著者
久保田 明子 青木 睦 高岩 義信 飯田 香穂里 兵藤 友博 小沼 通二 後藤 基行 清原 和之 菊谷 英司
出版者
広島大学
雑誌
挑戦的研究(開拓)
巻号頁・発行日
2017-06-30

日本学術会議所蔵の歴史的資料について、(A)資料を用いた研究(日本の学術体制史研究)と(B)アーカイブズ学にのっとった資料整備を行うことが研究の計画であるが、本研究は特に(A)と(B)を別々に行うのではなく、日本の科学史等当該分野の研究者とアーカイブズ学を専門とする研究者が互いの知見や成果を相互に活用しながら共同で実施する試みである。
著者
古瀬 清秀 藤野 次史 中越 利夫 佐竹 昭
出版者
広島大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

鉄滓に関する研究は、これまで自然科学的分析によって、鉄滓と鉄及び鉄器の生産との関連が論じられてきた。考古学の立場からは、人工遺物、遺構が研究の対象となり、いわば廃棄物としての鉄滓はおろそかにされがちであったことは事実である。今回、この鉄滓を考古学的立場で検討することが可能かどうかについて、研究を推進した。この結果、鉄滓の外観的特徴、出土状況の分析を考古学的研究法によっても分類でき、鉄及び鉄器生産の諸工程を復元することも可能との結論を得た。方法としては、実験的鉄、鉄器生産及び現代の刀鍛治など伝統鍛治技術によって生成される鉄滓を入手して、それぞれの工程ごとの鉄滓の特徴を理解し、それらと古代遺跡で出土した鉄滓を比較検討することとした。特に、鍛治鉄滓に興味深い結果が得られた。鍛治滓は、i)ギザギザとした表面を呈するものが多い。ii)木炭片をかみこむ。iii)典型的な椀形滓が多く、小破片ももとは椀形を呈するものが破断していることが多い。iv)軟質のガラス滓がある。ということが主要な判断要素となるようである。実際に遺跡から出土するものには、(1)直径20cm前後・重量1kg前後、(2)直径10cm前後・重量200g前後、(3)(1)、(2)より小さく軽いガラス滓の3種に分類できる。そして、実験的に得られた滓をみると、(1)・(2)が精錬鍛治、(2)・(3)が鍛錬鍛治、(3)が火造り鍛治に対応できると考えられる。本研究の成果の大きな意義は、これまで考古学的には軽視されがちであった産業廃棄物としての鉄滓を考古学的方法論によって、重要な考古学資料として利用できることを明らかにしたことにあるといっても過信ではなく、鉄滓の研究が鉄及び鉄器の生産研究に大きな、しかも新たな研究の方向性を与えたといえる。
著者
張 慶在
出版者
広島大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究では、東アジアの国や地域において(旧)軍港都市の観光地化が進められるプロセスについて、どのような社会・政治・文化の文脈が絡み合っているのかを明らかにする。具体的には、鎮守府が置かれ現在日本遺産となっている日本の旧軍港4都市(横須賀、舞鶴、呉、佐世保)、日本時代に開発され現在韓国海軍の母港となっている韓国の鎮海、日本時代から現在まで台湾海軍の中心となっている台湾の高雄において、軍港という表象が社会・文化・政治の文脈と如何に絡み合い、特に2000年代以降の地域の観光振興(観光地化)と如何に関連しているかについて分析・考察する。
著者
高田 純 森 祐二 遠藤 暁 星 正治
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

