著者
塙 朋子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.273-282, 1999-09
被引用文献数
1

本研究は子どもが他者との関係性に応じて,どのように情動を表出するようになるのか,児童期中期に焦点をあててその発達的変化を検討した。被験者は小学校2年生から5年生,計1466名である。各人に,物語中の主人公が怒りや喜び,悲しみを経験する物語を読ませた。そして母親,父親,友達に対して,もしその子が自分だったらどの程度情動を表出するか,答えさせた。また関係性の指標として,他者と共にいる時の自己,ソーシャルサポートを取り上げ,それぞれ子どもに評定させた。その結果,低学年(2・3年生)と高学年(4・5年生)とでは,他者との関係性と情動表出との関連は,異なることが示唆された。また各情動ごとに,関係性と情動表出との関連は,異なる変化を示した。喜び表出は,低学年で肯定的関係性と相関がみられ,高学年ではその関連がより強くなった。また怒り表出は,高学年では関係性との間にほとんど関連はみられなかった。この結果は,情動の発達における対人関係の役割を重視すること,及び各情動ごとに,個別に検討する必要があることを示唆している。
著者
杉本 希映 庄司 一子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.289-299, 2006-09-30
被引用文献数
2

本研究では,「居場所」の心理的機能の構造とその発達的変化について検討した。「居場所」の心理的機能の構造を分析するために,自由記述により得られた居場所の選択理由と先行研究を検討して作成した尺度を用いて,小・中・高校生を対象に調査を行った。その結果,「居場所」の心理的機能には,「被受容感」「精神的安定」「行動の自由」「思考・内省」「自己肯定感」「他者からの自由」の6因子があることが明らかとなった。「居場所」を他者の存在により,「自分ひとりの居場所」「家族のいる居場所」「家族以外の人のいる居場所」に分類した結果,小学生では「家族のいる居場所」,中・高校生では「自分ひとりの居場所」が多いことが明らかとなり,発達段階により選択される「居場所」が異なってくることが示された。この3分類により心理的機能の比較分析を行った結果,それぞれの「居場所」の固有性が明らかとなった。
著者
津留 宏
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.12-20, 1956-06-30

