著者
星野 崇宏 繁桝 算男 猪狩 良介 加藤 諒
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究の研究目的はルービン因果モデルの枠組みを拡張し、店舗と消費者、病院と患者、クラスと生徒のような階層性のあるクラスターデータにおける因果効果の異質性や、同一個人でも何らかの要因により介入効果が異なる個人レベルの効果の異質性について統一的なモデル表現を行い、既存手法で生じるバイアスを回避する効率的な推定法を開発することを目的としている。一昨年度に進展した理論研究のうち特にpotential outcome間の同時分布の識別条件とその推定方法についての研究をもとに、研究計画の(1)クラスターあるいは個別ごとの介入の最適化についての研究や、(3)適応的デザインでの解析への応用に直接有用であり、また(5)母集団情報やマクロデータ、代表性のあるデータを利用した補正についての理論研究に注力して研究を行った。さらに、これに関連するシミュレーション研究を大規模に実施した。理論的な研究の成果を海外学会での発表および海外著名誌に論文投稿を行いその一部については採択され、他は現在審査中である、また、応用研究としてレセプトデータ、教育データとマーケティングデータについては(1)と(3)の分野について研究を実施し、応用研究についてはまずは国内外の学会に発表したあと、一部海外雑誌に掲載させ、他にも国内外の査読雑誌に投稿準備中である。特に理論的な研究成果は一昨年度は論文投稿を中心としたため、昨年度は海外学会でも発表を行った。
著者
伊澤 良兼 畝川 美悠紀 滝沢 翼 塚田 直己
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

脳血管障害、血管性認知症の発症には、血液脳関門透過性の亢進が関与することが知られている。当研究は過去に報告した脳血管内皮透過性亢進メカニズムに基づき脳血管障害モデルマウス等を用いてRhoK阻害薬、MLCK阻害薬等によるin vivoでの血管透過性亢進抑制効果、脳浮腫・間質液動態・梗塞体積への影響、神経機能保護効果などを評価する。最終的に、同時進行中であるニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイトをターゲットとした臨床・基礎研究成果とあわせ、血管透過性制御による脳血管障害、脳血管性認知症の新規治療法の確立を目指す。
著者
牛場 潤一
出版者
慶應義塾大学
雑誌
学術変革領域研究(A)
巻号頁・発行日
2020-11-19

本研究計画では、標的脳領域に選択的に作用する次世代型BMI技術を脳卒中後の臨界期に経日的に適用して、機能代償回路の形成をガイダンスすることに挑戦し、機能回復臨界期が外因的に延長・増大できることを明らかにする。また、その過程で安静時機能結合MRIを計測し、傷害脳の回復期に誘導できる可塑的変化量を同定する。また、運動機能スコアへの利得を算出し、脳卒中後の機能回復臨界期における潜在的回復量を明らかにする。
著者
丸山 哲夫 内田 浩 升田 博隆 小野 政徳 BULUN Serdar SCIARRA John J.
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、子宮内膜症および子宮腺筋症の発生・進展における幹細胞の役割を明らかにするために、ヒト内膜細胞を用いた腹膜内膜症モデルマウスの開発を行い、磁性体により内膜症様病変をマウス壁側腹膜の任意の位置に局在させ得る戦略が可能で有ることを示した。同時に、新たに幹細胞標識追跡法を開発することで、組織(病変)再構成過程における幹細胞の振る舞いを検証できるin vivoシステムを構築し得た。さらに、子宮腺筋症の類縁疾患である子宮平滑筋腫の病因メカニズムに幹細胞とWNT/β-Catenin経路が関与することを明らかにした。
著者
新井 誠
出版者
慶應義塾大学
巻号頁・発行日
2005

博士論文
著者
清水 龍瑩
出版者
慶應義塾大学
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.39-78, 1995-04-25

