著者
前田 陽一郎 花香 敏
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.21, no.5, pp.722-733, 2009-10-15 (Released:2010-01-12)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

一般に,自律エージェントや自律移動ロボットに効率的な行動学習をさせるためには動物の学習メカニズムから工学的応用を行なうことは有効な手法であることが知られている.中でも,動物行動学,行動分析学や動物のトレーニング(調教)などで広く用いられている「Shaping」という概念が最近注目されている.Shapingは学習者が容易に実行できる行動から複雑な行動へと段階的,誘導的に強化信号を与え,次第に希望の行動系列を形成する概念である.本研究では繰り返し探索により自律的に目標行動を獲得できる強化学習にShapingの概念を取り入れたShaping強化学習を提案する.有効なShaping効果を検証するために強化学習の代表的なQ-Learning,Profit Sharing,Actor-Criticの3手法を用いた異なるShaping強化学習を提案し,グリッド探索問題のシミュレータを用いて比較実験を行なった.さらに,実際の動物などの調教の場などで知られている段階を追って行動を強化する「分化強化」という概念をShaping強化学習に取り入れた分化強化型Shaping Q-Learning(DR-SQL)を提案し,シミュレーション実験により手法の有効性が確認された.
著者
辻 明日夏 倉重 賢治 亀山 嘉正
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.337-346, 2008-06-15 (Released:2008-11-04)
参考文献数
19
被引用文献数
3 3

本研究では,いくつかの料理を組み合わせることでメニューの作成を行う.この組み合わせにより,栄養のバランスや料理同士の相性,各カテゴリーでの品数などを考慮する.バランスの取れた料理を作成するためには,エネルギーと脂肪,炭水化物,たんぱく質,食物繊維,塩分などの摂取量を考慮する必要がある.各栄養素に対する必要摂取量は,個人によって異なっており,料理を組み合わせることによって,その値を完全に一致させることは困難である.通常,これらの量は,完全に一致させる必要はなく,ある程度の範囲内で収めれば良いと考えられている.そこで,各栄養素に対する必要摂取量をファジィ数で表現し,それぞれの栄養素に適したメンバシップ関数を作成する.バランスの取れたメニューを作成するためには,最も低いメンバシップ関数値の最大化を目指す.その他,料理の相性や料理数は,通常の制約条件として取り扱うこととした.この問題は,ファジィ数理計画問題として定式化され,180皿の料理による数値計算例によって,その有効性を明らかにした.
著者
濱砂 雅人 伊藤 暢浩 幸塚 義之
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集 第30回ファジィシステムシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.164-167, 2014 (Released:2015-04-01)

KinectはMicrosoftから発売されているセンサーデバイスである.Kinectには人間の骨格情報を取得する機能が搭載されている.しかし,イベント会場の様な人の往来が見込まれる環境では,誤った人物を追跡してしまう場合がある.理由として,センサーが遮られるとKINECTから追跡対象者の情報が失われるためである.本研究では,センサーが遮られる直前の追跡対象者の位置情報を保持することで一度Kinectのセンサーから消失した人物を再追跡するシステムを提案し,実装・検証を行った.
著者
小林 一行 御園 祐介 渡辺 嘉二郎 大久保 友幸 栗原 陽介
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.90-99, 2009-02-15 (Released:2009-06-18)
参考文献数
15
被引用文献数
1 2

