著者
樋口 雄
出版者
東北大学
雑誌
東北大學理學部地質學古生物學教室研究邦文報告 (ISSN:00824658)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.1-48, 1964-12-24
被引用文献数
1

The gas field in Chiba Prefecture occupies the main part of the gas-producing area of the southern Kanto region, and is one of the largest gas fields in Japan. Stratigraphically the majority of the gas-producing strata in the area are restricted to the marine Kazusa group which consists of 10 formations. These formations are mainly composed of alternations of sandstone and siltstone, and were deposited in a large sedimentary basin of Pliocene to early Pleistocene age. The writer had studied the Kazusa group from the view points of microbiostratigraphy and economic geology, for several years examining many cores collected from the gas wells and surface cuttings in Chiba Prefecture. The purpose of the present article is to summarize the lithologic variation, microbiostratigraphy, paleoecology, depositional history and some economic problems of the field. From the detailed study of the foraminiferal faunas and rocks collected from many wells in this area, the following facts were recognized : 1. Eleven foraminiferal zonules are discriminated in the Kazusa group of the area. The sequence and dominant species of these zonules are shown in Table 1. 2. The lithologic character of the Kazusa group in the Kujukuri coastal plain changes from southwest to northeast. However, the biofacies of the Foraminifera are stable, and correlation of the wells by means of the foraminiferal zonules is easy. 3. The thickness of the formainiferal zonules generally converges toward the northeast in the Kujukuri section, and some changes in the dominant species of the assemblages characterizing the zonules are recognized. Especially, the Lower Kokumoto faunule is not discriminated at the northeast end of this section, because of the faunule thinning out. 4. As shown in the isopach maps (figs. 11-15) of each formations of the Kazusa group, the center of deposition of the group migrated from the southern part of the Kujukuri coastal plain area towards the northwest, during the deposition of respective formations. 5. The isolith maps (sandstone : figs. 16-19) and sandstone percentage maps (figs. 20-24) of these formations show the following facts. The sandstones are developed regularly in the Ohara, Namihana and Katsu-ura formations, but irregularly in the Kiwada, Otadai and Umegase formations. In the Kokumoto formation, the sandstone again shows a regular distribution pattern. From these facts the writer has concluded that the sandstones of the Ohara, Namihana, Katsu-ura and Kokumoto formations were deposited in shallow water under the normal sedimentary process, but the ones of the Umegase and Otadai formations were secondarily transported to deep water. 6. The paleoecologic conditions of these formainiferal zonules may be explained from the Recent distribution of Foraminifera around Japan. The biofacies maps (figs. 7-10) summarize s the regional variation of these paleoecologic conditions. The depositional history of the Kazusa group is as follows : At the beginning of deposition of the group, its sedimentary environment was of relatively shallow water and the basin unstable. During the depositional stages from the Kiwada to Umegase formations, the environment was relatively deep and the basin was in a stable bathyal condition. During the Umegase stage the sea water attained the maximum coverage in Chiba Prefecture. Regression might have begun with the Kokumoto stage. This may be explained from the dominance of neritic species of the Kokumoto and its superjacent formations. The foraminiferal assemblage of the Kasamori formation indicates the most shallow water habitat throughout the deposition of the Kazusa group 7. The argillaceous sediments in the stable bathyal sea bottom are most favourable as the mother rocks of natural gas. The siltstone layers of the Otadai and Umegase formations are good examples of them. On the other hand, the sandstone layers intercalated in them are very good gas-reservoirs, because they are composed of sand grains excellently sorted and graded as a result of secondary transportation such as by turbidity currents. The natural gas accumulations of high potentiality in these formations are on the east side area of Chiba City. In the west side area of Chiba City, the foraminiferal assemblages of these fornrations indicate shallow water-environments, and the geological characters of these formations are somewhat different from those of the east side. The different characters between the east and west side areas of Chiba City cause the different mode of accumulations of natural gas.
著者
林野 友紀 高遠 徳尚
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

