著者
齊藤 邦行 磯部 祥子 黒田 俊郎
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.85-90, 1998-03-05
被引用文献数
6

ダイズ収量成立過程を解析するには, 花器の分化と発育過程を明確にする必要がある.花房の着生位置に着目した場合, 今までの分類は煩雑で, 多くの労力を要する.光学顕微鏡による観察結果に基づいて, 花器の分化・発育ステージを, 花芽分化前(I期), 花芽分化期(II期), 萼分化期(III期), 花弁分化期(IV期), 雄ずい分化期(V期), 雌ずい分化期(VI期), 胚珠・葯分化期(VII期), 花粉・胚嚢形成期(VIII期), 開花期(IX期), の9期に分類した.特定の節に着目すると, 花芽は低次位から高次位へ花房次位の序列に従って分化した.個体内では2次の花芽が最も早く分化したが, III期以降は0, 1次の花器の発育が最も速く進行した.低次位の花芽は分化後急速に発育したのに対し, 高次位の花芽では分化後の発育はゆっくりと進行した.0, 1, 2, 3次の花芽は開花始前までに分化し, 4, 5次の花芽は開花始後に分化した.また, 0, 1次の花芽の分化・発育は全ての着生位置で開花始前の短期間に集中して行われたのに対し, 2次以上の花芽では開花始前後の長期間に及んだ.従って, 低次位の花蕾数は開花始前に, 高次位の花蕾数は開花始後に決定することが推察された.出葉日と花器の分化・発育との対応関係をみると, 主茎第4, 7節は出葉後に花芽が分化したのに対し, 10節以上は花芽分化が出葉より早くおこり, 花芽の分化は栄養生長とは無関係に, 各節でほぼ一斉に開始されることがわかった.
著者
佐竹 徹夫 柴田 和博
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.454-462, 1992-09-05
被引用文献数
6

小胞子の分化から受精に至るまでの発育過程を4段階に分け, それぞれの段階で受精に関係する要素(受精構成要素)を定義し, 受精率を4要素(分化小胞子数, 発育花粉歩合, 受粉歩合および柱頭上花粉の受精効率)の積によって表した. 危険期に冷温処理された穎花の受精率およびそれを構成する要素の大きさには, 品種間に顕著な差が認められた. 耐冷性の異なる19品種を用いて, これら要素の受精率に対する寄与率を重回帰分析法によって評価した. 危険期に冷温処理された穎花の受精率における品種間分散の82%が, 分化小胞子数, 発育花粉歩合および受粉歩合の3要素によって説明された. 第4要素の柱頭上花粉の受精効率(この要素は柱頭上における花粉の発芽歩合と発芽花粉の受精効率より構成される)は本論文では評価されなかった. 染分, 赤毛, キタアケ, 道北糯18号, 中母42号, はやゆき等は小胞子分化数が大きく, 染分, ハマアサヒ, キタアケ, トドロキワセ, はやゆき, コチミノリ等は花粉発育歩合が大きく, そらち, 中母42号, はやゆき, キタアケ等は受粉歩合が大きく, それぞれの要素の供与親として注目された. 受精構成要素の概念は, 耐冷性の遺伝子を各要素ごとに探索する手段として育種事業に利用できるばかりでなく, 耐冷性の生理機構を解析するための手段としても利用できる.
著者
川竹 基弘 西村 剛 志村 清 石田 良作
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.161-162, 1960-09-01

The methods of fertilizer application tested were as follows: 1) Subsoiling, 2) Broadcasting, 3) Drilling beside planting rows, 4) Drilling between planting rows. With corn and oats, the method of drilling beside planting rows brought the best top growth. With immature soybean and common vetch, it was superior by subsoiling. The yield in each crop was similar in tendency to the top growth, except that of common vetch which decreased owing to lodging caused by excessive growth by the subsoiling method. Drilling between rows brought about the most inferior growth and yields in all the crops. Effects of the difference of the method on the root development were recognized with common vetch and oats as differences in distribution of roots around and beneath the fertilizer placed. Subsoiling application promoted the penetration of roots in common vetch only. It was observed that the roots which distributed around the fertilizer were white and fresh. Though no data about the relation between top growth and root weight were obtained in this investigation, the authors assumed detailed studies of quality or viability of root should be important to elucidate such a relation.
著者
石崎 和彦
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.75, no.4, pp.502-506, 2006-10-05
被引用文献数
3 14

