著者
北田 修一 岸野 洋久 浜崎 活幸 北門 利英
出版者
東京海洋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

養殖や種苗放流が天然集団に及ぼす遺伝的影響を評価した。有明海では、外来種の中国アサリが在来アサリと交雑し、その遺伝子が約半分を占めた。サワラ放流魚の遺伝的多様性は低く、放流量が餌の供給量を超えた場合には、天然魚を置き換えた。養殖マダイは長年の選抜育種のため遺伝的多様性が低く、形態も変化していた。スチールヘッドの相対繁殖成功度は、交配や環境の影響を受けて変動が大きい。適応度低下の分子メカニズムを明らかにするため、遺伝子発現と形質のグラフィカルモデルを開発した。
著者
増田 光弘 南 清和 庄司 邦昭
出版者
東京海洋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

荒天錨泊中の走錨による船舶の事故は、錨の研究が進んだ現在においても絶えることがない。原因の一つとして、現在使用されているJIS型錨やAC-14型錨はそれぞれ最大把駐力や姿勢安定性など構造的に課題点を抱えていることが挙げられる。本研究の目的は高性能な新型錨を開発することである。そのために、既存の錨の性能を再評価し、まとめた錨性能評価表を作成した。そして、錨性能評価表に基づいて高性能新型錨を設計・開発し、新型錨がどのような状況においても安定して性能を発揮することができる錨であることを確認した。
著者
大河内 美香
出版者
東京海洋大学
雑誌
東京海洋大学研究報告 (ISSN:18800912)
巻号頁・発行日
no.8, pp.7-17, 2012-02

Increases in drug trafficking bound for the United States force the nation's law enforcement authorities to seek international cooperation, especially through extradition procedures to take fugitives into custody. The research aims to illustrate the difficulties in extradition process through case study and to specify the scope of extradition and extraterritorial law enforcement. This paper also discusses the feasibility of some alternatives toextradition that are less offensive to sovereignty, namely, conducting arrest activities in international waters or in a third state.アメリカ合衆国の法執行当局は、同国を仕向地とする麻薬の密輸の増加によって、犯罪人引渡手続を通じた国際司法協力の必要に迫られている。本研究は、逃亡犯罪人の身柄確保のための手続と、法執行管轄権の域外適用の射程を、クリストファー・コーク引渡事案を紹介しながら検討する。あわせて引渡手続以外のオプションとして、公海上又は第三国における逃亡犯罪人の逮捕活動を中心とした域外法執行の実現可能性を検討する。東京海洋大学海洋科学部海洋政策文化学科
著者
酒井 昇 福岡 美香
出版者
東京海洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

肉や魚を調理する過程においては、加熱されると同時に水分の移動と蒸発、タンパク変性に伴う収縮、さらに呈未成分の変化などが起こり、その過程は極めて複雑であるため、最適な条件を設定することは容易ではない。そこで本研究は、これを支援するために、調理・加工過程で進行する伝熱、それに伴う素材の変化を、定量的に記述するとともに、その結果を、コンピュータを用いて可視化する手法を開発した。具体的な調理としては、ローストビーフおよび焼き魚を取り扱った。ローストビーフ調理においては、反応速度論に基づいて加熱に伴うタンパク質および呈味成分の変化予測と可視化を行った。また、焼き魚過程においては、加熱に伴うタンパク質変性、呈色反応を定量化し、表面温度変化との関係を明らかとした。
著者
渡邊 学 鈴木 徹
出版者
東京海洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

水産物の冷凍流通は、未凍結での冷蔵流通に比べて可食期間が遥かに長いため、船舶輸送による輸送エネルギーの低減や、食品廃棄の抑制など、環境面では優位性が期待できる。しかし、多くの消費者が冷凍品は美味しくないというイメージを持っており、冷凍流通品の地位は低い。本研究では、マグロとサンマを用いた官能評価を行い、環境負荷と美味しさを統合的に評価することを試みた。この結果、冷凍品は環境負荷が大幅に小さく、美味しさにはそれほど顕著な違いが無いことが示された。すなわち持続可能な社会を実現するためには、冷凍流通を上手に利用することが有効であると言える。
著者
浦野 直人 石田 真巳 西沢 正文 西沢 正文
出版者
東京海洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は未利用資源である褐藻廃棄物から効率的にバイオエタノールを生産するため、褐藻糖化酵母を創出することを目的とした。酵母と酵素の活性温度を一致させるため、海洋低温菌由来のラミナラナーゼを探索し、相模湾由来のPseudoaltermonas haloplankitis LAを単離した。LAのラミナラナーゼPhLamは活性部位下流にX1, X2, X2の繰返し配列を持つ新奇酵素であり、活性発現にXが必要であった。PhLamを酵母Saccharomyces cerevisiaeで表層提示したところ、組換え酵母は褐藻ラミナランの分解活性を持ち、ラミナランから直接的にバイオエタノールを生産した。
著者
苦瀬 博仁
出版者
東京海洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は、歴史的にみた鉄道などの大量輸送機関が、都市の産業発展に果たした役割を明らかにすることである。都市の産業振興上必要だった物資輸送のために輸送機関の変遷を明らかにするとともに、環境負荷の小さい輸送機関である水運と鉄道が、都市の物流システムとして過去に成立した理由が明らかとなった。これにより、都市の物流システムとしての利用可能性が明らかとなった。
著者
須之部 友基 国吉 久人 坂井 陽一
出版者
東京海洋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

