著者
鈴木 真二 土屋 武司 柄沢 研治
出版者
東京大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

事故や故障が発生した場合の航空機の安全な自立的誘導制御技術を研究するとともに、飛行試験を模型航空機で実験する方法の研究を推進するのが本研究の目的である。事故や故障が発生した場合に、機体の姿勢を自動的に安定化する方法に関しては、本年度はニューラルネットワークによるフィードバック誤差学習法を研究し、シミュレーションならびに実機飛行試験によってその有効性を確認した。その結果は、飛行機シンポジウム(日本航空宇宙学会)、交通・物流部門大会(機械学会)において発表し、H18年8月開催予定の誘導制御シンポジウム(米国航空宇宙学会)で講演する。模型飛行機実験に関しては、ラジコン機の製造・飛行を実施し、指定したウェイポイントを自動で飛行する自律飛行試験に成功した。また、携帯電話回線を利用したデータ通信による飛行制御にも成功した。その成果は新聞、TVでも紹介された。模型飛行機の製作と実験に関しては、教育的効果も高いので、他の研究室、専攻も参加する研究科内の研究会プロジェクトを立ち上げ、活動を開始し、本年度は第1回全日本学生室内飛行ロボットコンテストを日本航空宇宙学会の主催により開催した。
著者
Cabral Horacio 垣見 和宏 内田 智士
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

We will first develop a series of T-cell targeted mRNA-loaded nanocarriers. These nanocarriers will be optimized for stability, targeting and protein production in vitro.Promising formulations will then be tested in vivo. to determine the targeting efficacy to the CD8 T cells, the production of CAR T cell in situ and the antitumor activity against models of leukemia and solid tumors. Finally, we will check the toxicity of the treatments.
著者
熊本 裕 LIVSHITS V.A DESYATOVSKAY ヴォロビョー ウ 吉田 豊 VOROBYOVAーDE VOROBYOVAーDE
出版者
東京大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1993

「日本・ロシア共同による中央アジア出土イラン語文書の研究」は、1980年代末のペレストロイカによるロシアの急速な政治的・文化的自由化の進行という情勢に基づいて計画された。旧ソ連体制下で日本の研究者にほとんど実見の機会が与えられていなかった、レニングラード(のちサンクトペテルブルグ)の科学アカデミー東洋学研究所所蔵の中央アジア出土写本の豊富なコレクションを実地調査すると共に、同じく国外への旅行が厳しく制限されていたロシアの研究者を日本に招聘して、中央アジアを専門領域とする日本の言語学・歴史学・宗教学者と交流を図り、また量的にははるかに少ないが貴重な遺物を蔵する大谷蒐集品(龍谷大学蔵)を比較調査してもらう、という双方にとって極めて有益な活動を実現することを目的とした。1991年に予備調査で当時のLeningradに赴いた熊本(研究代表者)は、ロシア側のVorobyova-Desyatovskaya及びLivshitsと協議の結果、大筋の計画に合意し、3年計画の科学研究費国際共同研究を申請して、これが承認された。計画初年度の1993/94年は、熊本(研究代表者)と吉田(研究分担者)が、ペテルブルグの東洋学研究所で調査を行ない、Vorobyova-Desyatovskaya(研究分担者)が来日して、東京と神戸で在ロシアの中央アジア出土写本について4回の講演を行うとともに、京都の龍谷大学で大谷探検隊蒐集の写本の調査を行なった。計画2年目の1994/95年は、熊本と吉田が再びペテルブルグを訪れて前年度の調査を続行し、Livshits(研究分担者)を日本に招聘すべく準備を整えたが、不幸にして来日直前にLivshitsの入院という事態により年度内の来日は不可能となり、代わりに吉田が年度末に3度目のペテルブルグ訪問を行なうこととなった。計画3年目の1995/96年は、前年度に来日できなかったLivshitsとVorobyova-Desyatovskayaの2人を招聘する予定で準備を行なったが、Vorobyova-Desyatovskayaの来日はビザ申請手続上の問題から、当初の予定の10月から2月に延期され、またLivshitsの来日も、すべての準備が整った出発直前の段階で急病のため中止となった。その代わりに熊本が、1月に3回目のロシア訪問をして、最後の調査を行なうことが出来た。ペテ
著者
稲葉 睦 松木 直章 土居 邦雄 高橋 迪雄 高桑 雄一 長谷川 篤彦
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