水稲粳26品種を,4種の高温処理条件,即ち温水かけ流し圃場,ビニルハウス,温水循環プール,人工気象室と一般圃場で栽培し,検定方法の特徴を把握するとともに,高温登熟性検定における基準品種を選定した.玄米品質を示す良質粒歩合は,いずれの検定方法においても低下し,品種間差が拡大したことから,登熟期間の高温処理は高温登熟性の把握に有効であると考えられた.また,品種の高温登熟性の順位には,検定方法の間に0.58〜0.73の相関係数が認められ,いずれの方法を用いても同様の検定結果が得られることが推察された.高温登熟性の基準品種として,高温登熟性ランク強にふさおとめ,やや強にてんたかく,はなひかり及び越路早生,中にひとめぼれ,はえぬき及びホウネンワセ,やや弱に味こだま,加賀ひかり及び扇早生,弱にトドロキワセ及び越の華を選定した.
著者
哈 布日 津田 誠 平井 儀彦
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.32-38, 2014 (Released:2014-01-27)
参考文献数
22
被引用文献数
1

塩ストレスと同時に水ストレスが作物生産を低下させることが増えると指摘されているので,塩濃度と量が異なる土壌においてイネの水利用と乾物生産および根成長の関係を明らかにした.容量の異なるポットに1~10 kgの土壌を入れ,各土壌1 kgあたり1gと2 gの塩化ナトリウム (NaCl) を入れた溶液を土壌重の50%加える2区およびNaClを加えない区を設けた.耐塩性品種IR4595-4-1-13と普通品種日本晴を移植して,その後給水しなかった.葉身の伸長停止で成長が止まったものとし,その日のイネの乾物重とNa+含有率および土壌残存水分量を測定した.地上部と根の乾物重は土壌の量が多いほど大きく,土壌NaCl濃度が増えるほど低下した.地上部乾物重は,地上部Na+含有率の増加にしたがい低下した.土壌残存水分量は土壌の量とNaCl濃度が高いほど多かったため,蒸発散量は土壌NaCl添加によって低下した.そして地上部乾物重は蒸発散量に比例的に大となった.土壌残存水分含有率はNaCl無添加土壌では根が十分に成長して低い値であったが,塩濃度が高く量が多い土壌では根の成長が小さく土壌残存水分含有率は高かった.以上から塩土壌においてもイネの乾物生産は蒸発散量に比例的に大となると同時に蒸発散量の低下はイネ根の成長阻害によって利用できる土壌水分量が減少するためであると考えられた.
著者
義平 大樹 唐澤 敏彦 中司 啓二
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.165-174, 2000-06-05
被引用文献数
2

道央多雪地帯においてコムギ, ライムギより多収を示す秋播ライコムギ品種と低収にとどまる品種の生育特性の違いを把握し, ライコムギの多収品種育成のための育種目標および多収を実現するための栽培上の注意点を明らかにするために, ライコムギ品種, 北海道の秋播コムギ品種, および秋播ライムギ品種の子実収量とその関連形質を4ヶ年にわたり比較調査した.ポーランド育成のライコムギ品種に, コムギ品種およびライムギ品種に比べて子実収量の高いものが多かった.しかし, ロシア, ウクライナ, フランス, カナダ, 韓国, イングランド育成のライコムギ品種の子実収量はコムギ品種に比べて低かった.前者の多収要因は, コムギに比べて一穂重および地上部重が大きいこと, ライムギに比べ収穫指数が高いことにあると考えられた.後者の低収要因には, 第一に雪腐病発病度が高いこと, 第二に穂数が少ないこと, 第三に収穫指数が低いことがあげられ, 長稈のライコムギ品種において倒伏も低収に関与すると考えられた.道央多雪地帯においてライコムギの多収を実現するためには, 育種目標として冬枯れに対する耐性に優れたもの, 穂数が多く収穫指数の高いものを選抜すること, 栽培技術としては冬枯れによる穂数の減少を防ぐことが重要であり, これらがある程度満たされた時, 穂重型で地上部重の大きいライコムギの特性が多収性に結びつくことが示唆された.
著者
廣瀬 大介
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会九州支部会報 (ISSN:02853507)
巻号頁・発行日
no.77, pp.51-53, 2011-05-15

焼酎もろみ粕肥料の施用量を変えてサツマイモを栽培してそれぞれの収量と品質について比較した.その結果,慣行栽培と同等の収量を上げるには,焼酎もろみ粕肥料を栽培指針に示された量より2倍多く施用する必要性が示された.一方,品質は,施用量の違いよる差異は見られなかった.
著者
鈴木 崇之 佐野 善一 小林 透 安達 克樹 持田 秀之 岩堀 英晶 立石 靖
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会九州支部会報 (ISSN:02853507)
巻号頁・発行日
no.71, pp.44-46, 2005-05-15

