著者
間野 義之
出版者
早稲田大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究は、日本におけるエリートアスリートの環境の整備、および国際競技力向上を図るため、国際研究者コンソーシアム「SPLISS」に参画し、エリートスポーツ政策とトップアスリートの環境に関する定量的な国際比較研究を行い、日本のエリートスポーツ政策の主要成功要因や課題を明らかにすることを目的とした。日本のエリートスポーツシステムは他国に比べ「トレーニング施設」「国内・国際競技大会」「医科学研究」が優れている一方で、「スポーツ参加」「タレント発掘・養成」には一定の課題があることが明らかとなった。
著者
大塚 正之 井出 祥子 岡 智之 櫻井 千佳子 河野 秀樹 Hanks William. F.
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、主客非分離、自他非分離の場の理論に基づき、言語及び非言語コミュニケーションが場の影響を深く受けていること、日本語は、場の影響が大きく場内在的な言語であり、英語は場の影響が小さく場外在的な言語であり、それが日英翻訳を困難にしていることが明らかとなった。また日本語のコミュニケーションでは、複雑系における自己組織化現象が多く起きていること、当初場の影響を強く受けて活格、能格であった言語が場の影響が小さくなるに連れて対格言語化したこと、異文化コミュニケーションを行う上で、それぞれ文化が持っている場の違いがコミュニケーションの障害となっていることなどの点もある程度分かってきた。
著者
遊佐 敏彦
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

空き家の所有者、空き家利用者、および地域住民の間には、中山間地域特有の関係性がみられる。予めトラブルを避けつつ、段階的に信頼関係を築くために、適切なプロセスデザインが重要とされる。その際には、過去の集落再編成において、課題とそれを解決した成果が参考になる。今後は、それらをもとに、地域外の移住希望者に対し、段階的に使える空き家を提供し、移住を促すことが、持続的な空き家の整備と集落再編に繋がる。
著者
高野 光則
出版者
早稲田大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

アクチンフィラメントに沿ったミオシン分子の1方向的な滑り運動は,ミオシンとアクチンフィラメントとの間の相互作用エネルギー地形の特徴によって説明されることが示された(名古屋大・寺田,笹井氏との共同研究)。エネルギー地形はフィラメントに沿って非対称的であり,さらに,大局的にはファネル状になっていることがわかった。アクトミオシンの分子モーターとしての機能それ自体とカップルした,いわゆる"機能ファネル"がエネルギー地形に形成されているようである。また,分子間相互作用に関与すると推測されている一群のアミノ酸について置換の影響を調べたところ,過去のin vitro motility assayの実験結果と符合した。アクトミオシンの分子間相互作用の詳細に探りを入れるため,水分子をexplicitに取り入れたアクチン,ミオシンの全原子MD計算も本格的に開始した。まず,アクチン,ミオシンそれぞれ単体のアロステリーに注目した。現在のところ,結晶構造で示唆されているようなヌクレオチド結合状態の変化にともなう顕著な立体構造変化はみられない。また,アクチンの重合・脱重合過程の分子機構の解明にも取り組んだ。フィラメント構造の安定性には分子間の2種類の静電相互作用,および分子間の接触面の柔らかさが重要であることが分かった。関連研究として,プリオンの重合・脱重合過程についてMD計算による研究を行い,プリオンの脱重合過程のシミュレーション結果をもとに,プリオン重合の新たなメカニズムを議論した(岐阜大・中村,桑田氏との共同研究)。またアクトミオシンの滑り運動機構の研究成果をふまえ,キネシンー微小管系におけるキネシンの1方向的な滑り運動の計算機実験と理論解析を行った。
著者
外園 豊基 錦織 勤 佐藤 和彦 桑山 浩然 松浦 義則 藤木 久志
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2000