単系統群を形成するハゼ科ベニハゼ属・イレズミハゼ属を用いて, 一夫一妻,一夫多妻を示す種について,繁殖行動への関与が知られるアルギニンバソトシン(VT)およびイソトシン (IT) の上流域を種間で比較し, 配偶システムとの関連を探索した. 配偶システムは5種で一夫一妻, 7種で一夫多妻であった.一夫一妻3種, 一夫多妻2種について, VT遺伝子及びIT遺伝子上流域の塩基配列を決定した.配偶システムと関連は見られなかったが,雌雄異体のカスリモヨウベニハゼと雌雄同体の他種の間に塩基配列の変異が認められた.これはVTが性転換に関係した転写調節機構を有している可能性を示唆している.
著者
木船 弘康
出版者
東京海洋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

タグボートの低環境負荷化を目的として、ハイブリッドタグボートのシステムについて検討を行った。ハイブリッドシステムと従来方式とを比較して燃料消費傾向がどのように変化するかを推定する必要がある。そこで実機データに基づくデータベースを背景として、タグボートの燃料消費モデルを構築した。これにより様々なシステムのタグボートにおける燃料消費傾向をシミュレーションすることができるようになった。このシミュレーションを運用することで、ハイブリッドシステムの最適化を検討するための基礎資料を作成することができる。
著者
下野 孝一 江草 浩幸
出版者
東京海洋大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

われわれは被験者が窮屈な姿勢を取ったとき、頬に触っているのが手なのかと足なのか、という感覚が混乱する可能性があることを発見した。窮屈な姿勢とは、床に座り、足を平行より少し開き気味にして、足(あるいは手)で頬を触ることである。このような状態で、頬を触っているのが手なのか、足なのかの確信度を聞くと、床には座っているが体を折り曲げない場合に比べ、全体の8割近い観察者が、手が触っているか足が触っているかの確信度が低下した。この結果は触覚の新しい錯覚現象である。
著者
木谷 誠一 西川 洋文 柳沢 雄太 和田 萌
出版者
東京海洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

平成22年国民健康栄養調査によれば若者の脂肪エルギー比率は、20代の年代に多く、とくに飽和脂肪酸の摂取量が増加している。疫学的あるいは臨床的に脂質と健康の関連が報告されているが、本研究は細胞レベルで、特にトランス脂肪酸は炎症惹起作用を、魚油は,それに対して炎症抑制作用をもつことを、明らかにした。アラキドン酸や飽和脂肪酸も炎症惹起作用を持っていた。細胞レベルの知見で、栄養保健と予防医学にひとつのエビデンスを提供した。
著者
石丸 隆 山口 征矢 小池 義夫 栗田 嘉宥 吉田 次郎 神田 穣太 田中 祐志 土屋 光太郎 北出 裕二郎 茂木 正人 堀本 奈穂 平譯 享 笠松 伸江
出版者
東京海洋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

海鷹丸による,2回の南大洋インド洋海区における学際的な研究航海を実施した。生物関係では,陸棚から外洋における魚類の分布組成,中・深層における魚類や動物プランクトンの分布,動物プランクトンの分布変動と南極周極流周辺に形成されるフロントの位置との関係等を明らかにした。物理学分野ではケープダンレー沖において新たな南極底層水形成海域を発見し,深層水の分布とその変動,形成機構等に関する知見を得た。
著者
大迫 一史
出版者
東京海洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

