著者
森川 洋 磯田 則彦
出版者
広島大学
雑誌
地誌研年報 (ISSN:09155449)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.93-110, 1996-03

<シンポジウム特集> 地誌学とエリアスタディ : 現状と課題
著者
星 正治 山本 政儀 坂口 綾 大瀧 慈 岡本 哲治 川野 徳幸 豊田 新 今中 哲二 遠藤 暁 木村 昭郎 片山 博昭 ズマジーロフ カシム ステパネンコ ヴァレリー シンカレフ セルゲイ 武市 宣雄 野宗 義博
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

放射線の危険度(リスク)はほぼ広島・長崎の被ばく者の調査を元に決められてきた。そして国際放射線防護委員会(ICRP)での議論を経て放射線障害防止法で規定され、被ばくの限度を定めてきた。原爆の放射線は一瞬の被ばくである。セミパラチンスクやウラン鉱山の被曝は長時間被曝である。そのリスクは異なっていると考えられ本研究を推進した。内容は線量評価と共同研究によるリスク評価である。測定や調査は以下である。1.土壌中のセシウムやプルトニウム、2.煉瓦による被曝線量、3.歯から被曝線量、4.血液の染色体異常、5.聞き取り調査による心理的影響、6.データベースの整備とリスクなどであり、被爆の実態を解明した。
著者
岩崎 克己
出版者
広島大学
雑誌
広島外国語教育研究 (ISSN:13470892)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.23-37, 1999-03-31
被引用文献数
1

In order to make up for insufficient learning conditions in non-English foreign language courses at the university level, I have developed an automatic evaluation drill system which functions via WWW. Freshmen are expected to access their assignments from terminals in laboratories on campus. The device for the automatic evaluation is based on a CGI program written with Peri. The purpose of this paper is to describe the general idea of this system. I also refer to related problems which should be solved in the near future. This drill system is designed for foreign language teachers with no special expertise in computers or programming languages. So, teachers can easily input exercise data and make their own on-line drills suitable for their classes. The results are easily recorded and processed with the help of data processing software such as Microsoft Excel. This on-line drill system is teacher-friendly. Instructors can make and manage a large number of grammar drills and word and idiom drills with diverse educational purposes for various levels of students. Additionally, teachers are freed from having to do routine correction work, which normally would require a great deal of energy and time. This system is also learner-friendly. By virtue of automatic evaluation mechanisms, students get immediate feedback on their own learning activities, namely the answers and explanations. They can write and send directly their comments on drills or their questions to their teachers. With the help of such on-line drills, teachers can shift most grammar drills and word and idiom drills from classroom to the homework assignment, so they can concentrate during classes more on communicative activities and authentic tasks which are only possible within the classes.
著者
森 楙 七木田 敦 青井 倫子 廿日出 里美
出版者
広島大学
雑誌
広島大学教育学部紀要. 第一部, 教育学 (ISSN:09198660)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.181-186, 1992-03-27

本研究の目的は, 行事場面における保育者の行動特性を組織的観察法を用いて明らかにすることにあった。結果から, 次の3点が明らかとなった。(1)自由遊び場面に比較して, 行事場面では保育者の働きかけは「支配的」になりやすく, 幼児の「依存的」な反応も多くなる。(2)保育形態として設定保育を取り入れている園は, 自由保育を取り入れている園よりも行事場面ではより「支配的」になりやすい。(3)行事場面にも, 幼児の創意工夫が生かされるような保育者の配慮があれば幼児の自立性が出てくるので, 行事の内容及び進め方を工夫する必要がある。行事の教育的意義を保育に生かすために, 親との提携は必要不可欠である。そのため親の行事に対する考え方を明らかにすることは, 従来の幼稚園・保育所主導の行事を再考するうえで有効であると考えられる。今後, この点を実証的に検討していく予定である。The purpose of this study was to analyze the mutual interactions between teachers and children in annual events activities of nursery school (y#ochien) comparing with play activities.A systematic observation method was adopted in this research. The authors especially devised two kinds of observation categories to check (1) active behaviors of a teacher on young children, (2) responsive behaviors of the teacher to their active behaviors. Annual events, including with "the short trip", "Onigiri (rice ball) party", "Mochitsuki (rice-cake making)", "Yakiimo (baked sweet potatoes)", and "presentation of singing songs, dancing, and operetta. etc.", were conducted to observe the behaviors of the teacher and children.The following are the main results;1. Compared with play activities, the teacher's behaviors were inclined to directive in events activities. In some events activities that had less strict in schedule, the teachers behaviors were inclined to supportive.2. Supportive behaviors of teacher, such as praise, suggestion, approval, etc, fostered the independent, supportive behaviors and active interactions among children in events activities.3. Some modifications of the content of events activities, such as less restricted environment and more freedom in schedule, will draw out and develop children's independent and spontaneous behaviors.
著者
大江 和彦
出版者
広島大学
雑誌
中等教育研究紀要 (ISSN:09167919)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.67-72, 2000-03-18