本研究は日本中世(12〜16世紀)を主たる対象とするが、時代を広くとって平安期から近世初頭(9〜17世紀前半)までを考察の範囲とした。「戦争と平和」の主たる内容を、戦争および災害とした。政治的な災害としての戦争と、自然的な災害としての飢饉などと異なるものであろうが、前近代においては不可分の関係にあったといえよう。まず、平安期〜近世初頭における戦争および災害に関する資料の網羅的収集を行うことを第一義とし、共同研究作業を通じて、それらのまとめを行った。具体的には、戦争および飢饉などの災害関連記事を収集し、それらを編年にまとめる作業をしたのちに、それを基に年表を作成した。それとともに共同研究作業として、調査を深化させるための報告会・研究会を通じて、いくつかの作業を並行して進めた。その一つとして、平安時代の戦争・災害関連記事について、『平安遺文』を用いてまとめ、年表の作成を行った。それとあわせて、本研究の主題である「日本中世における日損・水損・風損・虫損・飢饉・疫病に関する情報」年表を完成させた。これに研究分担者および研究協力者の研究成果をあわせて、研究成果報告書としてまとめた。また、動乱の時代といわれる南北朝期(14世紀)に関して、『大日本史料』(第6編)を検索し、戦争関連年表の作成を行ってきたが、完成間近の段階であり、かつ紙幅の関係で、研究成果報告書には反映することができなかった。さらに、近世初頭の関ヶ原の戦いにおける禁制を収集し、その内容・分布状況など考察することによって、民衆の戦争への関わり方を究明することに主眼をおいて考察を加えてきたが、これもまとめる段階までには到達できなかった。
著者
久保 純子
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究はインド東海岸ゴダバリ・クリシュナデルタの完新世(過去1万年)における形成過程の解明を目的として、インドのアンドラ大学の研究者の協力を得ながら、1)アンドラ大学で保管しているボーリングコア(試料)の分析、2)対象地域における平野地形の分布、3)対象地域に分布する遺跡と地形の関係、について調査をすすめた。その結果、ゴダバリ・クリシュナデルタについて初めて詳細な形成過程を示すことができ、また平野の地形分布図と遺跡の年代測定データなどを得ることができた。これらの成果をアンドラ大関係者らと2015年に国際第四紀研究連合(INQUA)大会で発表し、また国際誌Paleo-3で公表した。
著者
常田 聡
出版者
早稲田大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1996

まず,多孔性膜の界面からpolymer brushがはえている構造を作成するために,以下のような手順で膜材料を合成した.中空糸状の多孔性膜(ポリエチレン製)に電子線を照射した後,エポキシ基をもつモノマー(グリシジルメタクリレート)を前駆体としてグラフト重合させた。その後,エポキシ基の一部をイオン交換基(ジエチルアミノ基)に,残りをアルコール性水酸基(エタノールアミノ基)へ変換した.この多孔性膜の膜間に圧力をかけて溶液を透過させ,牛血清アルブミン(BSA)を対流に乗せてpolymer brushまで運び,きわめて短時間で生体高分子集合体を創製できることを確認した。この膜材料に一定流量でBSA溶液を透過させたときの圧力損失は,BSAの吸着が進むにつれて増大する。楕円球の形をしたBSA分子がpolymer brushに最密充填的に吸着していると仮定し,BSAの吸着によって液の透過できる細孔径が減少したとすると、BSA吸着後の膜の透過圧力をHagen-Poiseuille式によって推算できる。この理論式より推算された透過圧力と圧力センサーにより実測した透過圧力を比較した.その結果,実験値と推算値はよく一致することがわかり,吸着容量から推測した多層吸着構造モデルの妥当性が,流体力学的側面からも裏付けられた。また,polymer brush中のイオン交換基密度の増加とともに,電荷が互いに反発してpolymer brushが表面法線方向に伸長し,タンパク質をより多く抱き込む形態をとることが推察された。さらに,生理活性を有する酵素であるウレアーゼをpolymer brushにいったん集積させ,つづいてイオン強度を上げることによって脱離させた。尿素の分解特性をもとに生理活性を評価した結果,polymer brushへの集積前後においてウレアーゼの生理活性は変化しないことが示された。よって、polymer brushは生理活性を維持したまま高密度に生体高分子を集積できる場であることが示唆された。
著者
平田 彰 常田 聡
出版者
早稲田大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1997