赤血球の主要膜内在性蛋白質であるバンド3は、従来、生命推持に必須とされてきた。本研究は、黒毛和種牛の遺伝性バンド3欠損症における知見をもとに、この定説の妥当性を検討し、代償機構を解明することを目的とする。得られた成果の概要は以下のとおりである。1)遺伝子型と赤血球表現型との解析により原因遺伝子異常がR664X変異であること、本疾患が優性遺伝形式をとることを実証した。2)赤血球膜病態の解析に基づき、ホモ接合型とヘテロ接合型の赤血球球状化機序が異なること、即ち、前者ではバンド3-アンキリンースペクトリン間結合の消失が、後者では変異バンド3のドミナント・ネガティプ作用によるバンド3減少がそれぞれ球状化の原因となることを示した。これらの知見から膜骨格の形成とバンド3の生合成とが独立した現象であり、バンド3は膜骨格形成には不要であるが、その後の膜安定化に必須であることを提唱した。3)バンド3完全欠損赤血球には本来は前駆細胞のみにみられるバンド3の構造類似体AE2によるアニオン輸送能が存在することを解明した。さらに、迅速なアニオン輪送は全く代償さえておらず、バンド3によるアニオン輪送は平常時のガス交換に必須の要索ではないことを実証した。
著者
上田 隆一
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では,複数のカメラ・センサから得られる情報を統合する演算方法の設計と,その演算を実行するソフトウェアの実装を目的とした.存在しているカメラの互いの相対姿勢(6パラメータ×カメラの台数)をパーティクルフィルタで推定するアルゴリズムを実装した.これにより,複数台のカメラが協調して物体位置をロバストに計測することを可能とした.
著者
上田 隆一
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究課題は,最適制御問題を動的計画法で解いた解「状態行動地図」のメモリ容量を不可逆圧縮の代表的な手法であるベクトル量子化で圧縮するというものである.本年度は,申請者らの既発表のアルゴリズムの応用と評価を中心に研究を行い,成果を国内外の学会において発表し,今後雑誌論文として発表できる様々なデータを得た.本年度は,開発したアルゴリズムを大規模な問題へ適用し,評価を行った.その一つとして,ロボットサッカーでのマルチエージェント系となるタスク(パス)に本手法を適用した.状態行動地図の要素数は6億程度となったが,これを3.0GHz CPU,3.0GBのRAMを搭載した計算機で10日間計算することで,パスや互いに衝突を回避するなどの協調行動が見られる状態行動地図を得ることができた.また,この状態行動地図を同計算機で1日で圧縮することに成功し,結果的に実装するロボットのメモリ量(16MB)を下回る,8.2MBのベクトル量子化地図を得ることができた.また,シミュレーションではあるが,圧縮による地図でもロボットが協調して効率よく作業できることを示すことで,提案手法が,複雑なタスク用の地図を破綻させないで小さく圧縮できることを示せた.さらに,非常に非線形な制御問題であるアクロボットの振りあがりタスク,上記のロボットサッカーのタスク,人工知能の標準問題の一つである水たまりタスクにおいて,本手法と競合する手法との比較を行った.評価指標として,圧縮率と圧縮による性能劣化を計測した.結果,本手法で得られるベクトル量子化地図は,タスクの種類にかかわらず,他手法よりも安定して低消費メモリで性能劣化の小さい行動決定手法を記憶できることが示せた。
著者
齋藤 慈子
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