小学校五年生を通してみた603世帯,約3500名の家族相互の称呼において,比較的多数を占めた呼び方は次の通りである。夫→妻1.名前の呼び捨て(45%)2.「お母ちやん」「お母さん」(合せて29%)妻→夫「お父さん」「お父ちやん」(合せて73%)子→父1.「お父ちやん」(67形)2.「お父さん」(27%)子→母1.「お母ちゃん」(78%)2.「お母さん」(18%)父→子1.名前の呼び捨て(83%)2.名前または略名に「ちゃん」付け(13%)母→子1.名前の呼び捨て(67%)2.右前または略名に「ちゃん」付け(27%)「おじいさん」「おじいちゃん」(合せて70%)母→祖父「おじいさん」「おじいちゃん」(合せて80%)父→祖母「おばあさん」「おぱあちゃん」(合せて70%)母→祖母「おばあさん」「おぱあちやん」(合せて80%)祖父→父1.名前の呼び捨て(60%)2.「お父さん」「お父ちゃん」(合せて25%)祖母→父1.名前の呼び捨て(44%)2.「お父さん」「お父ちゃん」(合せて40%)祖父→母1.名前の呼び捨て(80%)2.「お母さん」「お母ちゃん」(合せて24%)祖母→母1.名前の呼び捨て(63%)2.「お母さん」「お揖ちゃん」(合せて10%)兄→弟1.名前の呼び捨て(71%)2.名前または略名に「ちゃん」付け(23%)姉→弟1.名前の呼び捨て(60%)2.名前または略名に「ちやん」付け(32%)兄→妹1.名前の呼び捨て(66%)2.名前または略名に「ちゃん」付け(32%)姉→妹1.名前の呼び捨て(55%)2.名前または略名に「ちゃん」付け(43%)弟→兄1.「兄ちゃん」「お兄ちゃん」またはこれの付くもの(合せて62%)2.名前または略名に「ちゃん」付け(17%)妹→兄1.「兄ちゃん」「お兄ちゃん」またはこれの付くもの(合せて59%)2.名前または略名に「ちゃん」付け(22%)弟→姉1.「姉ちゃん」「お姉ちゃん」またはこれの付くもの(合せて63%)2.名前また略名に「ちゃん」付け(17%)妹→姉1.「姉ちゃん」「お姉ちゃん」またはこれの付くもの(合せて68%)2.名前または略名に「ちやん」付け(20%)尚,調査結果全般を通し次のような傾向が看取される。1 夫婦間の称呼は一般に甚だ不明確であり,持に妻→夫の場合は暖昧である。多くは子が父を呼ぶ呼び方を借りている。2 一般標準語とされる子→父母の「お父さん」「お母さん」,弟妹→兄姉の「兄さん」「姉さん」は意外に少い。一般に家族間は「さん」よりは「ちゃん」付けが多い。但し「おじいさん」「おばあさん」はこの限りでない。3 夫婦間及び子,祖母の父に対する称呼よりみて,同母よりは父に対して敬意が強い。4 きょうだい間の呼び方は,よく家庭の教育的配慮の如何を反映している。5 農村には全く不当な称呼がかなりみられる。住宅地にはこれがない。一般に敬称の点では農林工業地がより乱れている。6 家族称呼は一般に子供本位の呼び方になろうとする。日本の家庭の子供本位的性格を表わしている。7 家族称呼にも明らかに過渡期的様相がみられる。即ち従来の標準的な家族称呼が崩れて新しい称呼が生じつつある。旧い称呼の権威的,序列的,形式的なものが,より平等的,人間的,親愛的な呼び方にとって代わられようとしている。恐らくこれは家族制度の変化と共に,封建的家族意識の減退,個人意識の昂揚等によるものであろう。8 尤も農村と住宅地の一部では標準的な称呼に尚,.関心が強いようにみえる。これは次のように解せられる。即ち日本の家族称呼の標準語はやや保守的たものであるが,農村はその家族制度の保守性からこれを残し,住宅地の知識階級では保守的というのではなくむしろ教育的配慮から標準語に依ろうとしているのであろう。従って両方の性格を欠く商工地では最も称呼の乱れがみられるのである。以上,家族称呼は日本の現下の家族関係の特徴のいくつかを示唆したが,こうした大きな問題については,これはやはり補助資料的にとどまるものと思われる。
著者
都筑学 岡田有司 高坂康雅
出版者
日本教育心理学会
雑誌
日本教育心理学会第56回総会
巻号頁・発行日
2014-10-09