写真関連産業での現像液や定着液の使用状況・使用工程を調査し,排出の削減・防止策を提出することを目的として研究を行った。本年度は特に定着廃液を取り上げ,その物質フローの解析と再生技術の評価を行った。また,写真廃液の生物処理を実際に行い,写真廃液中に含まれる成分の生分解性を明らかにした。定着液の再生の際に必要となるのが(A)脱銀,(B)界面活性剤等の除去,(C)ハロゲン除去,(D)成分調整である。このうち,(A)および(C)の工程が必要なのは,銀,ハロゲンの残存によって定着速度が遅くなるからである。また,(B)は(C)のハロゲン除去を妨害するためである。各工程での必要技術は以下の通りであることがわかった。(A)廃液の再生に適している脱銀方法は,添加物や溶出物がない電解法である。電解法により脱銀を行うときは,電位の制御により硫化銀の生成を抑え,陰極室と陽極室をイオン交換膜等で分離して硫黄の生成を抑制する必要がある。(B)界面活性剤,現像主薬酸化物等は活性炭吸着あるいは膜分離法により除去することが望ましい。(C)硬膜剤として含まれるアルミニウムイオン(3価)や,ハロゲン化銀溶解剤として含まれるチオ硫酸イオン(2価)は保持し,ハロゲンイオンのみを除去するために1価選択性イオン交換膜を用いて電気透析を行う。(D)最後に成分の調整をする際,pHや各々の成分には最適な値が存在する。さらに,混合培養系で長期馴養した微生物群を用いて,写真廃液を生物分解した結果,1,000ppm程度のTOC成分が残存した。写真廃液を生物処理のみで完全無害化するためには,難生分解性の有機化合物(EDTAなど)を分解する特殊な細菌が必要であることが示唆された。
著者
平田 彰 XINGーRU Zhon 桜井 誠人 常田 聡 早川 泰弘 熊川 征司 ZHONG Xing-Ru ZHONG XingーR XIE Xie 岡野 泰則
出版者
早稲田大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

本研究では,中国回収衛星を利用した微小重力場において,In_<1-x>Ga_xSb化合物半導体の単結晶成長実験を行い,結晶溶解・成長過程における拡散及び界面律速過程や面方位依存性を明らかにし,In_<1-x>Ga_xSb化合物半導体のみならず,各種化合物半導体単結晶の高品質化への知見を得ることを目的としている。本年度は1996年10月に実施した宇宙実験の試料及び地上対照実験試料を切断し,切断面におけるGaSb溶解領域及びIn_<1-x>Ga_xSb成長領域を電子線マイクロプローブ分析法(EPMA)により測定した。その結果,宇宙試料は長さ方向に平行に溶解し,地上試料は重力方向に末広がりに溶解していた。これは,地上試料では,比重の大きいInSbが重力方向に移動し,より多くのGaSbを溶解したものと考えられる。また,数値シミュレーションを実施した結果,実験結果と同様の結果が得られた。さらに,面方位依存性に着目してみると,両試料とも(lll)A面より(lll)B面の方がInSbに溶解し易いことが明らかになった。反対に,成長領域は,B面よりもA面の方が大きいことが明らかになった。なお本年度は,研究討論等を行うため,5月及び8月に延べ3名(早大:平田,村上,桜井)が中国に出張した。また,研究成果の発表のために,8月には中国,10月にはイタリアへ延べ2名(早大:桜井)が出張した。12月には2名(静大:早川,早大:桜井)が本研究の総括討論をするために,訪中した。
著者
平田 彰 木下 敦寛 村上 義彦 常田 聡 新船 幸二
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

