著者
沖原 謙 塩川 満久 柳原 英兒 松本 光弘 出口 達也 菅 輝 磨井 祥夫
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

これまで本研究グループでは、DLT法による三次元解析を利用し、サッカー競技の選手のポジショニングとチームの戦術について客観化を行なってきた。そして、本年度はサッカー競技(日本代表 vs. UAE、サンフレッチェ広島 vs. 横浜マリノス、韓国Kリーグの公式戦)を研究対象とし、「モダンサッカーにおける攻守の切り替えとコンパクトの関係」について考察した。この研究については、The Vth World Congress on Science and Footballにて発表予定である。モダンサッカーでは、一試合<90分>を通じてチームの状態がコンパクトに保たれ、その結果、攻守の切り替えの数は約400回にも及んでいる。つまり、技術や体力の向上が繰り返されてきたにもかかわらず、攻撃のチームがボールを短い時間内で失っている。この現象は、モダンサッカーのキーワードとも言えるコンパクトが戦術的にどのように関係しているか、客観的なデータを元に考察を加えた。以上の結果は以下のように示された。1.分析対象とした試合について、チームの縦幅と横幅を測定した結果、攻撃のほうが守備よりも広く、守備のほうが攻撃よりも狭い傾向が認められ、現代サッカーにおける「コンパクト」は、守備における合理性を意味し、攻撃時の合理性ではない。2.コンパクトなもとでの戦いの意味は、「攻撃側が狭い形、守備側が広い形」での両チームにとって不完全な状態での戦いを意味していることが示唆された。このことより現代サッカーでは、攻守の切り替え時から、ほぼ同時に守備から攻撃に移行し、また対戦相手は攻撃から守備に移行するので前で述べた不完全な形での戦いであり、結果として短い時間内でボールを失ってしまう傾向が生じると結論付けた。
著者
隠岐 さや香 野澤 聡 小林 学 但馬 亨
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究では、力学、光学、流体力学、および他の数理的な工学理論の分野など「混合数学」として分類されていた諸分野の知識産出に関して、道具や実験機器など(物質・技術文化)が果たした役割を検証した。「混合数学」の歴史は科学史上における二つの重要な時期に関わる。第一は17世紀末におけるニュートン科学のインパクトと18世紀後半の欧州における代数解析の発展である。この時期は、数学の適用が自然哲学の領域に広がったのだが、理論知を産み出すために適切な方法や「実験」の位置付けについての論争があったことが本研究でわかった。第二の時期については数学は工学諸分野に本格的に応用されたのだがその試行錯誤の様子を分析した。
著者
沖原 謙 塩川 満久 柳原 英兒 松本 光弘 菅 輝 出口 達也
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究の目的は,これまで,現場の指導者を通して言葉で表されてきた複数の選手の動きや,チーム全体の動きを定量化して,分析することでサッカー戦術を客観的に解明していくことであった。この目的を達成するためにDLT法を用いて選手の位置を時系列に沿って座標化し,選手の動きを客観化し,分析を行った。そして本研究の成果については,以下に示すとおりである。1.「攻撃は広く,守備は狭い」という原則と,「一試合を通してチームの状態をコンパクトに保つ」という2つの異なったチーム戦術の原則について分析を行なった結果,本研究の成果では,試合を優位に進めているチームでは,「一試合を通してチームの状態をコンパクトに保つ」という分析結果は得られなかった。「一試合を通してチームの状態をコンパクトに保つ」は,いくつかの先行研究でも試合を優位に進めているチームの現代サッカーの特徴と報告されてきたが,「攻撃は広く,守備は狭く」の原則の方が,よいチームの状態として機能しているという結果が,本研究から得られた。2.各々の選手の時系列に対するスピードの変化の平均を算出し,これをチームのスピードの変化として表すと,対戦チーム間において,スピードの変化には明らかに連動性があった。3.日本代表が採用している守備戦術である"フラットスリー"の分析において,この"フラットスリー"のフィールド上の頻度とスピードの変化を分析することで,フラットスリーの守備戦術が,ゲームにおいて機能しているかどうかという評価を加えられる可能性を示した。4.1で述べた「攻撃は広く,守備は狭い」という原則が優先される時,この原則は相対的なチーム関係において有効であり,攻守の切り替え時に相手チームよりも効率よく広がり,効率よく狭くなる方法が,今後の現代サッカーの新しい理論として構築される基礎研究となるであろう。
著者
宮口 英樹 宮口 幸治 石附 智奈美
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