木曾シュミット望遠鏡の広視野(50文角×50文角)2Kccdカメラにおいて、本課題で購入した狭帯域(NB)・中帯域(MB)フィルターシステムを用いて撮像観測を行ない、低分散分光サーベイを行なってきた。平成9年度はNB(BW【approximately equal】200Å、CW=4300〜5550Å)9バンドを中心にクェーサー(QSO)輝線サーベイを行ない、V<20.6等級の約5,000天体の中から、赤方偏移z=2.4〜3.6のQSO候補7個を見出した。平成10、11年度は、長波長測に設定したMB(BW【approximately equal】450Å、CW=5750〜7950Å)6個の天体のR(波長分解能)【approximately equal】15分光データから、z【approximately equal】4銀河候補を10個見出した。これらのhigh z 銀河候補は、スペクトルの長波長側がフラットで、6200ないし6610 Aバンドの短波長側が約1等級暗くなっており、更にBバンドが非常に暗いという特徴を備えるもので、z>4の星生成の活発な若い銀河に特有のスペクトルである。なお、木曾で行なった本課題のNB/MBフィルターサーベイの経験は、すばる望遠鏡主焦点用R23フィルターシステムの設計製作に反映されており、更に今後のすばるNBサーベイ観測・解析においてもその経験を活かすことが期待される。
著者
秋葉 征夫
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

鶏の孵化直後の栄養(初期栄養)および脂質代謝の特異性を解明することにより、鶏の初期成長時の栄養の意義を明らかにし、さらに成長と代謝生理を初期栄養により自在に制御することを目的として、以下の成果を得た。(1)飼料エネルギ-の代謝率と脂肪の吸収率を、ブロイラ-の孵化直後から1日ごとに詳細に測定する方法を開発した。この手法を用いて測定したところ、孵化当日および孵化後1日齢時の飼料エネルギ-の代謝率と脂肪の吸収率は2週齢時の約80%程度の能力しかないことが判明し、孵化直後では栄養素の利用性が極めて小さいことが明らかとなった。(2)腹腔内に残存する卵黄を外科的に除去したヒナと正常ヒナのエネルギ-の代謝率と脂肪の吸収率を比較したところ、ほとんど差は認められず、残存卵黄は飼料栄養素の吸収と利用性には影響しないものと考えられる。(3)ブロイラ-の孵化当日の血漿脂質濃度は2あるいは4週齢時の約2倍の濃度にあり、高脂血の条件下にあることが示された。また、肝臓中の脂質濃度も極めて高く、しかもトリグリセリドおよびリン脂質の割合が少なく、反対にコレステロ-ルエステルが全脂質の約70%を占めており、脂質代謝でも孵化直後のブロイラ-は特異な生理条件にあることが確かめられた。(4)孵化後3日齢時における中鎖脂肪の利用性は長鎖脂肪(イエロ-グリ-ス)に比べて高く、中鎖脂肪および中鎖脂肪酸は脂肪吸収能が未発達の孵化直後のヒナに給与する脂肪源として有用であることが分った。(5)体液性の免疫能の指標として血漿中のIgG濃度を測定した所、孵化1日前および孵化当日では低く、1日齢時で急上昇した。
著者
横山 嘉彦
出版者
東北大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