融液成長法によって育成される半導体単結晶の高品質化手法の開発・確立を目的として,融液内のマランゴニ対流現象を解明するため,次の研究を行った.まず,温度差に起因する界面張力差に基づく駆動力の増大に伴い,液柱内のマランゴニ対流が二次元層流から三次元層流を経て三次元振動流へと遷移することを明らかにし,その機構を詳細に解析した.具体的には,微小液柱実験装置を用いた地上及び微小重力実験により,微小重力場では,地上で観察された超安定領域が消滅することを明らかにした.また,マランゴニ対流に起因する液柱内の温度振動状態が,定常層流,周期的伸縮振動,周期的回転振動,準周期的振動,そしてカオス振動のいずれかに分類できることを明らかにし,温度振動状態を表すモデル式を提出した.このモデル式は実験結果とよく一致しており,このモデル式より,各振動状態の特徴を明確に表すことができた.また,これらの遷移プロセスは液柱の形状・体積や重力レベルなどに依存することを明らかにした.また,非定常数値計算コードを開発し,落下塔実験で生ずる1GからμGへの重力のステップ変化に伴う固液界面上の熱流束を解析した.得られた数値解析結果は,実験結果と良好な一致を示し,熱移動現象を充分に良く説明することができた.さらに詳細に検討した結果,液柱長さを代表長さとした無次元座標,流動の駆動力を表すマランゴニ数,流体熱物性を表すプラントル数を導入することにより,固液界面上の熱流束分布を統一的に評価し得る事を明らかにした.また,宇宙環境においても存在する残存重力が融液の不安定化に及ぼす影響を検討するために,拡散係数測定法のひとつであるLong Capillary法を模擬した数値計算も行い,融液内の対流発生と残存重力の関係を明らかにした.以上の成果は,融液内のマランゴニ対流現象の微細機構を明らかにしたものであり,融液成長法による育成単結晶の高品質化ための操作条件決定などに有益なものと考える.
著者
常田 聡 青井 議輝
出版者
早稲田大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

環境中では多種多様な微生物が雑多に存在する複合微生物系を形成している。本研究では個々の微生物の現象に着目するのではなく,生態系全体を一つのシステムとしてとらえるシステムバイオロジーの概念を微生物生態学に導入し,実験的手法および知識工学的手法を併用してコンピュータ上に微生物のコミュニティーを再構築し,微生物生態形成メカニズムの真の理解につなげる新規方法論を確立・提案することを目的とした。本研究では,特に,複合微生物系の一例として,多孔質膜を介して通気を行い,膜上にバイオフィルムを形成させる方法(いわゆるメンブレンエアレーション法)によって得られたバイオフィルムを取り上げた。本年度は,シミュレーション結果の精度に多大な影響を与える微生物パラメータを精査し,シミュレーション結果と実験結果を比較した。まず,バイオフィルムからサンプリングした従属栄養細菌(HB),アンモニア酸化細菌(AOB),亜硝酸酸化細菌(Nitrobacter,Nitrospira)を対象に,水質回分実験・呼吸活性実験・蛍光遺伝子プローブ法(FISH法)・レクチン染色・画像解析を行い,それぞれの徴生物の活性パラメータを評価した。一方,形成されたバイオフィルムを壊さずに,微小電極測定およびFlSHを行い,バイオフィルム内の基質濃度分布と微生物分布を得た。つぎに,この結果を,すでに得られた微生物パラメータを用いてシミュレートした結果と比較した。完全には実験結果をシミュレーションでは再現することはできなかったが,文献値のパラメータを用いてシミュレーションをした結果と比較して,多くの部分の傾向を再現することができるようになった。またMABの内部に存在する亜硝酸酸化細菌はNitrobacterであることが明らかになった。
著者
平田 彰 常田 聡
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

