著者
池澤 聰 片山 成仁 河嶌 讓 山口 泰
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

知性、創造性、芸術、リーダシップ、あるいは特定の学術分野において高い潜在能力を有するギフテッドの人々は学校、職場で不適応など種々の心理社会的機能上の問題を抱える。背景には、彼らが潜在的に高い処理能力を有するだけでなく、様々な感覚的情報も大量に取り込み、強く反応する“過興奮性: Overexcitability”の特徴を有することが想定される。本研究では、ギフテッドの基準を満たす人々及び年齢性別をマッチさせた定型発達者を対象として、認知機能、過興奮性および日常生活機能の関連を検討し、過興奮性および日常生活機能の改善を目指した介入法の開発につながる基礎情報を得ることを目指す。
著者
泉 友則
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

トランスグルタミナーゼを介したβ_2-グリコプロテインI(β_2GPI)の架橋反応について、β_2GPI分子に存在する4つのグルタミン残基について各々を含む4種のペプチドを合成し試験管内での二量体化反応に対する阻害効果を検討した。過剰量の5-ビオチンアミドペンチルアミン(BAPA)存在下ではTGおよびFXIII、両酵素による二量体化が抑制されたのに対して、合成ペプチドは4種のうち、1つのみが組織トランスグルタミナーゼ(TG)による二量体化を選択的に抑制した。次に無血清条件下で24時間培養したヒト血管内皮細胞(HUVEC)におけるβ_2GPIの架橋反応を培地、付着細胞、浮遊細胞/リポソームの3画分それぞれについてウエスタンブロットにより解析した。浮遊細胞/リポソーム画分に分子量100kDaのバンドが強く認められ、このバンドの生成はトランスグルタミナーゼの阻害剤(シスタミン)の添加、また過剰量のBAPA存在下で強く抑制された。さらに、HUVECでの架橋反応における抗リン脂質抗体の効果を解析した。健常人由来IgGは架橋反応に影響を与えなかったが、これまでに特徴づけを行った抗リン脂質抗体患者由来のIgGの添加により、浮遊細胞/リポソーム画分中の架橋生成物量は顕著に増加した。以上の結果から、以下の可能性が示唆された。(1)β_2GPIはTGの特異的な基質の1つで、(2)その架橋反応は例えば内皮細胞の損傷や修復にともなって進行する。(3)抗リン脂質抗体は架橋反応、あるいは架橋生成物の膜上への結合を増強することでその生理的な機能を撹乱する。
著者
品川 高廣 深井 貴明
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究では、申請者らが研究を続けてきた準パススルー型仮想化技術を発展させて、パススルーの内容や度合いなど仮想化の「重み」を実行時に変更できるようにして、目的に応じた機能と性能のバランスをとることを目指す。また、アーキテクチャの異なるCPU間でも、共通の概念をまとめて抽象化しつつも、各CPU固有の特徴を生かしたオプション機能を追加可能にすることで、汎用的な目的特化型の仮想化ソフトウェアを実現する。
著者
宮下 直 滝 久智 横井 智之
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