本萌芽研究のそもそもの目的は、新しい溶解・鋳造プロセスを開発して、新規な非平衡物質を開発することにある。本装置の開発を通じて非常に興味深い知見を得ることが出来た。特に、従来融点が高くて鋳造が困難であった亜共晶のZr基金属ガラスにおいて、得られた金属ガラスは柔らかくしなやかで、ボアソン比が高く低弾性率であることがわかった。今までの研究では作成可能な金属ガラスの組成範囲が限られていたが、それを大きく広げることが可能になった。ZrリッチのZr-Cu-Al系亜共晶組成金属ガラスは、アモルファス材料のアキレス腱とも言える構造緩和脆性の兆候を見せることなく非常に高靱性である。しかも、Zr-Cu-Ni-Al系と4元系にすることで引張延性を得ることにも成功している。引張延性を示す亜共晶Zr-Cu-Ni-Al合金は引張試験に伴って明瞭なくびれを示し、均質な見かけ上の伸びを示している。引張延性に伴って加工硬化も軟化もしていないが、今後の研究において加工硬化を発現させることは十分に可能であると考えている。今まで室温で引張伸びのない金属ガラスは構造材料に使うことが困難とされてきたが、この結果を受けて金属ガラスの産業化は大きく前進したことになる。一方、本開発装置、アークプラズマ浮遊溶解装置は非常に少量の鋳造に適した鋳造装置である。安価で簡便な鋳造機として今後は歯科医療や小型精密鋳造部品などの種々の産業的な展開が期待できると考えている。また、本プロセスを更に発展させることで、完全溶解が困難な高融点合金の浮遊溶解・鋳造および超急冷が可能になると期待している。
著者
大槻 憲四郎
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

3.11巨大地震の大余震、誘発内陸地震、アウターライズ地震などに伴う深層地下水変動を観測するため、岩手県一関市厳美町やびつ温泉の自噴井ではラドンと炭酸ガスの濃度変化を、宮城県登米市南方上沼崎の650m孔井と同県東松島市矢本町大塩の1010m孔井では水温と水位の変化を、茨城県高萩市上手綱の623m自噴井ではラドンと炭酸ガスの濃度および水温変化を、筑波大学構内の孔井では水位のみを継続観測した。余震等の地震の頻度は次第に低下してきており、この間に顕著な地下水変動を伴うような大きな地震は発生しなかった。いわき地震(2011年4月11日、M.7)の余震に関しては、臨時水位観測を実施して興味深い結果を得たことを昨年度に報告した。余震の頻度は低下し続けていたが、2013年9月20日に久しぶりに前兆変動が期待されるような大き目の余震(M5.9)が発生した。すでに臨時観測は終了していたため、この余震に伴う水位変動を取り逃がした。そこで、遅ればせながら2013年10月1日から臨時観測を再開し、2014年2月21日に終了した。しかし、この間に顕著な水位変動を伴う余震は発生しなかった。3.11巨大地震に伴う地下水変動観測結果を解析し、論文として公表する計画であったが、まだ行っていないので近い将来に実行する。不均質すべり面上での震源核形成に関わる実験をガス圧変形試験機で行う計画であった。すべり面を跨いで貼ったひずみゲージですべりを精度良く測定できるように試料を四角柱に近い形に変え、それに伴ってアンビルの形状も改良した。計測器を8チャンネルから10チャンネルに増強し、サンプリングレイトも5MHzにグレードアップした。
著者
山田 直子
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究はオランダおよびインドネシアの文書館における文献調査と現地でのオーラルヒストリー調査を通して、近代インドネシアにおける婚姻の制度化の歴史を、オランダ植民地政府、現地知識人、村落社会という三つの視点から考察した。特に、伝統的に母系制を維持する社会慣習を守りながら、一方でイスラームという父系的な宗教規範が根強いスマトラ島ミナンカバウ社会を中心に分析し、植民地社会に存在した多様な規範が交錯する社会空間を明らかにした。
著者
井上 邦雄 白井 淳平 三井 唯夫
出版者
東北大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2009

ニュートリノのマヨラナ性を検証するニュートリノレスニ重β崩壊研究において、巨大・極低放射能環境のカムランドに^<136>Xeを大量導入することで、迅速かつ効率的に世界最高感度での探索を実現した。同各種を使う実験との統合解析により、^<76>Geでの信号発見の主張を排除し、マヨラナ有効質量の上限値120~250meVを与えた。並行して、原子炉停止時のデータから地球ニュートリノ観測を高精度化し、地球モデルの選別を開始するに至った。
著者
浅尾 直樹
出版者
東北大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2010

