著者
山崎 晃司 後藤 優介 小池 伸介 釣賀 一二三 泉山 茂之 セオドーキン イワン ゴルシコフ ディミトリー ソウティリナ スベトラーナ ミケール デール
出版者
東京農業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

ロシア沿海地方において,ツキノワグマと,ヒグマの種間関係研究に着手した。2016年に必用な許認可が揃い, 2017年春までに計11頭の捕獲に成功し,内9頭(ツキノワグマ5頭,ヒグマ4頭)に衛星通信型首輪を装着した。首輪に内蔵した近接検知センサーにより,種間の遭遇時の動きを記録できた(n=5)。遭遇時には互いに回避を行い,不要な闘争を避けていた。追跡個体の利用クラスター調査では,ツキノワグマおよびヒグマの計148個の糞分析を終えた。共通品目も多かったが,より樹上生活に適応したツキノワグマでは木本の果実であるサクラ属,開放的環境を好むヒグマではコケモモやスグリの地上性の食物に依存していた。
著者
寺本 明子
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.264-273, 2008-12-10

キャサリン・マンスフィールド(Katherine MANSFIELD 1888-1923)は,19歳で祖国ニュージーランドを離れ,二度と戻ることは無かった。彼女にとって,イギリスで作家になることが人生の最大の目的で,その為に故郷は切り捨てられたのである。しかし,第一次世界大戦に際し,英国軍に入隊する為に来英した弟との再会により,故郷での幸せな子供時代の記憶が彼女に甦った。その弟の不慮の事故死により,彼女は,自分の使命はニュージーランドについての作品を書くことだと考えたのだが,この様な動機から生まれた短編小説群が,いわゆる「ニュージーランドもの」である。マンスフィールドの作品の中には,祖母と孫の関係が描かれたものがいくつかある。彼女の日記や伝記から,祖母のことが大好きだったことがよく知られており,その事実が作品に反映されていると考えられる。また,作品中のバーネル(Burnell)一家は,マンスフィールド自身の家族ビーチャム(BEAUCHAMP)一家と構成が似ており,子供の頃の彼女自身,祖母,両親,姉妹を彷彿とさせ,叔父,叔母,従兄弟達との交流も描かれる。そして,作品中には,人間関係だけでなく,人間性へも向けられる彼女の鋭い洞察が見られる。作品に登場する「祖母」は,孫との関わり方により様々に描かれるが,皆,心温かい女性である。その祖母像を,「新しい服」(`New Dresses')における第一段階,「船旅」(`The Voyage')の第二段階,そして,「前奏曲」(`Prelude')「入り江にて」(`At the Bay')の第三段階に分けて検証し,その違いや共通点を分析する。
著者
寺本 明子
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.292-298, 2010-03-15

産業革命により19世紀英国社会は未曽有の経済的繁栄を成し遂げたが,反面,社会構造に歪みが生まれ,負の遺産とも言うべき影響を,一般社会のみならず宗教界にも与えた。こうした社会情勢の中で1833年に始まったオックスフォード運動は,宗教界の体質改善を求め,英国国教会の惰眠状態を改革しようとするものであった。結局この運動は挫折したのだが,1863年にオックスフォード大学に入学したジェラード・マンリー・ホプキンズ(Gerard Manley HOPKINS)は,在学中,かつて運動の立役者であったピュージーやリドンの影響を受け,更に,カトリックに改宗したニューマンの著書を通して自身の信仰を見直すこととなった。そして彼は,1866年にニューマンの導きでカトリック信者となり,後に,カトリック修道会の中でも一番厳しい信仰生活を求めるイエズス会に入る。ホプキンズの改宗前の初期の詩は,英国国教会の家庭に育った素直な信仰を謳うものから始まり,次第にカトリック改宗に向けての彼の信仰上の苦悩が表れるようになる。その中の一つ"The Nightingale"を精読することによって,船乗りの夫を海で亡くす妻の姿を描きながら,国教会との決別を意識するホプキンズの心情を読み取る。
著者
石川 有生 荒井 歩 ISHIKAWA Nao Ayumi ARAI 東京農業大学大学院農学研究科造園学専攻 東京農業大学地域環境科学部造園科学科 Department of Landscape Architecture Graduate School of Agriculture Tokyo University of Agriculture Department of Landscape Architecture Science Faculty of Regional Enviroment Science Tokyo University of Agriculture
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.190-198,