サツマイモネコブセンチュウ汚染圃場に薬剤処理区と無処理区を設け, サツマイモ(高系14号, 九州139号, ジェイレッド)-ダイコンの体系試験を実施した.無処理区で線虫に感受性品種である高系14号を栽培すると減収, 塊根の線虫害, 線虫密度の増加が顕著だったのに対し, ジェイレッドを栽培すると減収, 塊根の線虫害はほとんどなく, 線虫密度も栽培期間を通じて低く推移した.いずれの試験区でもダイコン根部には線虫による実害はなかったが, ジェイレッド跡では後作ダイコンの根こぶ指数も小さく, 線虫密度も翌年春まで低く維持された.
著者
星野 次汪 伊藤 誠治 谷口 義則 佐藤 暁子
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.21-25, 1994-03-05
被引用文献数
5

粒大と品質との関係を明らかにするため, 1989/1990年, 1990/1991年に栽培したコユキコムギを用いて, 原粒を縦目篩を用いて大きさ別に分け, 原粒及び粒大別に製粉された60%粉の粗タンパク含有率, 灰分含有率及びコムギ粉生地の物性などについて試験を行った. 粒大が大きいほど千粒重は大きく, 3.0mmの粒は1.8mmの粒の約3倍の重さであった. 粗タンパク含有率は1989/1990では粒大が大きいほで高くなったが, 1990/1991ではいずれの粒大でもほぼ一定の値であった. 灰分含有率は1989/1990では2.4mm, 1990/1991では2.6mmの粒が最も低く, それより粒大が大きくなるかあるいは小さくなるにしたがって高くなった. 製粉歩留は, 粒大が大きいほど高くなり, 粒大間に1%水準の有意差が認められた. 粉の比表面積(cm^2/g)は粒大が大きいほど小さかった. 粉の白さ(R455), 明るさ(R554)は粒大が大きいほどその値は大きかったが, 胚乳の色づき(logR 554/R 455)は逆に小さかった. ファリノグラムの特性値(Ab, DT, Stab., V. V, Wk)及びアミログラム最高粘度は粒大間で有意差が認められなかったが, エキステンソグラムの各特性値のうち, 面積は1.8mmの粒を除けば粒大が小さいほど大きく, 伸長抵抗は粒大の大きいもの及び小さいものが小さかった. これらのことから, 大粒は, 灰分含有率が低く, 製粉歩留が高く, 粉色相が優れているが, ブラベンダー特性はやや小粒の方が優れていた.
著者
田代 豊 谷山 鉄郎
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.77-86, 1996-03-05
被引用文献数
3

沖永良部島は日本の南西諸島における典型的な農業地域の一つである. 同島の北東半分を占める和泊町においては, 花き栽培などの集約的農業のために土地面積当たりの農薬消費量が日本全国の平均の3倍以上に達している. 同島において, 33地点の115の地下水サンプルの中の混入農薬(フェニトロチオン, ダイアジノン, プロチオホス, キャプタン)を分析した. 8地点の15サンプルからこれら4種の農薬のうちいずれかが検出された. この結果は, 日本においてもゴルフ場ばかりでなく集約的な農業のために施用される農業によって地下水が汚染される場合があることを示している. キャプタンは, 分析した農薬の中でも最も消費量が多いものであったが, 2サンプルからのみ検出された. これら2サンプルは, 集約的な花き栽培がより盛んな同町北東部からのものであった. フェニトロチオンとダイアジノンは年間を通じて様々な地点から検出された. さらに, 同町におけるこれら2種の農薬の消費量は異なる季節変動を示すにもかかわらず, 最も汚染されていた地点の一つについて, これら2種の農薬の検出濃度の比は毎回ほぼ一定であった. このことから, これらの農業は同島の地下水に比較的緩慢かつ継続的に浸透していくことが示唆される.
著者
中村 拓 松中 昭一
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.517-522, 1974-12-30