報告者は、前年度にナノポーラス金の作成法を検討し、有機シラン化合物の酸化反応においてこの金属材料が優れた触媒として機能することを明らかにした。そこで今年度は、本申請研究の目的であるフロー合成に本金属材料触媒を適用するべく検討を行った。まずフロー合成に適する反応としてアルコールの酸素酸化反応に注目し、この反応における本金属材料の触媒活性を調べた。その結果、酸素風船による酸素雰囲気下メタノール溶媒を用いると、様々な2級アルコールが温和な条件下で酸化され、対応するケトン体が高収率で得られることを見出した。他の金の固体触媒としては、金微粒子による酸素酸化反応が既に広く研究されているが、一般に過剰量の塩基を添加する必要がある。これに対し本触媒反応は、そのような添加剤を何も加えなくても反応が進行するため、操作が極めて容易である。またこのことから、ナノポーラス金によるアルコール酸化は、金微粒子触媒の場合と異なる反応機構を経由していることがわかる。続いて本反応をフロー合成に適用した。まず内径2mm、長さ15cmのステンレス鋼製のチューブに粉末状のナノポーラス金を詰めて触媒カラムを作成した。二本のシリンジにそれぞれアルコール溶液と酸素ガスを詰めて、マイクロリアクターで混合した後、触媒カラムを通過するようにフローシステムを作成した。その結果、シリンジポンプを用いてアルコールと酸素を押し出し、触媒カラムから出てきた生成物を解析したところ、収率よく生成物が得られることを見出し、しかもフラスコを用いたバッチシステムよりも、反応時間を大幅に短縮することができた。以上の結果は、ナノポーラス金触媒を用いたアルコールの酸素酸化が、気相-液相-固相の三相系によるフロー合成に適していることを示しており、本申請研究の目的を達成することができた。
著者
孫 基榮 (2009) 李 鍾元 (2008) SON Key-young
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

研究の結果として今Review of International Studiesという英字雑誌に一つの論文(Enemies Within? : Alliances, 'Internal Threats' and Comprehensive Security in East Asia)の掲載が決まって修正作業中です。この論文は人間安保次元で同盟にともなう問題を扱っています。同盟の結果から生じる色々な軍隊に駐屯と基地を囲んだ問題が同盟にいかなる影響を及ぼすかを把握するのに目標を置いています。今までの研究が同盟は外部的威嚇に備えるために形成されると見ているが本論文は内部的威嚇という概念を導入してこのような新しい威嚇が全般的な同盟関係にどんな影響を及ぼすかを調査しました。その結果、冷静以後の同盟関係は外部的そして内部的威嚇の相関関係で同盟の水準が決定されるという結果を導き出しました。もう一つの論文(Humanitarian Power : An Identity in the Making in post-Cold War Japan and South Korea)を完成してJournal of Asian Studiesという英字雑誌に送りました。この論文は冷戦後日本と韓国の海外派兵の形態に対して研究しています。その結果日本と韓国は同盟の義務や国際的災難にともなう人道的支援のために非戦闘兵の派兵を推進してきました。このような一貫した行動は今後日本と韓国が人道的国家というアイデンティティを確立するという結果を導き出しました。本研究の関連研究でJapan Forumという英字雑誌に一つの論文(Constructing Fear : How the Japanese State Mediates Risks from North Korea)の掲載が決まって今印刷中です。この論文は日本国家が北朝鮮の色々な威嚇に対してどんな危機管理形態を見せるのかを研究しました。その結果日本政府は北朝鮮のミサイル発射、拉致、そして不審船の問題を処理しながら市民社会と特にマスコミの影響を受けて日本を普通国家で作る側に政策の方向を定めたという結果を導き出しました。この過程で威嚇を恐怖で作る現代社会の色々な行為者などに研究の焦点を合わせました。
著者
森 朋子
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

