著者
重藤 大地 中島 敦司 山本 将功
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 = / the Japanese Society of Revegetation Technology (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.118-121, 2006-08-31
参考文献数
11

本研究では,ヒガンバナの開花と温度の関係について検討することを目的として,人工気象室で育成実験を行った。人工気象室の温度条件は,常に外気に追従した条件,常に外気に対してそれぞれ1.0,2.0,3.0℃ 高い条件の4 種類とした。そして,加温処理を開始した日はそれぞれ6月6日,6月28日,7月15日,8月4日,8月26日,9月5日とした。その結果,供試植物は夏期から秋口である開花期まで継続して外気より高温条件下におかれると開花期に外気より高温条件下でも開花可能となった。特に6月6日から7月15日までに1.0℃ から3.0℃ の加温条件下におかれた個体は,より高温条件下でも開花した。このことから,夏期の気温上昇によってヒガンバナの開花可能温度は上昇すると考えられた。一方,夏期における1.0℃ から3.0℃ までの平均気温の上昇は花の形態には影響を及ぼさないことも明らかになった。
著者
長谷川 祥子 下村 孝
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.552-560, 2013 (Released:2015-02-13)
参考文献数
100
被引用文献数
5 5

これまで,多くの研究が,植物が人の心身に及ぼす影響に関する知見を多く蓄積してきた。我々は,身近な自然として,室内に持ち込まれた植物に焦点をあて,その心理・生理的影響に関する研究を概観し,知見を整理した。室内植物がもたらす心理・生理的影響は,オフィス環境を端緒として,医療環境や教育環境など様々な空間を想定して,調査されてきた。その結果,室内植物がストレスや疲労を軽減し,リラックス状態に導くなど,人の心身に有益な役割を果たすことが明らかにされてきた。そして,植物の量や設置方法のみならず,人と植物との関わり方が植物の効用に及ぼす影響が検討されるまでになっている。これらの知見の整理から,室内植物に対する人の認知度合いが植物の効用に及ぼす影響などを今後の検討課題として抽出した。
著者
深山 貴文 後藤 義明
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.36-41, 2000-08-31 (Released:2011-06-07)
参考文献数
9
被引用文献数
2 1

本研究では山火事跡地におけるワラビ被覆量の季節変化を定量的に把握し, 被覆量と侵食土砂量の関係を求めることを目的とした。毎月1回の現地調査から, プロット内の現存量と枯死体量を月毎に推定した。被覆量と侵食土砂量の関係は人工降雨実験によって求めた。その結果, 本試験地のワラビ被覆量は11月から翌年4月まで, 300g/m2程度であると推定された。また, 夏期には500g/m2以上の被覆量となると見積もられた。人工降雨装置による実験の結果, 被覆量が300g/m2以上になると侵食土砂量は裸地の5%未満に減少することが分かった、また, 被覆物も斜面全体に分布していることが分かった。これらの結果から山火事跡地のワラビ群落の土壌保全機能はワラビ枯死体の堆積によって発揮され, 群落全体において年間を通じて土壌侵食を抑制すると考えられた。
著者
中村 彰宏
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.75-80, 2021-08-31 (Released:2021-12-29)
参考文献数
33
被引用文献数
1 1

台風による都市緑化樹木の被害特性解明のため,2018年第21号台風が樹木に与えた影響を約22 haの都市緑地で調査した。台風前には3,122個体の樹木が生育し,台風によって幹折れが145個体,根返りが58個体,傾斜が23個体で発生した。外来種と栽培品種の根と幹の被害比率は,自生種に比べて有意に高く,外来・栽培品種は台風の被害を受けやすいことが明らかとなった。幹被害割合(幹被害数/被害総数)と既報の生材の曲げ強度との間に有意なロジスティック回帰式が得られた。曲げ強度の小さな樹種では幹の被害割合が高くなり,曲げ強度が強風時の幹被害を説明する重要なパラメータと考えられた。
著者
吉田 麻美 米田 稔 片岡 利仁 尾坂 高明 小倉 研二 小島 玉雄
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.179-182, 2010 (Released:2011-03-16)
被引用文献数
1 1