小中一貫校・非一貫校における子どもの適応・発達(2)-コンピテンスに着目して-○ 都筑 学(中央大学) 岡田有司(高千穂大学) 高坂康雅(和光大学) 問題と目的 学校教育の現場においては,小学校と中学校の連携や連続性の重要性が指摘されているが,それに関する実証的な研究は十分になされていないのが現状である。本研究では,コンピテンスの発達という観点から,小中一貫校と非一貫校の比較検討を行い,得られた実証データから2つの教育制度で学ぶ児童生徒の特徴を明らかにする。方 法調査対象者・調査時期 研究(1)と同じ。調査内容 児童用コンピテンス尺度(櫻井, 1992)を用いた。4下位尺度の内,16項目を使用した(「学業(項目1,5,9,13;α=.85」,「友人関係(項目2,6,10,14;α=.58であったため,項目10を除いて3項目で得点化した(α=.63))」,「運動(項目3,7,11,15;α=.80」,「自己価値(項目4,8,12,16;α=.77)。結果と考察 コンピテンスの4下位尺度について,学校形態(一貫/非一貫)×学年(4年~9年(中3))の2要因分散分析をおこない,交互作用が有意であった場合は,単純主効果の検定を行った。 学業では,交互作用が有意であり,一貫校・非一貫校ともに学年間での差異が見られた。一貫校では4年は6・8・9年より高く,6年は8・9年より高く,4・5年は7年より高かった。 友人関係では,交互作用が有意であり,5・6・9年において非一貫校は一貫校よりも得点が高かった(Figure 1)。 運動でも,交互作用が有意であり,4・5・6年において,非一貫校は一貫校よりも得点が高かった。7・8・9年では,一貫校と非一貫校との間に差は見られなかった。 自己価値でも,交互作用が有意であり,4・5・6年において,非一貫校は一貫校よりも得点が高かった。7年では,一貫校が非一貫校よりも得点が高かった。8・9年では,一貫校と非一貫校との間に差は見られなかった(Figure 2)。 以上の結果をまとめると,おおよそ次のようなことが示された。小学校の段階では,小中一貫校よりも非一貫校の児童の方が,友人関係(5~6年)・運動(4~6年)・自己価値(4~6年)のコンピテンスが高いことが明らかになった。中学校段階になると,小中一貫校と非一貫校との間に逆転現象が生じ,小中一貫校の7年は非一貫校の中1よりも,自己価値が高くなっていた。ただし,友人関係においては,4~6年に引き続いて,非一貫校の中1の方が一貫校の7年よりも高かった。 小学校段階において,非一貫校と小中一貫校との間にコンピテンスに差が見られるのは,小中一貫校では,小学校と中学校が同一の敷地にあって,4~6年生が,すぐ間近にいる7~9年生と自分を相対評価する機会が多いことによるのかもしれない。また,両者の間のコンピテンスの差が,中学校段階で見られなくなるのは,非一貫校での小学校・中学校間の移行にともなう適応等の問題が関係しているかもしれない。今回は横断的なデータによる分析であるために,因果関係を明らかにするには限界がある。今後は,縦断的なデータによって,上記のような推論を実証的に検証していくことが課題であるといえる。付記:本研究は,科学研究費助成事業(基盤研究(B)課題番号24330858:代表・梅原利夫)の助成を受けたものである。
著者
高坂康雅 都筑学 岡田有司
出版者
日本教育心理学会
雑誌
日本教育心理学会第56回総会
巻号頁・発行日
2014-10-09

問題と目的 近年,全国的に公立小中一貫校の設置が行われている。その目的は,小・中学校間の連携・連続性を高め,「中1ギャップ」を解消し,児童生徒の学校適応感や精神的健康を向上させることにある。しかし,実際に,小中一貫校が非一貫校に比べ児童生徒の学校適応感や精神的健康を促進しているという実証的な検討は行われていない。 そこで,本研究では,学校適応感と精神的健康について,小中一貫校と非一貫校の比較検討を行うことを目的とする。方 法調査対象者 公立小中一貫校に在籍する児童生徒2269名と非一貫校に在籍する児童生徒6528名を調査対象者とした。調査時期 2013年5月~2014年1月に調査を実施した。調査内容 (1)学校適応感:三島(2006)の階層型学校適応感尺度の「統合的適応感覚」3項目を使用した。(2)精神的健康:西田・橋本・徳永(2003)の児童用精神的健康パターン診断検査(MHPC)の6下位尺度(「怒り感情」,「疲労」,「生活の満足度」,「目標・挑戦」,「ひきこもり」,「自信」)各2項目を使用した。結果・考察統合的適応感覚及びMHPC6下位尺度について,学校形態(一貫/非一貫)×学年(4年~9年(中3))の2要因分散分析を行い,交互作用が有意であった場合は,単純主効果の検定を行った。以下では,小中一貫校と非一貫校との間で有意な差がみられた箇所を中心に結果を記述する。 まず,統合的適応感覚では交互作用が有意であり,4年・5年において,非一貫校の方が一貫校よりも得点が高かった(Figure 1)。 MHPCの「目標・挑戦」でも交互作用が有意であり,4年・5年・6年において,非一貫校の方が一貫校よりも得点が高かった。また,「自信」でも交互作用が有意で,4年・5年・6年において,非一貫校の方が一貫校よりも得点が高かった(Figure 2)。 「疲労」,「ひきこもり」,「生活の満足度」では,学校形態の効果が有意であり,「疲労」と「ひきこもり」では一貫校の方が高く,「生活の満足度」では,非一貫校の方が高かった。 これらの結果から,全体的には,小中一貫校よりも非一貫校の方が学校適応感も精神的健康も高いことが明らかとなった。特に,小学校時点では,学校適応感や「目標・挑戦」,「自信」は非一貫校の方が高かったが,換言すれば,非一貫校の場合,中学生になると,適応感や「生活の満足度」,「自信」は一貫校と同程度まで低減する。このような低減が一貫校ではみられないという点では,「中1ギャップ」の解消に一定の効果がある可能性もあるが,一方で,一貫校における小学校時点での学校適応感や精神的健康の低さがなぜ生じているかは今後検討する必要がある。付記:本研究は,科学研究費助成事業(基盤研究(B)課題番号24330858:代表・梅原利夫)の助成を受けたものである。
著者
岡田有司 高坂康雅 都筑学
出版者
日本教育心理学会
雑誌
日本教育心理学会第56回総会
巻号頁・発行日
2014-10-09

