著者
森田 裕介 藤木 卓 全 炳徳 李 相秀 上薗 恒太郎 渡辺 健次 下川 俊彦 柳生 大輔 中村 千秋
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.197-200, 2005

日韓間のギガビットネットワークを介して, 日本の長崎と福岡, 韓国光州の3地点を結び, DVTSを用いた遠隔交流および遠隔授業を実践した.本遠隔交流・授業が中学生の国際性に与える影響を明らかにするため, 「外国への意識」, 「愛国心」, 「他者理解の態度」, 「興味・関心・意欲」, 「韓国(日本)に対する認識」の5つの観点で質問紙による調査を行った.そして, 本遠隔交流・授業によって, 日韓両国の中学生の外国への意識や自国の建築物に対する愛着, 相手国に対する認識が向上したことを示した.また, 日本の中学生は, 韓国に対する興味・関心, 韓国語学習に対する意欲が向上したことを明らかにした.
著者
高木 正則 若林 俊郎 勅使河原 可海
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.125-128, 2009
被引用文献数
1

我々は学習者が問題を作成し,その問題をグループ内で相互に評価できるWBTシステム「CollabTest」を開発してきた.CollabTestでは,学生が作成した問題を利用して確認テストを出題することもできる.本研究では,CollabTestを小学校5年生に利用してもらい,作問と相互評価,確認テストの解答を実践した.実践の結果,4割の児童がオンラインテストを繰り返し解答し,知識の定着に役立てていたことや,作問や相互評価活動を通して四字熟語の問題を解くことが得意になった児童が増加したことなどが示された.
著者
吉田 博 戸川 聡 金西 計英
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.153-156, 2011
参考文献数
11

本研究では,学生の授業外学習の時間に注目して,学生が学習を行う要因について調査する.調査の対象は徳島大学で,2009年度後期に実施されたグラフ理論に関する工学部の専門科目である.対象となる授業を受講している学生に対し,毎回の授業終了後に1週間を振り返ってもらい,授業外学習の内容,時間,学習を行うきっかけになった出来事についての記述を依頼した.これらのデータを分析することで,授業の構造のうち,次の5つの要素について,学生が授業外学習を行う動機との関連性を見出すことができた,5つの要素は(1)授業内容のレベル,(2)課題,(3)教材・資料,(4)学生同士の関係構築,(5)学生が主体的に取り組む授業設計である.
著者
藤木 卓 左座 智弘 寺嶋 浩介
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.157-160, 2008
参考文献数
6
被引用文献数
3

本研究では,VR教材を遠隔授業において活用することを前提に,VR映像と講師映像をクロマキー合成した合成映像と非合成映像の与える印象の違いを,大学生を対象とした主観評価実験により明らかにした.その結果,分り易さ,興味関心,提示効果のカテゴリーにおいて,合成映像は非合成映像より高い評価を示した.一方,身体ストレスのカテゴリにおいては,合成,非合成の映像の差は確認できなかった.また,自由記述の結果からも,合成映像が非合成映像より一体感があることを裏付けるデータが得られた.
著者
島 智彦 渡辺 雄貴 伊藤 稔
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.293-304, 2016-03-31 (Released:2016-03-23)
参考文献数
22

本研究では,中学校の数学授業に,協同学習の基本技法と協同の価値提示を取り入れ,生徒の協同作業に対する認識の変容を調査することを目的に2つの研究を行った.研究Ⅰでは,第1著者が,日常的に協同学習の基本技法を取り入れ,適宜協同の価値提示を行う授業について,第1学期を通して継続して行い,主に個人志向因子の低下という側面から協同作業に対する肯定的な認識を高めることが示された.研究Ⅱでは,同学年,同科目を指導する他の2名の教師に同様の授業について第2学期を通して継続して行ってもらい,個人志向因子の低下および互恵懸念因子の低下という側面から協同作業に対する肯定的な認識を高めることが示された.以上より,協同学習の基本技法と協同の価値提示を取り入れることが,協同作業に対する認識を肯定的に変化させ,生徒間の相互作用を重視した指導を導入していく際の有効な方法であることが示唆された.
著者
酒井 郷平 塩田 真吾 江口 清貴
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.39, no.Suppl, pp.89-92, 2016-01-25 (Released:2016-02-12)
参考文献数
4

