性で、10〜20日間寿命があり、初めの1/4〜1/5の期間が雌性期、残りが雄性期であった。鞘翅類と双翅類の多種多様な昆虫が主要なポリネーターで、膜翅類の昆虫も受粉に貢献すると思われる。従って、これはジェネラリスト型の受粉様式を持つと言える。自家和合性があることが分かった。
著者
太田 孝子
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学留学生センター紀要
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.23-43, 2003-03

淑明高等女学校は,1906年5月,朝鮮李王家の高宗皇帝妃と日本人淵沢能恵の協力によって,朝鮮人女子のために京城に創設された女学校である。植民地下の朝鮮において,朝鮮人と日本人の協力によって創られた私立高女は淑明高女が唯一のものである。しかし,日本人教師が多かったこともあり,朝鮮人女子のために創られた当初の理念や目的と,実際の学校運営の間にはしばしば齟齬(そご)をきたすことがあり,朝鮮教育史に残るような同盟休校事件(「'27淑明抗日盟休運動」)を始めとする抗日学生運動が幾度となく起こった。本稿では,淑明高女で起こった抗日学生運動関連の史資料を検証することによって,運動の目的と実態,運動を巡っての日本人教師,朝鮮総督府の反応を明らかにし,植民地下の女子中等教育が内包する課題を指摘した。
著者
澤田 眞治
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

1.非米州地域と国連に関するブラジル外交の考察ブラジルは、軍政下の1970年代ですら米国の意向に反してアンゴラ左派政権の独立を承認するなど、戦後60年間、文民政権であるか軍事政権であるかを問わず、プラグマティックな外交を独自に進めてきた。こうした実利外交は、開発/工業化という国家目標に基づくものであり、途上国のリーダーを自認しながら、先進国主導の世界秩序形成に自国の参加を求める両面的なものである。ルーラ政権は、反米左派政権の国々とは同調せずに、成長著しいブラジルの経済力を他の途上国で展開することも企図しており、脱イデオロギー的な姿勢を維持している。世界秩序への関心は、ハイチ等PKOへの積極参加など国連安保理改革に顕著であるが、戦間期に国際連盟の常任理事国入りを要求しながらも実現せずに、国際連盟を早期に脱退した史実もある。途上国のリーダーの座を維持しながら、豊富な資源と巨大な市場を梃子に、欧州など先進国との戦略的提携関係を構築することが世界秩序形成に参加する条件となろう。2.ブラジル外交と地政戦略の連関に関する考察20世紀のブラジルでは地政学的な戦略思考が外交と内政に影響を及ぼしてきた。内陸の人工都市ブラジリア遷都や「未来の大国」の標語は地政学思考と開発主義の理念の結合であった。旧来の自然地理学的な地政学は衰退したが、近年の地域主義の台頭や文明・文化論への関心の高まりから、地政戦略/地政文化的な視点は、ブラジル外交の特質を考えるうえでー助となろう。つまり、多国間主義を通してブラジルを軸に南米地域の結束が強化されることは、多極化する世界秩序における南米の地域大国ブラジルの地位を向上させるという考え方が、政権の左右を問わず、継続的に存在するのである。[付記]平成20年度の本研究計画は、研究代表者の退職によって中断されることになった。
著者
王 道洪 高木 伸之 渡邉 貞司
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

雷の前兆現象の解明を目的に2005年と2006年の夏季にそれぞれチベット雷について総合観測実験を行った。それらの観測データを解析して、以下の知見が得られた。1.チベット雷雲は夕方から深夜にかけて発生することが殆どである。雷活動は雷雲によって随分異なる。雷が多い雷雲では一分間20回以上の雷放電が観測されており、少ない雷雲では全放電数が数回程度にとどまる。2.2005年度観測できた雷雲の殆どは地上で主たる正極性電界を示したが、2006年度観測できた雷雲の殆どが地上で主たる負極性の電界を示した。前者の場合、雷の9割以上が雲放電であり、落雷の数が極めて少ない。後者の場合、普通の夏季雷雲と同じ、落雷が2〜3割合を示す。普通の雷雲の下部に正極性のポケットチャージがあり、これが落雷を誘発するとされている。正極性電界を示すチベット雷雲の場合、このポケットチャージはむしろ主電荷領域であり、その下に落雷を誘発する逆極性のマイナスポケットチャージがない。これは正極性電界を示すチベット雷雲において落雷があまり発生しない原因と推測している。3.雷の開始場所は明らかに高度が高い層と低い層に分かれており、それぞれの場合、その後の雷放電リーダが異なる特性を示す。雷の開始に関して、負極性リーダが見かけ上最初に伸びるとの説が主流になっているが、今回の研究では始めて正極性リーダのものと負極性リーダのものと両方が存在することを突き止めた。4.雷雲の発達段階によっては落雷の割合が随分異なり、落雷しやすい電荷構造が明らかに存在すると考えられる。
著者
伊東 久之
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

鵜飼は飼い慣らした鵜をたくみに利用して魚を獲る漁法である。この漁法は中国と日本において盛んにおこなわれ、一部は東南アジアからインドまで広がっている。両国の鵜飼はほぼ、同類と思われてきた。そのため、日本の鵜飼は中国から伝わってきたとする考え方が一般的である。しかし、両者の間には大きな違いがあるのである。長江にそって中国南部に広く分布する鵜飼は、鮎を獲る漁ではない。中国に鮎はいないのであり、鯉科の魚を獲るのである。この獲物の違いは、鵜を獲る漁法と鵜の日常生活に大きな差をもたらしている。日本の鵜飼が夏に行われるのに対して、中国の鵜飼は冬をシーズンとしている。中国に限らず、鯉は年中川にいて、晩春に産卵する。中国ではこの時期を禁漁とする。一方、日本の鮎は秋になると産卵のために川を下り、春に子供が遡上するまでの間、川には魚の姿がほとんど見られなくなる。このことは日本の鵜飼の漁期が短かいという結果をもたらす。しかし、最も大きな問題は、魚が減少する冬の間,鮎をどうやって食べさせていくかを考えなければならないことである。鮎の越年方法を持たない鵜飼は、日本では成り立たない。これが中国の鵜飼と大きく異なる点である。こうした観点から、日本での鵜の越年方法を全国的に調べてみた。そこには三つの方法が見出される。一つは秋になると鵜を海に戻す「放鳥方式」。二つめは海辺に預ける「里子方式」。三つ目は鵜とともに漂泊の旅に出る「餌飼方式」である。このように、さまざまな越年方法が各地で編み出されているということは、この漁法の歴史の長さを感じさせる。また、中国からの伝来説も、単純な移入でないことがわかり、簡単に決めつけることができなくなった。ともかく、鵜飼が鵜と鮎の習性の中で営まれる巧みな技であることが再確認された。