著者
富田 英司
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.97-100, 2010

作文指導の実践研究には,文中の反論-再反論構造の有無について判断できる明確な基準が必要である.そこで本研究は,反論-再反論構造の有無を評価者が判断する過程を検討した.大学生の作文229事例が主に検討された.これらは反論-再反論構造の有無,判断の難易度について,2名の評定者によって評定された.この評定結果を規定する談話構造を探索したところ,文中の「命題+逆接パターン」によって,判断が容易になることが分かった.但し,このパターンが使用されても,判断が難しい事例も見られた.難しい理由を分類すると(1)逆接の多用による構造の複雑化,(2)主張自体の曖昧さ・複雑さ,(3)主張の適用範囲の限定との混同,(4)理由・根拠の構造の曖昧さ,の4つに分けられた.
著者
北村 智 脇本 健弘 松河 秀哉
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.129-132, 2013

本研究では実践共同体としての学術共同体に対するネットワーク分析によるアプローチを試みる.特に学習としての正統的周辺参加に着目し,共同体における参加者の「位置」を定量的に表現する手法として中心性を採用する.中心性からみた共同体における参加者の「位置」の変化と,共同体における参加者の役割獲得の関係を分析し,実践共同体に対するネットワークアプローチの妥当性について検討する.
著者
渡辺 和志 吉崎 静夫
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.73-83, 1991-09-20
被引用文献数
2 1

本研究は,授業における児童の認知・情意過程を把握するために,小学校6年・理科の授業を題材にして,いくつかの再生刺激条件を検討し,手続き,時間,報告内容の観点からみて優れた再生刺激法を明らかにした.主な結果は次のとおりであった.(1)VTRによる再生刺激画面は,教室の後方より前方を写した画面が適当であった.(2)質問紙法とインタビュー法による報告内容の質と量について比較した結果,方法による差はほとんどみられなかった.(3)調査時間が短時間ですむ方法は,再生刺激場面を教師が決定し,質問紙法で児童に報告させる方法であった.(4)児童が授業を通して思ったり考えたりして,VTRを中断した場面の半数以上は共通していた.おもな場面は,教師の主発問,教材の提示,児童の実験であった.
著者
永野 和男 飯田 史男 奥村 英樹
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.69-84, 1993-11-20
被引用文献数
3 2

コンピュータゲーム的な環境による学習課題の実施が,年齢の低い児童や精神遅滞児の認知能力にどのような影響を与えるかを実験的に明らかにした.開発した学習用ゲームは,コンピュータとの対戦型の神経衰弱ゲームと,学習用に改良したテトリスである.約2ヵ月の実施の後,初期と後期のゲーム中の被験者の方略を分析した結果,ゲームとともに記憶方略についての学習や,図形を認知し,適切な場所へ移動する判断力がのびていることが確認された.また,事前,事後の知能テストにおいても,精神年齢の伸びが認められた,さらに,それぞれに関連する学習課題に対する達成率が未試行者に比較して伸びていることが確認された.
著者
谷塚 光典 東原 義訓
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.153-156, 2009
被引用文献数
10

本研究では,教員養成初期段階の学生が臨床経験科目における経験についてINTASCスタンダードに基づいて作成したティーチング・ポートフォリオの記述内容を,観点「コミュニケーション」に着目して,テキストマイニングソフトを用いて分析することを通して,教員養成初期段階の学生のリフレクションの特質を明らかにした.また,所属校園による臨床経験の内容の違いから,リフレクションの傾向も異なることが明らかになった.
著者
後藤 聡
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.105-110, 1999-08-20