新世界ザルでは同種内に3色型色覚の個体と2色型色覚の個体が混在していることが知られている。また、ヒト以外の旧世界霊長類の色覚は均一であるとされてきたが、近年、旧世界ザルであるカニクイザルにおいて2色型色覚の個体が発見され(Onishi et al.,1999;2002)、さらに最近チンパンジーにおいても色覚異常の個体が、1個体発見されている(Saito et al.,2003;Terao et al.,2005)。2色型色覚は、赤い果実あるいは若葉の検出に、3色型色覚よりも不利だといわれている一方、2色型色覚の存在理由として、2色型色覚はその他の採食行動において3色型色覚よりも有利であるという可能性が指摘されている。特別研究員は、昨年度までにフサオマキザルと、チンパンジーを対象に、「きめ」の違いによって描かれた図形の弁別課題を用い、2色型色覚の有利性を検証してきたが、今年度は、フサオマキザル3頭(3色型:n=1;2色型:n=2)を追加し、さらにヒトを対象に同様の課題をおこなった。その結果、刺激がカラーカモフラージュされた条件では、フサオマキザルの2色型の個体は、有意にテスト刺激を弁別することができたが、3色型色覚の個体は弁別することができなかった。またヒトでは、カモフラージュされた条件とカモフラージュされていない条件を比較したところ、色覚異常と診断された参加者では反応時間に条件間で有意な差がなかったが、正常3色型の参加者では反応時間がカモフラージュ条件で有意に長くなった。このことから、この課題において2色型色覚、色覚異常の個体は、3色型色覚の個体よりも有利であったといえる。今回の実験により、ヒト以外の霊長類2種、さらにヒトにおいても、2色型色覚の有利性が個体間の行動の違いとして明確に示されたといえる。
著者
坂本 健太郎 青木 かがり
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2020-07-30

鯨類の潜水能力は哺乳類の中で最大である。潜水中には、心拍数を低下させるなど、何らかの循環器系の調節を行う事で、このような長期間の潜水を可能にしていると考えられている。これまでは水中で遊泳する鯨類の心機能を経時的に計測することが出来なかったため、その生理機能は謎に包まれていた。本研究では潜水を行う鯨類から長期間にわたって心電図計測を行い、鯨類の潜水能力を循環器系制御の側面から解明することを目指す。
著者
小川 修
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

本研究は、還元拡散法による希土類機能性材料として希土類磁石を選び、拡散に関する実験を行なったものである。当初はCo中へのSmの拡散、及びFe中へのNdの拡散の両方を取り上げたが、後者の場合NdはFe中には容易には拡散せず、長時間の熱処理によっても進展が見られなかったので、研究の後半では前者のCo-Sm系に的を絞った。Co中へのSmの拡散は、「研究成果報告書」に詳述した理由から、溶融Sm-Co合金とCoブロックで拡散対を構成したが、拡散が起きる前にCoブロックの表面が不均一に溶け出す現象を抑えることができず、このため拡散層厚が非常に不均一になった。そこで、Coブロックを溶融Sm-Co合金の蒸気と接触させる方法に切り換えたところCoの溶出が抑えられ、かなり均一な厚さの拡散層が得られたので、以後はこの方法によった。最も成長の速い相はSmCo_5で、その内側にSm_2Co_<17>の相がわずかに成長した。最も外側に現れているSm_2Co_7の相は試料断面の研磨中に失われることが多く、層厚の測定ができなかった。結果として1050、1100及び1150℃の各温度で、SmCo_<17>相におけるSmの拡散系数が求められた。本研究で採用した方法をヒントに、Sm_2O_3-Caチップの混合物をCo粉末と直接には触れないようにして還元拡散プロセスを行なわせたところ、カルシウム分による汚染の少ないCo-Sm合金が得られた。これは言わば「還元・揮発・拡散法」と呼ぶべきもので、比較的蒸気圧の高いSm等には有用な方法であろう。また、一旦SmCo_5の層を大きく成長させた後、Sm蒸気の無い条件で1100〜1200℃に保持すると、SmCo_5相をSm源とする拡散が進行してSm_2Co_<17>相が大きく成長することを確認した。この二つの結果は、工業的に未完成な還元拡散法によるSm_2Co_<17>素磁石材料の製造につながる有望なものとして、今後も検討を加える予定である。
著者
榊原 哲也 西村 ユミ 守田 美奈子 山本 則子 村上 靖彦 野間 俊一 孫 大輔 和田 渡 福田 俊子 西村 高宏 近田 真美子 小林 道太郎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は、これまで主として看護研究や看護実践の領域において注目されてきた、看護の営みについての現象学的研究(「ケアの現象学」)の、その考察対象を、医師による治療も含めた「医療」活動にまで拡げることによって、「ケアの現象学」を「医療現象学」として新たに構築することを目的とするものであった。医療に関わる看護師、ソーシャルワーカー、患者、家族の経験とともに、とりわけ地域医療に従事する医師の経験の成り立ちのいくつかの側面を現象学的に明らかにすることができ、地域医療に関わる各々の当事者の視点を、できる限り患者と家族の生活世界的視点に向けて繋ぎ合せ総合する素地が形成された。
著者
キタ 幸子 上別府 圭子
出版者
東京大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2015-08-28

