著者
北口 公司
出版者
岐阜大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

近年,食物アレルギーの患者数は増加しており,その症状を緩和する食品成分が切望されている。水溶性食物繊維であるペクチンはアレルギー応答を調節する食品成分であることが示唆されている。しかしながら,その効果や機序など不明な点が多い。本研究では,ペクチンを食物アレルギーモデルマウスに摂取させ,予防および治療効果を調査した。その結果,ペクチン摂取により血中IgG1濃度とアレルゲン特異的抗体価の上昇が抑制され,アレルギー性の下痢症状が緩和されることが判明した。ペクチンは抗原提示細胞に作用することでアレルギー性の炎症を抑制している可能性が示唆された。
著者
青木 光広
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

ストレス応答や免疫応答に中心的役割を果たす転写因子のひとつであるNF-κBを介した慢性炎症が難治性メニエール病の進行する難聴や両側化に、関与するかどうかを2年間の前向き研究で検討する。患者の末梢血単核細胞(PBMC)を分離し、コントロール(非刺激)、酸性刺激下、リポポリサッカライド(LPS)刺激下で培養した上で、炎症性サイトカインやアヂィポカインなどの放出の違いが聴力レベルへ与える影響から進行性難聴ならびに両側化の病態解明ならびにその対処法を解明する。
著者
光永 徹 志水 泰武
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

サイプレス材精油(CEO)を吸入した高脂肪食で飼育したマウスの肥満抑制効果が認められた。その作用機構を解明するために,CEOの匂い刺激を与えたラットの肩甲骨間褐色脂肪組織支配の交感神経活動(BSNA)を測定した。CEOは成分分画の結果,(-)-Citronellic acid (CA), guaiol, α, β-, γ-eudesmol 混合画分(GE), guaiol (G) and β-eudesmol fraction (E)の各画分を得た。それらのBSNAを測定したところ,CAは全く活性に影響しなかったが、GE画分およびGはBSNAの活動を大きく亢進する事を明らかにした。
著者
花村 克悟
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究は、多孔質体内部で燃焼熱を光や熱ふく射に変換し、熱光起電力電池(Thermophotovoltaic Cell : TPV Cell)によって発電する,新規なエネルギー変換システムを提案し,その熱効率や自立分散型発電システムとしての可能性について検討したものである.その構造は,断熱された30mm×30mmの流路内に厚さ10mmのセラミック多孔質体を流路中心に充填し,その両側に20mmの燃焼空間および石英多孔板(厚さ3mm,φ2.5mm×75孔,開口比35%)を1mm間隔で10枚づつ配置したものである.ここへ周期的に流動方向を反転させながら空気を供給し,流動方向に合わせて燃焼空間に燃料を供給し中央のセラミック多孔体を加熱する.この燃焼ガスは下流側の石英多孔質体を通過する際,顕熱が蓄熱されるので,温度低下を伴って排出される.流動方向が反転すると,この蓄熱された熱により空気が予熱された後,燃焼空間に流入する.この熱循環により,わずかな燃焼熱でセラミック多孔質体が1500K程度まで加熱される.数値計算によれば,燃焼熱の約70%がふく射エネルギーとして系外に取り出され,2.2μmまで電力に変換できるTPV電池により熱効率15%が期待される.また,試作した実験装置を用いて発電したところ,電池への入射ふく射エネルギー強度の非一様性であるとか,電力変換に有効な短波長成分が周囲の断熱材に吸収されることなどにより,トータル熱効率は0.2%に留まっているが,この装置で最高温度が目標の1500Kに達していることから,発展性が期待できることが明らかとなった.なお,このシステム内の加熱用として,直径5mmのミリサイズスワールバーナーも同時に開発し,このような微小サイズでは壁面での角運動量損失や熱損失の影響が大きく,スワール数1前後の最低な条件で利用する必要があることが明らかとなった.
著者
田阪 茂樹 松原 正也 佐々木 嘉三
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

神岡鉱山内「茂住」と,福井県「和泉」は,地震にともなう地下水の変化が観測される可能性があり,本科学研究経費で施設整備した観測地点である。岐阜県における地下水中ラドン観測地点はこれらを合わせて,全体で20箇所の観測点となる。平成10年4月から平成11年9月の観測期間において,岐阜県及びその周辺地域の,岐阜県神岡町「割石温泉」,福井県和泉村「平成の湯」,岐阜県養老町の3つの観測地点で,地震に伴う地下水の湯量・泉温・ラドン濃度の変動の観測データを捉えることができた。平成10年8月7日14時頃から長野・岐阜県境で群発地震が発生した。「割石温泉」観測点で,この群発地震の起こる約8時間前に泉温が約1.0℃低下し,湯量も約3週間前から毎分59から55.6lまで減少した。この観測結果は,降雨の影響ではないかと検討したが,群発地震の前兆現象である可能性が高いと結論される。引き続いて,群発地震で最大のマグニチュード5.4の地震が8月16日3時31分に岐阜県飛騨地方で発生した。この地震発生に伴って,湯量が毎分57から79lに急増し,泉温が1.5℃上昇した。ラドン濃度は地震前の減少傾向から,地震後に増加し始めた。また,地震の前後での湯量データの潮汐解析結果から,地震の前後で潮汐成分の位相と振幅に変化がある事が判明した。これは地殻の体積歪みの変化を意味するものである。割石温泉におけるこれらの観測結果は,過去20年間の湯量観測の結果を確認するとともに,今後の地震予知につながる貴重な観測データであると評価される。
著者
秦 小明 加藤 宏治 山内 亮 相澤 宏一 稲熊 隆博
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.83-88, 1999-12-27