今回のサーベイは. 1991年を境にして,それまでの成長イソフレ期から成熟デフレ期に移った日本経済,そして世界の物価の2倍以上にもなる高物価に浸っている日本経済,のもとで行われた。成熟デフレ経済,内外価格差2倍という経験は,未だ日本人が経験しないものであり,企業経営者は,いま必死になってサーバイバルの方向を探っている。この必死の努力をより明確にするため,今回は特に,成長インフレ期にインタビューを行い,しかもそのときの社長がそのまま経営者の地位についている企業や,長期の不況でやや苦しくなっている企業を選んでインタビューを行った。長期不況期における経営者の考え方,行動を立体的にとらえるためである。この時点で共通している問題は,中間管理者の人件費増と,海外進出によるグローバルな相互依存関係の強化である。<食品・サービス関係>「石井食品」;内外価格差が拡大し,豚肉より安い牛肉があらわれ,従来の生産技術を変えなければならなくなった。単身世帯がふえたため,食品はつくったときより食べるときおいしいのがいい。人事評価としては,このような変化に対応できる人を高く評価する。「すかいら-く」;自分で努力していることに満足しているうちに,いつの間にか競争店と比べて価格が高くなってしまった。既存店の半数を「ガスト」に転換するのは相当不安であったが,品数の絞り込みによる技術生産性向上で好決算になった。お客の満足という条件の下で業績の向上をはかれる店長を高く評価する。「モスフードサービス」;会長自身の「人を仕合せにしたい」という思い入れが少くなったため,安易な出店がなされアメリカ進出は失敗した。円高で仕入価格が相対的に割高になる場合がおきても,そのまますぐ取引を中止することはない。いろいろアドバイスをする。日本人と中国人の考えの違いから中国へは試行錯誤で少しずつ進出する。信頼できる人が現れるまで待つ。ものごとの存在意義を理解し,すぐ行動する,挑戦意欲の高い人を評価する。<アパレル関係>「吉野藤」;問題点は,円高によって,品質のよい輸入品の単価が急落し,売上減になったこと。これに対処するためには,人件費の削減と納期短縮とがある。これからのアパレルは品質より納期が大切。個人で顧客をもっている呉服関係の人間は自分で判断して稼げ。課長には30歳までに,部長には50歳までになれなければ給料を下げる。「いなきや」;商品単価,客数,客1人あたり購買数の減少によって,3年連続の減収・減益。右上りの経済がなくなったので店舗数拡大による売上増は不可能。価格破壊はステープルグッズよりファッショングッズで大きい。小売よりメーカーのほうに情報がある。安易な賃金,人員カットは行わない。ただ複線型賃金体系の導入は考えている。「小杉産業」;3年連続の円高・デフレのため海外進出せざるをえない。空洞化に対して,形態安定技術などの技術革新,シーズン中に追加注文できるクィック・レスポンス・システムの構築が必要。安定したブランドでは,昨年売れたものの7割は今年も売れるし,ブランドごと色調,トーンは安定しているから,売れ筋の予測は大体できる。「しまむら」;買取り仕入れが不可欠。価格破壊という言葉は意味がない。国際相場が正しい価格である。全国展開する場合の品揃えには2つの考え方がある。その地域の需要の全部をとるつもりなら地域性を考えた品揃えが必要であるが,柱だけとるなら地域性は考えなくていい。現在はテレビの影響で東京発のファッションがすべて正しい。パートから上った中年女性は非常に優秀であり,これを店長にしている。<機械・電機関係>「マツダ」;部品メーカーは,前回の円高の時はコスト削減で切り抜けたが,今回は海外進出・グローバル化せざるをえなくなった。自動車メーカーにとっては,これら海外進出した部品メーカーからの調達はそのままコスト削減になる。また多くの車種に共通した部品や,新しい車種にそのまま使える部品を使うことによって,品質が良くて安い部品を調達できる。「TDK」;最大の問題は,3年連続の減収・減益の中での余剰人員。右上りの成長がとまれば主流からはずれる人は多くなる。この人達にどうやって意欲をもたせるかが問題。本社は20人くらいで十分。少数にすれば精鋭になる。中国人は商売の人,日本人は製造の人で肌が合わない。これからは進出先がダメなら屋台ごと設備を他国へ移してしまう"屋台製造業"でいい。「リコー」;現在のマクロ問題は,日本人が誰も経験したことのなかった成熟デフレ時代になったこと,日本のあらゆるものの価格が世界のそれの2倍になったことである。いま規制緩和・輸入拡大が言われているが,そのうちに輸出するものがなくなってしまう。日本は高度工業化社会にならなければならない。中間管理者の余剰人員は,企業グループ内にたえず受け皿をつくり,いつでも出向,出向戻しができるようにする。<金融関係>「秋田銀行」;問題点は,県内人口の減少,県民所得水準の低さ,県内金融機関同士の競争激化。堅実経営に徹し,新金融商品や,中国・ソ連への進出はやっていない。支店長の評価はその人材育成によってみる。部下にジョブローテイションを行い,その後研修センターに出席させ,その能力開発度によって,その上司の育成能力を評価する。「大垣共立銀行」;顧客の信頼をうることが最大の問題。銀行との取引を自慢し,次の子供の代の経営まで頼んでくる顧客がいい。そういう信頼関係から必要な情報が生れてくる。祖父の代から地銀頭取の家であり,地域に密着した地銀の体質が身についている。エブリディバンキングを日本ではじめて行った。ただ地域に密着しただけでは偏るので外部役員の導入が必要。
著者
後藤 一樹
出版者
慶應義塾大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2016-04-22