有機塩素化合物は脱油脂やドライクリーニングなどさまざまな分野で使用されているが,発ガン性や催奇性があるため,土壌中から地下水に浸透した場合,飲料水として使うことは不可能である。地下水については光触媒反応を利用して有機塩素化合物の分解が試みられているが,地下水中に含まれているミネラル分がヒドロキシラジカルのスカベンジャーとして作用するため,効率が上がらない。本研究では,有機塩素化合物ガスを脱イオン水へ移動させ,紫外線(UV)ランプを備えた気泡塔型UVリアクター内で分解する手法を提案した。この手法における最大のメリットは,リアクター内の有機塩素化合物がUVランプからの光子や,気液界面ならびにバルク液相でのヒドロキシラジカルと反応できるため,高速かつ副生成物の少ない分解処理が可能になる点である。本研究では,上記リアクター内における物質移動および有機塩素化合物ガス分解の速度論的解析を行い,装置設計や操作条件の最適化を行った。その結果,テトラクロロエチレン(PCE)を対象汚染物質とした場合,PCE/過酸化水素の化学量論比がPCE分解速度に大きく影響を与えることがわかった。また,PCE分解の初期段階で塩素原子がはずれて塩化物イオンが生成し,これらの蓄積がPCE分解速度に影響を与えることもわかった。次に,各種センサーを備えた気泡塔型紫外線リアクターの作製を行い,空隙率分布の影響を確認するために,UVランプの近傍に局所的に気泡が集中するような多孔質板,およびUVランプの周りに均一に気泡が生成するようなリングタイプの散気板を用いて実験を行った。その結果,まず,UVランプ近傍の空隙率の分布を特殊な導電率プローブを用いてオンラインでモニタリングすることに成功した。また,空隙率の分布が反射・散乱などの効果により光の吸収に影響を与えることを明らかにした。
著者
常田 聡 青井 議輝 星野 辰彦
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では,様々な産業から排出される排水中の窒素・リンを高効率に除去する高度処理システムの開発に取り組んだ。特に,小規模事業場へも導入可能な単一槽型栄養塩除去プロセスである嫌気/好気/無酸素(AOA)プロセスの開発を行い,長期間にわたる安定した除去性能維持の実現をめざした。また,AOAプロセスとメンブレンエアレーション法を組み合わせることにより,槽内の微生物生態系を制御し,外部から基質を添加せずに窒素・リン同時除去に成功した。
著者
常田 聡 平田 彰
出版者
早稲田大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1999

食品産業は生物系由来の原料が多いため,有機物の循環,すなわちバイオサイクルという観点から,食品産業排水中の成分は原料生産へフィードバックすることが可能である。しかしながらバイオサイクルという流れから見たときに,どのような排水処理がエミッション低減に有効かはっきりとしていない。そこで,このバイオサイクルに出入りする物質およびエネルギーを定量的に把握し,排水処理方式がこれらの値に及ぼす影響を数値化することによって,ゼロエミッションをめざした排水処理プロセスの構築を検討することが本研究の目的である。まず,ワイン製造プロセスについて原料,廃棄物および排水処理に関するアンケート取材を行った。その結果,ワイン製造プロセスについて,炭素重量基準での詳細な物質フローを求めることができた。次に,バイオサイクルに出入りする物質およびエネルギーを定量的に評価するため,独自のフローシートを提案し,微生物増殖速度式や化学量論式に基づいた評価式を作成した。そして,嫌気処理および好気処理を行った場合に発生する汚泥量などのエミッションを定量的に把握し,さらに汚泥を廃棄物と混ぜて堆肥化した場合やメタン回収した場合のエネルギー収支を算出した。今回収集したワイン製造排水に関するデータを用いて試算を行った結果,発生/使用堆肥量の関係から,汚泥を堆肥化して原料生産へ用いることは量的に可能であることが分かり,バイオサイクルが機能する可能性を示唆することができた。また,汚泥や廃棄物を堆肥化することによって削減できる化学肥料の量およびその生産に要するエネルギーを見積もった結果,バイオサイクルに投入されるエネルギーをかなりの割合で節約できることがわかった。一方,嫌気処理によって節約できるエネルギーおよび回収できるエネルギーはこの10分の1程度であることもわかった。
著者
常田 聡 平田 彰
出版者
早稲田大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
2000