学習指導要領の改変に伴う授業時間数減少の中で, 教材の内容精選を効果的・合理的に行うことは, 地歴科だけではなく, どの教科においても課題であるといえる。この課題を克服するためには, 新たな視点からの教材開発が必要と考える。現代社会に生き, 未来を創造してゆく生徒に, 画一的でない, 柔軟性のある思考を可能にさせる授業づくりを課題とし, 日本歴史の既成的時代区分の批判的吟味を通じて, 日本史A前近代史における主題的学習の分野に絞り, 海の時代的役割からみた東アジア交流史の教材構成案を, 1つの視点として提示したい。
著者
張 一平
出版者
広島大学
雑誌
Memoirs of the Faculty of Integrated Arts and Sciences, Hiroshima University. IV, Science reports : studies of fundamental and environmental sciences (ISSN:13408364)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.247-249, 1995-12-28

都市化の進展に伴う人間活動の増大や建築物の増加は,従来の自然的環境を変化させ,いわゆる都市気候の形成をもたらした。現代の都市では都市総表面積の大部分が人工建築物によって占められている。これは道路面(舗装された地表面),壁面および屋上面で構成されるが,都心域では道路面が建築物によって日陰になりやすいのに対して,屋上面は日中ほぼ常時日射を受けることから,屋上面は都市化によって現れた新たな受熱面とみなされる。また,都市を覆っている大気層を屋上面付近と地表面との間の気層(都市キャノピー層)とその上方(都市境界層)とに分けて扱う必要性が,Oke(1976)によって概念的ではあるが指摘されている。このように都市境界層と都市キャノピー層の境界付近に存在する屋上面は,地表面とは別個に上空における大気との熱の授受や空気の運動に対して影響を与え,都市気候の立体構造や都市ヒートアイランドの形成に重要な役割を果たしていると考えられる。本研究では都市気候の立体構造やヒートアイランドの形成要因を解明するために,上述のように重要であるにも関わらず観測事例の少なかった屋上面を対象として,そこでの熱収支特性と大気の成層状態について観測を行い,都市気候の立体構造に与える屋上面の役割を明らかにすることを目的とする。第1章(序論)では既存の研究をレビューして都市気候研究の推移および研究の現状を述べ,そのことを通して都市気候研究に関する問題点の所在を明確にし,上にのべた本研究の意義および目的を提示する。本研究では都市大気の鉛直構造や都市気候に対する屋上面の役割を把握するために,広島大学東千田キャンパス旧総合科学部の建物における屋上面・壁面・地表面の温度および同屋上面上と都市近郊草地において行った放射収支・熱収支の観測資料,ならびに広島市市街地を対象として多点同時に行った係留気球による気温と風速の鉛直観測資料を用いた。第2章では本研究で行ったこのような観測の方法と解析手順,ならびに考察を行うのに必要な物理的基礎を述べる。第3章では広島市市街地における大気の鉛直構造に言及した上で,屋上面上(都市境界層下部)と地表面付近(都市キャノピー層)の気層における温度・風速の鉛直分布の差異について考察する。日中における屋上面上・地表面上ともに市街地の方が海岸部や内陸部郊外の気温とくらべて高い。つまり,屋上面上の気温にも地上気温と同様に都市内外の差異(ヒートアイランド)が存在する。屋上面上の気温の鉛直分布は高度の対数に対して直線的な分布をしているが,日中における風速の鉛直分布は高度の対数の直線分布から外れる。このような点から,屋上面上の大気の成層状態や乱流特性などは,その日変化も含めて地表面とは異なると考えられる。さらに日中には屋上面の表面温度は地表面温度よりも高いこと,ならびに屋上面上3mの気温はそれとほぼ同高度の地上20mあるいは地上3mの気温と比べて日中常に高いことから,屋上面直上においては周囲の大気や地表付近と比べてより高温な気塊が形成されていると考えられる。また,屋上面上の高度1mにおける気温は日中に海風の風上側から風下側へ向かって低下し,屋上面上3mでは逆に風上側から風下側に向かって昇温している。このような屋上面上における気層の状態を明らかにするためには,屋上面上における放射収支と熱収支および大気の成層状態,乱流特性などの考察が必要である。そこで第4章では屋上面と近郊の草地面において夏季と冬季に行った熱収支観測の資料を用い,屋上面の熱収支特性およびその季節による違いを草地面との比較から検討する。日射量がほぼ等しい場合であっても,草地面に比べて屋上面の方が日の出後の加熱による表面温度の上昇が著しく,日中には上向きの長波放射量も大きい。また,有効放射量は日中において屋上面の方が大きく,正味放射量は屋上面の方が小さくなっており,この特徴は夏季に顕著となる。アルベドは屋上面の方が草地面に比べて夏季・冬季ともに小さい。屋上面は草地面に比べて加熱・冷却の影響を強く受け,屋上面の表面温度は午前中に急速に上昇し,午後から夜間にかけての降下量も大きい。しかし,屋上面付近の気層は,高温になっている屋上面からの長波放射を受けるため,草地面上の気層と比べて午後以降における温度の降下が緩くなり,高温な状態を維持する。このことが都市におけるヒートアイランドの形成要因の1つと考えられる。さらに,屋上面において建築物内部から出入りする顕熱フラックスは草地面において地中から出入りする顕熱フラックスに比べて日中・夜間ともに大きく,それは冬季よりも夏季に顕著である。
著者
村澤 昌崇 羽田 貴史 阿曽沼 明裕 白川 優治 藤墳 智一 立石 慎治 安部 保海 堀田 泰司 大場 淳 渡邉 聡
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

