著者
藤原 正光 番場 梨彩
出版者
文教大学
雑誌
文教大学教育学部紀要 = Annual report of the Faculty of Education, Bunkyo University (ISSN:03882144)
巻号頁・発行日
no.48, pp.113-125, 2014

幼児期に嫌いであった食物の種類とその理由及びその克服時期と方法を,大学生の幼児期の回想法による調査を行った.同時に,家庭と保育所・幼稚園での食事指導の違いを調査した.結果の分析に際し,性差を考慮した.調査対象者は大学生166名(男性58名,女性108名)であった。主な結果は次の通りである.1)幼児期に嫌いな食べ物は,レバー,セロリ,ピーマン,なす,にんじん等であり,その理由は,味,食感,におい等であった.2)克服時期は、中学時代が最も多くその後減少していたが,女性は男性に比べ大学生になってから克服率が有意に増加していた.3)克服方法は,「食べてみたら美味しかった」「調理法の工夫」「食べる機会の増加」「家族の影響」などが上位を占めていた.幼児期に受けた食育を家庭と保育所・幼稚園を比較しながら検討した.因子分析の結果,いずれの質問項目にも「注意及び指導」と「食べさせる工夫」の因子が抽出された.4)家庭での食育指導の方が有意に高い平均値であり,男児に「注意及び指導」が有意に高く,「食べさせる工夫」については,家庭と保健所・幼稚園の間にも性差にも有意差は示されなかった.
著者
平田 澄子
出版者
文教大学
雑誌
文学部紀要 (ISSN:09145729)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.124-139, 1999-10-01

『丹波与作待夜の小室節』は与作・三吉馬方親子の馬子歌を背景として、再会した家族の情愛や与作と恋人こまんの恋愛が、元禄期上方の歌舞伎狂言と同じような構成のうちに描かれているハッピーエンドの世話浄瑠璃である。近松は歌舞伎の子役の活躍や、自ら彼らを起用した経験を生かして、三吉という個性的な子供の描出に成功したと思われる。
著者
石井 智恵美
出版者
文教大学
雑誌
文教大学教育学部紀要 (ISSN:03882144)
巻号頁・発行日
no.46, pp.151-160, 2012

禅宗寺院において開山忌や様々な行事に際して執り行われる斎座「四ッ頭」は、開山様が居られるが如く厳粛に会食をするというものであり、禅宗の中でも特に臨済宗を中心に伝えられているものである。この儀式が一般にはあまり知られていないのは、参加者は僧侶のみであり、また、長く非公開であったためである。寺院の開創より毎年の開山忌に行われてきたと伝えられているこの儀式は、古式の食事作法を伝えるものとも言われているので、この儀式に用いられる料理と菓子について、江戸時代の料理書を参照しながら料理の内容や成立時期等について考えていく。鎌倉・室町時代に成立したと考えられている料理書はあるが、料理ごとに使用材料等の詳細が記載されるようになるのは江戸時代に入ってからである。
著者
ハードスターク ユージン
出版者
文教大学
雑誌
文学部紀要 (ISSN:09145729)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.71-78, 1990
著者
山本 舞
出版者
文教大学
雑誌
教育研究所紀要 (ISSN:09189122)
巻号頁・発行日
no.15, pp.147-151, 2006

小数という学習において、子どもたちが分かる喜びを感じるための「効果的な算数的活動の導入」について考えることができた。少数だけでなく他の単元においても、同様にして算数的活動を取り入れてみたい。さらに、他の教科も、作業的な活動や人との関わりなどを通して子どもの発想や思いに触れ、分かる喜びを感じるといった応用ができないか、来年度以降の課題としていきたい。
著者
進藤 眸
出版者
文教大学
雑誌
人間科学研究 (ISSN:03882152)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.47-56, 1999-12-20