京都府立植物園の桜園を対象として, 瓦破砕材を用いた土壌改良の有効性について検討した。まず試験的に各種土壌を充填した穴を通路上に設定し, 降雨への応答や踏圧による物理特性などの変化を追跡した。その結果, 瓦破砕材は適度な水の保持能力と水はけの良さを合わせ持っていること, 数ヶ月程度ではその効果は消えないことが明らかとなり, さらに実際に瓦破砕材を約40%(重量比)混合して実施した土壌改良でも改良前と水分保持量は変わらず, 水はけは良くなるという結果を得た。また土壌改良と同時に瓦破砕材のみを充填した道を造ったが, 土壌領域地表に難透水層が形成された場合には, この道が周囲の土壌中含水率に影響を及ぼすことが数値シミュレーションにより明らかとなった。
著者
田崎 冬記 宮木 雅美 戸田 秀之 三宅 悠介
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.503-511, 2013 (Released:2015-02-13)
参考文献数
26
被引用文献数
1

知床岬台地草原では,エゾシカ個体数の増加によってササ類の減少,樹皮剥ぎによる特定樹種の激減,実生・稚樹の採食による更新阻害,海岸性の植生群落とそれに含まれる希少植物の減少および土壌侵食等が問題となっている。このような背景からエゾシカの密度操作実験が行われ,同効果の把握や人為介入の開始・終了等の目安となる植生指標の開発が求められている。本調査では,防鹿柵内外のイネ科草本,アメリカオニアザミおよびハンゴンソウ,台地草原全体のイネ科草本およびクマイザサ,台地草原に隣接する森林の木本葉量の調査を行い,植生指標の適用性について検討した。その結果,イネ科草本はエゾシカ密度操作開始後から増加傾向を示し,逆にアメリカオニアザミはエゾシカの影響を排除した場合,直ちに減少した。これらは短期的な植生指標となり得ると考えられた。また,クマイザサは被度・稈高で密度操作実験開始後の変化が異なることから,被度は短期的,稈高は中長期的な植生指標となり得ると考えた。一方,台地草原に隣接する森林葉量は密度操作開始後,その増加量は高さによって異なったため,高さによって異なる時期の植生指標になり得ると考えた。
著者
下田 幸男
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.579-580, 2018-05-31 (Released:2018-08-24)
参考文献数
1
著者
藤原 敏 嶋 一徹 千葉 喬三
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.39-44, 2004 (Released:2005-11-22)
参考文献数
9

未利用有機資源であるタケの有効利用を考え,タケ炭化物の重金属吸着能を木炭,活性炭のそれと比較した。その結果,炭化温度に関係なく炭化物のpHが塩基性を示し,カリウムを多く含むタケ炭は優れた吸着能を有していることが明らかとなった。そこで,道路中央分離帯内の植栽樹木下でタケ炭をマルチング資材として利用した際の,浮遊粉塵中の重金属吸着能について実証試験を行った。その結果,植栽下にタケ炭を敷設することにより重金属汚染の抑制に効果的であることが明らかとなった。
著者
掛谷 亮太 瀧澤 英紀 小坂 泉 園原 和夏 石垣 逸朗 阿部 和時
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.299-307, 2016 (Released:2017-03-16)
参考文献数
13
被引用文献数
2 3

スギ間伐林分と未間伐林分において 11本のスギを対象に根系分布調査を行った。間伐,未間伐林分のスギともに根系材積は樹幹指数と良好な相関性を持つこと,間伐の実施如何にかかわらず立木本数密度と高い相関性があることが示された。また,根系分布調査結果から崩壊地底面と側面のすべり面に生育する根の量を算出したところ,間伐林分では林齢の増加に伴って根の量が増加しないことが示された。このことは,森林の崩壊防止機能がすべり面に生育する根によって発揮されるとの既往の考えと整合性が取れないことになる。このため,表層型崩壊が発生するような急斜面の表層土は,土質的に明瞭なすべり面が形成され難いことを考えて,崩壊発生時には表層土全体が歪み,亀裂が発生して崩壊に至ること,また表層土中で大量に生育している根系が歪や亀裂の発生を抑制することで崩壊防止機能を発揮していると仮定した。この仮定に基づいて表層土中の根系量を算出したところ,間伐林分では表層崩壊が多く発生しやすい 10~30年生にかけて根系量が未間伐林分よりも多いこと,また既往の研究成果と同じく林齢の増加に伴って崩壊防止機能が強くなることを裏付ける結果が得られた。
著者
岩崎 寛 山本 聡 権 孝〓 渡邉 幹夫
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.247-249, 2006-08-31
被引用文献数
10 14

近年、植物による癒しの効果に注目され、屋内空間においても多くの植物が配置されるようになった。しかし、それらが実際に人の生理的側面に与える効果に関する検証は少ない。そこで本研究では屋内空間における植物の有無が人のストレスホルモンに与える影響を調べた。その結果、観葉植物を配置した場合、無い場合に比べ、ストレスホルモンが減少したことから、室内における植物の存在はストレス緩和に効果があると考えられた。
著者
重藤 大地 中島 敦司 山本 将功
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.118-121, 2006 (Released:2007-04-05)
参考文献数
11
被引用文献数
1