現・千葉県我孫子市内に位置していた旧我孫子町南部周辺は,大正時代に入ると主に手賀沼沿いの斜面地に文化人の別荘や住居が建てられ,一種の文化人コロニーを形成した。本研究では,コロニーの概要及び構成文化人を明らかにした上で,文化人の作品に描かれたコロニーの景観構成要素を抽出し,その特徴を分析することを目的とした。描かれた景観構成要素の特徴として以下の結果を得た。(1)身近な動植物や,日常生活における眺望を構成する景観構成要素が多数確認された 。(2)白樺派の構成文化人は,彼らが思想的に求めた美しさや豊かさを,我孫子の 「一般的で身近な自然」の中に見出していた。Abiko city is located in the northwest of Chiba Prefecture. Lying between the Tonegawa River to the north and Lake Teganuma to the south, Abiko is rich in natural features. In the Taisho era, many intellectuals from Tokyo had their cottages on the south-facing slope by Lake Teganuma. The aim of this study is to grasp how intellectuals recognized landscape elements of Abiko in the Taisho era. First, we outline a colony of intellectuals who lived in Abiko. Second, we survey literature by intellectuals that might provide insights into the environment in Abiko. Third, we analyze landscape elements in the literature that was written by intellectuals. Finally, we consider features of the landscape elements of the lakeside environment in Abiko. As for the features of landscape elements that intellectuals wrote about, we obtained the following : the animals and plants living near a colony and one which be able to see in everyday by intellectuals. Especially Shirakaba school, the main group of intellectuals, found out the ideal beauty and happiness through their life in Abiko.
著者
矢島 新
出版者
東京農業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では疫病菌の新規防除法を開発する為に、疫病菌の有性生殖メカニズムをケミカルバイオロジー的な手法により明らかにすべく検討を行った。まず、疫病菌の有性生殖においてA2株が放出しA1株に卵胞子形成を誘導するα2の可能な4種の立体異性体を合成することに成功した。ただ一つの立体異性体のみに活性があることから、天然物の絶対立体配置を決定した。確立した合成法に基づき、α1をリガンドとする化学プローブを合成した。
著者
斉藤 正貴 吉田 勝浩 中村 貴彦 駒村 正治 Masaki Saitoh Yoshida Katsuhiro Nakamura Takahiko Komamura Masaharu 東京農業大学大学院農学研究科農業工学 東京農業大学大学院農学研究科農業工学 東京農業大学地域環境科学部生産環境工学科 東京農業大学地域環境科学部生産環境工学科 Department of Agricultural Engineering Graduate School of Agriculture Tokyo University of Agriculture Department of Agricultural Engineering Graduate School of Agriculture Tokyo University of Agriculture Department of Bioproduction and Environment Engineering Faculty of Regional Environment Science Tokyo University of Agriculture Department of Bioproduction and Environment Engineering Faculty of Regional Environment Science Tokyo University of Agriculture
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.189-197,

小規模循環型農園においてヒトが継続的に生存していくために必要な要素と規模を明らかにすることを目的とし,資源循環シミュレーションモデルを作成した。モデル対象地を静岡県として,ヒト一人の栄養バランスを保つことを前提条件とした循環システムの構成要素を提示し,農作物の収量と農地・森林面積を試算した。結果は以下の通りとなった。1.構成要素 : ヒト,家禽,養魚,農作物,緑肥作物,水質浄化作物,淡水プランクトン,森林 2.農地面積 : 5.6a(5.6×10^2m^2)(ヒト住居,鶏舎,養殖池は除く) 3.森林面積 : 2.9a次に,正規分布による確率密度関数を用いて農作物の収量に対する信頼度を明確化し,農作物収量および農地面積を算出した。信頼度ごとに割り出した農地面積は以下の通りとなった。信頼度50% : 6.9a, 信頼度75% : 7.3a, 信頼度95% : 8.0aThe purpose of this study is to show the elements and amounts, which are required to maintain a man's life on a small-scale-recycling-oriented farm. A simulation was done to show how materials recycle in a system in Shizuoka, Japan. This simulation presumed that a man can maintain his own nutritional balance and showed the constituent elements of the system. After the necessary quantity of food was calculated, the necessary amount of yields for providing food was calculated. Then the farmland area and the amounts of manure for these crops were calculated. After that the forest area for providing manure was calculated. The following results were obtained : 1. Constituent elements : Man, Chicken, Fish, Crops, Green manure, Water purifying plants, Limnoplankton, Trees 2. The farmland area : 5.6×10^2m^2 (except for the man's house, henhouse and fishpond) 3. The forest area : 50% reliability : 2.9×10^2m^2 In addition, the reliability of the yields was made clear according to a probability density function and the farmland areas each were calculated according to the yields of each case, 50%, 75% and 95% reliability. The following results were obtained : 50% reliability : 6.9×10^2m^2, 75% reliability : 7.3×10^2m^2, 95% reliability : 8.0×10^2m^2
著者
阿久澤 さゆり 藤田 直子 早川 文代
出版者
東京農業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