従来の情報モラル教育では,主にトラブル事例の紹介とルールづくりの啓発を扱う場合が多く,子どもたちに「当事者としての問題の自覚」を促すことが課題となっている.例えば,「ネット上で悪口を書かない」という指導では,何がネット上での悪口なのかを子どもたちが,具体的に想像することができず,自分は加害者ではないと考えてしまう可能性がある.そこで,本研究では中学生を対象とし,ネットワークにおけるコミュニケーションについてトラブルにつながる可能性のある行動の自覚を促すことを目的とした情報モラル授業の開発・実践を行った.実践後,質問紙調査や感想の分析を行ったところ授業を通して,トラブルにつながる行動を自覚できたことが明らかとなった.
著者
小山 義徳
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.87-94, 2010

英文速読訓練により英語リスニングスコアが向上する学習者にはどのような特性があるのか検討した.分析1では英文速読訓練を行った群が統制群よりも英語リスニングスコアが伸びることを確認した.分析2では,速読訓練前のディクテーションスコアの高低でリスニングスコアの伸びを比較した.その結果,速読訓練前の時点でディクテーションスキルが高かった学習者も低かった学習者も,訓練後に継時処理課題のスコアが伸びていた.しかし,訓練前の時点でディクテーションスキルが高い学習者の方が,低い学習者よりもポストテストにおけるリスニングスコアが高かった.このことから,訓練前の時点で既にディクテーションスキルが高い学習者の方が,英文速読訓練により継時処理スキルが向上した場合に,リスニングスコアが高くなることが明らかになった.
著者
三宮 真智子 久坂 哲也
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.49-52, 2014

メタ認知的知識に働きかけて情報判断力を育てる目的から,本質的には同じテーマの問題を小学生にも馴染みやすいエピソードを用いた異なるカバーストーリーのもとで,複数回呈示して,メタ認知的知識を事例ベースで学ばせる学習教材を開発した.小学校3年生を授業群,独習群,統制群の3群に分け,教育介入を通して教材の効果を検証した結果,プレテストから遅延テストにかけて,授業群,独習群の得点が統制群よりも上昇した.また,自由記述の分析から,学習によって獲得したメタ認知的知識を日常場面でも積極的に活用しようとする態度の形成が示唆されたことから,本学習教材は,情報判断力の育成に有効であったと考察した.
著者
佐藤 弘毅 赤堀 侃司
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.501-513, 2006
被引用文献数
11 5

一斉授業において伝統的に用いられている黒板を,コンピュータやネットワークに接続したものが電子化黒板である.双方向的な授業への活用が期待されるが,この特徴を活かした研究は少ない.本研究では,効果的な電子化黒板の活用を目指し,利点の1つである受講者の視線集中の効果に着目する.その効果として,受講者の存在感の向上を取り上げ,電子化黒板を用いた学習活動情報の共有が受講者の情意面に与える影響について検証する.そのために,電子化黒板の有無,教師役の有無,個人/共同による学習の3要因を変えた実験的な一斉授業を行った.分散分析の結果,電子化黒板がある授業において存在感が高いことが示された.次に,電子化黒板を用いた授業において,存在感を高めた要因と効果を調べるために,共分散構造分析とビデオ分析による検討を試みた.結果,電子化黒板への視線集中が存在感を高め,そのことが情意面を支援した可能性が示唆された.
著者
藤木 卓 市村 幸子 寺嶋 浩介 小清水 貴子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.73-76, 2012

本研究では,両眼立体視により空間歩行可能なVRコンテンツの制作に必要な精度の変化が,現実感とVR酔いに及ぼす影響に関する知見を得ることを目的とした.そのために,大学生を対象とした主観評価実験を行った結果,次のことが明らかとなった.コンテンツの精度の変化に対して現実感とVR酔いは直線的な関係を示し,現実感が高くなるほどVR酔いの評価は低下する.また,コンテンツの精度に関しては,オブジェクトの形状の複雑さよりも貼付ける表面画像の質感の効果が高い.
著者
松田 岳士 松下 佳代
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.521-528, 2014

本論は,活動理論が高等教育における教育実践にどのような示唆を与えることができるかを探ることを目的とする.そのために,活動理論の中でもユーリア・エンゲストローム(ENGESTROM, Y.)の探究的学習理論に着目し,それに基づいた授業デザインおよび実践を行う.実践を担当した教員は,これまで最終的な行動目標から遡って教授内容を設計するインストラクショナルデザイン(ID)モデルに基づいて授業を開発してきたが,本研究では探究的学習理論に立脚したIDによって授業を設計・実践した.その結果,ゴールから遡る方法が,基本的な教授要素を認知的目標と対応させながら成長させていく授業設計方法に変化し,探究的学習理論の6段階のステップが教授方法の選択に影響を与えていることが確認できた.
著者
鈴木 聡 鈴木 宏昭
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.331-341, 2011