本研究では、ポータブルスペクトロメータを用いて体内放射能Cs-137および内部被曝線量を迅速にその場評価する方法を開発することを目的とする。このポータブルホールボディーカウンターの開発により、世界のいかなる地域の緊急時対応や、装置の無い地域でも人体放射能汚染の迅速な調査が可能になる。この試みはこれまでになされていない方法であり、土壌、食品そして人体放射能汚染の食物連鎖の調査をこのひとつの検出器で行える特徴がある。直径76.2mm長さ76.2mmのNaI(T1)シンチレーター検出器を製作し、小型マルチチャンネルアナライザー、ノート型コンピューターからなるポータブルホールボディーカウンターの開発に取り組んだ。この検出器を、放射線医学総合研究所のCs-137人体ファントムおよびI-131模擬甲状腺ファントムを利用して、校正した。国内機関におけるCs-137全身量測定の相互比較の結果、バイアスは10%以内と良好であった。ビキニ水爆により汚染したロンゲラップ島の再建工事に従事する労働者、チェルノブイリ原発事故で汚染したベラルーシ・ホイニキライオンの甲状腺ガンになった住民、ロシア・チェリャビンスクの原爆プルトニウム製造施設マヤーク周辺核汚染地に暮らす住民等の体内放射能測定を実施し、本測定システムの試験を行なった。これらにより汚染地のバックグラウンドスペクトルの差し引きなど重要な方法を確立できた。地表、食品などの環境核汚染密度も、本器で測定でき迅速にその場解析ができることを実証した。これらにより、汚染地に暮らす住民へ結果を効果的に知らせることも可能となり、当初の目的を達成できた。
著者
藤本 紗央里
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は、乳腺の発達・乳房の形態(サイズ)・新生児の哺乳状態・母乳分泌量との関連を明らかにし、より包括的なデータに基づいた個別的な母乳育児支援に役立てることである。平成19年度の計画はデータ収集および分析、研究の総括であり、次のことが明らかになった。対象は、正常な経過をたどっている妊婦21名(初産婦、1経産婦、2経産婦、各7名)であった。妊娠期は4ヶ月、7か月、10か月、産褥期は0日〜4日までと1か月健診時に、乳腺組織の厚さを超音波診断装置にて測定した。同時に乳房のサイズを測定し、トップバストとアンダーバストの差を算出した。分析にはそれぞれ妊娠4ケ月の値からの変化率を用いた。母乳分泌量は、1日1回哺乳量(授乳前後の新生児の体重差)を測定した。乳腺組織の厚さの変化率(乳腺変化率)を平均すると、妊娠10ヶ月までに28%増加し、産後0日は42%、産後4日は92%となり、産後1ケ月は78%となった。また、乳腺変化率は、全ての時期で、2経産婦がもっとも大きく、初産婦がもっとも小さかった。乳腺の発達と乳房の形態について関係性をみると、全ての時期で、乳腺変化率と乳房サイズ変化率に有意な相関は認められなかった。乳腺の発達と新生児の哺乳状態では、産後3日、4日の乳腺変化率と、産後1日の授乳回数に有意な正の相関が認められた。乳腺の発達と母乳分泌量では、妊娠4ヶ月、および産後0日から産後1日にかけての乳腺変化率と、産後3日の母乳分泌量に有意な正の相関が認められた。また、妊娠4ヶ月、および産後0日から産後4日にかけての乳腺変化率と、産後4日の母乳分泌量にも有意な正の相関が認められた。以上より、乳房の外観から乳腺組織の発達を判断することは難しく、乳腺組織の発達の測定は、個別的な母乳育児支援を行うために有用であると考えられた。
著者
大瀧 慈 神田 隆至 藤越 康祝 佐藤 健一 越智 義道
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

1)SIRによる有効射影縮約空間の次元選択のための統計規準の構築正準判別関数法において使われているモデル選択基準を基に、SIRでのEDR空間の次元の推定のための統計的選択基準を構築し、数値実験によりその性能を検証した。(シンポジューム「多次元データ構造の探索」において発表、現在論文投稿準備中)2)SIRアルゴリズムの改良回帰関係が対称的構造を伴う有効射影方向に対して、SIRのオリジナル版のアルゴリズムが上手く働かない問題に対して、主要点解析法を組み込みその性能の向上を試みた。(Symposium on"Statistics,Combinatorics and Related Areas",Bombay(India),2000にて発表、現在投稿準備中)3)B-スプライン法による散布図平滑化アルゴリムの改良B-スプラインの基底関数の結節点の配置を調整することで、スプライン曲線モデルの適合度を向上させるように平滑化アルゴリズムの改良を行った。(現在、論文投稿中)。4)低次多項式によるパラメトリックモデルとB-スプラインモデルによるノンパラメトリックモデルの選択における統計的規準の構築(現在、投稿準備中)5)ノンパラメトリック回帰モデルによる一戸建て住宅データ解析(広島女学院大学生活科学部紀要,2000にて論文を掲載済)6)ノンパラメトリック回帰モデルによる日本の市区町村別肺がん死亡危険度データの解析(Jpn J Clinical Oncology,2000に論文を掲載済)
著者
小林 亮 石黒 章夫
出版者
広島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