問題と目的 小中非一貫校では小学5~6年生になれば上級生になるが,一貫校ではこうした扱いはなされず人間関係も同様の関係が継続する。こうした環境の違いは子どもの独立心や他者との関係の在り方に差異を生じさせている可能性がある。そこで,本研究では独立性・協調性に注目し小中一貫校と非一貫校の違いについて明らかにする。方 法調査対象者・調査時期 研究(1)と同じ。調査内容 (1)独立性・協調性:相互独立的・相互協調的自己観尺度(高田,1999)を用いた。4下位尺度の内,12項目を使用した(「相互独立性:個の認識・主張(項目1・5)」「相互独立性:独断性(項目3・7・9・11)」「相互協調性:他者への親和・順応(項目2・6・10)」「相互協調性:評価懸念(項目4・8・12)」)。結果と考察 先行研究と同様の4つの因子から捉えられるかを確認したが,同様の因子は得られなかった。そこで,探索的に項目ごとに学校形態(一貫/非一貫)×学年(4年~9年(中3))の2要因分散分析を行い,交互作用が有意であった場合は,単純主効果の検定を行った。以下では,小中一貫校,非一貫校の間で差がみられた箇所を中心に結果を記述する。 独立性に関する項目では,項目1では交互作用が有意であり,4・6年において非一貫校の得点が高かった(Figure1)。項目5でも交互作用が有意傾向であり,4・5・6年で非一貫校の得点が高かった。項目7では学校形態の主効果がみられ,一貫校の得点が高くなっていた。項目11では交互作用が有意傾向だったが,その後の分析では有意差は検出されなかった。協調性に関する項目では,項目2で交互作用が認められ,4・5・6年で非一貫校の得点が高かった(Figure2)。項目6でも交互作用が示され,4・5年で非一貫校の得点が高くなっていた。項目10においても交互作用が有意であり,4年では非一貫校の得点が高くなっていたが,6・7年では一貫校の得点が高くなっていた。項目4では学校形態の主効果が有意で,非一貫校の得点が高いことが示された。項目8では交互作用が示され,4年では一貫校の得点が高くなっていた。 以上の結果から,非一貫校の小学校高学年は一貫校の者に比べ,自分を理解し意見を持つという意味での独立性や,周囲と親和的な関係を築くという意味での協調性が高いことが示唆された。付記:本研究は,科学研究費助成事業(基盤研究(B)課題番号24330858:代表・梅原利夫)の助成を受けたものである。
著者
斉藤 誠一
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.336-344, 1985-12-30
被引用文献数
3

The purpose of this study was to investigate the relationship between pubertal growth and sex-role formation. In a first study, a sex-role scale for early adolescents, containing 9 masculine items and 6 feminine items, was constructed. In a second study, recognition and acquisition of masculine traits and feminine traits were related to variables concerning pubertal growth. The main results were as follows: 1)Height had little influence on either recognition or acquisition of masculine traits and feminine traits. 2)Mature boys showed significantly higher level of masculine trait acquisition than immature boys. 3)Both boys and girls who were satisfied with the important parts of their bodies showed significantly higher level of masculine and feminine trait acquisition. 4)It was found in both males and females that the level of acquisition of masculine traits and feminine traits were associated with some of the variables concerning pubertal growth, without recognition of them.
著者
高垣 マユミ 中島 朋紀
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.472-484, 2004-12-30
被引用文献数
3