日本晴を親にして、澱粉合成酵素の働きを抑えて特性を変化させた変異体米(SSIIIa)を作出し、その米の精白米と分離した米澱粉の特性を検討した。その結果SSIIIa の精白米は、日本晴と近似していたが、炊飯によって縦に長くなる形状で、粘らずもろい特性を示した。これらの特徴は、澱粉中のアミロペクチンの構造変化によるもので、国内産米の利用の拡大につながると期待された。
著者
Sankari Shadi Chikh Ali Mohamad 片山 克己 三木 信雄 Said Omar Abdul Mohasen Sawas Ahmad Bahij 夏秋啓子
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.109-114, 2007-09-20
被引用文献数
1

ジャガイモYウイルス(PVY)はシリアのジャガイモ生産における主要ウイルスの一つとされ,ジャガイモ生産の阻害要因となっている。PVY感染の無い種イモの生産と供給が主要な防除手段であるが,そのためには,効果的なウイルス検査法が必要である。酵素結合抗体法(ELISA)は複数種類のジャガイモウイルス検出には最も一般的な技術であるが,それぞれのウイルスに対して特異的な抗血清が利用できることが必須条件となる。本研究では,シリアに発生したPVY分離株を純化し,ウサギに免疫することにより抗血清をはじめて作製した。この抗血清を利用し多くのシリア産PVYを用いたELISAによる検討では,市販の抗血清と同等の検出能力を有し,両抗血清間に結果の相違は認められなかった。また,非特異的反応も生じなかった。さらに,検出限界は高かった。以上より,本研究ではシリアで分離されたPVYに対して初めてシリア国産抗血清を得ることができ,抗血清の恒常的輸入を不要にしたことに大きな意義があると考えられる。
著者
寺野 梨香 藤本 彰三
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.1-9, 2010-06-25

1980年代後半,マレーシア経済は急激な発展を遂げた。諸外国が直接投資を行うことにより西海岸の工業団地に多国籍企業が進出したためである。製造業部門のGDPシェアは1980年の6.8%から増加し2005年には31.4%に達した。工業地帯は西海岸に集中しているため,現在,東海岸と西海岸には深刻な経済格差が存在している。本研究では州レベルで議論されてきた経済格差を世帯レベルで解明し,東西両海岸に位置している稲作農村の現状および経済格差を把握するための分析を行った。本研究の主な成果は3点挙げられる。(1)世帯レベルでの所得分布を検討した結果,西海岸のPTBB村の世帯所得は相対的に高く分布しており,東海岸に位置するHC村の農家は低所得層に分布していることが明らかになった。農業所得の貢献は限られており,農外所得が大きく貢献していることが明らかになった。(2)ジニ係数や対数標準偏差を用いて両村の所得格差について検討した結果,HC村内では個々の就業者所得および農家所得において大きな格差があることが分かった。(3)世帯所得の決定には,世帯内の就業者数,世帯主の年齢・性別・職業,および居住地が大きく影響することを明らかにした。
著者
鈴木 圭 小川 博 天野 卓 安藤 元一
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.13-18, 2008-06-15
被引用文献数
3