本研究の目的は, 2桁×1桁の整数かけ算問題について, 構成要素と難易を基準として問題を類型化, 系列化し, その結果を用いたデータバンキングシステムの開発を試みることであった.問題の構成要素として1)答の桁, 2)かけ算九九の繰り上がりの有無, 3)1桁たし算の繰り上がりの有無, 4)被乗数の中のゼロの有無, 5)答の中のゼロの有無, 数, 位置, 6)部分積の型を取り上げた.1)〜3)と6)を組み合わせて全問題を6基本型に分類した.更に, 4), 5)を含めて20の型に分類した.各6基本型について, 被乗数や答にゼロを含まない問題と含む問題を調査した.その結果から難易差を想定して問題を系列化し, 教授者が任意に利用できるシステムの開発を試みた.
著者
塚本 榮一 小坂 和子 赤堀 侃司
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.455-462, 2006

本研究は,学習者の描いたコンピュータのイメージ図を教授者の授業目標に基づいて分類し,成績別にイメージの変化を調べることによって,担当する大学の情報教育の授業を評価・改善する情報を得ようとしたものである.イメージ図は学年の初期と中期に収集され,収集された図は授業目標を基準に4つのカテゴリに分類され,機械群・人間群・関係群・分類不可群と命名された.学習者を学年末試験の成績によって上位・中位・下位の3群に分け,成績別に各カテゴリのイメージ図の数を初期と中期について調査したところ,成績上位群と中位群の学習者によって描かれたイメージ図は変化が少ないが,成績下位群によって描かれたイメージ図は統計的に有意に変化し,機械群のカテゴリが減少し分類不可群が増加していることが明らかになった.本研究の結果,成績下位群のイメージが授業目標から離れていることが示唆され,成績下位群に対する授業改善の必要性が示された.
著者
山田 剛史 森 朋子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.13-21, 2010
参考文献数
26
被引用文献数
7

本研究では,大学生の汎用的技能獲得における正課と正課外が果たす役割について学生の視点から検討することを目的として,卒業を目前に控えた大学生657名に調査を行った.主な結果は次の通りである.(1)大学生の汎用的技能を捉えるために精選した項目群に関する因子分析の結果,35項目8因子(F1批判的思考・問題解決力,F2社会的関係形成力,F3持続的学習・社会参画力,F4知識の体系的理解力,F5情報リテラシー,F6外国語運用力,F7母国語運用力,F8自己表現力)が抽出された.(2)正課・正課外の差異に関するt検定の結果,正課は正課外に比してF5とF6が,正課外は正課に比してF2,F3,F4,F8が有意に高い値を示した.(3)学部系統別の正課・正課外による差異に関する分散分析の結果,正課と正課外は汎用的技能獲得において異なる役割を果たしていることが示され,目的養成学部やGPプログラム取得による効果が示唆された.
著者
堀田 龍也 中川 一史
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.325-335, 2003-03-20
被引用文献数
10

情報通信ネットワークを利用した交流学習を継続させている教師が意図している点の特徴を知るために,テレビ会議交流学習プロジェクト参加校の教師14名と,電子掲示板交流学習プロジェクト参加校の教師13名に対してアンケート調査を行った.それぞれの参加校を交流学習継続群と非継続群に分割し,アンケート調査の結果を比較した.その結果,交流学習を継続させている教師が意図した点の特徴として,次の2点が明らかになった.1)交流学習に取り組む教師は,その利用する情報手段や継続の程度にかかわらず,学校間の交流担当者との密なやりとりを行い,他の交流方法との併用をしていた.2)交流手段として中心に据えている情報手段の違いによらず継続群の教師にのみ見られる特徴的な点として,交流にかかわる活動時間の保障,内省をうながすための授業場面の設定や掲示物の作成があげられた.
著者
加藤 由樹 加藤 尚吾 杉村 和枝 赤堀 侃司
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.403-414, 2008

