著者
荒井 紀一郎
出版者
早稲田大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

目的本研究の目的は、市民の政治参加について動態的なモデルを構築し、そのモデルの妥当性を実証することによって、市民が政治的な活動に参加するメカニズムを明らかにすることにある。目的を達成するため、本年度は以下2点を中心に研究を実施した。(1)自律的な主体(市民)の相互作用がシステム全体(社会)にもたらす特性や影響をモデル化できるマルチエージェントモデリングを用いた新たな政治参加モデルの構築(2)有権者が持つ様々なアイデンティティ(以下ID)の変化が投票参加や投票方向にもたらす影響を明らかにするための実験の実施実施状況(1)市民が自身の行動と選挙結果をもとに学習しながら適応的に参加/不参加を決定していくモデルを構築し、シミュレーションによってモデルの振る舞いを観察した。その結果、従来の政治参加を表す数理モデルよりもより現実に近い参加率、選挙結果を予測することができた。また、有権者の若い時期での投票経験と支持政党の連勝がその後の参加に大きな影響を与えている可能性があることが示された。本研究で得られた知見をもとに昨年5月の日本選挙会及び、10月の国際シンポジウムにて報告を行った。(2)科学研究費補助金を用いて、インターネットによる実験世論調査を実施した。この調査は、日本の会社員1000名を対象に彼らの社会的IDと党派性を測定し、実験群と統制群に分けた上で実験群の被験者には彼らのIDに対する刺激を与え、IDが投票参加と投票方向に与える影響を明らかにしようとするものであった。調査は本年8月下旬に実施した。調査の結果、有権者は自分が属している政治集団が、自分が属している社会集団の中において少数派である場合には、政治的なIDには依らないで意志決定を行う可能性があることが示された。本研究の内容は、昨年10月に開催された実験社会科学コンファランスおよび、本年2月に行われた国際コンファランスにて報告を行った。
著者
立花 英裕
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

今回の研究目的は、フランス語圏を中心にアメリカ諸地域について調査した上で、その社会や歴史を明らかにし、文学や思想との相関をとらえるものだった。研究成果をまとめるにあたっては、ある程度地域を限定しなければならなかったので、全般的な視野を踏まえた上で特にフランス海外領土のマルチニック島、グアドゥループ島、およびハイチ共和国、カナダケベック州を対象とした。「クレオール」の概念は、時代によっても、また言語圏によっても意味が大きく異なっているが、その相違を調査した上で、本研究ではベネディクト・アンダーソンに見られるような広い視点からとらえた。すなわち、アメリカ地域に形成された国民は基本的にクレオールであるという視点である。そのように見ていくと、カナダケベック州とカリブ海域という南北にへだたった地域においても、一定の通約性が浮き上がってくる。ケベックの歴史家ジェラール・ブシャールはそれを「アメリカ性」と呼んでいるが、この概念は、カリブ海文化の特性としての「アンティル性」を発想したエドゥアール・グリッサンの見方に繋がっている。このような「アメリカ性」「アンティル性」、あるいは「クレオール性」が近代史の中でどのように形成され、どのような文化や文学を生み出したかについて、今回は、上述の地域に限定して解明につとめた。いうまでもなく、これはきわめて大きなテーマであり、今回の研究がまだ不十分であることは否めない。今後、更に調査と研究を継続していきたい。とはいえ、研究の過程で予期しない視野が広がってきたことも事実である。コロンブスの大航海に始まった近代の曙はグローバリゼーションの最初の一歩だったと考えられる。アメリカ地域の「クレオール的性格」は、グローバリゼーションの時代を予告し、準備するものだったのである。
著者
木村 涼
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