アサガオを光化学オキシダントにたいする指標植物として利用するため, 自然発生した光化学オキシダントおよび人工的に製造したオゾンガス曝露により, アサガオの品種等感受性に影響する要因を検討した. (1) アサガオ品種間の感受性は, ソライロアサガオに属するヘブンリーブルーとパーリーゲイトが最も高く, ニホンアサガオのスカーレットオハラおよびローズクィーンも高い感受性を示した. 同じくニホンアサガオであるが, わい性のキャロルレッドおよびキャロルブルー, うず性の紫獅子は感受性が低かつた. (2) 各生育段階における感受性は, 全葉数10〜35葉期が高く, ごく若いか老化した時期では低下した. (3) 光化学オキジダントの被害は, 特定の葉位に発生する. すなわち, 上から数えて10〜14番目の成熟した葉は感受性が高く, 展開中の若い葉および老化した葉は感受性が低かつた. (4) 施肥量が少ないと感受性が低下した. (5) 土壌水分が不足した場合も感受性が低下した. アサガオの分類について静岡大学助教授 米田芳秋氏の指導を受けた. また本研究の遂行にあたり当研究所生理第5研究室長 太田保夫氏より終始有益な指導と助言を与えられた. ここに両博士に深謝の意を表する. 本研究は昭和47年度より開始された環境庁計上の「農林水産生態系における汚染物質の循環と指標生物に関する研究」の一環として行なわれたものの一部である. 研究設定に尽力された各位に深く感謝するものである.
著者
狩野 広美 小泉 美香 桂 直樹 稲田 勝美
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.108-109, 1989-04-01

水稲の農林8号とクロリナミュータントCMV-44の光化学反応の作用スペクトルを測定し, クロロフィルbの役割を検討した.
著者
齋藤 博行 秋場 善憲 早坂 崇
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会東北支部会報 (ISSN:09117067)
巻号頁・発行日
no.51, pp.3-4, 2008-12-20

水稲の省力低コスト化を図るため、機械移植栽培の株間を30cmに広げた尺角植えの疎植栽培は、慣行栽培よりも育苗箱使用が10箱程度で半分であり、種子量、培土量、肥料、農薬等の資材経費の半減になるほか、育苗施設や育苗管理労力も削減可能である。これにより、余剰労力の他部門への活用や水田経営規模拡大が見込める。なによりも、田植え時の育苗箱運搬や苗補給労力も大幅に削減されることより、高齢な補助者にとっては大幅な労働軽減になる。暖地における穂数型品種の疎植栽培については、品質向上・増収効果が確認されているが、東北地域の寒冷地である山形県の奨励品種である「はえぬき」は偏穂重型品種であることから初期茎数確保が遅れた場合の減収への不安があった。本報告は、平成16年から19年までの4ヵ年にわたる株間30cmの疎植栽培を農家圃場で調査を実施し、生育の特徴及び収量性について取りまとめたものである。
著者
沈 益新 伊藤 浩司 石井 康之 田中 重行 田中 典幸
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.19-26, 1995-03-05
被引用文献数
1

オーチャードグラスの品種ナツミドリにおける施肥による生産性の一時的な調節が, その後の生産性に及ぼす影響を圃場実験及びポット実験により検討した. 圃場実験では, N施用量が1.8g/m^2相当の有機質肥料の基肥を施用して10月31日に播種し, 翌年1月5日に化成肥料で窒素, 燐酸, 加里の3要素とも10g/^2 (多肥区), 5g/m^2 (中肥区), Og/m^2 (少肥区)を施用した施肥処理区を設けた. その後, 4月15日に各区とも同量で中肥区相当を追肥し, その際, 刈り取り区として各区の半数を3cmの高さで刈り取り, その他は無刈り区として生長を継続させた. 1月5日から5月25日までにわたり, 乾物生長の変化を調査した. ポット実験の処理及び調査は圃場実験に準じた. 追肥までの期間は, 少肥区ほど葉面積の拡大が強く抑制されて地上部乾物収量 (DMY) が小さかった. しかし, 追肥後では, 刈り取り区及び無刈り区ともに, 追肥前の少肥による生長抑制に対する補償的生長が現れて, DMYの増加は少肥区ほど大きかった. これは, 主として, 追肥前に少肥の区ほど, 追肥後の葉面積指数 (LAI) の増大速度が大きいとともに, LAIの増大に伴う純同化率の低下が小さいことによった. 少肥によるDMYの減少に対する追肥後の補償は完全ではなかったが, 少肥によって生産を一時的に抑制しても, 適切な追肥を行えば,その後の生産が引続き抑制されることにはならないと推察された.
著者
福嶌 陽 楠田 宰 古畑 昌巳
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.173-178, 2001-06-05
参考文献数
12
被引用文献数
6