本研究では,テキストコミュニケーションの受信者の感情面に及ぼす感情特性の影響について検討するために,電子メールを用いた実験を行った.本実験の被験者は,42名の大学生であった.彼らを,無作為に2人1組のペアにし,電子メールを使ってコミュニケーションを行ってもらった.そして,電子メールを受け取るたびに,どんな感情が生じたか(感情状態)と,送信者の感情状態をどのように解釈したか(感情解釈),について尋ねる質問紙に回答を求めた.また,感情特性の指標である個別情動尺度-IVによって被験者を3群に分類し,受信者による感情解釈と受信者の感情状態の関係と,送信者の感情状態と受信者による感情解釈の関係を,3群で比較した.結果,これら二つの関係は,受信者の感情特性の影響を受けることが示された.結果から,テキストコミュニケーションで生じる感情的なトラブルの原因を考察した.
著者
松崎 邦守 北條 礼子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.157-160, 2008
被引用文献数
2

内省を重視した教員養成という観点から,英語科教育実習でポートフォリオを適用し,その効果をPAC分析により検討した.その結果,同活用により,実習生が授業を自発的に振り返るとともに意欲的に授業改善を試み,また教職への自信を持てるようになったことが推察された.また,指導教員と実習生との協同の場としてのポートフォリオを用いたカンファレンスが実習生の成長において重要な要因となったことが示唆された.さらに,改善点として,ポートフォリオ作成の時間的・労力的負担の軽減やガイドラインの詳しい説明の必要性が示唆された.
著者
酒井 統康 南部 昌敏
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.193-202, 2006
被引用文献数
2

小学生に身につけさせたい情報活用の実践力目標を,問題発見・計画力,収集力,判断力,処理力,表現力,創造力,発信・伝達力の7要素と22の具体目標で構成した.それぞれの具体目標ごとに評価規準と評価指標となる評価基準を策定した.それに基づき,児童同士が協働して具体的評価基準を作成する学習活動を取り入れた学習プログラムを開発し,総合的な学習の時間及び国語科の学習指導を通してその有効性を実践的に検討した.その結果,情報活用の実践力尺度による事前・事後・把持の調査結果から,具体的評価基準表作成活動は,問題発見・計画力や発信・伝達力の育成に有効であるという知見を得た.
著者
岸 磨貴子 久保田 賢一 盛岡 浩
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.251-262, 2010
被引用文献数
1

本研究では,研究プロジェクトをベースとした特徴ある大学院教育を実践している研究室を実践共同体の分析的視座から捉え,院生が研究プロジェクトに十全的に参加していく過程について調査を行った.研究の対象となったX大学大学院A研究室では,地域社会や企業など大学外の組織と連携した研究プロジェクトを継続的に実施している.6名の院生に対して半構造化インタビューを行い,グラウンデッド・セオリー・アプローチに基づいて分析した.分析の結果,院生は,研究プロジェクトにおいて多様な立場の他者,大学外の組織と連携した活動,そして研究室の文化と相互に作用することで,大学外の組織と連携して研究を行うようになり,研究プロジェクトに十全的に参加していたことが明らかになった.このような研究活動は,個々の院生の充実感・達成感により価値付けられ,院生の研究プロジェクトへの十全的参加を方向付け,研究活動の必要な知識・技術を習得させることを促していた.
著者
山下 利之 清水 孝昭 栗山 裕 橋下 友茂
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.349-355, 2005
被引用文献数
1

高度情報化社会の発展に伴い, 子どもの学習のさまざまな場面でコンピュータによる作業が増えつつある.そのため, CAIなどのコンピュータを用いた学習システムにおいても"楽しさ"や"人間らしさ"を与えるヒューマンコンピュータインタラクションが求められている.そのようなインタラクション設計のための基礎的知見を得るために, 本研究ではコンピュータゲームの"楽しさ"に着目した.質問紙調査1では, コンピュータゲームの構造, 特性の因子分析とそれに基づくクラスター分析による考察から, コンピュータゲームの構造, 特性とコンピュータゲームのタイプ間の関連を明らかにした.質問紙調査2では, コンピュータゲームに対する感情表現の評定に関する分析から, コンピュータゲームのタイプとそのコンピュータゲームがプレイヤーにもたらす"楽しさ", "面白さ"の関連性を明らかにした.これらの結果から, コンピュータゲームのどのような構造, 特性がどのような"面白さ", "楽しさ"をもたらすかに関する基礎的知見を得た.
著者
〓崎 静夫
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.51-59, 1988-07-20
被引用文献数
9