天保13年(1842)6月、五代目海老蔵は、天保改革における風俗取締政策の一環である奢侈禁止令に抵触したとして南町奉行鳥居耀蔵から江戸十里四方追放の処罰を受けた。江戸を離れ嘉永2年(1849)12月に海老蔵が追放赦免を受けて江戸復帰するまでの約8年間の演劇活動を対象に研究を進めた。追放処罰を受けた海老蔵は成田山で1年間蟄居した後、芝居の場を求めて上方方面に赴いた。海老蔵は住居を大坂に構え、上方方面の拠点にしていた。したがって、大坂の芝居出演は他の地域のそれに比べて圧倒的に多い。そこで、番付をはじめとする関連資料を、大阪府立中之島図書館や大阪歴史博物館にて複写した。また、大坂の次に海老蔵が多く出演している京都での興行を調査するため、京都大学図書館や京都府立総合資料館に行き、関連資料を複写した。伊勢や名古屋などの地域も幾つか出演しているので、三重県立博物館や三重県立図書館、愛知県名古屋市蓬左文庫、同県西尾市岩瀬文庫、御園座図書館などに赴き、番付や台帳はじめとする関連資料を複写した。その他、成田や静岡、長野、広島、長崎などの資料館や博物館、図書館に赴き、海老藏の興行記録が記されている『御用留』や『御用日記』を複写し整理・翻刻した。こうして江戸追放中の上方方面を中心とする芝居出演に関する資料を収集してきた。その結果、地方におはる観客の動向や演出の相違も判明した。本研究は、海老蔵の江戸以外の地域におはる芝居興行の究明は焦眉の急であるという課題に応えるものである。
著者
福田 育弘 神尾 達之 桑野 隆 後藤 雄介 高橋 順一 原 克
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

各人がそれぞれのフィールドにおいて近代の飲食行為を文化現象として考察した。福田は、おもにフランスと日本において、共に食べることに価値を見出す<共食の思想>の在り方を、歴史的な社会的背景をふくめ学際的に考察した。とくに、日仏の文学作品における共食の表象を研究し、それぞれの社会で、個人にとっての飲食の意味を重要視する<個食の快楽>が、<共食の思想>にあらがいながら形成されてきたことを明らかにした。ロアルド・ダール『チャーリーとチョコレート工場』(1964)は、2005年にティム・バートン監督によって映画化された。神尾は、子供向けのファンタジーとして読まれているダールの原作から表向きはいわば排除されていたチョコレートのセクシュアルな意味合いは、バートンの映画で回帰する。本研究では、この回帰のプロセスをチョコレートの表象の変化として考察した。桑野は、ロシア・アヴァンギャルドと社会主義リアリズムにおける飲食の表象を比較した結果、後者は豊かな飲食のイメージを捏造しているのに対し、前者では独特の日常生活観や革命観も関連して飲食の表象が乏しいことが改めて確認した。後藤は、ラテンアメリカの「喰人」表象が西欧とラテンアメリカの関係性において、今日のポストコロニアル的なものへと変化していったことを明らかにした。高橋は、わたしたちの社会の変容にとって重要なキー概念としての歓待の概念を研究した。歓待の概念は人類と生活世界(Lebenswelt)についての新たな視点の基礎となるものである。現在、高橋は歓待の哲学的な基礎について考察を行っている。原は、「お袋の味」言説を起点に、大量生産消費文化と家族制度イデオロギーという視点から20世紀米国の食をめぐる表象構造を批判的に分析した。以上の研究から、近代における飲食の問題性が学際的に浮き彫りになった。
著者
西山 清 植月 惠一郎 川津 雅江 大石 和欣 吉川 朗子 金津 和美 小口 一郎 直原 典子
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

環境に対する生命体の感応性-「環境感受性」-は、近年自然科学において注目を集めているテーマである。本研究は人文科学研究にこの概念を援用し、文学・文化および思想テクストにおいてその動態を考察することで、現代のエコロジカルな感性・思想の萌芽と展開を分析したものである。研究対象は、自然・環境の現代的認識の萌芽がもっとも顕著に観察されるイギリス・ロマン主義、およびその前後の時代の文学、文化、思想とした。本研究は、「環境感受性」が生み出され、現代的なあり方に展開していく様態を多面的に検証し、あわせて、文学研究が他分野と有機的な関連をもちつつ発展する、持続可能な営為であることも証明している。
著者
谷脇 理史
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