1.ミヤマシジミの調査① 畦畔管理によるミヤマシジミの寄生率への影響: 継続調査している畦畔管理実験区内で各世代のミヤマシジミ幼虫密度と、寄生の有無、アリ随伴を記録した。主な寄生者はサンセイハリバエで、共生アリの随伴個体数は負に、幼虫密度と高刈り操作は正に効いていた。土壌由来のシヘンチュウによる寄生率は、高刈り操作と降水量による正の有意な影響があった。草丈を抑える畦畔管理は2種類の寄生者からのトップダウンを軽減する効果が期待できると示唆された。 ② 畦畔管理によるミヤマシジミの局所個体群サイズへの影響:2018年~2021年までの各世代の幼虫個体数を全生息地パッチで記録した。その結果、実験を行っている生息地パッチは実験していない生息地パッチに比べて、個体数増加しているパッチの割合が有意に高く、適した時期と強度の撹乱は局所個体群サイズを増加させることがわかった。2.ソバの送粉サービス① 各昆虫種の送粉効率の推定:早朝から夕方にかけて、ソバに訪花する昆虫をビデオで撮影した。撮影した花序は結実率を推定した。送粉効率を推定するモデルとして、資源制限を考慮した階層モデルを構築した。解析の結果、一回訪花あたりの結実率はミツバチ類やハエ類、コウチュウ類が高く推定され、送粉サービス量はセイヨウミツバチとコウチュウ類で高い結果となった。 ② 畦畔管理による送粉サービスへの影響:ソバの播種から収穫直前まで畦畔での草刈りを控えた維持区と、通常の草刈り区において、訪花昆虫と結実率を調査した。その結果、草刈り区よりも維持区で訪花昆虫個体数と結実率が高く、コウチュウ類やハナアブ類の個体数が増加していた。また、畦畔の開花植物の訪花昆虫と夜間に植物体上で休息している昆虫を調査した結果、どちらの機能も重要で、送粉サービス維持には生息地としての機能の多様性が必要であることが示唆された。
著者
中村 美緒
出版者
東京大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

Weighted Blanket (以下,WB)は、寝具の中におもりを入れて身体に圧刺激を与える掛け布団である。これまでに発達障害者や精神障害者、認知症者による実証が行われており、不安感の減少や睡眠時間の増加、日中の活動性の向上などの効果が明らかにされている。一方で、身体的な効果については、臨床観察にてその効果が推測されるものの、学術的な報告は見当たらない。そこで本研究では、WBによる圧刺激が筋緊張を緩和するといった身体に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。本研究の成果は、WBの適応範囲の拡大と使用方法の確定につながる。
著者
山本 希美子 安藤 譲二
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2019-06-28

血管内皮細胞は血流や血圧に起因する力学的刺激であるせん断応力や伸展張力を常に受けている。内皮細胞には力学的刺激をセンシングし、血行動態の情報として細胞内部に伝達することで細胞応答を起こす働きがあり、循環系の恒常性維持に重要な役割を果たしているが、その仕組が障害されると、様々な心血管病の発生に繋がる。最近、せん断応力依存的に血管内皮ミトコンドリアでATPが産生することを見出し、力学的刺激が細胞のエネルギー代謝に直接関与する事を示した。本研究では、血流刺激に反応するミトコンドリアでのATP産生メカニズムに焦点を当て、力学的刺激受容オルガネラとしてのミトコンドリアの役割とATP代謝経路を解明する。
著者
郭 南燕 中尾 徳仁 李 梁 白石 恵理
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2021-04-01

土山湾は中国上海市徐家匯地区の村落である。1864年にイエズス会がそこに孤児院を設立し、職業訓練の工房を開設し、1950年代まで運営した。そこで制作された美術工芸品と印刷物は、幕末から昭和初期まで日本に輸入されて、博物館、記念館、修道院等に収蔵され、幅広く利用されている。本研究では、①日本に散在する土山湾の美術工芸品と刊行物に関する網羅的調査とデータベース化、②国内諸機関の書誌に対する補足情報の提供、③土山湾作品を手本とした幕末~明治初期の「プティジャン版」と布教用木版画の分析を通して、土山湾の作品が日本文化に与えた影響を検討し、日本現存の作品の保存と研究の推進に寄与したいと考える。
著者
小佐野 重利 亀田 達也
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2019-06-28