主張型レポートの作成能力の必要性は増加しており,この能力を高めるための学習環境の構築は重要といえる.本研究では,学習者がこの能力を高めるためのアプローチとしてライティング活動におけるテキストの問題構築的読解に注目した.直感的・感情的思考が問題発見に寄与するという心理学・認知科学・神経科学の知見を踏まえ,こうした思考をライティング学習に応用するための学習環境の構築は有用といえる.そこでWeb上のテキストの下線・コメント(マーキング)と感情タグの付与を可能にするEMU(Emotional and Motivational Underliner)を開発した.そして,EMUの感情タグが問題構築的読解に与える影響を実験により検討し,それらの機能が学習者による問題構築的読解を促し,結果として気づいた問題点に基づく主張型レポートの作成につながることが示唆された.
著者
加藤 由樹 杉村 和枝 赤堀 侃司
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.93-105, 2005
参考文献数
19
被引用文献数
6

本研究は, 電子メールのコミュニケーションで生じる感情に及ぼす, メール文の内容の影響に注目した.本論文は, 研究Iと研究IIから構成される.研究Iでは, 62名の被験者に, 実際に電子メールを使ってコミュニケーションを行ってもらい, ここで収集したデータから, 電子メールの内容と, それを読んだ時の感情的な側面との関係を, 重回帰分析を用いて探索的に調べた.結果から, 「顔文字」, 「性別の返答」, 「質問」, 「強調記号」, 「文字数」の影響が示された.続いて, 研究IIでは, これらの要因の影響を仮説として, 23名の被験者に, これらの要因を操作したメール文を提示して, それを読んだときの感情を測定した.結果から, これらの要因の影響は, 概ね支持された.このことから, 電子メールでは, 自己を強く主張するのではなく, 相手との関わり合いを重視し, 顔文字などを上手く用いることで, コミュニケーションが良好になる可能性が示唆された.
著者
岡本 敏雄 松田 昇 降矢 俊彦
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.85-99, 1995-09-20
被引用文献数
2

情報に係わる教育内容が新指導要領の中でうたわれ,様々なカリキュラムや教材教具が開発されている.そういった動向の中で,本研究の目的は,中学校の生徒における情報処理の能力と既存の数学の成績との関連を分析することである.情報処理の能力を捉えるための因子構成項目として,(1)手続き的なプログラミング,(2)ファイル操作,(3)情報処理通性,(4)問題空間の認識と目標接近への問題解決過程,といった内容に関する課題を選定し,既存の数学の成績との関連の分析を試みた.その結果,数学の特定の分野(数と式における手続き的な問題解決)における成績と情報処理適性の一部(短期記憶,弁別能力)に相関が見られるなど,数学の成績と情報処理適性に若干の相関関係が見出されたが,本調査の対象となった分野における数学の成績と情報処理の能力との間の強い相関は抽出できなかった.
著者
鎌倉 哲史 馬場 章
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.47-57, 2011

本研究は小学校6年生85名を対象として,情報技術の記録性の特性に関する実体験に基づく情報モラル教育を実施し,その教育効果を検討したものである.実験の結果,MMORPGの実体験と行動ログのフィードバックを受けた実験群は,統制群と比較して記録性に関するテスト成績が有意に大きく向上した.また,実験群の子ども達は事前と比較して事後にインターネットの利活用意識と利用不安感が有意に増加していた.上記の教育効果は5ヵ月後にも持続しており,本研究の方法に一定の教育効果があることが示された.
著者
永岡 慶三 赤堀 侃司
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.199-206, 1997-03-20
被引用文献数
7

本報告は,過去10年間における教育工学研究における「教育評価」に関する研究動向をまとめたものである.教育評価はすべての研究分野にかかわるものであり,この意味において対象とする研究分野は幅広い.そこで,筆者らは,測定方法,評価手法,授業評価,映像・ソフトの評価などのいくつかのカテゴリーに分類して,その動向をまとめた.全体的な傾向として,コンピュータの普及による影響が大きいこと,初期のCAI,CMI等の評価研究から,実際の教育を目指したより使いやすく実用的な手法の開発などに移行していったことが挙げられる.また授業評価やメディア等の評価研究は,地道ではあるが継続して研究されてきた.さらに,今後の方向として,従来型の教育評価はある意味では下火の傾向にあるが,コミュニケーション端末としてのコンピュータ利用が本格化するにしたがって,質的評価法などの新しい評価法が注目されるであろう.現在は将来に向けての変革の途上にあるといえよう.