In the 1st report of successive studies, bibliographies on monistic understanding of the delinquency or the delinquency proneness, are reviewed by focusing on both the approach to basic character traits of delinquents and the approach to their degree of readiness to delinquent behaviors. As for the former approach, Aichhorn's latent delinquency, Friedlander's antisocial character, Glaser's differential identification, and Mizushima's lack of tie with socialized persons, are discussed. As for the later approach, the dimension of deviant personality which is related to the occurrence of delinquent behaviors, and the dimension of the delinquency proneness, by utilizing the MMPI, one of so-called structured personality tests, are also discussed. Through these discussions, I conclude that we should attract attention to following two problems, especially, if we intend to develop differentiating the delinquency or the delinquency proneness.(1)Because of limitations in constructing the measure of the delinquency, it is essential not only to measure the generalized delinquency, but also to make a clinical diagnosis concretely and dynamically concerning the nature of the delinquency.(2)It is necessary to analyze the psychological mechanism under which delinquent behaviors occur, by adding an analytical function to the concept of the delinquency proneness.In solving these two problems, we, at first, need to examine the delinquency proneness from a viewpoint of its developing process, in order to analyze the abovementioned psychological mechanism. Secondarily, We must hold the frame of reference in common for differentiating the delinquency, and follow the same judging process, if we take the correctional treatment into account, and understand the delinquency proneness in connection with it.
著者
亀田 裕見
出版者
文教大学
雑誌
文学部紀要 (ISSN:09145729)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.37-87, 2010-09-15

埼玉県東部における2世代の言語調査によって得られた文法事象の方言分布状態を、言語地図を作成することによって明らかにし、県東部の中での言語境界や近隣県との繋がりを明らかにする。また、世代差を見ることで方言の変化と共通語化の状態を捉えようとするものである
著者
亀田 裕見
出版者
文教大学
雑誌
文学部紀要 (ISSN:09145729)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.1-59, 2010-03-10

埼玉県東部における高年層と中年層の2世代の言語調査によって得られた方言分布より言語地図を作成し、県東部の中での言語境界や近隣県との繋がりを明らかにする。また、世代差を見ることで方言の変化と共通語化の状態を捉えようとするものである。
著者
塩沢 泰子 生田 祐子 Duval Cary A. Ano Koichi Piggin Gabrielle
出版者
文教大学
雑誌
文教大学国際学部紀要 (ISSN:09173072)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.41-58, 2010-07

本研究の目的は、文教大学国際学部が2008 年に設立した外国語学習支援室、Language Garden (LG)について、背景理論、LG の概観、利用者の学習状況調査結果を中心に論じ、英語教育カリキュラムと連携する効果的な自律学習方法を考察することである。言語習得の過程において、対象とする言語を実際に使用する機会(English Reality)の有無が学習成果を大きく左右するため、LG はコミュニケーション手段として英語を使う環境を学習者に提供することを主たる目的として、設立された。同時にLG は授業を補うだけではなく、海外研修や海外ボランティア活動等、学部カリキュラム上のプログラムを補い、統合することに寄与している。LG には習熟度や興味に応じた多様なジャンルの学習教材(書籍、DVD、雑誌、漫画、新聞、ラジオ講座テキスト)に加え、会話を発展させ語彙力を鍛えるゲーム等も設置されている。大型TV スクリーンには常時英語ニュースが流れ、学生の間も英語でのコミュニケーションが原則である。2 名の助手が英語教員とともにLG の運営に関わり、日常的に学生への学習支援や教材の管理を行っている。また学生たちの協力も得て、クリスマスやハロウィーンなどのイベントも定期的に行うなどの雰囲気作りにも配慮している。しかしながら頻繁に利用している学生の数は、ほとんど利用しない学生の数より大幅に少ないことが調査結果から判明した。この背景の原因と学生のニーズを分析しつつ、今後専門カリキュラムとも密接に連動し学習効果を上げていくために、LG での自律学習の単位認定、英語学習ポートフォリオや学習カウンセリングを導入することを提案する。
著者
鎌田 晶子 臼井 信男 吉野 大輔
出版者
文教大学
雑誌
人間科学研究 (ISSN:03882152)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.153-160, 2010-03-01