本論文では,Intelligent Ground Vehicle Competition(IGVC)のナビゲーション競技のルールに準拠したウェイポイントナビゲーションシステムの実装例について述べる.IGVCとは,1993年から米国で開催されている自律走行車大会であり,自律型移動ロボットの技術向上を目指した大会である.毎年開催され複数の大学が参加している.その競技の一つとしてナビゲーション競技が設けられている.ナビゲーション競技とは,GPSによる位置検出を想定しエリア内に存在する障害物を避けながら,あらかじめ指定された複数ウェイポイントを何点通過できるか速さと正確さを競う競技である.ウェイポイントナビゲーションは,(1)移動ロボット上からみたウェイポイントの位置または方位の把握による長期経路プランニング,(2)外界センシングと障害物回避のための短期経路プランニング,そして(3)これら情報に基づく自律制御からなる.本論文では,これら一連の解決方法に,センサとして GPSとレーザレーダそれにジャイロ,速度計を用い,総合的な状況判断に複素拡張カルマンフィルタをベースとした SLAMアルゴリズムにより高精度なナビゲーションを実現する.さらに,与えられたウェイポイントマップに従い走行しながら,自己軌跡マップ,ランドマークマップを同時に作成する方法を提案した.提案する方法を実証するため実機でリアルタイム制御を行い,その有効性を確認した.
著者
田中 貴紘 米川 隆 吉原 佑器 竹内 栄二郎 山岸 未沙子 高橋 一誠 青木 宏文 二宮 芳樹 金森 等
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集 第31回ファジィシステムシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.375-378, 2015 (Released:2016-02-26)

近年,高齢ドライバによる交通事故が増加している.加齢に伴う身体機能・認知機能の変化の影響が指摘されているが,自動車は高齢者の重要な移動手段であるため,高齢者が安心・安全に運転できるよう支援が必要である.そこで本研究では,高齢ドライバの運転支援を行うドライバエージェントを提案した.エージェントは,情報提供や注意喚起などの運転支援と,運転行動の振り返りにより改善を促すフィードバック支援を行う.本報告では,エージェントによる運転支援方法を検討するため,運転指導員による指導方法の分析を行った.その結果,指導内容の分類と被指導者が受ける印象に関する知見が得られたため,これを報告する.
著者
小林 一行 御園 祐介 渡辺 嘉二郎 大久保 友幸 栗原 陽介
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.90-99, 2009-02-15
参考文献数
15
被引用文献数
2 2

本論文では,Intelligent Ground Vehicle Competition(IGVC)のナビゲーション競技のルールに準拠したウェイポイントナビゲーションシステムの実装例について述べる.IGVCとは,1993年から米国で開催されている自律走行車大会であり,自律型移動ロボットの技術向上を目指した大会である.毎年開催され複数の大学が参加している.その競技の一つとしてナビゲーション競技が設けられている.ナビゲーション競技とは,GPSによる位置検出を想定しエリア内に存在する障害物を避けながら,あらかじめ指定された複数ウェイポイントを何点通過できるか速さと正確さを競う競技である.ウェイポイントナビゲーションは,(1)移動ロボット上からみたウェイポイントの位置または方位の把握による長期経路プランニング,(2)外界センシングと障害物回避のための短期経路プランニング,そして(3)これら情報に基づく自律制御からなる.本論文では,これら一連の解決方法に,センサとして GPSとレーザレーダそれにジャイロ,速度計を用い,総合的な状況判断に複素拡張カルマンフィルタをベースとした SLAMアルゴリズムにより高精度なナビゲーションを実現する.さらに,与えられたウェイポイントマップに従い走行しながら,自己軌跡マップ,ランドマークマップを同時に作成する方法を提案した.提案する方法を実証するため実機でリアルタイム制御を行い,その有効性を確認した.
著者
後藤 明美 松田 修三 小沢 和浩 坂本 憲昭 但馬 文昭 宮武 直樹
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集 第29回ファジィシステムシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.182, 2013 (Released:2015-01-24)

イチョウの黄葉は,秋の気温低下とともに進んでいくが,気温環境が黄葉の仕方にどのように影響を与えているかに関する定量的な分析は十分なされていない.本研究は、気候指標としてイチョウの黄葉を利用して気温環境を定量化し、都市の小気候区や微気候区の気温環境を把握することである.そのため東京都の多摩ニュータウン通りを観測のモデル地区として定め,毎年観測を行っている.2010年,2011年の観測データをもとに提案した黄葉の進行モデルは2012年についてもよい一致が見られた.このモデル式をもとに黄葉の進行の速さと黄葉期間の関係および黄葉の進行と気温との関係について前回の報告でおこなった.ここではイチョウの黄葉の様子を気候指標としてさらに明確なものにするために,観測地域におけるイチョウ周辺の建物や道路などの熱分布をサーモトレーサにより測定し,イチョウの黄葉と周辺の熱環境との関係について調べたので報告する.
著者
北埜 裕子 中島 智晴 石渕 久生
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集
巻号頁・発行日
vol.21, pp.49, 2005