暖地のコムギ作における収穫の早期化を実現するための基礎的知見を得るため, 早播きした秋播性コムギの分げつの発育の特徴を明らかにした. 秋播性程度の高いイワイノダイチ(秋播性程度IV)と対照品種のチクゴイズミ(同I〜II)を, 1998年の10月26日(極早播き), 11月5日(早播き), 11月24日(標準播き)に播種し, 栽培した. 単位面積当たりの最高茎数は, イワイノダイチがチクゴイズミより著しく多かった. 単位面積当たりの穂数は, イワイノダイチがチクゴイズミよりやや多く, また播種期が遅いほどやや多かった. 個体を対象として分げつの発育過程をみると, いずれの播種期や品種においても分げつは主茎の出葉にともなってT1, T2, T3およびその同伸分げつのT1P, T4およびその同伸分げつのT11とT2Pの順に規則的に出現した. イワイノダイチはチクゴイズミよりT4, T11, T2Pなどの高位・高次の分げつの出現率が高かったが, これらの分げつは無効化することが多かった. 有効分げつでは出葉速度は主茎とほぼ同じであったが, 無効分げつでは出葉速度は次第に低下し, 出葉の停止, 枯死に至った. そこで, 無効分げつは, その出葉速度が主茎の半分以下となった時点で無効化したとして, 個体当たりの分げつ数の推移をみたところ, 早播きのイワイノダイチの分げつ数が最大となる時期は早播きのチクゴイズミより遅く, 標準播きのイワイノダイチ, チクゴイズミより早かった. このような分げつ数の推移は幼穂の発育と密接に関連していることが示唆された.
著者
福岡 峰彦 吉本 真由美
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.81, no.3, pp.363-371, 2012 (Released:2012-08-06)
参考文献数
43
被引用文献数
1 4

気温は作物の気象反応を解析する上で最も基本的な説明変数のひとつであるが,観測方法に細心の注意を払わなければ,その観測値は容易に真値から乖離しうる.そのため,栽培試験の結果から気温との汎用性のある関係を導き出すには,気温の観測精度に悪影響を及ぼす各種要因を理解し,それらを適切に排除する必要がある.そこで本稿では,作物の圃場栽培試験において気温を観測する際の留意点を,実際の観測例を交えて解説する.加えて,気象官署やAMeDASにおける一般気象観測で得られる気温との整合性を考慮した,群落上気温の標準観測高度を提案する.
著者
中條 博良
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.224-231, 1967-06-10

小麦農林27号または小麦農林4号を種々の温度周期の下で処理し, バーナリゼーション効果の差異について研究した。(1) 40日間毎日0℃または10℃で0〜24時間, 18℃で残り時間処理した。毎日の低温処理時間の長短に応じてバーナリゼーショソ効果に差がみられた。(2) 夫々数日間の低温(0℃)処理と高温(20℃)処理とを低温処理日数の合計が所定日数に達する迄くり返した。低温処理または高温処理の連続日数が増加するに従いバーナリゼーション効果は減少し, 低温処理連続日数が10日内外の時処理効果の減少が顕著であった。しかしこのような処理連続日数の増加にともなうバーナリゼーション効果の減少は低温処理温度を10℃とした時または高温処理温度を15℃とした時には少なかった。以上の結果から低温でのバーナリゼーショシ処理が数日以上連続した場合, その処理効果は高温により消去され易くなるものと考えられる。
著者
張 継権 早川 誠而 山本 晴彦 岡田 憲夫 多々納 裕一
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.239-249, 2002-06-05
参考文献数
7
被引用文献数
2

1991年台風17号・19号と1999年台風18号の三つの台風は,9月中・下旬に九州北部西岸及び九州中部の熊本県に上陸し,九州及び中国地方を通り抜けるという,ほぼ同一時期に,同一経路をたどり,九州,中国・四国地方を中心に大きな農業災害を引き起こした.とくに,水稲,野菜,果樹,飼料作物等の農作物は,倒伏,落果,折損等による災害が発生し,農地や農業施設などの被害を含めて九州,中国・四国地方では,台風9117号・9119号による農業被害の総額は2811億円に達し,台風9918号による農業被害の総額は1135億円に及んだ.台風9117号・9119号では農作物,樹体,家畜,施設等が大きな被害を受けたが,台風9918号では樹体,家畜がほとんど被害を受けなかった.作物別被害状況をみると,最も大きい作物では,台風9117号・9119号の場合は果樹であり,作物被害総額の34%を占めているが,台風9918号では水稲であり,作物被害総額の43%を占め,被害状況に大きな違いが見られる.これは三つの台風の上陸後の勢力,台風による災害現象および被害機構などが異なったためである.