周産期のIPVと産後の虐待的育児・育児困難感との関連及びその心理要因を明らかにすること目的に、平成28年7月~平成29年9月に妊娠後期・産後1か月・産後3か月における縦断観察研究を行った。その結果、周産期のIPVは産後の虐待的育児・育児困難感と関連し、更にその関連への心理要因として産後うつ病及びボンディング障害が明らかになった。本結果から、産後早期の児童虐待防止に向けて、妊娠中のIPV早期発見と軽減に向けた介入の必要性が示唆された。更に、IPV被害妊婦に対しては産後の児童虐待・育児困難感予防に向けて、産後うつ病及びボンディング障害の早期発見及び発症・重症化予防の取り組みの重要性が示唆された。
著者
黒田 直史
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究では,反陽子の荷電半径と呼ばれる電気的な広がり,つまり反陽子の大きさを測定する。通常の水素原子に含まれる陽子の荷電半径は,近年これまで知られていた値より小さかった可能性が高まっている。陽子荷電半径問題とよばれるこの問題に反物質の側から迫るとともに,これまで不可能だった陽子と反陽子の大きさの比較を通して物質と反物質の間のCPT対称性のテストを行う。そのために,水素原子ビームを用いて実験装置と手法の開発を進めて十分な精度を得たのち,CERNで供給される反水素原子ビームを用いてマイクロ波分光を行う。反水素原子のラムシフトを高精度で測定することで,反陽子の荷電半径を世界で初めて決定する。
著者
名波 拓哉
出版者
東京大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2021-04-01

神経科学の発展により、昆虫脳の構造や機能が近年急速に明らかになりつつある中で、本研究では、昆虫の脳を模倣しその柔軟な知性や高いエネルギー効率を実現するシリコン神経ネットワークチップの基盤技術の開発を行う。構造と機能が特によく理解されている嗅覚神経系及び記憶中枢神経系を対象に、シリコンニューロンユニットの低電圧化による低消費電力化や、昆虫脳の神経ネットワーク構造を効率よく実現するバスアーキテクチャ構造といった技術開発を行い、デジタル ASICチップを試作し動作検証や消費電力の評価を行う。本研究で得られる成果は、将来的に昆虫脳全体の機能を実現する昆虫脳チップに発展することが期待できる。
著者
西廣 淳
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

霞ヶ浦を主なフィールドとした平成16年度までの研究により、湖岸や湖底の土砂中には、現在地上植生から消失した種も含めて多様な水生植物の土壌シードバンク(埋土種子集団)が残存していることが明らかにされた。また、湖岸植生帯を構成する植物種の多くが自然の水位変動に適応した発芽戦略をもつが現在の人為的な水位管理条件下では種子からの更新の機会が大幅に抑制されていることが示された。平成17年度は、これまでに明らかにされた湖岸の植物の発芽特性、特に発芽季節と発芽や実生定着に対する冠水の影響に関する知見を活用し、湖沼の水位管理のパターンに対する湖岸の植物の発芽・定着適地(発芽セーフサイト)の動態を予測するモデルを構築し、予測・検討を行った。この研究では、先行研究の結果を踏まえ、湖岸の植物の発芽セーフサイトの定着条件を定義し、この条件をみたす場所の面積を、霞ヶ浦をモデル湖沼として湖岸の微地形(国土交通省による横断測量調査結果を活用)のデータと湖の水位データ(国土交通省による日平均水位記録を活用)から算出した。その結果、霞ヶ浦の場合では、現在の「管理目標水位」(水門による水位管理の目標とする水位で、長期を対象にした場合の平均値と一致)を現在よりも10cm上昇させると湖岸の植物のセーフサイトは50%程度まで減少すること、15cm低下させると2倍程度に増加することなどが予測された。水生・湿地生植物の発芽に対する水文環境の重要性は多くの研究からも示されているが、具体的な湖沼管理のプランが湖岸の植物に及ぼす影響を定量的に予測した研究はほとんど存在しない。植物の発芽・定着特性、湖岸地形、水位から植物のセーフサイトを予測する本モデルは、霞ヶ浦以外の湖沼でも適用が可能であると考えられる。
著者
浅井 健一
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