本研究は, (1)従来の代表的な教師の意思決定モデルがもつ弱点を指摘する,(2)新しい意思決定モデルを提案し,その具体例を記述する, (3)新しい意思決定モデルがもつ授業研究と教師教育への示唆を明らかにする,の3つを目的としている.本研究で提案している意思決定モデルは,次のような特徴をもっている.(1)授業計画と授業実態との比較において教師が認知するズレの程度とその原因に応じて,3つの意思決定過程が仮定されている.(2)教師の意思決定と授業についての知識および教授ルーチンとの関係が記述されている.(3)教師の授業計画と相互作用的意思決定との密接な関係が示されている.さらに,このモデルの具体例が2つ提示されている.1つは授業内容決定の例であり,もう1つはマネージメント決定の例である.
著者
佐藤 朝美
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.239-249, 2010
参考文献数
23

本研究では,幼児の物語行為における親の役割に着目する.Narrative Skill習得に関する先行研究は,幼児の語りの詳細を引き出す言葉がけをする親とそうでない親がおり,その差が子どもの語り方や考え方にまで影響するという結果を示している.そこで,それらの知見を踏まえ,Narrative Skill習得を促す親の語りの引き出し方の向上を支援するシステムを構築した.開発したシステム"親子de物語"は,親子で物語を作成し,その過程をWebカメラで録画,ビデオを親が自身で振り返ると同時に他の親子とビデオを共有していく,自己調整学習の仕組みを備えたWebアプリケーションである.評価実験に27組の親子に参加してもらい,その有効性を検証した.その結果,ビデオにより自己を振り返り,他者を観察することで,子どもの詳細な語りを引き出す親の言葉がけが向上することが分かった.引き出し方が特に向上した母親には,課題を行う過程で,他者の良い点から自身の言葉がけを反省するだけでなく,その都度,自分なりの目標を立てるという傾向が見られた.
著者
吉崎 静夫
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.107-115, 2002-12-20
参考文献数
32
被引用文献数
2
著者
亀井 美穂子 稲垣 忠
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集
巻号頁・発行日
vol.2007, no.5, pp.85-88, 2007-12-22
参考文献数
4
著者
望月 俊男 北澤 武
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.299-308, 2010
被引用文献数
6

本研究の目的は,ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)を活用し,教育実習生が実習期間中の体験報告に基づいた対話を行う場を提供することで,教育実習の振り返りを促進するとともに,教育実習生が実習期間中に身近なソーシャル・サポートを得られるようにすることである.授業実践を行った結果,SNSに備えられた日記とコメント機能を用いて,教育実習中に様々なソーシャル・サポートが交換された.実習期間中の日記をもとにした対話が,実践的知識の振り返りにつながるだけでなく,教育実習生が教育実習に関する事前知識や他者の実践的知識を共有することで,肯定的な思考を持つことができることが示唆された.
著者
佐々木 康成 笹倉 千紗子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.229-237, 2010
被引用文献数
2

ソーシャルネットワーキングサービス(以下SNS)を,実習を中心としたコンピュータリテラシの授業における学習サポートとして導入した.システムとしてはオープンソースのSNSソフトウェアを利用した.まずSNSを授業期間の一部において学習サポートとして導入し,学習の機会が増加するか,学生間の交流に影響があるかについて予備的な研究を行った.続いてその結果に基づいて,全授業期間を通じた学習サポートの場としてSNSを活用した.授業とSNSが密接に関連するように,SNSの機能を活用する授業デザインを行い,ブレンド型授業実践を行った.その結果,学習者の授業満足度は上昇し,学習者間の交流が活発になるなどポジティブな結果が求められた.一方で情報のただ乗りが発生することなどが明らかになった.また,授業の準備および運営に関して教員の労力が必須な点なども明らかになった.