商品に対する単純接触効果について、二肢強制選択法を用いて実験的に検討した(N = 88)。商品ごとに印象評定を行い(N = 67)、商品の特徴と単純接触効果の関係について検討した。その結果、はさみ、シャープペンシル、トイレットペーパーのような実用品については単純接触効果が認められ、花束のような美的印象や感情が喚起されやすい装飾品には単純接触効果が認められなかった。感情的評価と単純接触効果の生起の関係について考察した。
著者
中村 博一
出版者
文教大学
雑誌
生活科学研究 (ISSN:02852454)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.47-59, 2013-03

消防団は郷土愛護をかかげる義勇の組織とされ、地域防災の要となるボランティアリーダーと認識されている。本稿はある消防団の民族誌的報告であり、10年あまりにわたる参与観察をもとに断片的な語りや記憶をつなぐ試みである。消防団をめぐる4つの「間」から、現代の消防団の位相を浮かび上がらせようとする。地域の期待に応えられない制度的な矛盾や日本社会の変貌が団員の負担を増やす現状を描き出す。
著者
高橋 克已 綾 牧子
出版者
文教大学
雑誌
教育研究所紀要 (ISSN:09189122)
巻号頁・発行日
no.15, pp.43-54, 2006

いわゆる「学級崩壊」の原因を教師の指導力不足に求める考え方はマスメディア等を通じて広く定着し、近年では特に「子どもたちは変化してきているのに、それに対応できないベテラン教師が『学級崩壊』を引き起こす」という原因帰属様式がかなり広まっている。本稿ではそうした原因帰属様式の問題性を考察する。まず「学級崩壊」を取り上げたテレビ番組を時系列で比較分析することによりメディアにおける原因帰属様式の変化を示し、また現職教員に対するアンケート結果からそうした原因帰属様式の広まりを指摘する。次に、ある公的機関による統計資料の結果が、そうした原因帰属様式と矛盾することに着目し、その矛盾を「予言の自己成就」という観点から説明することを試みる。すなわち、「学級崩壊」を起こす危険性のあるクラスはある程度予測可能であり、そうしたクラスを忌避する傾向が教師間に生じ、その結果としてベテラン教師が担当せざるを得ない状況となり、その後実際に「学級崩壊」を引き起こした場合、「予言の自己成就」によってますますそうした原因帰属様式は定着していく、ということである。最後に、この仮説を実証するための若干の実証的根拠を紹介するとともに、その問題性について考察している。
著者
上谷 香陽
出版者
文教大学
雑誌
文教大学国際学部紀要 (ISSN:09173072)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.1-16, 2013-07

This paper considers the relationship between third wave feminism and girl zines through reading Alison Piepmeier's Girl Zines : Making Media, Doing Feminism. According to Piepmeier, girl zines and third wave feminism respond to the same world, and girl zines are mechanism in which third wave feminists articulate theory and create community. Following her study, this paper tries to reveal third wave feminism in and through girl zines. Chapter 1 explains Piepmeider's view on girl's studies and third wave feminism. Chapter 2 locates girl ziens within the history of participatory media of US feminism since 19th century. Chapter 3 examines some characteristics of girl zine's visual style and the concept of fragmented identitiy in order to explain how girl zines are intervening in gendered representation. Chapter 4, based on the concept intersectionality, examies the challenges to "the white-girl ideal of feminism"and the problem of colorblindness by girls and women of color. Chapter 5 offers brief discussion about politics of girl zines. In so doing this paper explores how girl zines' negotiations of the specific and the generalizable create alternative descriptions of what it means to be an American girl or an American woman.
著者
小嶋 英夫
出版者
文教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

教育学部在籍の英語教員志望生を主な研究対象として、彼らの専門職能と自律的成長を促す省察的ポートフォリオを開発するために、理論と実践の統合を通して継続的に研究した。文部科学省から「グローバル化に対応した英語教育改革」が提唱され、小・中・高を通じた一貫生のある新しい英語教育の推進に貢献できる英語教員の養成・研修が求められている。学習指導要領が全面的に改訂される2020年に向けて、学校教育全体が大きく見直され、すべてのキャリアステージにおける教師教育も改善されることになる。これらの動向を見据え、国内外の研究大会での発表、学術誌への投稿、図書の刊行等により、本研究の成果を結実させることができた。
著者
太田 和敬
出版者
文教大学
雑誌
人間科学研究 (ISSN:03882152)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.11-36, 2013-03-01