生物界の2大勢力、脊椎動物(魚類以外)と節足動物が採用している移動手段である脚式ロコモーションについて、力学の視点および進化の視点から研究を行った。進化の過程で、一度脚を得たらその後は減っていく一方に見える。節足動物の中では例外的に高速で走行することができ、速度に応じて使用脚数を変えるスナガニに着目し、数理モデルを用いて解析することで、脚数減少の理由付けを与えた。同時に進化の過程における脚数の減少に対する一応の解釈を得た。また、動物の運動と制御を解析するための記述法として、ダイナミックフログラフというプラットフォームを提案した。
著者
杉山 政則 野田 正文
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

歯周病の主な原因菌はPorpyromonas gingivalisであり、本菌は毒素ジンジパインをくることで歯周組織を破壊する。予備的実験の結果, Aepergillus oryzae S-03株を脱脂大豆を用いて個体培養すると, 「毒素ジンジパイン」に対する阻害物質を産生することを発見した。 この度の本研究を通じて, 脱脂大豆を用いてA. oryzae S-03を培養し得られた麹由来のジンジパイン阻害剤の分子量は, 3, 000~10,000であり, クロロホルムや酢酸エチルには溶解しないが, 水には可溶であった。また, 100℃, 10 minの熱処理でも全く阻害活性は失われなかった。
著者
川野 徳幸 原田 浩徳 大瀧 慈 佐藤 健一 星 正治 小池 聖一 平林 今日子
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

①セミパラチンスク核実験場近郊住民を対象に、アンケート調査・証言収集調査を実施した。4年間で計597件のアンケートを回収。②朝日新聞・読売新聞実施の被爆実態アンケート調査の結果を援用し、原爆被爆者の「核なき世界」以外の「思い」の一端、「ヒロシマ」というアイデンティティ、被爆体験継承の可能性、を考察した。③被爆証言を用い、経時的に観測されたテキストデータの特徴を、時間を考慮して視覚化する方法を提案した。これは、業績に示すように国際学会において、Best paper Awardを受賞。④オーラルヒストリーを編集し、『チェルノブイリ・旧プリピャチ住民へのインタビュー記録(第二報)』を発行した。
著者
三浦 郁夫
出版者
広島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

遺伝的にオスとメスを決める性決定の仕組みには、大きく2つが存在する。哺乳類に代表されるXX/XY型と鳥類に代表されるZZ/ZW型である。近年、2つのタイプは相互変換が可能であることがわかってきた。我が国に生息するツチガエルは2つのタイプが地域集団に別々に存在しており、性決定機構変換の仕組みを解明する上で、最適な研究材料と言える。本研究では、2つのタイプが接触した近畿地方において、性決定の仕組みがZW型に収束した集団を発見し、その変換の遺伝学的、進化学的仕組みを明らかにした。その際、既に遺伝子退化が始まっていたW染色体がX染色体と入れ替わり、新しいW染色体として若返る現象も明らかにした。
著者
富川 光
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

中国地方には海峡や大地質構造線のような大きな地理的障壁がないにもかかわらず,多くの生物種で遺伝的・形態的な分化が集中して生じている.本研究では,移動分散能力が低く,生物地理学的研究材料として最適であるヨコエビ類,ヒル類,マイマイ類を材料として,分子系統解析・形態解析・飼育実験を行い,中国地方の生物地理学的重要性を検証した.
著者
清水 真木
出版者
広島大学
雑誌
広島大学総合科学部紀要. III, 人間文化研究 (ISSN:09187782)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.65-94, 2002-12-25