ニホンモモンガPteromys momongaの巣箱利用率から本種の環境嗜好性を評価した。丹沢山地に548個の巣箱を設置し樹上性哺乳類全般の利用状況を調べた。巣箱利用率の高まる8月から10月における巣箱内の痕跡から,林相,水場の遠近および標高が本種の巣箱利用度に及ぼす影響を検討した。本種の巣箱痕跡率は広葉樹・モミの天然林において0.4%,スギ・ヒノキ人工林で0%,および天然林と人工林がパッチ状に混在する林で3.9%であった。一般線形モデルによる解析を行ったところ,本種は天然林と人工林の混在する環境を好んで生息し,水場の遠近や標高による影響は見られなかった。他方,山地林に普遍的に生息する樹上性ノネズミであるヒメネズミApodemus argenteusはこれらの環境要素に対して嗜好性を示さなかったことから,上記の嗜好性がニホンモモンガの特徴であることが推察された。
著者
岩本 純明 大鎌 邦雄 坂下 明彦 松本 武祝 加瀬 和俊 坂根 嘉弘 藤田 幸一 生方 史数 仲地 宗俊 杉原 たまえ
出版者
東京農業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

共有資源の管理システムを、林野・漁業・水利に焦点を当てて比較制度論的に検討した。調査地は、海外 8 カ国、国内 12 カ所で行った。主な知見は以下の通りである。(1)共同体をベースにした共有資源管理制度は、市場経済の浸透のもとでもまだ広汎に残っている。(2)しかしながら、共同体的関係の弛緩とともに、従来は内部で吸収できていたコストが顕在化している。(3)資源管理に関わる技術革新も制度変容の重要な要因となっている。
著者
桜井 智野風
出版者
東京農業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

遅発性筋痛発生時および治癒過程において、筋内に発生する物質の動態には不明な点が多い。本研究では,骨格筋損傷発生および治癒過程において筋内で発生する発痛関連物質を観察し,それらの物質動態と遅発性筋痛との関連性の解明を試みた。その結果、筋損傷および治癒に関連が深い一酸化窒素(NO)と発痛関連物質の動態に関連性が観察された。NOは損傷細胞の炎症と修復に関与することから、NO発生の遅延が筋痛の遅れを生み出しているものと考えられた。
著者
川野 因 樫村 修生 田中 越郎
出版者
東京農業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

平成16年度は大学男子陸上長距離選手41名を対象に選手の希望と5月期のヘモグロビン濃度をもとに鉄剤非摂取(N、13名)群と鉄剤摂取群に、さらに鉄剤摂取群はランダムにヘム鉄摂取(H、14名)群とクエン酸鉄摂取(C、14名)群に分けた。市販の鉄剤は5月期から7月期までの2ヶ月間に一日7mgの鉄量を摂取させ、調査期間は5月から9月までの4ヶ月間のうち、5月から7月が鉄剤摂取期、7月から9月期の2ヶ月間は鉄回復期とし、血液状態及び栄養素等摂取量を調査した。一日あたりの食事由来の鉄摂取量は5月期、7月期、9月期において、時期および鉄剤摂取の有無による有意な差は見られなかった。5月期の体内鉄状態は低ハプトグロビン濃度(hp)で示される「溶血」発現選手が41名中21名であり、すべての群で同様に出現していた。貧血発現者は5月期から7月期での期間中でそれぞれ4名、9月期に7名が観察された。H群とC群で9月期の増加が認められた。鉄飽和率はN群で5月期に比べ7月、9月に低下したものの、H群、C群では有意な変動が見られなかった。H群でhp濃度の増加が見られ、低hpを示す選手の割合も減少した。鉄補足なしのN群で貧血出現者が最も少なかったことから、体内鉄状態の良い選手は少ない鉄摂取を効果的に活用できる可能性が、一方、体内鉄状態が不足する者は鉄剤を使って摂取量を増やしても十分な赤血球合成ができない可能性が示唆された。平成17年度は食教育に力点を置き、パフォーマンス向上に向けた選手の日常食生活の気づきを促すことを目的として、半年間に渡る栄養教育を実施した。期間は5月から9月までの4ヶ月間であり、月2回の講義による食・栄養知識の提供、月1回の食物摂取状況調査、月1回の間食や日曜日の食事の取り方調査を実施するとともに、栄養教育の結果評価には食・栄養テスト、食事摂取実態調査を行った。その中でも、5月の調査時に最も摂取不足が見られた牛乳・乳製品と果物、野菜類摂取に焦点を当てて、教育・指導した。5月期に比べ6月期、7月期と選手の栄養・食品に関する知識は増加し、牛乳・乳製品の選択頻度も増加した。しかし、9月期の食品選択状況は5月期にまで低下した。意識や習慣の定着には3ヶ月間という教育期間・時間が短い可能性が考えられた。
著者
熊澤 喜久雄
出版者
東京農業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