Through re-consideration of disciplinary education and punishment at school is urgently needed in order to resolve the serious problems that Japanese schools are facing such as suicides due to bullying. Although school principals and teachers are granted the right to discipline and punish students in Japan, few schools have clear guidelines on punishment, and principals tend to be hesitant to punish students.Teachers, however, often penalize students for their misbehavior instead of properly instructing them from an educational viewpoint . Such discipline is ineffective at improving their behavior in many cases. In order to provide order in the classroom, punishment for infringing on other pupils' right to learn must be differentiated from out-of-school discipline to guide behavior. In addition, a teacher's right to penalize students should be banned; punishment should be inflicted only with adequate discipline and with the principal's approval in the case of violence and infringement on learning. Even then, it should be carried out according to proper procedures. To help students better understand, they should given the opportunity to learn about laws regarding the right to learn, discipline, and punishment.
著者
阿部 正臣 梶原 洋子 〆木 一郎
出版者
文教大学
雑誌
文教大学教育学部紀要 (ISSN:03882144)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.124-134, 1988-12 (Released:2012-09-25)
著者
平沢 茂
出版者
文教大学
雑誌
教育研究所紀要 (ISSN:09189122)
巻号頁・発行日
no.12, pp.33-36, 2003

日本における学力低下論争の最大の問題は、今、子供たちに共通に修得させなければならない学力(共通基礎学力)とは何かについての展望を欠いていることである。この根源的な問いを明らかにしないままで、学力が低下すると騒ぎまわるのは、一種の「狼少年」現象と言ってよい。今求められる学力の本質は何か、共通基礎学力とは何かについて考察する。
著者
林 幸克
出版者
文教大学
雑誌
教育研究所紀要 (ISSN:09189122)
巻号頁・発行日
no.14, pp.129-138, 2005

青少年委員は行政委嘱の委員である。全都的に見ると、青少年対策地区委員会や小中学校長からの推薦を受け、学区単位で選出されており、成人式や区民まつりを中心とした事業に協力するケースが多かった。その青少年委員に求められる資質・能力として、大田区の事例に即して考えると、①創造力・創造性、②コミュニケーション能力(地域の青少年団体等に対するもの、青少年に対するもの)、③会議力の3つが挙げられた。
著者
金藤 ふゆ子 岩崎 久美子
出版者
文教大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究は、保護者や地域住民による学校支援が、教員の職務遂行に及ぼす効果を明らかにすることを目的とした。学校・家庭・地域の連係による教員の推進は、教育基本法に明記される新たな教育の方向性であり、本研究はその効果を教員の観点から解明した。学校支援は、放課後子ども教室事業や学校支援地域本部事業に着目し、当該事業を実施する学校に勤務するか否か別に、教員の意識やストレスを比較分析した。K県全小中学校教員調査、及び全国小学校教員調査を質問紙調査により実施し、分析を行った。保護者や地域住民の学校支援は、教員の職務遂行上の肯定的意識を高め、かつ児童生徒を肯定的に捉える傾向に影響することが明らかとなった。
著者
向嶋成美 樋口泰裕 渡邉大 秋元俊哉 宇賀神秀一 王連旺 加藤文彬
出版者
文教大学
雑誌
文学部紀要 (ISSN:09145729)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.144-87, 2013-03-15