出帆による文芸の流布が一般化する近世の状況の中で、その前期における出版取締り令は、享保期以後のもののように整備されたものではない。しかし、明歴3(1657)年の取締り令発令以前からも作者や書肆による自主規制(時にカムフラージュ)が行われており、政治・社会問題をとりあげる仮名草子や「軍書類」にその様相をうかがうことができる。それは、西鶴以後の浮世草子においても同様である。西鶴は、『好色一代男』以来、武家階層以上をとりあげる場合、明らかにカムフラージュを行いつつ諷刺する姿勢を示しており、『好色一代女』『武道伝来記』などでは、それが一層あらわとなっている。また、上層町人に対しする諷刺は、『一代女』以前の場合、そのモデルを実名で登場させたりしているが、『永代蔵』以後では、実名をかくしたり、仮名を用いたりして諷刺を行うようになっている。以上の諸点は、本報告書に収めた拙論(本研究期間以前に発表のものも含む)の中で問題にしたが、とりわけ西鶴の問題については本報告書第2部第11章「西鶴の自主規制とカムフラージュ」で一応の総括を行い、現在までの私の主張及び問題点・課題を記した。なお、西鶴が「出版規制に対応する」様相については、これまでの研究を一書にまとめ、平成18年度中には清文堂出版より刊行する予定となっている。一方、近世初期の軍記類・元禄期の軍書類、西鶴以後の浮世草子類等についても検討を続けたが、それらについての資料は収集したものの、論文としてまとめる段階にまでは至らなかったので、遺憾ながら、今後の課題としたい。また、本研究期間には、西鶴のカムフラージュと諷刺の様相を「『好色一代女』の面白さ、可笑しさ」「経済小説の原点『日本永代蔵』」(ともに清文堂出版)の二書によって具体的に解明した。
著者
作野 誠一
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究の目的は、外部指導者の効果的活用に向けた条件整備の方策について、実証データに基づく具体的・実践的な提言を行うことであった。自治体への調査からは、現状のままでは外部指導者の地域差が露呈する可能性があること、外部指導者をめぐる各種制度については全体として「重要だと思うが実施していない」傾向があること、部活指導員の導入について「反対」の自治体はほとんどみられないことなどが明らかになった。また教員調査からは、外部指導者の導入を支持する割合は高いものの、部の状況によって判断すべきであるという意見もあること、複数種目部や地域クラブへの移行については慎重であることなどが明らかになった。
著者
小澤 徹 小池 茂昭 田中 和永
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009-04-01

物理現象を記述するモデル方程式として、場の古典論、流体力学、プラズマ物理をはじめ様々な分野に現れる重要な非線型楕円型偏微分方程式について、今まで個別に用いられることの多かった変分解析、非線型常微分方程式、粘性解理論の手法を総合的に駆使することにより、定在波の安定性や爆発現象を深く説明する方法論を確立し、さまざまな応用を見出した。
著者
加藤 哲郎
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究の成果は、書き下ろし単著『「飽食した悪魔」の戦後ーー731部隊と二木秀雄「政界ジープ」』(花伝社、2017年)中に発表した。同書第3部「731部隊の復権と二木秀雄の没落」中に第2章「シベリア抑留と米ソ情報戦」を設け、「ドイツ240万人、ハンガリー50万人、日本60万人の強制奴隷労働」「洗脳教育と民主運動」「帰還者米軍尋問ーー陸軍プロジェクト・スティッチと空軍プロジェクト・リンガー」「陸軍プロジェクト・スティッチで見つかった『ソ連スパイ』352人」「『人間GPS』としての米空軍プロジェクト・リンガー」等について、詳述した(269-284頁)。
著者
三輪 敬之 上杉 繁 大崎 章弘 板井 志郎 渡辺 貴文 石引 力
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

居場所づくりの支援には, 無意識の領域にまでコミュニケーションを拡大する技術が必要になる. そこで, 身体と存在的に非分離な影が, 場の創出的メディアとして働くことを示すとともに, 影を使った二領域的通信原理を基に, 人々の間に存在的なつながりが生まれる居場所のコミュニケーション支援とそのネットワーク化に必要な基盤的技術の開発を行い, 場のコンテクストや間合いの創出に着目して, その有用性を確認した.
著者
小林 敦子 松本 ますみ 武 宇林 蔡 国英 馬 平 王 建新
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

(1) 中国の少数民族地域である寧夏回族自治区においては、回族の女性教員の増加に伴い、女児・女子青年の教育レベルが向上している。(2) 日本のNGOの教育支援によって養成された回族女性教員は、結婚・出産後も小中学校教員として働き、地域における女性のエンパワーメントの上で貢献している。(3) 民族の特性を生かした女子アラビア語学校の卒業者である回族女子青年は、経済発展の著しい広州や義烏で通訳として活躍している。家庭の経済的困窮等の事情から、普通高校への進学を断念した回族女子青年にとって、アラビア語学校はセイフティネットとなっている。
著者
首藤 佐智子 原田 康也 武黒 麻紀子
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究では、前提を伴う言語形式の運用のしくみを明らかにすることを目的として、近年問題視されている表現をとりまく言語現象を考察した。研究成果として特筆できるのは、ポライトネス効果を狙った語用論的制約の操作使用の結果、意味が客観化するという現象を指摘することができたことである。これはポライトネスが意図された語用論的制約操作が行われた場合に、その意図が形骸化するという社会言語学的パラドックスが存在することを示唆する。この現象のモデルとして扱った「残念な」に関する分析は、「日本語語用論フォーラム」の第1号(2015年刊行予定)に掲載される予定である。
著者
尾崎 美和子
出版者
早稲田大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