クコ果実より,冷水及び熱水にて多糖成分Cp(冷水抽出多糖)及びHp(熱水抽出多糖)を抽出した。それらをDEAE-セルロースカラム(HCO^-_3型)に供したところ,Cpは3つの両分(Cp-1, Cp-2及びCp-3)を,Hpは4つの両分(Hp-0,Hp-2,Hp-3及びHp-4)を与えた。得られた各面分の性質及び化学組成を検討した結果から,クコ果実に含まれる多糖成分は主にアラバン,グルカン,アラビノガラクタン及びペクチン質多糖であることが示唆された。
著者
中須賀 徳行
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学留学生センター紀要
巻号頁・発行日
vol.2001, pp.3-15, 2002-03

「日本語廃止・英語採用論」として知られる森有礼の著作をとりあげ,実はホイットニー宛の書簡では漢文の廃止と「簡略英語」の日本への導入にとどまり,日本語の廃止までは考えていなかったものが,『日本教育論』序文では日本語の廃止にまで踏み込んだことを明らかにした。森の日本語廃止論に対して,馬場辰猪は英文で口語文法を体系的にまとめあげ,そのことによって教育を日本語で行うことが可能であることを具体的に示したが,彼はとりわけ母語の廃止によって言語エリートと一般民衆の間に亀裂が生じ,言語分裂国家が生じることに懸念を表明していたことをみた。森たちの日本語に対するこうした母語コンプレックスは,西洋との経済力をはじめとする文明的落差の意識を反映したものであり,「21世紀日本の構想」懇談会が2000年に国民的討論を呼びかけた「英語第二公用語論」もその線上にあることを考察した。その上で今後の日本における言語のありかたとして,多言語主義に基づく言語政策を提唱した。
著者
北口 公司
出版者
岐阜大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

食物繊維を摂取することでアレルギー疾患を予防できる可能性が示唆されている。これまでに我々は,水溶性食物繊維の一種であるペクチンを摂取することで腸管免疫担当細胞の炎症応答を抑制し,敗血症や大腸炎に対して保護的に働くことを明らかにした。さらに,その抗炎症作用には,ペクチンの側鎖が重要であることも見出している。一方,ペクチンが腸内で資化された結果生じる短鎖脂肪酸が血中に移行することで,腸管局所のみならず全身の炎症応答を調節できる可能性も示唆されている(プレバイオティクス効果)。しかしながら,ペクチンの化学構造とプレバイオティスク作用との関係には不明な点が多い。そこで,化学構造の異なる2種類のペクチン(シトラス由来ペクチン,オレンジ由来ペクチン)をマウスに給餌し,遅延型過敏症である接触性皮膚炎の病態と盲腸内の短鎖脂肪酸の産生に及ぼす影響を調査した。オレンジペクチンは,中性糖の割合がシトラスペクチンに比べて約3.5倍高く,側鎖を多く含んでいることが示唆された。シトラスペクチンとオレンジペクチンを含有する飼料をマウスに給餌した後,ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)溶液を除毛した腹部に塗布することで感作を行い,感作から5日後にDNFB溶液を再度左耳に塗布して接触性皮膚炎を耳介に惹起した。その結果,オレンジペクチン含有飼料摂取群では,DNFB塗布により惹起された耳介の腫れが有意に抑制されたが,シトラスペクチン含有飼料摂取群では,耳介の腫れは対照飼料摂取群と同程度であった。また,オレンジペクチン含有飼料摂取群では盲腸内容物中の短鎖脂肪酸量が有意に増加し,とりわけ酢酸の増加が顕著であった。以上の結果より,ペクチンの接触性皮膚炎抑制効果は,側鎖の含有量が重要であり,短鎖脂肪酸を介している可能性が示唆された。
著者
淺野 玄 國永 尚稔
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究の最終目標である野生化アライグマとマングースに対する経口避妊ワクチンの実用化は、本申請研究期間で完了できるものではないが、今回得られた知見の概要は以下の通りである。アライグマでは、卵透明帯蛋白の塩基配列と立体構造を参考に合成した3種類のペプチドに対する抗ウサギ血清において、抗体産生誘導および誘導抗体の種特異性が確認され、これらがワクチンの抗原候補として有力であることが示された。マングースでも同様に、卵透明帯蛋白の塩基配列をもとに合成した2種類のペプチドに対する抗マングース血清において、抗体の持続期間や誘導抗体の生体抗原認識能が確認され、両ペプチドのワクチン抗原としての有用性が示された。
著者
小見山 章 加藤 正吾 伊藤 栄一 戸松 修
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