本研究では,ヒガンバナの開花と温度の関係について検討することを目的として,人工気象室で育成実験を行った。人工気象室の温度条件は,常に外気に追従した条件,常に外気に対してそれぞれ1.0,2.0,3.0℃ 高い条件の4 種類とした。そして,加温処理を開始した日はそれぞれ6月6日,6月28日,7月15日,8月4日,8月26日,9月5日とした。その結果,供試植物は夏期から秋口である開花期まで継続して外気より高温条件下におかれると開花期に外気より高温条件下でも開花可能となった。特に6月6日から7月15日までに1.0℃ から3.0℃ の加温条件下におかれた個体は,より高温条件下でも開花した。このことから,夏期の気温上昇によってヒガンバナの開花可能温度は上昇すると考えられた。一方,夏期における1.0℃ から3.0℃ までの平均気温の上昇は花の形態には影響を及ぼさないことも明らかになった。
著者
佐々木 剛 丹羽 英之 朝波 史香 鎌田 磨人
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.51-55, 2017 (Released:2018-03-15)
参考文献数
23
被引用文献数
1

徳島県の海岸マツ林において,小型無人航空機(UAV) から取得した画像をもとに Structure from Motion(SfM)を用いて林冠高モデルを作成し,マツ林の持続的管理にとって重要な林床の光環境を表す指数の推定を試みた。現地調査で取得した全天写真から求めた開空度が,UAVデータから高い精度で推定された。特に,開空度が30 %を超えるプロットの多くではサイズの大きなギャップが抽出され,マツの生育に適した明るい場所が抽出可能であることが示唆された。
著者
鈴木 弘孝 中山 浩成 田代 順孝
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.158-163, 2007-08-31
被引用文献数
3 3

都市のヒートアイランド現象の対策として有力視されている屋上や壁面等建物緑化による温熱環境改善効果を定量的に把握することを目的として,実在の街区をモデルとしてCFD(計算流体力学)解析を行い,建物緑化の違いによる街区内での温度と湿度の変化について数値解析を行った。解析の結果,対象街区での緑化なしに比べて,地表面・屋上の緑化と壁面緑化を組み合わせた場合,気温では街区中心部で最大で約4℃の低減,湿度では最大16%の上昇が見られ,実在街区を対象とした建物緑化による温熱環境改善効果の定量的な評価の可能性が示唆された。
著者
田中 賢治 森 千夏
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.398-401, 2015 (Released:2016-09-09)
参考文献数
6

静岡県駿東郡小山町は,300年前の富士山の噴火によってスコリア (岩滓) が厚く堆積している状況である。厚く堆積したスコリアは近年の豪雨により流出し,甚大な被害をもたらした。そこで,地域住民らが所有する山地での災害を未然に防ぐため,スコリア堆積地を植生回復させ,植物の根系緊縛力によるスコリア流出を抑制する試みを行った。本稿では,山地を所有している住民自らが行った,スコリア堆積地の防災対策事例について報告する。
著者
下村 孝 山本 祐子
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 = Journal of the Japanese Society of Revegetation Technology (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.109-114, 2008-08-31
参考文献数
12
被引用文献数
1 1 1

キンモクセイに2度の開花ピークが見られるとの伝聞にもとづき,その実態を科学的に解明するために,京都北区の住宅地域内に植栽されているキンモクセイを対象に形成花芽数と開花花芽数,開花小花数を経時的に計測した。その結果,キンモクセイは,2007年10月11日の開花ピークの後,10月23日に2度目の開花ピークを迎え,二度咲き現象が見られることが明らかになった。2度目のピークでは,開花小花数が1度目に比べると極端に少なく,全体の香りも弱いため,一部の人々にしか認知されていなかったともの理解された。当年生枝と前年生枝の花芽の種類と数,および開花小花数の測定から,キンモクセイでは,当年生枝と前年生枝の葉腋に形成される定芽以外に不定芽にも花芽が形成され,それらが開花することが分かった。さらに2度目の開花ピークには,当年生枝の花芽より前年生枝の花芽が,定芽より不定芽が大きく寄与することも明らかになった。前年生枝が当年生枝より不定芽を形成しやすく,キンモクセイ二度咲き現象には,前年生枝不定芽の関与が大きいと考えられる。