本研究では,戦略が不明な先物取引エージェントの注文戦略を理解可能にするためのファジィルール抽出手法を提案する.ファジィルールはエージェントの注文履歴から抽出される.また,人間が理解しやすい形で抽出されたファジィルールを視覚化することにより,シンプルで高性能な行動分析が可能となる.数値実験では,提案手法の効果を確認するために,抽出ルールを用いて注文を行うエージェントを構築し,その性能を調査する.
著者
宮本 定明 馬屋原 一孝 向殿 政男
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本ファジィ学会誌 (ISSN:0915647X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.548-557, 1998-06-05
被引用文献数
26

本論文では, ファジィC-平均法における新しい手法としてエントロピー関数を正則化項としてもつエントロピー正則化法を提案すると同時に, 従来のファジィc-平均法とエントロピー正則化法により生成されるファジィ分類関数を比較する.エントロピーにもとづく方法として, エントロピー最大化法が既に提案されているが, 正則化の概念を導入することによって, エントロピーを用いる方法を, 一般的なファジィc-平均法の交互最適化アルゴリズムの枠において議論できるようになる.このことは, ファジィc-多様体法などのファジィc-平均法の変形をエントロピーを用いて行うことができることを意味している.また, 従来のファジィc-平均法から生成されるファジィプロトタイプ分類関数に対応するプロトタイプ分類関数がエントロピー正則化から得られる.これら2種類の分類関数の理論的性質を調べ, 計算幾何学におけるVoronoi図との関連を明らかにする.数値例によって, これら2つの方法によるクラスタリング結果とファジィ分類関数を比較する.
著者
渡辺 桂吾 原 勝弘
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本ファジィ学会誌 (ISSN:0915647X)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.647-657, 1995
参考文献数
16
被引用文献数
1

従来のファジィ制御器のほとんどのものは, 入力データ関数型推論や簡略化推論を利用しており, それらのファジィ推論の後件部任意パラメータ等を何らかの方法で合理的に設計する有効な手段は知られていない.従って, それらをファジィ・ニューラルネットワークとして実現しても必ずしも計算時間の短縮や学習パラメータ数の低減化に関しては効果的ではない.本論文では, 前件部メンバシップ関数としてガウシアン型を利用する場合, その平均値を後件部の関数構成に利用する平均値関数型推論に基づくファジィ・ガウシアン・ニューラルネットワークを提案する.この方法によると, 平均値以外の後件部任意パラメータの初期値を予め制御ルールに依存しないVSS制御の安定な切り換え面(または線)のパラメータとして設計することが可能となる.従って, 後件部任意パラメータが制御ルールに依存する入力データ関数型推論や簡略化推論法に基づくファジィ・ニューラルネットワーク制御器に比べて, 後件部の学習パラメータ数を大幅に低減化させることが可能となり, 学習制御器としての計算時間の短縮が可能となることを示す.本手法の有効性は2輪独立駆動型移動ロボット車の軌道追従制御のシミュレーションにて示す.
著者
室伏 俊明
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.163, 2014-08-15 (Released:2017-11-18)