Die von Derrida 1972 vorgelegte Frage nach dem Sinn von einem ratselhaften Fragment 'ich habe raeinen Regenschirm vergessen', das Nietzsche im Herbst 1881 in ein seiner Notizbiicher eingeschrieben hat, ist zugleich die nach dem Grundcharakter des gesamten Diskurses von Nietzsche. Nietzsche halt (gleich wie Freud) das Vergessen als etwas Positives, dessen primare Bedeutung aber im 'Uberwinden' oder im 'Fertigwerden' liegt; und was der gesunde Mensch vergiBt, ist nichts anderes als das, was Nietzsche als (ebenso intellektuelle wie leibliche) 'Krankheit' bezeichnet, dessen Zeichen der von Nietzsche (wohl in Genua) vergessene Regenschirm sein muB. Dass der Regenschirm fur Nietzsche ein Zeichen der Krankheit ist, womit er fertig wurde oder wenigstens fertig zu werden wunschte, kann man es in bezug nicht nur auf seine Kondition, sondern auch auf sein Denken rnit dem Biographischen parallel bestatigen. In jenem Sommer hatte er zum erstenmal den Begriff der 'ewigen Wiederkunft des Gleichen' fur sich explizit dargestellt, eine experimentalphilosophische Hypothese und Probierstein, womit man gesundste und stiirkste Menschen aussieben soil: wenn fur Nietzsche 'seinen Regesnschirm vergessen' 'mit seiner Krankheit fertig werden' heisst, wiirde doch seine Kondition es ihm nicht erlauben; und das Fragment (und sein gesamter Diskurs) konnte man als ein Ausdruck der freudigen Hoffnung auf die zu kommende leibliche 'Genseung' verstehen.
著者
渡部 倫子
出版者
広島大学
雑誌
広島大学大学院教育学研究科紀要. 第二部, 文化教育開発関連領域 (ISSN:13465554)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.175-183, 2004-03-28

This purpose of present study was to develop an evaluation scale in order to study how native speakers evaluate the speech and behavior of Japanese learners. To confirm the reliability and the validity of this scale, I carried out a questionnaire survey by viewing how 83 native speakers responded these items after they saw a videotape recording of a learner's free conversation with a native speaker. The questionnaires contain of 55 items (34 items for learners' competence evaluated by native speakers and 21 items for overall evaluation) were selected from the former related studies and the result of follow-up interview to 50 native speakers. In this analysis, 5 factors for learners' competence evaluated by native speakers and 3 factors for overall evaluation were extracted from the factor analysis first. The reliability of the scale was confirmed by the Good-Poor analysis and Cronbach's coefficient alpha. Furthermore, I propose the hypothesis of causal relation model of native speakers' evaluation based on Peason's product-moment correlation coefficient and the multiple regression analysis. As a result, the reliability and the validity of the scale are proved. Arid from my hypothesis of the causal relation model of native speakers' evaluation, it was found that 1) 'Expressiveness', 'interlocution competence', 'Listener-friendliness and comprehensibility' and 'vocabulary and expression' influence the evaluation of 'Japanese oral proficiency'. 2) 'Communication strategies' influences the evaluation of 'approachability'. 3) 'Communication strategies' and 'expressiveness' influence the evaluation of 'positive attitude'.
著者
長沼 毅
出版者
広島大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

ハオリムシ(有鬚動物)は、後生動物にも関わらず口・腸・肛門といった消化器官を欠き、自ら食べることを放棄した生物である。その代わり、トロフォソーム(栄養体)という組織にイオウ酸化細菌を共生させている。本研究ではハオリムシの体内細菌(共生細菌かどうかは調査中)の多様性について遺伝子からの解析を行った。ハオリムシの採取は潜水調査船「しんかい2000」を用いて行った。相模湾の初島沖メタン湧水域(水深1170m)に生息するハオリムシ(Lamellibrachia sp.)とその周辺の堆積物を採取した。ハオリムシのトロフォソーム内容物と堆積物よりそれぞれDNAを抽出し、PCRにより16S rDNAクローン・ライブラリー(>110株)を作成し、塩基配列解析を行った。この結果、ハオリムシ体内の微生物相からRhodobacter (硫黄酸化細菌)やEnterobacter(腸内細菌科に属しメタン酸化細菌に近縁)といった化学合成細菌を含む複数種(>6種)の存在が確認された。これらの細菌は、ハオリムシのトロフォソーム内でmicrobial consortiumを構成し、メタンや硫化水素といった数種類の化学物質を利用した代謝経路により、宿主ハオリムシに有機栄養を供給していると考えられる。また、ハオリムシ体内細菌相と周辺の堆積物中の細菌相には、類似性のあることもわかった。今まで、ハオリムシの精子や卵から共生細菌が見つかっていないことや、ハオリムシは浮遊生活をおくる幼生初期段階には口や腸を一時的に持つことなどから、共生細菌は周囲の環境中から体内に取り込まれた可能性がある。しかし、今回シーケンスによって得られたハオリムシ体内細菌相と堆積物中の細菌相では構成種の存在比率が異なることから、比較的共生しやすい細菌とそうでない細菌がいると思われる。
著者
喜多村 和之 大膳 司 安原 義仁 手塚 武彦 潮木 守一
出版者
広島大学
雑誌
海外学術研究
巻号頁・発行日
1987