昨年度まで,独自の手法により開発したアフィニティ樹脂(Moli-gelと呼称している)の表面化学特性について精査し,また,担持する生理活性物質の周りの環境を制御することにより,標的タンパク質の捕捉に有利になることを実験的に証明してきた。本年度もさらに,細胞膜表面と同じ構造を有する2-methacryloyloxyethyl phosphorylcholine(親水的側鎖を有する)を用いて,Moli-gelに担持した4-carboxybenzenesulfonamideの周りの環境を制御し,タンパク質捕捉実験を行った。結果,予想通り,4-carboxybenzenesulfonamideの標的タンパク質であるCarbonic anhydraseII(親水的環境に存在)の捕捉を有利にできることがわかった。さらに,本年度は,湖沼等の淡水で産生される藍藻毒の一つであるミクロシスチン-LRの標的タンパク質探索を行った。ミクロシスチンが有するビニル基,または,カルボキシル基の異なる官能基をそれぞれ反応点としてMoli-gelに担持し,ブタ肝臓から調製したlysateを用いてタンパク質捕捉試験を行った。さらに,捕捉したタンパク質をSDS-PAGEにより分離し,バンドをゲルから切り出し,トリプシンを用いてゲル内で消化した後,LC-MS,および,Mascot databaseによりタンパク質を解析した。その結果,L-3-hydroxyacyl CoA dehydrogenase (HDHA)や,glutathione S-transferase (GST)が標的タンパク質の候補として挙げられた。ミクロシスチン-LRの新たな標的タンパク質候補を検索することに成功した。
著者
室賀 清邦 高橋 計介
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

17年度および18年度の2年間の研究成果は以下の通りである。1.マガキにおける粒子取り込み直径1μmの蛍光標識ビーズを用いてマガキにおける粒子取り込みについて実験を行ったところ、実験開始30分後には粒子は消化盲嚢細管に達し、消化細胞内にも取り込まれることが観察された。水温10℃の場合に比べ、20℃の場合はより効率よくビーズが取り込まれることが確かめられた。2.天然マガキおよびムラサキイガイにおけるノロウイルス汚染状況東北地方のある港において1年間にわたり、毎月1回天然のマガキおよびムラサキイガイを採取し、ノロウイルスの汚染状況を調べた。いずれの種類においても、汚染率は12月から3月の冬季に高く、夏季には低くかった。また、ノロウイルス汚染率は下水処理場に近い水域で採集された貝で高いことが分かり、汚染源は下水処理場であると推定された。3.養殖マガキにおけるノロウイルス汚染17年度は2箇所、18年度は5箇所の葉殖場において、マガキのノロウイルス汚染率を調べ、いずれにおいても冬季に最高50%程度の高い汚染率を示すことが確認された。また、それぞれの養殖場の夏季における大腸菌群数を指標とした海水の汚染の程度と、冬季のカキにおけるノロウイルス汚染率の間に、ある程度の相関性が認められた。4.養殖マガキの血リンパの酵素活性10ヶ月に亘り、2ヶ月間隔で6回サンプリングを実施し、養殖マガキの血リンパにおける酵素活性を測定したところ、血漿からは16種類の酵素が、血球からは17種類の酵素が検出された。これらの酵素は、年間を通じて常に高い活性を示す酵素群、常に低い活性を示す酵素群、および活性の季節変動を示す酵素群に分けられた。5.浄化処理方法の検討10℃で48時間流水浄化処理を行った場合は、浄化前後におけるノロウイルス汚染率に差はなかったが、25℃で48時間流水浄化処理を行ったマガキでは僅かではあるが汚染率の低下がみられた。
著者
高橋 正彦 JONES Darryl Bruce
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、研究代表者らが初めて開発した「分子座標系の電子運動量分光」の検出感度の改善を図り、様々な直線分子の分子軌道の形を運動量空間において三次元観測し、量子化学理論が予測する波動関数形との比較を行うことである。これにより、運動量空間という従来とは反転した視点からの電子状態研究、いわば''運動量空間化学''を展開する。上記の目的に向けて、前年度までに整備した新規イオン検出器システムの開発の成果を踏まえ、本研究計画最終年度の今年度は、窒素分子の分子座標系電子運動量分光を行った。水素分子を対象とした従前のものと比較して、Signal/Background比の大幅な改善を達成した。また、得られた実験結果は、位置空間で分子軸方向により広がったσ型分子軌道が分子軸と垂直な方向に伸びた形で観測されるなどフーリエ変換の性質を反映した運動量空間特有の波動関数形を示すことが分かった。こうした研究成果は、波動関数の形そのものの視覚化を具現化したものと関連研究分野で極めて高い関心を集め、2010年夏に開催されたInternational Workshop on Frontiers of Electron Momentum Spectroscopy (IWFEMS2010)から招待講演として採択された。現在、当該分野で最高水準の雑誌であるPhysical Review Letter誌に投稿すべく、論文を執筆中である。以上のように、本研究は所期の目的を達成することができた。
著者
工藤 与志文
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