本稿は、章学誠『校讎通義』の訳注である。 著者の章学誠は、字は実斎、号は少岩、浙江会稽の人である。清の乾隆三(一七三八)年に生まれ、嘉慶六(一八〇二)年に齢六十四歳で没した。乾隆三十(一七六五)年、二十八歳の年から当時の大需であった朱〓に従って学び、同門で乾隆・嘉慶期における代表的な史学家である?晋涵や洪亮吉らと親しく交わった。乾隆四十三(一七七八)年に四十一歳で進士に及第するが、任官することなく、華北の各地の書院で講じたり、畢〓、朱珪の幕下に加わって『湖北通志』などの書籍の編纂を行ったりした。章学誠はその生涯に数多くの著作を残したが、その学問は当時一世を風靡していた考証の学とは傾向を異にし、明末清初の思想家、黄宗羲以来の思想性に富んだいわゆる「浙東の学」を継承するものとされる。章学誠の年譜には、わが国の内藤湖南の「章実斎先生年譜」(『支那学』第一巻第三・四期、一九二〇年)を嚆矢とし、それを補訂した胡適の「章実斎先生年譜」(上海商務印書館、一九二二年)、さらに補訂を加えた姚名達の「章実斎先生年譜」(『国学月報〓刊』第二巻第四期、一九二七年)、また呉考琳の「章実斎年譜補正」(『説文月刊』第二巻第九〜十二期、一九四〇〜一九四一年)、王重民の「章学誠大事年表」(『校讎通義通釈』上海古籍出版社、一九八七年、附録二)などがある。 章学誠の最も重要な著作として挙げられるのが『文史通義』と『校讎通義』である。前者が歴史の意義について論じたものであるのに対し、後者は目録学の理論、方法について論じたものといってよい。『校讎通義』は乾隆四十四(一七七九)年、章学誠四十二歳の年に成った。原は四巻であったが、その後章学誠の生前中に第四巻が失われ、現存するのは「内篇」三巻である。章学誠は亡くなる前にその全ての著作の編訂を友人であった浙江粛山の王宗炎に依頼した。それを基にして章学誠の次子である章華〓が道光十二(一八三二)年に河南開封で『文史通義』、『校讎通義』を刊行して以来、これらの書はいくつかの版を重ねている。そして章学誠の著作の全てがまとまった形で刊行されたのが、浙江呉興の劉承幹の嘉業堂刊『章氏遺書』四十八巻である。この嘉業堂刊『章氏遺書』に収められる『校讎通義』は実は「内篇」三巻に「外編」一巻を加えた四巻の形を採っている。しかしこの「外篇」に収められている「呉澄野太史歴代詩鈔商語」以下の二十一編は王宗炎編訂の時に加わったと考えられるもので、『校讎通義』からは除外するのが一般である。章学誠の著作のテキストについては、張述祖の「文史通義版本考」(『史学年報』第三巻第一期、一九四〇年)、孫次舟の「章実斎著述流伝譜」(『説文月刊』第三巻第二・三期、一九四一年)に詳説がある。なお章学誠の著作テキストには刊本とは別に抄本もあり、内藤湖南旧蔵の書籍を収蔵する関西大学図書館に三本がある。井上進氏の『内藤湖南蔵本文史校讎通義記略』(『東方学会創立五十周年記念論文集』、一九九七年、のち、『書林の眺望』、平凡社、二〇〇六年)によれば、その中の一本『文史校讎通義』不分巻、六冊は嘉業堂刊本より旧い形を伝えるものであるという指摘がなされていて興味深い。また近時の排印本としては、劉公純標点の『文史通義』(古籍出版社、一九五六年、中華書局新一版、一九六一年)があり、これは嘉業堂刊本を排印したものである。さらに注釈書としては、葉長清『文史通義注』(無錫国学専修学校叢書、一九三五年)、葉瑛の『文史通義校注』(中華書局、一九八五年)、王重民の『校讎通義通解』(上海古籍出版社、一九八七年、傳傑導読、田映〓注本、上海古籍出版社、二〇〇九年)がある。 本稿では訳出にあたり葉瑛の『文史通義校注』を底本として用いた。この書は『文史通義』の諸本九種をもちいて校注がなされており、今日求められる最良のテキストと判断したからである。本稿の作成は、向嶋成美、樋口泰裕、渡邉大、秋元俊哉、宇賀神秀一、王連旺、加藤文彬の七名からなる文教大学目録研究会が開催した定例研究会において、議論、検討を進める中で得られた成果に基づくものである。その議論、検討の内容に整理を加え、訳注としてまとめるにあたり、研究会での中心的役割を果たした発表者がそれぞれ発表を担当した章を執筆することとした。今回の第一回では、『校讎通義』全三巻のうち巻一の「叙」、「原道第一」を渡邉が担当執筆し、「宗劉第二」を樋口が担当執筆し、「互著第三」を宇賀神が担当執筆した。文責もまたそれぞれの担当者に帰するものとする。