マアジ鱗ゼラチンから高い物性を有する可食性フィルムを調製する方法について検討した。マアジ鱗から抽出温度および抽出時間を変えて得られたゼラチン溶液に可塑剤としてグリセロールを添加して,これを一定の湿度および温度下で乾燥させることによりフィルムを調製した。70℃で1時間抽出したものが歩留まりが高く(2.5%),また,それから調製したフィルムが最も高い引っ張り強度と引っ張り伸び率を示した。また,フィルムの物性はゼラチン溶液の乾燥温度にも影響され,低温で乾燥させたものの方が,高温で乾燥させたものよりも高い物性を示した。これら物性の違いは,ゼラチン中のα-ヘリックスの含量に依存することが推察された。
著者
内田 圭一
出版者
東京海洋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

一般的に,漁業では狙った生物以外の生物が混獲されることがある。直接的に海面下の環境をモニタリングすることのできない漁業者は,種々の生物の混獲状況から漁場の環境変化を推し測っている。本研究では水温や底質に注目し,あなご筒漁業で漁獲される混獲生物の関係を調査した。その結果,混獲個体数が多かった種より,幅はあるものの混獲時の水温との関係が明らかになるとともに,これらの種は環境指標生物として有効とあることが示唆された。今回対象としたあなご筒漁では,飼育実験から水温と混獲の関係は,対象生物の摂餌行動に依存しているものと考えられた。
著者
柿原 泰 上田 昌文 笹本 征男 瀬川 嘉之 吉田 由布子 渡辺 美紀子 桑垣 豊
出版者
東京海洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、原爆被爆者調査とは何だったのか、どのような調査研究を、何のため、誰のために行なってきたのかについて、科学史的に明らかにすることを目的として、先行研究の再検討やこれまであまり知られていなかった資料の発掘・研究を行なった。とくに原爆投下直後から始まり米軍占領下初期に「学術研究会議・原子爆弾災害調査研究特別委員会」として組織化された日本側の原爆調査について重点的に調査・検討を進め、その成果の一部を報告書『原爆調査の歴史を問い直す』にまとめた。
著者
木村 凡
出版者
東京海洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

日本では、最近、明太子、イクラなど非加熱で食べる水産食品の一部がL.monocytogenesにより汚染されている実態が報告され、申請者らの最近の研究でも確認されている。本研究では、非加熱喫食水産食品に絞り、L.monocytogenesの分布検出調査を実施し、分離した食品分離株の諸性状および水産食品中での増殖性や生存性を調べることにより、水産食品での本菌のリスクに関する基礎知見を得ることを目的とした。平成18年度研究では、汚染実態調査、菌株の分離とともに、基本的な菌株情報を得ることを目的とした。市場流通している水産食品のなかから、すでに実施した調査により高頻度でL.monocyto-genes汚染が認められた明太子、いくら、ネギトロなどについて、網羅的に分布調査、および、菌株の分離を実施した。また、L.monocytogenesの検出は、minividas法(AOAC公認法、免疫法にもとづく)により検出された陽性サンプルについて、鑑別培地塗抹→典型コロニーの同定(公定法に準じた試験に加えてAPI,PCR確認)を実施した。さらに、分離株について血清型、基本的遺伝性状をあきらかにした。平成19年度研究では、平成18年度に引き続き、菌株の病原遺伝子性状等の精査や菌株のタイピング識別法の開発を行なうとともに(病原遺伝子inlAの精査、リステリアの簡易遺伝子タイピング法の開発等)、L.monocytogenesの水産食品中や製造環境等での増殖(ネギトロで5℃保存での増殖試験)や生存性評価(環境でのバイオフィルム形成能試験)への基礎データを得た。これらの結果を踏まえて、水産食品中におけるリステリア・モノサイトゲネスのリスクについての基盤的な知見を整理した。
著者
大島 弥生 佐藤 勢紀子 因 京子 山路 奈保子 山本 富美子 佐々木 泰子 アプドゥハン 恭子 清水 まさ子 張 瑜珊 トンプソン 美恵子 二通 信子 李 セロン
出版者
東京海洋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

国内外の日本語学習者および母語話者の大学生・大学院生,その指導者の学術的受信発信技能向上の支援方法充実のために以下を行った:人文科学・社会科学・工学の9分野270編の日本語学術論文の構造の分析;人文・社会科学系論文における引用を解釈に活用する談話展開の分析;学術語彙習得過程を調査するテストの開発と母語話者・非母語話者への実施;海外の日本語教員・国内の留学生等へのインビューによるニーズ調査。同時に、パネルディスカッションを通じて問題を分析・共有し,アカデミック・ジャパニーズ教育の中核的意義は広く洗練された視野を獲得し学術的追求の意義を認識する得難い機会を与えることであることを確認した。