2017年4月、ハンセン病を患い四国遍路に赴いた経験のある方を対象に、漂泊と定住の観点から生活史の聞き取りを行った。これまでの継続的な調査により、聞き取り対象者は百名以上となり、ビデオカメラに記録した映像民族誌的データの蓄積も膨大なものになった。今年度は、以上の調査データをもとに、遍路や地域住民らそれぞれの物語の四国遍路における交わりのありようを分析する作業を進めた。成果として、約26万字に及ぶ博士論文『〈漂泊〉と〈定住〉の交響史――四国遍路のクロス・ナラティヴ研究』を執筆、慶應義塾大学大学院社会学研究科に提出し、2018年3月に博士(社会学)が授与された。無縁社会化する現代日本において、家庭・職場・地域の共同体から縁切りする社会的プロセスを辿った調査対象者らの共通経験は、四国遍路の領域で対話を通して響き合い、主従関係や役割関係とは無縁の相互扶助関係を構築していた。その動的過程を明らかにした本研究は、共同体の果てでなされる社会関係の創出に関して、新しい知見をもたらすものである。また、調査の際にビデオカメラに記録した四百時間余りの映像を、パソコンのソフトを用いて編集し、分析した。その成果として、映像モノグラフ『四国遍路――人生の交差する道』を制作した。博士論文の一部は、これにもとづいて考察を行ったものである。映像データを論文内に分厚く記述し、分析する手法を編み出した点にも、本研究の意義が認められる。ほかに、過疎地域の生活実態調査と活性化の取り組みとして、千葉県市原市に所在する商店街において十軒の家族にインタビューを実施し、各家族の口述史や現在の生活を調査した。それぞれの物語は「詩(うた)」と「写真」で表現され、各店舗に展示するための準備も進めた。この取り組みの一環として、成果の一部をカルチュラル・タイフーン2017(早稲田大学、2017年6月24日)で発表した。
著者
野村 周平 田淵 貴大 橋爪 真弘 大田 えりか 渋谷 健司 坂元 晴香 鈴木 基 齋藤 英子 米岡 大輔 井上 真奈美 宮田 裕章 西浦 博
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2021-04-01

本研究は、with/postコロナ時代の保健医療政策の課題に対する実証的分析に疾病負荷を活用する我が国で初めての試みである。具体的には、新型コロナウイルス感染症の疾病負荷および関連するリスク要因の寄与割合の推定(将来予測含む)、新型コロナ含む傷病別の疾病負荷の将来シナリオ分析、新型コロナウイルス感染拡大による保健医療ニーズ・保健システムへの影響(健康格差・医療費)の推定を行う。
著者
植田 利久 大村 亮
出版者
慶應義塾大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

プール火炎を対象に,上部から二酸化炭素ハイドレート粉末を落下させ,その消火特性を実験的に検討した.比較対象として,氷,ドライアイスを用いた実験も行った.プール火炎の燃料としては,水よりも沸点の低いメタノール,エタノール,水とぼぼ同等の1-プロパノール,水より高い1-ヘキサノールを対象とした.消火に必要な最小の質量,消火限界質量は,水より沸点の低い燃料では,ドライアイスのほうが二酸化炭素ハイドレートより少なかったが,沸点が同等あるいは高い燃料では,二酸化炭素ハイドレートののほうが少なくなった.これは,沸点の高い燃料においては,水の蒸発が促進し,冷却効果が顕著になったためであると考えられる.
著者
有田 玲子 川島 素子 伊藤 正孝 井上 佐智子 伊藤 正孝 井上 佐智子
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