本研究は, 小学4年生を対象とした一斉形態の理科授業の協同学習において, 「知識の協同的な構成が生じている場面においては, どのような相互作用がみられるのか」また, 「そのような相互作用を教室において生じさせる要因は何か」について検討することを目的とした。授業の構成は, ブリッジングアナロジー方略(Clement, 1993)を教授的枠組みに据え, 学習者の既有知識から出発した「話し合い活動」による協同的探求を中心とし, 解釈上の疑問や問題点を検証する場として実験・観察を位置づけた。理科授業の協同学習における発話事例の解釈的分析から, 以下の結果を得た。1)知識の協同的な構成には, 「個別的」VS.「統合的」の二項対立的な相互作用のスタイル間の揺さぶりによる組織的変化が必要であることが示唆された。2)科学の基礎概念についての対話者間の解釈上の違い, 及び, 「アナロジー」, 「可視化」という具体的事象の理解を深める道具立てにより, 「操作的トランザクション」の対話が生成され, 相互作用の組織的な変化が生起することが見出された。
著者
水野 治久 石隈 利紀
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.530-539, 1999-12-30

我が国においてカウンセリングが専門的サービスとして認められつつあるが,援助を受ける側からの被援助志向性や被援助行動に関する研究はほとんど実施されていない。一方で,米国ではこの領域に関する研究は20年ほど前から行われている。米国における被援助志向性および被援助行動の研究を分類した結果,1)デモグラフィック要因との関連,2)ネットワーク変数との関連,3)パーソナリティ変数との関連,4)個人が抱えている問題の深刻さ,症状との関連の4領域に集約された。研究の課題として,1)他の研究を踏まえた上での援助志向性,被援助行動の定義の必要性,2)被援助志向性が低い人に対する介入や被援助志向性が低い人のための援助システムの構築へ結びつく研究の必要性があげられる。このような研究を通して,我が国の専門・職業的心理学の構築の必要性が示唆された。
著者
落合 良行 佐藤 有耕
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.55-65, 1996-03-30
被引用文献数
2

The purpose of this study was to examine friendship in adolescence and how it changed in each developmental stage. A questionnaire regarding friendship was created. Subjects were 579 students. They were junior high-school, high-school and university students. As the result of the factor analysis, the friendship was categorized by the two-dimensional space. One axis conserned the intimacy of their friendship ; and the other axis consisted on the number of their friends. Junior high school students tended to make many friends but their relationships were not so intimate. As they grew older, they tried to have more intimate friendships with just a few friends.
著者
及川 恵 坂本 真士
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.106-119, 2007-03

本研究では,認知行動療法の理論に基づき,抑うつ予防を目的とした心理教育プログラムを考案し,その効果を検討した。プログラムでは,大学の心理学関連の講義時間を活用し,計7回の介入授業を実施した。プログラムの効果を検討するため,プログラム実施前後に,介入群と統制群に対して,抑うつに関連する思考や情動にうまく対処することができるという確信,すなわち抑うつ対処の自己効力感と複数の適応指標からなる質問紙を実施した。まず,各授業終了時の感想シートの検討から,授業内容はよく理解され,興味関心を持って臨める内容であったと思われる。次に,抑うつ対処の自己効力感を従属変数とし,群と時期を独立変数とする二要因分散分析を行った。その結果,交互作用が有意であり,介入群は統制群に比べ,プログラム実施後に効力感が増加していることが示された。下位目標ごとの検討においても概ね同様の結果が得られ,本プログラムの有効性が示唆された。なお,プログラムの間接的な効果を把握するため,自己効力感と適応指標の変化量の相関を検討した結果,介入群において自己効力感の増加が現状満足感の増加と関連することが示唆された。
著者
品川 不二郎
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.1-11, 1956-06-30

1. Purpose This study has two main objectives: The first is to provide some clinical data to justify Dr. Wechsler's idea of general intelligence the behavior theory and to prove Dr. Alexander's idea of X and Z factors the temperamental and personality factors theory. The second objective is to provide my own idea the life history theory. 2. Method After I finished the Japanese standardization of WISC in 1953, I started clinical case study of children and analyzed more than a thousand cases. 3. Results What I have found is as follows: By measuring children's intelligence with WISC, we not only can find personality factors, but also can diagnose children's life histories how children are brought up and what their parents' attitudes are like. and so on. I have listed ten illustrative cases showing brief case histories and Verbal I.Q., Performance I.Q., Total I. Q., and Scaled-Score profiles.
著者
水野 将樹
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.170-185, 2004-06-30
被引用文献数
1