非加法的測度とは,菅野によって定義されたファジィ測度と実質的に同義である.測度は,現代数学における基本概念の1つであり,外延量の数学的表現である.ここで外延量とは,長さ,面積,体積,質量などの広がりに規定される量をいう.測度とは,性質 n(0/)=0 と加法性「 A∩B =0/ ⇒ n( A∪B )= n(A)+ n(B)」をもつ,全体集合 X の部分集合族 上に定義された関数 n: →[ 0, ∞] である(厳密には はv 集合体であり, n はv 加法性をもつ).P(X)=1 ,すなわち全体集合 X の値が1である測度 P は確率測度と呼ばれ,これは確率の数学的表現である.測度を対象とする数学理論を測度論と言う.1972 年,確率法則に縛られない主観的な確からしさを表すため,菅野はファジィ理論に,確率測度の持つ加法性をより弱い条件である単調性「A⊆B ⇒ n(A) μ(B)」に置き換えて定義されるファジィ測度を導入した(ファジィ測度の当初の定義では,連続性などの条件も課せられていたが,その後の数学的研究ではそれらの条件は課されないことも多い.ここでもそれらは考えない).このファジィ測度はファジィ理論における概念だが,ファジィ集合とは数学的に無関係である.一方,数学においても測度論に,測度の持つ加法性を単調性に置き換えて定義される非加法的測度が導入され,測度論を拡張する研究が行なわれてきている.ファジィ測度と非加法的測度の数学的研究は独立に行なわれてきたが,近年,それらの研究は互いに影響し合い,融合されつつある.ファジィ測度という名称はファジィ集合と数学的に関係があると誤解されやすいこと,非加法的測度という名称の方が中立的な印象を与えることなどから,ファジィ理論においても,ファジィ測度は非加法的測度と呼ばれることが多くなってきている.
著者
渡辺 桂吾 原 勝弘
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本ファジィ学会誌 (ISSN:0915647X)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.647-657, 1995-06-15 (Released:2017-09-24)
参考文献数
16

従来のファジィ制御器のほとんどのものは, 入力データ関数型推論や簡略化推論を利用しており, それらのファジィ推論の後件部任意パラメータ等を何らかの方法で合理的に設計する有効な手段は知られていない.従って, それらをファジィ・ニューラルネットワークとして実現しても必ずしも計算時間の短縮や学習パラメータ数の低減化に関しては効果的ではない.本論文では, 前件部メンバシップ関数としてガウシアン型を利用する場合, その平均値を後件部の関数構成に利用する平均値関数型推論に基づくファジィ・ガウシアン・ニューラルネットワークを提案する.この方法によると, 平均値以外の後件部任意パラメータの初期値を予め制御ルールに依存しないVSS制御の安定な切り換え面(または線)のパラメータとして設計することが可能となる.従って, 後件部任意パラメータが制御ルールに依存する入力データ関数型推論や簡略化推論法に基づくファジィ・ニューラルネットワーク制御器に比べて, 後件部の学習パラメータ数を大幅に低減化させることが可能となり, 学習制御器としての計算時間の短縮が可能となることを示す.本手法の有効性は2輪独立駆動型移動ロボット車の軌道追従制御のシミュレーションにて示す.
著者
稲垣 敏之
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.20-28, 2003-02-15 (Released:2017-05-29)
参考文献数
31
著者
真部 雄介 松嵜 晃司 菅原 研次
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.711-722, 2015-10-15 (Released:2015-11-13)
参考文献数
17
被引用文献数
1

加速度センサやジャイロセンサが搭載されたスマートフォンなどの携帯端末が広く普及したことを受け,そのようなセンサから得られる情報を元に,歩行者の状態や携帯端末の所持状態,あるいは人物識別を実現しようという取り組みが行われている.本研究では,人物識別を目指した既存研究の多くが,平地での歩行状態のみを対象としているものが多い点に着目し,複数の歩行状態で人物識別を実現する方法を提案する.具体的には,平地歩行・階段昇行・階段降行の3種類の歩行状態を識別し,歩行状態別に定義した識別器を用いて人物識別を実現する.10人の被験者を対象とした実験の結果,最も高い精度が得られた線形判別分析において,歩行状態識別率95.7%,人物識別率85.0%(平地歩行),90.0%(階段昇行),77.0%(階段降行)が得られた.また,歩行状態識別と人物識別を段階的に行った場合の人物識別率の推定値は80.4%となった.さらに,提案手法と歩行状態の区別をせずに人物識別を行った場合との比較を行った結果,使用した5種類の識別器(k近傍法,決定木,単純ベイズ分類器,線形判別分析,サポートベクターマシン)のうち,k近傍法を除く4つの識別器で提案手法による人物識別率が高くなり,歩行状態別に人物識別を行うことによる識別精度改善効果が確認された.