マイボーム腺機能不全(MGD)はドライアイの主因であり、患者数が多いにもかかわらず有効な治療法が確立されていない。我々は、活性型ビタミンD3がMGDの治療薬になるかどうかを研究の目的とした。動物実験において、活性型ビタミンD3の眼瞼塗布治療が眼球や眼周囲組織、全身臓器における副作用を起こさないこと、MGD動物モデルでMGDの改善を誘導することが明らかとなった。また、臨床応用を行い、MGD患者におけるMGDの病変の改善をきたすことを証明した。活性型ビタミンD3はMGDの治療法となりうることが明らかとなった。
著者
渡辺 茂 伊澤 栄一 藤田 和生
出版者
慶應義塾大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2013-06-28

本研究では3つの項目を検討した。1つは、共感性の動物モデルの確立であった。共感性を2個体間の情動とその一致性によって4分類し,マウスを対象にそれらの可否を検討した。2つめは、共感性の機能と生態因の検討であった。鳥類および霊長類の比較検討によって、協同繁殖と一夫一妻が、共感性進化の生態因であることを示唆した。3つめは、共感性の認知基盤の検討であった。高次共感を霊長類および食肉類で比較検討し、サルおよびイヌの第三者に対する情動評価能力を見出した。これら3項目の研究によって、共感性がヒト以外の動物においても協力性と随伴進化し、高次認知はそれとは独立に進化する可能性を示唆した。
著者
松本 信廣
出版者
慶應義塾大学
雑誌
史学 (ISSN:03869334)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.577-586, 1929-12

第五章 スーズ第二期土器 平印 圓筒 文字 堅牢質の細工 金属 彫り込み土器 テペムーシアン テペ・カジネ 土器 カルデアに於ける金石併用時代の工作 スークナとアイン・タル(アレツプ) スーズ第二期土器の傅播 カルデア及びメソポタミイ シリアとパレスチン 西亞の北方 西亞に於いて使用せられたる種々の岩石及びその起源地
著者
松本 信廣
出版者
慶應義塾大学
雑誌
史学 (ISSN:03869334)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.295-303, 1929-08

第一章 シリア及びメソポタミアの舊石器シリアの新石器第二章 西亞に於ける黒曜石 : 露領アルメニアの鑛脈第三章 カルデア及びスーズ平原の形成第四章 カルデア及びエラムの殖民カルデアスージアンスーズの第一都市スーズの燧石器スージアンの原始文明
著者
鈴木 諒一
出版者
慶應義塾大学
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.1-28, 1970-10
著者
金 恵真
出版者
慶應義塾大学
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.71-79, 1996-10

本稿は,組織が挙げている価値と個人が持っている価値との一致という組織行動論の観点から組織文化をとりあげ,組織文化と人的資源管理施策が従業員の職務態度に及ぼす影響を実証したものである。製造業4社から181名の従業員を対象にした質問紙調査を実施した結果,組織と個人との価値一致は組織コミットメントと転職意志に対して有意な効果を持つことが見出された。さらに,進歩的人的資源管理施策は組織コミットメントと,伝統的人的資源管理施策は転職意志と有意な関係を持つことが説明された。よって,組織独特の価値や規範と,組織メンバー
著者
大沼 晴暉
出版者
慶應義塾大学
雑誌
斯道文庫論集 (ISSN:05597927)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.375-443, 1998-02-28

資料紹介
著者
北郷 実 板野 理 中塚 誠之 松田 祐子 大西 彰 淵本 大一郎
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

膵腫瘍疾患に対する最も治療効果の高い治療法は切除による外科手術であるが、膵臓の外科手術は高侵襲かつ術後合併症の頻度が高いことで知られる。そこで我々は治療効果が高くかつ低侵襲である局所療法として期待される凍結融解壊死療法を膵臓に応用するため、その安全性と有効性を検討し、臨床応用に向けた基礎的エビデンスの創出を目的として実験を行った。ブタを用いた実験により、本手法は開腹または腹腔鏡手技で安全に実施可能であり、有効な膵組織の壊死が得られること、少なくとも膵炎を含めた重篤な合併症を引き起こさないことが示され、実臨床における治療選択肢に応用しうる可能性が示唆された。