自己反映言語のコンパイルを目指して、おもにその基礎技術である部分評価法の研究を行った。部分評価器を自己反映言語のコンパイラとして使用するためには、使用する部分評価器が(1)十分、強力で、かつ(2)効率的に動くこと、の2点が重要である。これらに対応して以下のような結果を得た。1. 部分評価器の能力として、構造データをきちんと扱えることが重要で、そのためには部分評価時に各式の値とコードの両方を保持することが重要であることを発見した。これに基づいて実際にonlineの部分評価器を作成し、その効果を確かめた。しかし、この方法はonlineのため効率に問題があることがわかった。2. より効率的な部分評価を実現するべく、上記の方法をofflineに拡張する方法を提案した。この方法は、構造データをうまく扱う特化器の作成と束縛時解析器の作成というふたつの部分からなる。このうち前者は、必要に応じて値とコードの両方を保持し、かつコードの複製を避けるためコード部分を必ずlet式に残すことでうまくできることがわかった。この特化器を使って実際にいろいろな特化を行い、自己適用によるコンパイラジェネレータの作成を含めてうまく動くことを確認した。後者に関しては、従来の束縛時解析の手法を拡張することで、値とコードの両方を持つべき場所を特定できることを示した。その過程で、束縛時解析は、比較的、素直に制約を生成する型システムとして定式化できるが、制約を解くためには従来の手法と違い、2段階にわける必要があることがわかった。束縛時解析は実際に実装を行い、うまく動くことを確認した。今後の課題としては、ここで提案した束縛時解析の多段の部分評価への応用、今回は行うことができなかった自己反映言語のコンパイルへの実際の適用などがあげられる。
著者
楠田 悠貴
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2020-04-24

フランス革命は長きにわたってナショナリズムの影響を受け、また近代世界の出発点としてばかり捉えられてきたために、他国の歴史が革命に及ぼした影響についてほとんど考察されてこなかった。本研究では、フランスにおける史料調査を積み重ね、革命期・帝政期の関連史料を幅広く網羅的に読解することを通して、フランス革命家および反革命家たちが17世紀イングランドの歴史的展開をつよく意識し、教訓を得るべくその解釈をめぐって論争を繰り広げながら自らの革命の進路を選択していたことを明らかにする。偶然の連続として叙述されがちなフランス革命であるが、最終的にこれとは異なる新しい革命像が提示できると考えている。
著者
唐沢 康暉
出版者
東京大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

虚血による神経細胞死では、酸化ストレスが重要な役割を果たしている。ラットの虚血モデルにおいて、虚血部位の周囲でMAPキナーゼがリン酸化がおこる。酸化ストレスによる神経細胞死において、シグナル伝達物質、MAPキナーゼの活性化が関与するといわれ、治療のターゲットの一つとして期待されている。 本研究では、酸化ストレスによる細胞死モデルであるマウスの海馬由来のHT22細胞を用いて、MAPキナーゼの活性化を反映するFRET(fluorescence resonance energy transfer)プローブを組み込み、酸化ストレスによるMAPキナーゼの活性化を、可視化、定量化する実験系を確立した。本年度は,ベルギーのSarah-Maria Fendt研究室と共同研究の結果、「脂肪の多い食事をしたマウスは糖を飲んだ後、乳酸が多くでき、人でも、太めの人の方が糖を飲んだ後、乳酸が多く出る傾向がある」ことをしめした。さらに培養細胞、マウスのデータとともに、高脂肪食と肝細胞癌の発生機序の関連を示した論文を出版した( Broadfieldら、Cancer research 2021)。健康なヒトが糖を摂取した後に繰り返し採血をおこなうことで、詳細な血中代謝物およびホルモンの時系列データを取得した。数理モデル解析を行い、個人間および分子間における、代謝物とホルモンの時間パターンに、1)大きさや早さなどの時間成分、2)個人間の時間パターンの類似性、3)個人間の大小関係の時間変化、4)分子間の時間パターンの類似性、の4つの指標があることを示した論文を出版した(npj systems biology and applications 2021, These authors contributed equally: Suguru Fujita, Yasuaki Karasawa.)