青年の友人関係について扱った先行研究の多くはアイデンティティ理論などの視点に基づくトップダウン的なものであり,主体としての青年の認識が扱われることはなかった。そこで,本研究では既存の理論に基づく仮説検証型研究ではなく,あくまで主体である青年自身から得たデータに基づいて知見を得る質的研究,その中でも方法論が整っているグラウンデッド・セオリー・アプローチを採用して青年が信頼できる友人との関係をどのように捉えているかというリサーチクエスチョンの下,調査・分析を行った。その際,「信頼」を鍵概念に,「友人」は親友などに限定し,実情に合わせて「青年」の範囲を18〜30歳とするなどの工夫をした。学生,フリーター,社会人の男女19名に対し半構造化面接を実施し,得られた発話データをカテゴリーに分類することを通じて分析した。その結果,友人との信頼関係の構造・形成・意味づけについて,6つの仮説的知見を得て,それに基づいて青年の友人との信頼関係認識についての仮説モデルを生成した。研究全体としては,青年は友人との信頼関係を「自分」という存在と不可分に捉えていること,その信頼関係は「安心」を中心とした関係であること,などの示唆が得られた。
著者
岩男 卓実
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.11-20, 2001-03-30
被引用文献数
1

本研究の目的は,文章の準備書きにおいて,図的な外的表象である階層的概念地図を利用する効果を検討することである。この時,文的な外的表象である箇条書きを利用する群および,準備書きを作成せず,知識語り方略で文章を書く群と比較することで,文章生成のプランニングにおける外的表象の働きについて検討した。更に,準備書きに表現された因果関係が,文章生成に与える影響を調べた。準備書きにおいて外的表象を利用した2つの群の文章は,準備書きを作成しない群のそれよりも,量も多く,質的にも優れていた。準備書きを作成する2つの群を比較したところ,図的な外的表象を準備書きとして利用する概念地図群の被験者は,箇条書き群の被験者に比べ,より分かりやすい文章をより短時間で書くことができていた。
著者
田島 充士
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.318-329, 2008-09-30
被引用文献数
1

本研究では学習者が,科学的概念と日常経験知との関係を,対話を通して解釈できることを「理解」と捉えた。そして,この理解達成を促進する方法として,教師が学習者らの発話を引用しながら,より深い解釈を行う対話へ誘導する「再声化(O'Connor & Michaels,1996)」に基づいて作成した介入法を取り上げ,その効果の検討を行った。大学生26名を対象に,2名1組の実験参加者組に分かれ,対話を通して課題とした科学的概念と日常経験知の関係を解釈するよう求めた。そして,ここで作成された解釈が両者の関係を十分に説明できないものであった場合,さらに対話を続けてもらい,同時に調査者が再声化介入法に基づいた介入を行った。その結果,再声化介入には,1)理解の達成に効果があるトランザクション対話(Berkowitz & Gibbs,1983)を増加させ,2)説明内容における日常経験知のメタファーも増加させる効果があり,最終的に概念理解を達成できる実験参加者を有意に多く生じさせたことが明らかになった。以上の結果から再声化介入法には,理解達成を促進する効果があると考えられ,本介入を活用した新たな授業実践の可能性について考察がなされた。
著者
詫摩 武俊
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.237-240,254, 1968
被引用文献数
5

延べ組数にして543組のMZ, 134組のDZに集団式知能検査を実施した。<BR>どの知能検査の結果においても, またほとんどすべてのサブテストの結果においてもMZ間の相関はDZ間の相関より高く, 知能検査の成績を規定している機能に遺伝性が働いていることは疑い得ない。しかし, 遺伝性の強さは, サブテストの種類によって差があり, 一般に精神作用の速度をとくに必要とする問題, 言語記憶に関する問題, 計算に関する問題, 図形の空間的配置に関する問題では, 遺伝性係数が高く, これに対して過去の経験にてらして判断する問題では低かった。この資料は知能を構成する下位機能の特色について知る一つの手がかりであるが, このデーターの一義的な解決はまだ困難である。