これまでの我々の研究から、統合失調症関連遺伝子ニューレグリン(NRG)は50Hz付近から100Hz間の周波数刺激により膜貫通ドメインのすぐN末側で蛋白切断を受け細胞外に切り出されることが解っている。実際に、統合失調症患者の血液サンプルを用い、分泌型NRGの血中量と遺伝子多型を解析することにより、統合失調症患者では、その発病と改善に分泌型NRGの量が関与していることを明らかにした。また統合失調症患者の分泌型NRG量の変動が発病と関連があること、発病の際、前頭前野や聴覚野における50~80Hz付近の神経活動消失や乱れが観察されることから光計測系で分泌量と神経活動を同時計測し、その結果を脳刺激にフィードバックする仕組みを構築しようとしてきた。そのため必要な蛍光物質を様々な角度から合成、スクリーニングを行った結果、脳機能(神経活動)を高感度で検出できる温度感受性色素を得ることができた。神経活動変化に伴う細胞内カルシウム濃度変化が発熱・吸熱反応を引き起こし、その変化を蛍光強度変化計測することにより検出するシステムである。一方、NRGの蛋白分断と分泌を追跡するための新規プローブの合成にも成功し、両者を同時観測可能なところまできた。また、脳深部の計測を可能にするため、バンドル化した光ファイバー表面に色素を塗布することにより脳深部に於ける光計測をミリセカンドの時間分解能、20~50マイクロメータの空間分解能で計測できるシステムとし、同時に光刺激も可能となった。実際に脳スライス、動物個体に応用することによりそのプロトタイプの評価を行っている。
著者
金 志虎
出版者
早稲田大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

今年度は、昨年度の当麻寺本尊の様式研究と当麻寺の伽藍配置の研究に引継ぎ、当麻寺における信仰の問題について検討することにした。まず当麻寺本尊の尊名の問題について検討した。現在当麻寺本尊の尊名は弥勒仏として伝わっているが、創建当初から弥勒であると伝える同時代の史料はなく、当麻寺本尊が創建当初から弥勒如来として制作安置されていたかははなはだ疑問である。当麻寺は古代日本において死者が往く場所として認識されていた二上山の東麓に立っており、当麻寺を建立した当麻氏は、その二上山の入口で喪葬関連の任務を担っていた氏族であったこと、そして、『日本書紀』や『続日本紀』などには当麻氏が天皇の死後に誄をのべるなど、喪葬関連の記事に多く登場していることに注目した。さらに七世紀後半の日本では、弥勒下生信仰に基づいた弥勒如来の造像例がないことを考慮すると、当麻寺本尊の尊名は弥勒ではなく阿弥陀とみるのがより自然な解釈である。つぎに当麻寺が浄土信仰の代表寺院として発展した背景について考察した。治承四年(1180)に平家勢の攻撃によって被害を受けた当麻寺では、復興するための手段として、聖徳太子信仰を利用しようとしたが、太子関連寺院として発展する要素がなかったため、新たに曼荼羅堂の当麻曼荼羅の存在に注目しなおし、太子信仰から当麻曼荼羅信仰に方向を転換した。その後、当麻曼荼羅は浄土宗西山派によって日本全国へ転写されるようになり、その結果当麻寺は当麻曼荼羅と中将姫の信仰の中心地として日本全国へ知られるようになった。鎌倉時代以降、当麻寺の復興事業が順調に進んでいることを考えると、当麻曼荼羅と中将姫を中心とする浄土信仰は成功したといえよう。報告者は、未だ解明されていない当麻寺史の全貌について美術史、仏教史、考古学の方向から新たな解釈を試みた。今後の当麻寺研究において新しい角度からより活発な議論が出ることを期待する。
著者
森 達哉
出版者
早稲田大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2013-08-30

本研究課題の遂行にあたり、特にアプリケーションとして有望であるテーマから研究を進めた。具体的には暗号化通信の通信先ホスト名を推定する問題に取り組みんだ。この問題を解決するために、ドメインネームグラフと呼ぶデータ構造とアルゴリズムを提案し、DNSの観測情報から暗号化された通信の宛先ホスト名を高精度に推定できることを実証した。結果を国際会議 TMA 2015 (採録率 29.6%)で発表、スケーラビリティに関する課題を克服した結果を 2015年度に Computer Comminications 誌にて発表。国内特許出願1件と同出願のPCT出願1件を実施。国内招待講演を1件実施。
著者
野津 裕史
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