今年度は以下の研究を進展させた。①大学組織に関する基礎研究の一環として、昨年度に引き続き、Bess&DeeのUnderstanding College and University Organizationの翻訳勉強会を進めた。②所属組織保有の過去の調査データをマージして二次分析に生かすための検討を行った。併せて東洋経済新報社刊『大学四季報』のデータを購入し、東洋経済新報社とのコラボレーションにより、大学の外形特性と生産性・競争的資金獲得との関係に関する計量分析を行い、2018年2月2日RIHE公開セミナーにおいてその成果を報告した。③方法論の見直し・新手法の適用可能性を検討し、その成果を分担研究者との連名で高等教育学会編『高等教育研究』の依頼論文(2017年6月刊行)、研究協力者との連名でディスカッションペーパーシリーズ(広島大学高等教育研究開発センター刊)として刊行した。④研究分担者により、大学の機能最適化に関する数学モデルで用いられる機能分化指数を用い,カリフォルニア及びニューヨークの大学群の機能の経年変化の分析を行い,UC Berkeley 公共政策大学院高等教育研究センターのリサーチペーパーとして発表した。⑤研究分担者により、大学組織の基本単位である学部に着目し,特に改組を行った人文社会系学部を取りあげ,当該学部の教員構成を分析した。その成果は、2017年度の日本高等教育学会にて報告された。⑥研究分担者により、シンガポールの高等教育の将来像を示す「SkillsFuture」政策およびシンガポール工科大学(SIM)の過去10年の発展の経緯と今後の戦略についての情報収集を行った。さらに、フランスにおける大学組織の在り方や統合・連携等についての調査研究を行い、大学の統合・連携の進展が進行しつつあり、全ての大学が統合又は地域毎に連携しなければならないことが明らかになった。
著者
丸山 文裕 両角 亜希子 福留 東土 小林 雅之 秦 由美子 藤村 正司 大場 淳
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