アメリカ合衆国:アメリカ合衆国の高等教育機関の設置認可は、従来は大学の自由設立の原則にもとづき、その認可機関たる州政府の関与はゆるやかで、認可の基準や手続きも簡素であったが、近年では学位の乱造の防止や消費者保護の見地から、州政府の関与の度合いもつよまり、規制が厳格化される傾向にある。いくつかの州では設置認可基準の厳格化や法制度の整備、さらには新設大学の視察・監督の強化が進行しつつある。また、アメリカ合衆国においてはすでに1930年代より民間の基準協会が一定の質的基準に到達した大学のみを会員校としてみとめ、一定期間の実地調査や事後審査にもとづいて大学の質的向上をはかる基準認定活動(Accreditation)を行なっている。連邦政府や州政府は、基準協会の認定をうけた会員校のみに公費援助の受給資格を認めており、このことが更には大学内部に自己点検と自己改善を刺激する源泉ともなっている。連合王国:イギリス高等教育の水準維持方式にはチャータリング方式とCNAA方式の2つがあり、前者は自治権を有する大学セクターにおいて、また後者はパブリック・セクターにおいて採られているものである。これらのうちCNAA方式は1964年に始まって以来20有余年間、パブリック・セクター高等教育の水準の維持・向上に大きな役割を果たしてきた。しかし最近では、形式化・官僚化の弊もみられるようになり、その改革が論議されるようになってきた。本研究ではCNAA方式によるパブリック・セクター高等教育水準維持方式の実際(とくにコース認定の手順)とその問題点および改革の基本方向について現地調査に基づき、具体的に解明した。西ドイツ:大学の設置主体はほとんどが州政府であり、私立大学の存在は例外的である。私立大学としては、従来、教会系の大学が若干存在するにすぎず、その設置根拠は、法的に明確になっていなかった。しかしながら、1976年に「大学大綱法(Hochschulrahmengesetz)」が制定されたことにより、州立大学と同等の内容を有する私立大学については、州政府により国家による認可が与えられることとなり、そのために必要な規程が、州の大学法で定められることとなった。現実に州政府が私立大学の設置認可を行うかどうか決定する際に、最も大きなウエイトを占めるものは財政状況である。西ドイツで現在最も注目されている私立大学であるヴィッテン/ヘアデッケ大学の設置認可に当たっては、所管の州であるノルトライン・ヴェストファレン州学術研究省は、最低5年間大学を運営していくに十分な資金を有しているかという点から審査した。また、認可後も、毎年その後5年間の財政計画を提出させ審査させている。しかしながら、同大学の財政状況は厳しく、一部を除き学部の大半をバーデン・ヴュルテンブルク州に移転するとともに、授業料を徴収することを計画している。フランス:ローラン・シュヴァルフ教授を委員長とする全国評価委員会(CNE)を政府レベルで設置し、既存大学の評価の作業に着手した。評価の方法に関しては、「大学の作成資料」「運用の指標12項目」「指標」の具体的項目が判明した。残された課題として、この委員会の活動が各大学の評価を一巡すればそれで終了するのか、恒常的大学評価機関として存続するのか、またその評価の結果が評価を受けた大学にどのような形でどの様な方法による改善ないし効果をもたらしたのか、さらにはCNEの評価活動が国の高等教育行政にどのようなフィード・バックするのか、等が残されている。
著者
今井 勝喜
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

数保存的な性質を持つセル・オートマトンは物理シミュレーションなどに広く使われているにも関わらず、その性質を計算能力と規則のプログラミングの見地から研究する試みはあまり多くなかった。本研究では、1次元2近傍の保存的セル・オートマトンの万能性を示し、1次元3近傍の場合に可逆性と保存性の両方を持つセル・オートマトンの規則の設計手法を提案した。さらに、不均一な近傍における保存的セル・オートマトンの実装を可能にするため、ある種の保存的セル・オートマトンを容易に設計することができる分割セル・オートマトンを準周期タイル上のセル・オートマトンに実装する方法を示した。