知識の活用において重要視される操作的思考の活性化要因ならびに抑制要因について検討した。活性化要因としては, 属性の共変関係に関するルール教授や事例情報による思考の方向性の制御などが挙げられたが, その効果は部分的であった。また, 抑制要因としては, 科学的思考における操作の役割について, 全般的に低い評価しか与えられていない点が挙げられた。今後, 操作の論理的側面に加え, イメージ表象や背景知識の影響についてさらに検討する必要がある。
著者
田中 仁 MOHAMMAD Bagus Adityawan MOHAMMAD BagusAdityawan
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

2011年3月11日に発生した東日本大震災津波は東北地方を中心として甚大な人的・物的被害をもたらした他に, 大規模な海浜地形変化の変化ももたらしている. 本研究では, 津波の流動モデルを用い, 東日本大震災津波による土砂移動の再現を通じて, モデルの検証, および必要に応じてモデルの改善を行うことを目的としている.今年度は研究の最終年度であり, これまでの研究の進捗を踏まえて予定通りに研究を終えた. まず, 昨年度の研究活動で選定したサイトとして宮城県東松島市における石巻海岸を研究対象とした. この海域を対象にして, 一昨年開発した数値モデルを適用し, 仮想的に海岸堤防の高さを4段階(0m, 1m, 3m, 5m)に変化させ, 津波の遡上に伴う流速値, せん断力, シールズ数などを数値シミュレーションにより求めた. モデルは水表面の計算にVOF法を使用し, 乱流モデルとしてk-εモデルを連立させることにより, 境界層の特性を数値計算に取り込んでいる. 数値計算により, 海岸堤防高さの増加に従って, 海域でのよどみ領域が拡がり, 海域における侵食が低減することが分かった. このように, 海岸堤防が堤内地での氾濫の低減のみならず, 海域における侵食をも低減できることは新たな構造物の価値としてきわめて興味深い知見である.これらの成果を, 第35回国際水理学会(平成25年9月, 中国・成都), 第12回河川土砂移動シンポジウム(平成25年9月, 京都)などにおいて発表を行った.
著者
今野 幹男 長尾 大輔
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