激しい明暗と情動的な特異な図像表現で知られるバロックの巨匠カラヴァッジョの絵画画像を被験者に見せて、被験者の絵の見方を眼球運動計測から探り、同時に暗示的動作を示す画中人物を見て被験者の脳内に惹起される運動や情動の反応をfMRIによる脳機能イメージ ングによって計測する。美術史をベースとした神経科学との文理融合型の実験研究によって、絵画鑑賞者の視線と脳内の運動・情動反応から、カラヴァッジョの絵画の特質を探る。
著者
奥野 将成
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、ラマン顕微分光法をイメージング手法として成熟させ、ラマン・イメージの取得時間を著しく短縮することである。平成23年度における、本研究の成果としては、次のとおりである。1.CARS分光顕微鏡の生細胞への応用。動物細胞への界面活性剤の作用について、時間分解測定を行い、ラマン分光イメージとしてそれらの動的挙動の追跡を行った。それにより、界面活性剤が細胞内に数10mMの濃度で蓄積していることが示唆された。さらに、細胞内膜輸送に関係する微小管の生成を阻害する薬剤を滴下し、同様の実験を行った。薬剤を滴下しない場合と比較して、有意に界面活性剤の蓄積速度が減衰した。これにより、界面活性剤の細胞内への取り込みに、細胞内膜輸送が関係していることが示唆された。これは、従来の顕微鏡技術では観測できなかった分子のダイナミクスであり、本研究で製作した広帯域のラマンスペクトルを高速で取得できる装置によって、はじめて明らかになった。また、本研究で開発した、CARS分光顕微鏡と最大エントロピー法を組み合わせる技術によって、細胞内の分子濃度を定量的に見積もることに成功した。2.ラマン分光イメージングの絶対定量化の試み。前年度の研究をさらに発展させ、さまざまな生体分子について、それらのラマンバンドの絶対ラマン散乱断面積を求め、それを用いることで、生体分子の生体中濃度を見積もった。シトクロムbおよびc、フェニルアラニン残基、核酸(DNAおよびRNA)、脂質分子の濃度を見積もった。また、生体中の脂質分子の不飽和度をレーザー焦点中の平均値として見積もることに成功した。これは、従来の蛍光顕微鏡などの方法では得ることのできない情報である。また、2つの国際会議、及び2つの国内会議に出席、発表を行い、他の研究者との交流を深め、研究に関する示唆を得た。
著者
護 雅夫
出版者
東京大学
巻号頁・発行日
1962

博士論文
著者
鶴見 英成
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2015-04-01

アンデス文明の神殿では一般的に、儀礼的な建築の更新が反復されていた。それが経済・技術・儀礼など社会の諸側面を発展させたと考えられるため、神殿の起源の解明は文明史研究の重要課題である。1960年代に日本の調査団はペルー北部山地のワヌコ市にてコトシュ遺跡を発掘し、神殿の登場が先土器段階に遡ることを証明した。近年では海岸部で先土器段階の神殿が多く発見され、文明の形成過程を具体的に解明すべく山地との比較が試みられているが、山地の神殿の年代と生業基盤の解明が遅れている点が問題となっている。本研究の第1の目的はコトシュ遺跡を再調査し、今日の水準で年代測定と有機遺物分析を実施することにある。また現代においてコトシュはワヌコ市を象徴する遺跡であり、50年ぶりの研究成果発信に際して、市民がいかなる関心を持って今後それを資源化していくのか、聞き取り調査により展望することが第2の目的である。平成28年は、前年度に実施した測量と、遺構の表面観察の結果をふまえ、発掘調査を実施した。1960年代に出土した先土器期の神殿建築群の床下を発掘し、さらに下層に建築群が埋まっていることを確認した。またマウンド頂上部を初めて発掘し、先土器期の神殿建築がきわめて高い地点まで積層していたこと、それが土器導入後の建造物を建てる際に壊されたことを示した。すなわち先土器期の神殿建築について、従来より古い時点の事例、土器導入直前の最終段階の事例、両方を確認することができた。それぞれの建築に伴う炭化物を採取し、東京大学総合研究博物館放射性炭素年代測定室にて年代測定を実施した。また有機遺物に関しては土壌水洗によって微細な動植物資源まで採取した。50年間の経緯と新たな調査成果に関して、コトシュ遺跡博物館にパネル展示を設置し、講演や現地説明会を行い、マスコミを通じて情報発信しつつ、双方向的に市民の関心について聞き取り調査を実施した。
著者
土井 研人
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