食品産業から排出される排水や廃棄物は生物由来の易分解性有機物中心である.そのため,有機物の循環,すなわちバイオサイクルという点から見て,これらの排出物は原料生産へフィードバックすることが可能である.廃棄物の処理および再生に関しては,現在さまざまな方法が開発・使用されているが,食品産業におけるバイオサイクルという流れから見た時に,どの方法がエミッション低減に有効であるかは,はっきりとしていない.本研究では原料生産と製品製造を一連のプロセスと考え,このバイオサイクルに出入りする物質およびエネルギーを定量的に把握し,その中でのゼロエミッション化をめざすことを目的とした.本研究では具体的な対象産業としてワイン醸造産業を選んだ.まずブドウ(生果)から作るワインの製造プロセスにターゲットを絞り,アンケート調査を行うことによって物質収支のフロー解析を行った.20,000kgのブドウから17,280Lのワインが生産される過程で,梗,果実・種,澱等約3,900kgの固形廃棄物,100tの排水が出ることがわかった。また,排水の処理工程(活性汚泥法)において発生する余剰汚泥量は,乾燥重量として68.6kgであることがわかった.次に原料および各廃棄物・排水について重量および元素分析(C,N,P)を行い,製造プロセス内における元素ごとのフロー解析を行った.元素によって動きが異なるものの,固形廃棄物(ブドウ梗・ブドウ粕)としての排出が大きな割合を占めることがわかった.特に窒素とリンに関しては,バイオサイクルへのインプットが主に肥料からであることを踏まえればこれらを有効的に農地還元させることがバイオサイクルを機能させる上で重要であるといえる.これらは含水率が低く,C/N比が高いので,先に述べた余剰汚泥のコンポスト化を行う際の調整剤となりうることが示唆された.
著者
常田 聡 日比谷 和明 久保田 昇 平田 彰
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

本研究は小規模畜産農家でも導入できる小型で高効率な有機物・窒素除去システムの確立を目指し,単一槽内において窒素除去が可能なメンブレンエアレーション型バイオフィルムリアクタ(MABR)を開発し,その評価を行ったものである。1.生物膜内溶存酸素(DO)濃度分布解析先端径数μmのDO微小電極を作製し,生物膜内のDO濃度分布を測定した結果,生物膜厚みが大きいものは嫌気部位が存在することを明らかにした。この結果は生物膜厚みおよび酸素の供給速度を制御することにより,生物膜内に局所的に異なる反応場を創生することが可能で,単一槽内もしくは単一生物膜内において硝化・脱窒同時反応が起こせることを示唆している。2.MABRコンセプトの実現と処理能評価易分解性である生活模擬排水を用いて連続運転による有機物・窒素の同時除去試験を行い,MABRのコンセプトを実現できるかどうかを評価した。運転開始後50日目以降,有機炭素および窒素の除去率はともに90%以上を達成し,コンセプト通り単一槽内にて有機物・窒素を逐次的に除去することに成功した。3.MABRの畜産系排水への適用とその評価生活模擬排水への知見を応用し,MABRの畜産系排水への適用性について検討した。約1年間の長期運転で有機炭素および窒素成分の平均除去率96%,83%を得た。また,メンブレン表面積当たりの窒素除去速度は4.48g-N/(m^2・day)であり,生物膜内で高効率に窒素除去が行われていることを示した。生物膜内のDO濃度および微生物生態分布を解析した結果,生物膜内で好気・嫌気部位が存在し,その環境に応じた微生物群が生息していることを確認した。また,硝酸を経由しない亜硝酸型脱窒が主な窒素除去経路であることが推察された。以上より,MABRを用いることにより,窒素成分の比率が高い畜産系排水においても単一槽で高効率に窒素を除去できることが示唆された。
著者
常田 聡 大坂 利文 加川 友己 大坂 利文 加川 友己
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究では、腸管の炎症抑制および腸上皮タイトジャンクションバリア機能の回復に寄与する腸内細菌を同定した。さらに、実験的腸炎マウスモデルを用いて、腸炎の寛解プロセスに寄与する腸内細菌および代謝産物のスクリーニングを行った。また、大腸陰窩における上皮細胞の増殖・分化機構の時空間的ダイナミクスを表現するシミュレーターの開発に成功した。
著者
平田 彰 新船 幸二 桜井 誠人 常田 聡
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