本研究の目的は窒素安定同位体比法を用いて多摩川の窒素汚染源を明らかにし、その自然的、人為的浄化過程の意義を明確にして、多摩川の窒素汚染除去対策の確立に資するところにある.多摩川の支流及び多摩川流域の湧水についてその流域における人間活動も含めて調査し、窒素特に硝酸態窒素(NO_3-N)の濃度とδ^<15>N値を求め、窒素汚染源及び河川流下にともなう窒素浄化の程度を推定しようとした.(1) 平井川は下記に示す秋留台地の影響を受けてNO_3-N濃度及びδ^<15>N値は高くなっている.特に南小宮橋での採水はすぐ上流部に草花公園からの排水が流入していることからNO^3-N濃度10.3mgL^<-1>、δ^<15>N値+10.7‰と著しく高くなっている.秋川源流部のNO_3-N濃度は0.61mgL^<-1>δ^<15>N値は-0.20‰であり、雨水と同程度であるが、下流部ではNO_3-N濃度は1.38mgL^<-1>、δ^<15>N値+5.44‰に達していた.これは下流の流域に存在している畑地からの化学肥料由来のNO_3-Nの影響が反映しているのではないかと推定される.秋留台地の崖下に湧出する湧水は台地上の農業、特に畜産業の影響を強く受け、そのNO_3-N濃度は8.98〜9.28mgL^<-1>と極めて高く、δ^<15>N値も+7.95〜+8.75‰と高い値を示している.(2) 北浅川源流部のNO_3-N濃度は1.16〜1.52mgL^<-1>であるが、大学移転やニュータウン開発が進んだ南浅川が合流すると浅川のNO_3-N濃度は4.42mgL^<-1>に上昇し、NH_4-NやNO_2-Nが検出された.(3) 野川の主要な水源であるである国分寺崖線の湧水のNO^3-N濃度は4.50〜6.48mgL^<-1>、δ^<15>N値は+4.67〜+5.34‰の範囲にあった.野川は流下するに従い、次第に河川自体の浄化作用や脱窒作用によりNO_3-N濃度を減少、δ^<15>N値を増大させ、仙川合流直前でそれぞれ4.03mgL^<-1>、+8.16‰を示した.仙川は三鷹市の下水処理水が流入している下流ではNH_4-N濃度5.18mgL^<-1>、NO_3-N濃度10.6mgL^<-1>でδ^<15>N値は+9.55‰であり、仙川合流後の野川はNO_3-N濃度6.40mgL^<-1>及びδ^<15>N値+11.7‰に増大している.(4) 多摩川上流右岸の湧水のNO_3-N濃度は0.48〜14.1mgL^<-1>、δ^<15>N値は+0.53〜+6.84‰で+0.53‰のものは天然由来であり、6‰前後のものは土壌有機物の分解によるものと推定された.中流右岸の湧水のNO_<3->N濃度は0.12〜9.62mgL^<-1>、δ^<15>N値は+5.64〜+8.21‰で高濃度のNO_3-Nは生活雑排水等の人為的影響によるものと推定された.中流左岸に位置する都立農業高校農場内の湧水のNO_3-N濃度は2.45〜9.69mgL^<-1>で芦田下を除く3地点は9mgL^<-1>程度、δ^<15>N値は+6.90〜+7.82‰であったが、芦田下ではそれぞれ2.45mgL^<-1>、+13.2‰であることから芦田による窒素除去能力が示唆された.
著者
今西 英雄 稲本 勝彦 三島 睦夫 小池 安比古 土井 元章
出版者
東京農業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