近年我々はNavier-Stokes方程式のための安定化特性曲線有限要素スキームを開発した.それは特性曲線法と圧力安定化法を組み合わせたスキームである.得られる連立一次方程式の係数行列は対称であり,安価なP1/P1要素が用いられている.よって特に3次元問題において有用である.同スキームの安定性と収束性を証明した.その誤差評価は最良である.その結果,開発したスキームは,数値的に有用であることに加えて,数学的信頼性ももつことが示された.その他にも本研究期間において特性曲線法に関連するいくつかの数値的・理論的結果を得た.
著者
有坂 慶紀
出版者
早稲田大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2013-08-30

間葉系幹細胞(MSC)が接着した基板の表面特性を動的に変化させ、細胞分化系統を動的に転換する光架橋性高分子ブラシ表面(sPDMIM)の開発を行った。sPDMIMは、メタクリル酸メチルと光架橋性ジメチルマレイミドモノマーとの共重合によって作製した。MSCは、sPDMIM上でOCN遺伝子発現量が減少したが、光架橋sPDMIM(cl-sPDMIM)上では増加した。細胞培養中に光架橋した場合、OCNの減少が抑制されるが、cl-sPDMIM上のMSCsとも異なった。これらの結果は、動的に表面構造を変更した基板上のhbmMSCが、表面特性が固定された基板とは異なる分化系統に誘導される可能性を示している。
著者
木村 晋二
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

ハードウェアの高位レベルの等価検証手法の確立を目的とし、類似度を考慮した等価論理に基づく等価検証システムの研究を行った。等価論理は、変数の等価性のみに着目した論理体系で、他の論理との組合せで高い検証機能を持つことが知られている。まず、Verilog記述から等価論理の式を生成するシステムと、C言語記述から等価論理の式を生成するシステム、およびこれらの変換された等価論理式を時間展開するシステムのプロトタイプの構築を行った。生成された時間展開後の等価論理式に対し、公開されている等価論理判定システムであるCVCLやYICESを適用し、本手法の正当性と有効性の確認を行った。また現状の等価論理判定手法が時間展開に対して指数的な計算量を必要とすることが実験的に確認できたため、等価論理式をSATの問題に帰着して解く手法について研究を行い、変数間の等価性の推移的閉方を効率化する手法の検討を行った。類似度については、等価論理式の枠内での導入を行い、絶対値の差に基づく手法、現在の変数値との差に基づく手法の検討を行った。またハードウェア設計における浮動小数点数の固定小数点数への変換時の誤差と類似度の関係についても研究を行い、固定小数点数のビット数の最適化手法を提案した。さらに具体的なハードウェアへの適用として、マルチスレッディングプロセッサの等価性検証、加算のプレフィックスグラフの最適化と等価性検証、プロトタイピングを用いた等価検証の高速化とプロトタイピング検証におけるアサーション検証手法の高速化について研究を行った。
著者
楊 大慶
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012

本研究の第一年目の計画は資料収集と研究準備の段階を設定しております。今年度は一連の図書館、博物館、史料館で19世紀後半における長崎、浦塩、上海と海底電信に関する史料収集を行った。具体的に長崎市では海底線史料館、長崎歴史文化博物館、長崎県立図書館で、上海市では上海市図書館、上海市档案館、上海市電信博物館でウラジオストク市立ゴーリキー図書館、国立遠東大学図書館、国立アルセーニエフ総合博物館、アムール地区研究会図書館で文献資料収集した。集めたロシア語の史料の一部を英語に翻訳してもらいました。又はデンーマクの学者の協力を得て、大北電信会社の営業報告書の一部を入手した。極東アジア都市史と通信史の先行研究も購入した。さらに資料収集と共に、中国ロシアの研究者と都市史、通信史について有意義な交流が出来ました。これらの研究活動によって、19世紀後半から20世紀に初期にかけて長崎、浦塩、上海における「通信事情」と研究状況を解明することが出来ました。言うまでもなく、これらの研究活動は本研究の基盤である、こらから、史料の補足と分析する必要がある,これに基づいて、技術史、都市史等の諸分野の最新研究に照準し極東アジア地域通信史への新視角を構築することが出来ると信じている。