心腎連関症候群は、急性および慢性心不全が腎障害を惹起する、あるいは急性腎障害と慢性腎臓病により心疾患が発症・増悪する、という臨床的な観察に基づいて定義されているが、心臓と腎臓という二つの臓器をつなぐ病態メカニズムについては十分明らかにされていない。特に、急性腎障害が原因で心機能低下を呈するとされるType 3心腎連関症候群については基礎的な検討がほとんどなされていなかった。本研究では、腎虚血再灌流モデルを用い、急性腎障害が心臓組織におけるミトコンドリア断片化とアポトーシスを惹起すること、ミトコンドリア制御蛋白の一つであるDrp-1がこの現象において重要な役割を示していることを見出した。
著者
中村 一創
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2022-04-22

「文」という概念がなぜ人間に備わっているのか、「文」は我々の言語能力においてどのように定義されているのか、これら二つの問題に科学的解答を与えるのが本研究の課題である。「文」は「句」とは異なる概念であり、人間が思考したり意思を伝達したりするには「句」さえ存在していれば十分である。しかし我々が文と文でないものを見分ける能力を持っているのは事実であり、そうした余分な能力がなぜ存在するのかが生物言語学の重要な問題となるのである。本研究では、文概念の存在を主語・助動詞倒置をはじめとする様々な文法現象と結びつけて明らかにし、さらに哲学・生物学等の知見も活かしつつ、文概念の発生を生物言語学的に説明していく。
著者
西村 俊哉
出版者
東京大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究では、異種母体を利用した個体作出システムの構築を目的とし、胚盤胞補完法を用いて子宮欠損ラット体内にマウス幹細胞由来子宮を作製し、そこにマウス胚を移植し、ラット母体内でのマウス胎子の発生を試みる。異種母体内で移植胚と同種の子宮を作製することができれば、異種母体を利用した個体作出システムの構築に大きく近づくと考えられる。また、本研究が進めば、産子作出に同種母体が必要なくなることから、個体の確保が困難な絶滅危惧種やすでに絶滅した種の近縁種を用いることによる“代理異種母出産”が可能となる。本年度は、前年度に開発した飛躍的なドナーキメリズムを上昇させる新規手法(細胞競合ニッチ法)をさらに改良することで、子宮特異的に成長因子受容体欠損を誘導する遺伝子改変マウスを作製した。具体的には、Wnta7遺伝子のプロモーター下でCREタンパク質を発現するマウスとIgf1遺伝子にloxp配列が挿入されたマウスを掛け合わせることで、両方の組み換え遺伝子を有したマウスを作製した。今後、本マウス胚にドナー細胞を移植することで、①ドナー細胞のキメリズムが子宮内で上昇するか、②ドナーキメリズムが上昇した場場、ドナー細胞由来子宮を誘導することが出来るかを検討する。また、これまで得られたデータをまとめ、論文発表(Nishimura et al., Cell Stem Cell. 2021)、学会発表(第20回再生医療学会総会 口頭発表)を行い、研究成果を社会に発信するとともに、得られた研究結果の米国特許申請を行うことで産業に結び付ける足掛かりを作った。
著者
山本 達郎
出版者
東京大学
巻号頁・発行日
1951

博士論文
著者
松永 裕
出版者
東京大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2019-08-30

分岐鎖アミノ酸(BCAA)の摂取によってミトコンドリアの生合成が高まることが報告される一方で、分解機構に与える影響について詳細は明らかではない。この分解機構はミトコンドリアの品質管理を行う上で重要な働きを担う。そこで本研究では、BCAAの摂取がミトコンドリアの分解機構に与える影響を明らかにする。本研究により、BCAAの摂取がミトコンドリアの制御にどのような影響を与えるのかについて合成および分解の両視点から明らかにすることが可能となる。さらに、BCAAの新たな生理機能の発見につながることや、スポーツ現場に対して科学的根拠に基づいた栄養摂取方法を提供する一助となることが期待される。