系統の異なるユリりん茎を用い、-1.5〜-2.0℃の氷温下で長期貯蔵した場合の貯蔵可能期間を調べるとともに、温度降下処理を行い処理後のりん茎の生存率を調べてりん茎の50%生存可能な品温(LT50値)を求め、系統間の長期氷温貯蔵に対する耐性を評価した。その結果、氷温貯蔵期間が長くなるにつれて、テッポウユリ、オリエンタル系、アジアティック系の品種ではLT50値が高くなり氷温に対する耐性が次第に低くなること、LA系の品種ではほぼ一定で耐性が変わらないことを明らかにし、系統間の氷温貯蔵耐性の差異を確かめた。オリエンタル系とLA系のりん茎を-1.5℃と-2.0℃の異なる温度で異なる期間貯蔵後に栽培したところ、氷温財蔵耐性の低いオリエンタル系の品種では両温度ともに、4か月の貯蔵では正常に生育するが、7か月以上貯蔵すると採花時の花や葉に障害が発生し切花品質が低下するため、生存はしているものの使用できなくなるが、耐性の高いLA系では11か月貯蔵しても正常に生育することを確認した。低温による氷温下での貯蔵耐性の付与については、1℃4〜8週間の予冷により、りん片および茎の糖濃度が直まり、氷温で長期貯蔵後の栽培においても切花品質が高いこと、12℃8週間に続いて1℃8週間の予冷を組み合わせると、さらに切花品質が高まること、一方1℃の予冷期間が12週以上と長くなると茎が伸長を始め糖度が低下し、貯蔵中に死に至るりん茎が増加することを明らかにした。CA貯蔵の効果については、-1.5℃の氷温帯で、酸素濃度を2〜3%に維持したCA環境で貯蔵してきた場合、アジアティック系でのみ、開花率が高くなり、切花品質が向上するという結果を得たが、オリエンタル系ではかえって開花率、切花品質の低下がみられ、所期の効果を得ることができなかった。
著者
木原 高治
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.205-210, 2010-09

フィリピン会社法は,母法アメリカ会社法と同様に会社の権利能力範囲内の行為として慈善,学術,教育等への寄付を認める一方で,母法と異なり政治献金は会社の能力外の行為として禁止している。一般に,会社の政治献金は公法により制限されており,フィリピンのように会社法により政治献金を直接規制する例は他になく,わが国の会社法研究上において示唆に富むものであると言える。The Corporation Code of the Philippines provides that corporations may make reasonable donations for public welfare, charitable, cultural, scientific, civic or similar purposes in the provision of Corporation Laws of the US. However, it also provides that corporations shall not give donations to any political party or candidate for the purpose of partisan political activity. This provision has originality and it is very significant to rethink the legal problems of political donations by business corporations in Japan. This paper shows the content and meaning of the provision and necessity to adopt such a provision into the Company Law of Japan.
著者
竹内 康 久保 和幸 西澤 辰男 姫野 賢治 松井 邦人 丸山 暉彦 前川 亮太 神谷 恵三
出版者
東京農業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

高速で移動しながら連続的にたわみを計測する試験機は, 各国で開発が進められており,それを用いて舗装の支持性能を評価した結果は,舗装の維持管理に活用されつつある。 このような試験機の開発にあたり, 高速で移動する車両により計測されるたわみの特性を把握することを目的として,既存の車両に変位計を取り付け,いくつかの試験路において連続たわみの測定を行った。また,収集したデータを用いて舗装の健全性を評価する方法について検討を行った. 本研究では, 載荷位置直下のたわみと載荷位置から 45cm 離れた位置のたわみの差を用いて,舗装表面付近の健全性を評価する方法を提案し,比較的たわみの大きい健全な舗装に対して FWD 試験で得られるたわみと相関の高い結果が得られることを確認した。
著者
亀山 慶晃 工藤 岳
出版者
東京農業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

高山生態系では雪解け時期を反映した連続的な開花現象が認められ、傾度に沿って花粉媒介者や近縁他種との関係が変化する。北海道大雪山系におけるツガザクラ属植物では、雪解け傾度に沿って雑種第一代が優占する広大な交雑帯が形成されており、雑種と親種の間で花粉媒介者を巡る競争が生じていた。親種の受粉成功は開花時期や年によって大きく変動し、繁殖成功(他殖率)に多大な影響を及ぼしていた。