大学へのファンディングと大学経営管理改革との関係を検討するのが本研究の目的である。平成29年度は、一つには、日本において大学へのファンディングの方法の変化が、大学での研究生産性に及ぼす影響を考察した。大学へのファンディングは、国立大学への運営費交付金など基盤的経費の削減と、他方科学研究費補助金などの競争的資金の増加にシフトしているが、それが研究の生産性にマイナスの効果を持つことを、専門分野の異なる全国の大学の研究者にアンケート調査することによって得られたデータにより証明した。また平成29年秋の参議院選挙まえに突如争点となった自民党や有識者会議「人生100年時代構想会議」等が主張する教育無償化について、それが高等教育機関の経営管理に対する影響も含め、検討した。教育無償化案は、大学進学者や大学経営にポジティブな影響をもたらすものと推測されるが、一方で政府財政の立て直しや、大学に配分される研究費にとって、必ずしもポジティブな効果をもたらさないことを論じた。消費税増税分の一部を無償化に回すことで、国際公約となっている公的債務削減が遅れ、政府財政の健全化に支障をきたすこと。また文教予算のうち高等教育無償化を推進するため、日本学生支援機構への奨学金事業費が増加するものの、その分国立大学運営費交付金および私立大学への経常費補助金が削減される可能性があること、の2つが危惧される。以上2つの研究成果は、論文として平成29年度に公表した。

2 0 0 0 OA 書体と文体

著者
内山 和也
出版者
広島大学
雑誌
広島大学大学院教育学研究科紀要. 第二部, 文化教育開発関連領域 (ISSN:13465554)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.225-233, 2002-02-28

"SYOTAI" is a style as "BUNTAI" is a style.However, "SYOTAI" has not been dealt with appropriately in stylistics.One of the reasons is that the traditional stylistic theory and the construction of "SYOTAI" have been the same model.Stylistics of e-text provides new comprehension about "SYOTAI" / "BUNTAI" / stylistics by observing the moment when letters bearing "SYOTAI" are read.
著者
都築 政起 水谷 誠 伊藤 愼一 小野 珠乙
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

ヒメウズラ(Excalfactoria chinensis)を鳥類最小の実験動物として確立するためのデータ収集を、発生・発生工学的ならびに遺伝学的見地から遂行し、以下の成果を得た。1. 体表各部および骨格系の発達程度を全射卵期間に渡って調査し、それぞれ39および15ステージからなる「ヒメウズラ胚の正常発生における発生段階表」を完成した。2.酵素・タンパク質の多型を検出するための、従来よりも簡便な電気泳動方法の検討を行い、23種類の酵素およびタンパク質を検出するための泳動条件を確立した。また、7種の酵素・タンパク質について、その遺伝様式を明らかにした。3.胚盤葉細胞注入によるキメラ作成を行った。ドナーにヒメウズラを、レシピエントにウズラを用いた場合と、その逆に、ドナーにウズラを、レシピエントにヒメウズラを用いた場合の2種類の異属間移植を行い、いずれの場合もキメラ作出に成功した。しかしながら、後代検定の結果、このキメラの子孫にはドナー由来の形質をもつ個体は出現せず、今回得られたキメラは生殖細胞キメラにはなっていない可能性が示唆された。4.ミトコンドリアDNAのシトクロムb領域に対し、PCR-RFLP解析を行って切断型多型を検出すると共に、シークエンシングを行って、シトクロムb遺伝子の全塩基配列を決定した。5.ニワトリのマイクロサテライトDNA増幅用プライマーセットの内、約20%のものがヒメウズラにも適用可能であることが明らかになった。この事実から、今後、ヒメウズラのゲノムマッピングのためにはヒメウズラ専用のプライマーセットを開発する必要があることが示された。6.各種植物レクチンあるいはウイルス性凝集素により識別される6種の赤血球凝集原を発見し、それぞれの遺伝様式を明らかにした。以上の成果から、ヒメウズラの実験動物化のための第一段階は完遂されたと考えられる。
著者
片岡 勝子 洲崎 悦子 安嶋 紀昭 馬場 悠男
出版者
広島大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2004