本研究では、単結晶育成時における温度差と濃度差に起因するマランゴニ対流の相互干渉機構を厳密に解明し,それに基づいたマランゴニ対流の抑制・促進等の制御手法を確立し,単結晶の高品質化手法を確立することを目的として研究を行っている。本年度は、前年度に引き続き,半導体単結晶育成の一つである水平ブリッジマン法によりInSb結晶成長実験を行い,初期融液濃度を変化させることにより温度差および濃度差マランゴニ対流が同方向に作用する系(促進系)と,互いに逆方向に作用する系(抑制系)の融液自由界面上の界面流速を測定した。その結果,抑制系においては,自由界面流れの方向が、融液から結晶方向(温度差マランゴニ対流による)及び結晶から融液方向(濃度差マランゴニ対流による)が同時に存在し,流動の淀み点(2方向の流れが衝突する点)が存在する場合があることが明らかになった。これは,同時に行った数値シュミュレーションからも同様の結果が得られた。さらに抑制系に関しては,航空機を利用した微小重力場においても実験を実施した。その際,放物飛行中の到達重力レベルを変化させ,自然対流が融液自由界面流れに及ぼす影響を観察した。その結果,本実験系においては,自然対流は表面流速にはほとんど影響を及ぼさないことが明らかになった。以上の結果から,結晶成長時の融液側移動現象が,自然対流よりも,結晶成長時の偏析現象に伴う濃度差マランゴニ対流に強く影響を受けることが明らかになった。
著者
ロバーツ グレンダ KAWANO SATSUKI KAWANO S.
出版者
早稲田大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

本研究では、現代日本において、急激に進んできた少子化の傾向が、先祖供養に与える影響及びその対応策について考察しています。近年、子供のいない家庭や成人の未婚者も増加し、伝統的な家制度に基づいた先祖祭祀が難しくなっており、子孫がいなくても入れる合祀墓や自然葬(散骨)を選ぶ人も増えています。本研究ではそれらの対処法を選んだ人々の動機、家族背景、特に少子化との関連について参与観察、インタビュー、アンケート調査を行いました。また、少子化と先祖供養の存続に関する地域差を明らかにするため、本年度は北海道恵庭市、札幌市、青森県弘前市、岩手県水沢市及び真城町、東京都檜原村、愛知県岡崎市、名古屋市、京都府西京区、岡山県浅口郡船穂町、倉敷市の11か所で調査を行いました。その結果、高度経済成長期に町村部から都市に移住してきた人々の間では、少子化が合祀墓や散骨を選ぶ理由になりやすいことが明らかになりました。また、自然葬を行っているNPO法人「葬送の自由をすすめる会」の協力を得、自然葬を行った人々の追悼行為ついて遺族調査も行いました。その結果、遺族は従来の仏式の祭祀形態に必ずしもとらわれず、故人の意志を尊重し、その人らしさを大切にした追悼を行っていることが明らかになりました。従来の葬送形態の批判として行われることもある「生前葬」に関する調査結果も研究論文にまとめ、生前葬がその人らしい人生の最終章を飾る自己表現の一儀礼として行われていると論じました。
著者
嶋田 由紀
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、ドイツ統一以降のテレビ・映画のエイズ予防啓発広告におけるセクシュアリティを表象分析した結果、エイズ予防としての性交時のコンドームの装着の奨励というメッセージが旧東西ドイツ時代のタブーや性規範を乗り越える形で映像化され、発信されていることが明らかになった。エイズ表象は、単なる衛生政策としてではなく、社会の性規範とその変遷から生み出されるきわめて生政治的なものとして考察される必要性を浮き彫りにした。