比較的若齢の造林地か豪雨等で崩壊すると、広葉樹に較べてヒノキやスギが浅根を示すことがその原因であるといわれることが多い。このことを再検討するために、岐阜県の岐阜大学農学部附属演習林において、48年生のヒノキ造林地でヒノキ主林木とそこに侵入したミズナラの根重の垂直分布を比較した。2本の試料木を選んで、地上部に関する調査を行った後に、深さ60cmまでに存在する根をトレンチ法により採取した。深さあたりの根重密度の垂直分布パターンを求めたところ、指数分布にしたがう減少パターンを示した。2本の試料木間で、深さ方向の根重密度の減少率に有意差は認められなかった。回帰式を積分して個体根重の垂直分布を計算した。地表から30cmまでの深さに含まれる根重の割合は、ミズナラ試料木で89%、ヒノキ試料木で94%となり、試料木間で根の垂直分布に極端な違いは認められなかった。また、傾斜地で、ヒノキ試料木は根を谷側に多く配置していたのに対して、ミズナラ試料木は山側に多く配置するという、根の水平分布上の違いがみられた。また、数種類の樹種の根量は、パイプモデルにしたがうことが確認された。さらに、一般に相対成長関係には樹種差が生じるが、相対成長関係式の作成に用いる変数を吟味することで、樹種差のない統一的な相対成長関係式の構築の可能性があることがわかった。これらの知見から、生物学的な根拠を元に、根の深さについて議論することができる。
著者
章 開訓 大野 勝利 葛野 浩
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.183-190, 1987-12-25

無麻酔で安静状態における蛙の心電図を誘導記録した。心電図は体表から標準肢誘導と増高単極肢誘導を採用した。その結果各波の形態は明瞭で,またII,III,aVRおよびaVFの各波形の振幅は大きく,各種の分析についても容易であった。したがって,蛙の心臓の電気生理学的な分析手段として充分な意義を有するものと考えられる。1)P波の形態はII,IIIおよびaVFは陽性波で,aVRおよびaVLは陰性の波である。2)QRS波の形態はII,IIIおよびaVFはRS型をとり,これらはR波が主成分となり,aVRおよびaVLはQR型をとり,その多くはQ波が主成分となった。3)T波は基本的にQRS波の主成分と同一の方向を示した。4)心拍数の平均値は35.3±3.0回/分であった。5)平均電気軸はP波で+83.1°±16.1°QRS波では+101°±64.6°であり心房と心室は概ね同一方向を指している。6)P波の持続時間は74±4.0msec,QRS波のそれは133±5.3msec,T波のそれは106±4.5msecであった。7)P-R間隔は478±8.1msec,Q-T間隔は1145±21.5msecであった。
著者
原 裕司 山内 亮 加藤 宏治 石川 仁治
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.63, pp.145-151, 1998-12-26

ニンニク磨砕物に蒸留水,牛乳,乳脂肪,カゼイン,乳清をそれぞれ加え,発生するニンニク臭気量を比較した。蒸留水のみを添加したときの臭気発生量を100%とすると,牛乳,乳脂肪,カゼインなどの添加は臭気を80〜20%減少させたが,乳清は減少させなかった。次にニンニクより粗アリイナーゼ及び臭気成分前駆体を調製し,(1)カゼインとアリイナーゼ(2)カゼインと臭気成分前駆体をそれぞれ混合して4℃に20時間放置した後,(1)には臭気成分前駆体,(2)にはアリイナーゼを加え,ニンニク臭が発生するか否か検討したところ,どちらにも発生が認められ,その量も共に対照と差異はなかった。以上から,カゼインはアリイナーゼが臭気前駆体に作用し臭気を発生させる反応に影響を与えないと結論した。一方,カゼインと臭気成分モデル化合物であるジアリルジスルフィドを混合すると,雰囲気中のジアリルジスルフィド量が減少し,さらに,混合後のカゼイン(無臭)からこの化合物をエタノール抽出によって回収することが出来た。このことから,カゼインによるニンニク臭抑副作用は,臭気成分がカゼイン蛋白に吸着されることによるものと考察した。
著者
別府 哲 加藤 義信 工藤 英美
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

自閉スペクトラム症の心の理論障害は、Perner(1991)によればメタ表象の問題である。しかしメタ表象を直接定義し測定した研究はほとんど無い。本研究では、工藤・加藤(2014)が開発した多義図形の1枚提示課題(メタ表象を必要)と2枚提示課題(メタ表象を必要としない)を用いてその特徴を検討した。定型発達児は4歳で2枚提示条件のみ正答率があがり、5歳で1枚提示条件も正答率が上昇する。それに対し、自閉スペクトラム症児は精神年齢4歳台で1枚提示条件はもとより、2枚提示条件も正答率が低かったことから、メタ表象の発達の遅れとともに、その発達プロセスが得意である可能性が示唆された。