非行少年の社会復帰プログラムでは、先行研究から認知行動療法やSSTの効果が検証されているが、一方でいくら指導しても深まらない少年たちの存在にも苦慮させられている。その中には、視覚認知、聴覚認知、ワーキングメモリなど様々な認知機能に問題をもっているケースも多く、矯正教育の成果を上げるためには、ある程度の知的機能を保つことが課題となる。本研究は、少年院内だけでなく境界知能者の生活自立活動能力の向上、就労支援を目指した認知トレーニングのシステム作りを目的とし、認知機能向上に加え、社会生活支援にあたっている専門家を対象に聞き取り調査を行い、プログラムを改良・充実することを目指している。
著者
斉藤 英俊 大塚 攻 河合 幸一郎
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

1)スジエビ類および寄生種の遺伝属性: エビノコバンは、これまで沖縄県から山形県までの15県でエビノコバンを採集し、ミトコンドリア DNAの配列情報を明らかにして中国産エビノコバンのデータ(NCBLより引用)を加えて分子系統樹作成を行った。その結果、エビノコバンの分子系統樹は、本州~九州、沖縄および中国の3つのクレードに区分された。愛媛県のエビノコバン(宿主:チュウゴクスジエビ)は中国産個体に近い遺伝的属性を示したことから、チュウゴクスジエビの輸入にともないエビノコバンも中国から侵入している可能性が示唆された。2)寄生種がスジエビ類に及ぼす生態的影響:スジエビ類に対するエビノコバンの奇生生態の地域差を比較するため、前年度に引き続き野外調査をおこなった。その結果、宿主への寄生は東京都(利根川水系水路)では2018年7月(体長2mm)から2019年5月(体長12mm)までみられた。これに対して滋賀県(琵琶湖周辺河川) では2018年8月から2019年6月までみられた。また、エビノコバンの体長が比較的小型の時期にはスジエビ類よりも体サイズの小さいカワリヌマエビ類にも寄生する事例がみられた。なお、エビノコバンの室内飼育実験を試みたが、長期的なエビノコバンのエビ類への寄生状態を維持できなかった。これについては、次年度以降、野外調査データを利用してエビノコバンの寄生の有無と宿主であるエビ類の成長や肥満度の関係を解析することで明らかにできると考えている。3)スジエビ類および寄生種の流通状況:大阪府の釣具店において、スジエビ類を調査したところ、令和元年度はすべてスジエビであり、チュウゴクスジエビは流通していなかった。また、琵琶湖産スジエビに付随するエビノコバンを確認した。
著者
松浪 勝義 大塚 英昭 杉本 幸子 山野 喜
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

マダガスカルはゴンドワナ大陸の遺産などと言われ動植物固有種の宝庫である。これまでにビンカアルカロイドなどの臨床抗がん剤がマダガスカル原産の植物から単離され実用化されてきた。しかし、いまだ化学的解析が十分でない植物が多数あり、また、産業やインフラなどの近代化などにより貴重な植物資源が失われつつある。本研究課題では現地のマダガスカル人研究者との共同研究により多数の植物抽出物を入手し、抗がん剤や、原虫、ウイルス感染症に関する治療薬候補の探索を目的に化学的解析を行った。その結果、活性を見出した植物から、活性本体の精製および化学構造の解明に成功し、医薬品シード化合物として有用な知見を得た。
著者
橋本 牧子
出版者
広島大学
雑誌
広島大学大学院教育学研究科紀要. 第二部, 文化教育開発関連領域 (ISSN:13465554)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.247-256, 2003-03-28