磁性ナノ粒子(マグネタイト)とシリカを均一に複合化することで、電場と磁場の両者に迅速に応答する単分散な複合粒子を合成した。複合粒子の合成過程では、磁性ナノ粒子をシリカ粒子表面に均一に担持した後に、粒子表面を別のシリカで薄く被覆した。このシリカ被覆により、複合粒子が水溶液でも均一に分散するようになった。さらに、複合粒子の集積状態を光学顕微鏡で容易に観察できるように、複合粒子をミクロンサイズまで大粒径化した。この複合粒子の懸濁液に電場を印加したところ、複合粒子は電場印加方向に対して平行な鎖状構造を形成した。磁場を印加した場合も、類似の鎖状構造を形成した。これらの外場下で形成される複合粒子の鎖は、いずれの外場印加に対してもその強度とともに伸長した。さらに、磁場と電場を互いに直交方向に印加した場合は、複合粒子がヘキサゴナル型に配列したシート状構造体を形成した。このような外場印加を雪だるま型の複合粒子に対しても行った。磁性ナノ粒子を含む雪だるま型粒子に磁場を印加したところ、磁性成分を含む雪だるまの頭部が印加磁場方向に対して並んだ構造を示した。一方、電場作用下での雪だるま複合粒子は、印加方向に対して粒子長軸を平行に向けた鎖状構造を形成した。さらに、磁場と電場の両者を同一方向に印加した場合は、雪だるま粒子の頭部を一方向に向けて配列した構造も観察することができた。これらの結果から、電場および磁場を複合的に利用することで、異方性粒子の配向性も制御できることを示した。
著者
二間瀬 敏史
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

現在の宇宙は従来の重力理論の枠内では説明ができない加速度膨張をしていることが知られている。その原因として反発力を及ぼす暗黒エネルギーやアインシュタイン重力理論の変更が提案されている。しかしそれらの理論的な研究は進んでおらず、観測的に宇宙膨張の原因を探ることが急務になっている。本研究では、2011年度末に完成予定のすばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラで行われる大規模深宇宙サーベイを用いた弱い重力レンズ効果によって、加速度膨張の原因を調べるために必要な新たな弱い重力レンズ解析法の開発を行った。
著者
稲垣 明子
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

膵島移植において安定して質の高い膵島を得る方法を確立することは移植成績の向上に直結する重要な課題のひとつである。そこで、本研究では保存過程の虚血状態や、膵島分離工程での溶存酸素濃度の低下による膵島損傷を解決するために、膵臓摘出直後から膵島分離終了までの間の酸素供給システムを確立することを目的とした。膵組織の保存の酸素化についてはは人工ヘモグロビンを膵管から導入したが、分離膵島の収量や質の向上は確認出来なかった。いっぽう、膵島分離工程における中空糸加圧モジュールを用いて閉鎖分離回路内を酸素化することで、膵島の収量、energy statusが向上し、アポトーシスを回避出来ることが明らかになった。
著者
大東 一郎 石井 安憲 芹澤 伸子 小西 秀樹 鈴木 久美 佐藤 綾野 于 洋 上田 貴子 魏 芳 大東 一郎 石井 安憲 清野 一治 木村 公一朗
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、中国の制度・政策転換と東アジア圏の国際相互依存関係への影響に関わる政治経済学的問題を、財政・金融・産業・環境に焦点を合わせて考究した。財政制度の効率性比較、途上国での望ましい工業汚染規制、企業の株式持合いと政策決定の関係、混合寡占下での公企業の役割、途上国企業の部品の内製・購買の選択を理論的に分析した。中国の社会保障制度の実態、マイクロファイナンスの金融機能を明らかにし、税制の機会均等化効果の日韓台間比較、為替介入政策の市場の効率性への影響分析を行った。
著者
高橋 満 石井山 竜平 広森 直子 笹原 恵 槇石 多希子 朝岡 幸彦 千葉 悦子 大高 研道 宮崎 隆志 松本 大
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

日本の社会教育制度は、福祉国家的な施策として制度化がすすめられてきた。しかしながら、この制度や管理運営の在り方は、経済のグローバル化や、これへの政策的応答としての自由主義的改革のもとで機能不全に陥っている。本研究では、これに対して、ソーシャルガバナンスという「パートナーシップ型の統治」モデルを提案している。それは、行政とともに市場やNPOなどの多様な主体がステークフォルダーとして独自な役割を果たすものとして参入し、新しい公共性をつくりあげるものである。