江戸時代に医学教育研究のために10体余の木製人体骨格模型(木骨)が制作された。現存するのは星野木骨(身幹儀,1792年制作),各務木骨(1810年頃),奥田木骨2体(1820年頃),及び各務小木骨である。私たちは科研費により前4者と関連事項について調査研究した。真骨は全て刑死人のものであり,全ての木骨で舌骨が欠損している。星野木骨は医師,星野良悦が工人,原田孝次に制作させた等身大の成人男性骨格模型で,全ての模骨が揃っている。各骨は原則として別々に作られ,〓と〓孔で結合できる。骨は薄い茶色に,軟骨は白く塗られている。頭蓋冠は切っていないが,X線撮影及び内視鏡観察により,頭蓋内の構造も作られ,ほとんどが正確に頭蓋内外を連絡していた。各務木骨は医師,各務文献が田中某に作らせた等身大の成人男性骨格であるが,かなりの骨が欠損している。各骨は〓と〓孔で連結する。頭蓋は木片を繋ぎ合わせて作り,表面に和紙を張って薄茶色に彩色している。頭蓋冠は斜めに切られ,頭蓋内構造を観察できる。奥田木骨2体は同じ骨をモデルとし,奥田万里が細工師・池内某(またはその工房)に彫らせた等身大の成人女性骨格である。桧材を精巧に彫って形作り,一部の軟骨のみを白または褐色に彩色している。頭蓋は頭蓋冠を水平断し,内部構造が見える。奥田木骨は椅座位で展示できるように専用の台座や支柱があり,胸郭や骨盤は一体化し,組み立ての装具に工夫が見られる。各部の精粗については,それぞれの木骨で長短があるが,当時の日本にあった解剖学書の図に比べて極めて正確である。木骨は人骨を座右において観察できなかった江戸時代の医師が作らせた我国特有の医学資料で,正確・精巧に作られており,当時の医師の探究心,工人の観察眼の確かさ,技術の高さを伝える貴重な資料である。
著者
望月 てる代
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究は,食事からのフラボノイド摂取量を求めるために必要な資料として,日常摂取している野菜・果実中のフラボノイド量と加熱による変化を調べることを目的とした。日常摂取することの多い数種類の野菜・果実を試料として,80%メタノールによる抽出,塩酸による加水分解を行ってアグリコンとした後の100%メタノール溶出部分を分析用試料液とした。フラボノイドの分析は,3種類の移動相を使用したグラディエント溶出による高速液体クロマトグラフィーで行った。検出器はダイオードアレイ検出器を使用し,254nmと280nmで測定した。この分析により,以下の結果が得られた。(1)大型のピーマンであるパプリカ中の総フラボノイド量は,果皮色により差異が見られ,黄色果実に最も多く,次いで赤色,橙色の順であった。総フラボノイド量を従来の緑色ピーマンと比較したところ,どの果皮色の果実も緑色ピーマンとの間に有意な差が認められた。(2)数種類の柑橘類中のフラボノイドとしては,ナリンゲニンとヘスペレチンが多く含まれており,いずれの果実においてもこの2種類が総フラボノイド量の約90%を占めていた。ミカン,オレンジのようにじょうのうを含む場合には,特にヘスペレチンの量が多くなっていた。(3)野菜類に含まれる主なフラボノイドは,ケルセチン,ケンフェロール,ルテオリンそしてアピゲニンであった。総フラボノイド量は,種類によってかなり大きな差異が見られた。ゆでる,あるいは電子レンジによる加熱の後,総フラボノイド量は一般に減少する傾向が認められた。
著者
越智 光夫 味八木 茂 亀井 直輔 中佐 智幸
出版者
広島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

偽関節等の難治性骨折はしばしば治療に難渋する。microRNA(miRNA)は様々な生命現象に重要な役割を担っており、疾患の病態にも関与している。本研究は、骨形成を促進するmiRNAを同定し、難治性骨折モデル動物に合成miRNAを磁気ターゲッティングと併用することにより骨癒合を促進することを目的とした。ヒト骨髄間葉系幹細胞(hMSC)を骨分化誘導し、分化前後で発現変動するmiRNAを網羅的に解析し、microRNA-222 (miR-222)を抑制すると骨分化が促進することがわかった。miR-222 inhibitorを、ラット難治性骨折モデルに局所注射したところ、骨形成が促進されていた。