When various opinions about history spread in the 1990s, Haruki Murakami also published Nejimakidori Chronicle on the theme of history in 1995. He wasn't going to face history as a writer until he wrote this novel. How does Murakami picture history as a contemporary writer of today in his novel? In this paper, I will consider Murakami's narrative of history in Nejimakidori Chronicle referring to other various opinions about history today. In order to clarify what Murakami's narrative of history is, I will study the meaning of ""Nejimakidori"" used as the keyword of this novel and the structure of narration of the text.
著者
廣内 大輔
出版者
広島大学
雑誌
大学論集 (ISSN:03020142)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.255-270, 2012-03

In Europe it has become a common target of the Bologna Process to require students to participate in quality assurance activities, and several organizations have monitored and reported on the degree of attainment achieved by each signatory country. However, these types of reports have focused mainly on external student participation, whereby students engaged in national or international level quality assurance activities outside a campus. Also, the reports tend to emphasize whether or not a country accomplished the criteria, and what is rarely revealed is what methods countries used to implement the internal student participation activities that were linked to external student participation and quality assurance, within an institution.In this paper, attention has been focused on internal student participation, whereby students engaged in various spheres of university governance. Norway was selected as test case because the country has long tradition of student participation and is reported to be one of the most advanced countries in the Bologna Process, as regards student participation in quality assurance.The composition of this paper is as follows: first, the background and a brief history of student participation is presented, including a discussion of the University Act of Norway, which requires student participation in university governance. Next, the University of Oslo (the flagship university in Norway) provides a case study for examining the structure of university-level and faculty-level student participation.Then, the results of a survey, conducted in the University of Oslo in 2009, are presented. In the questionnaire there were eight questions, the first two of which are discussed in this paper: Q1 – 'What kinds of problems exist in the current system of student participation at the University of Oslo?'; Q2 – 'What kind of new measures would you like to see put in place?' The open-ended answers to questions one and two were analyzed using a qualitative data analysis software. The results from answers to Q1 indicated that, in decreasing order: the participation and interest of students was quite low; the system had problems relating to the distribution of information; the system was not well known among the students generally, etc. Also, the answers to Q2 showed the need to: improve the way information was distributed, increase funding, and facilitate communication among members of the university, etc.
著者
星 正治 澤田 昭三
出版者
広島大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

本研究の研究内容は、(1)原爆に被爆した岩石や瓦、煉瓦を集め、(2)原爆の中性子により生成された微量放射能を測定し、(3)計算コード(MCNP)をシュミレーション実験でチェックし、(4)放射能のデータとDS86(線量評価体系1986)の矛盾とその原因を考察することにあった。(1)-(3)は初めの2年間の研究でほぼ満足できる十分な結果を得ていることが分かった。最終年度は(4)の矛盾の原因を追求することに重点をおいた。DS86における実験データとの矛盾は本研究代表者らが初めて発見した。問題は広島原爆の中性子であり、1.5Kmの地点でDS86はデータの10-30%位にしかならないほど重大である。チェックを行った項目は以下の通りである。A.原爆の爆発の際発生した中性子のスペクトル。B.その中性子が空気中を透過して地表面に達するまでの計算。C.計算に使った中性子の計算コード(MCNP)ノベンチマークテスト。D.計算に使った空気の成分の(特に水蒸気)高度別の測定。E.地表面における岩石や鉄の放射化の実験結果の検証と計算。F.ガンマ線のデータと計算との比較による正さの検証。最終的な結論としてDS86の計算のうち一番初めの仮定に問題があることが判明した。即ち、(a)長崎においては上記AからFまで全て正しい。(b)広島においては上記BからFまでは正しい。(C)上記Aの広島の場合が誤りである。(C)に関しては原爆の爆発の過程であるので実験の検証はできない。そこでDS86の仮定を変えて計算し放射化のデータと最も合うのはどれかを考えた。その結果分かったことは、広島原爆本体には厚い鉄(約20cm)が使われているが、原爆は爆発の途中で上下ほぼ半分に割れ5%-15%の中性子が直接放出された。これでほぼデータが計算により再現できる。今後は新しい線量の計算が必要となる。
著者
今村 展隆 BEBESHKO Via 木村 昭郎 BEBESHKO Vladimir.G BEBESHKO Vla
出版者
広島大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

キエフ(ウクライナ)の放射線医学研究センター(ベベシュコ所長)では、クリメンコ教授を中心として12万名のリクイデーター(除染処理作業従事者)を毎年健康管理している。彼らは250mSv:25rem以下の放射線被曝に留めるように設定したとされているが、実際にはそれ以上(一部は1Sv以上)の放射線被曝を受けた可能性を指摘されている。ウクライナ放射線医学センターで1986年以降リクイデーターの白血病発生を調査したところ、1993年までに141名の白血病発症患者を認めそのうち86名は急性白血病であった。放射線医学研究センター血液部門(成人)において、1993年以降1995年9月までに血液腫瘍疾患(悪性リンパ腫を除く)を発症した患者数(リクイデーター)は42名であり、大多数(31名)が男性で年令は20才〜67才であった。急性骨髄性白血病(AML)は16症例で、FAB分類ではAML,M1,3例、AML,M2,2例、AML,M3,2例、AML,M4,5例,AML,M5,4例であった。一方急性リンパ性白血病は2症例認められ、それらはいずれもALL,L2であった。男女比は14/4(3.5:1)で年齢(平均【+-】標準偏差)は41.8【+-】10.6であった。慢性骨髄性白血病は8症例認められ、慢性リンパ性白血病(B-CLL)は8症例であった。これらは男性患者のみで年令(平均【+-】標準偏差)は47.4【+-】10.3であった。また骨髄異形成症候群(MDS:前白血病状態)も8症例認められた。男女比は6/2(3:1)で年令(平均【+-】標準偏差)は51.3【+-】8.7であった。これらの急性白血病のうち検査し得た二症例において、p53癌抑制遺伝子のExon 5及びExon 6の欠失を認めた。この事実は白血病発症においてp53癌抑制遺伝子が重要な役割を演じていることが示唆される。またこの白血病発症率を非被曝者を対象群として比較したところ、リクイデーターの白血病発症率は有意に高率であることが判明した。更にキエフの小児病院にてチェルノブイリ事故前後(1980〜1993年)における小児急性白血病発生率を検討した。キエフ州の急性白血病発病率は(対10万名)及び発病患者数は各々1980年5.24(23名)、1981年3.22(14名)、1982年4.82(21名)、1983年2.56(11名)、1984年4.41(19名)、1985年2.03(13名)、1986年2.81(12名)、1987年5.49(23名)、1988年5.53(23名)、1989年5.27(22名)、1990年4.33(18名)、1991年2.67(11名)、1992年2.43(10名)、1993年2.45(10名)、であり1987〜1990年に一過性の発病率の増加を認めたが、その後は減少していた。ジトミール州の小児急性白血病発病率(対10万名)及び発病患者は各々1980年1.60(5名)、1981年1.61(5名)、1982年1.63(5名)、1983年1.0(3名)、1984年1.60(5名)、1985年3.40(11名)、1986年5.30(17名)、1987年4.44(14名)、1988年4.71(15名)、1989年6.32(20名)、1990年5.80(18名)、1991年5.60(17名)、1992年5.60(17名)、1993年2.91(10名)であり、1988〜1992年に一過性の増加が認められたが、1993年には下降している。ポルタフスキー州の小児急性白血病発病率(対10万名)は1983年5.80、1984年7.8、1985年7.5、1986年5.4、1987年5.5、1988年6.7、1989年4.9、1990年6.7、1991年6.2、1992年6.9でありほとんど発病率の変化は認められなかった。従ってキエフ州、ジトミール州及びポルタフスキー州については調査した限りでは小児急性白血病発症率についてチェルノブイリ事故前後における急性白血病発病率の有意差は認められなかった。以上の事実より高線量被曝者(リクイデーター)に最近白血病発症の増加傾向が認められていることが示唆される。
著者
前杢 英明 越後 智雄 宍倉 正展 宍倉 正展 行谷 佑一
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は,海溝型巨大地震の発生モデルに関して,陸上の地形・地質学的データから新たな検討を加えることを目的としたものである。紀伊半島南部を中心に、隆起地形や津波漂礫の分布調査を行い、津波のモデリングや^<14>C年代測定などの分析を通して、南海トラフ・メガスラストの各セグメント間の連動型地震ではなく、海溝陸側斜面に発達する海底活断層と海溝型巨大地震との連動型が発生した可能性を指摘することができた。