著者
宮川 雅
出版者
法政大学
雑誌
法政大学文学部紀要 (ISSN:04412486)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.1-13, 2005-09-30
著者
度会 好一
出版者
法政大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

16世紀のポルトガルに隠れユダヤ教徒が大量発生した理由は、マノエル一世がユダヤ人を強制的にキリスト教に改宗させながら、彼らの内面の信仰を黙認したことにある。マノエルの期待通り、彼らはポルトガルの海外膨張に貢献しただけでなく、アントウェルペン、アムステルダム、ロンドンに進出して植民主義の尖兵となった。文化的には、キリスト教徒を装った隠れユダヤ教徒として、割礼をせず、祈りの時に跪き、救済を個人的なものと考える、ユダヤ教徒らしからぬ雑種であった。
著者
河野 徹
出版者
法政大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

第一論文「中・近世英文学にみるユダヤ人像(1066-1600)」(『法大教養部紀要』第81号)では、まず序章で反ユダヤ主義の神学的基盤に探りを入れました。初期教会の教父らがパウロの思想をどう恣意的に変形し、その変形された教義の不可欠な一部として、反ユダヤ主義がどう中世イギリス社会に浸透したか、その過程を宗教史的、経済史的に辿りました。当時の宗教劇、とりわけコーパス・クリスティ祝祭劇に接して、その放埒なユダヤ人憎悪に衝撃を受けました、チョーサー作『カンタベリー物語』中の「女子修道院長の話」の解釈をめぐって、内外の学者たちにユダヤ史への配慮が欠けていることを確認しました。シェイクスピア作『ヴェニスの商人』の解釈に関しても同様です。しかしシェイクスピアが描いた半悪魔的シャイロック像と、現代イギリスのユダヤ系劇作家アーノルド・ウェスカーが描いた自由人的シャイロック像を比べるとき、ウェスカーは、主人公の半悪魔性を剥落させることで、情動のダイナミズムひいては劇的効果をも低下させてしまいました。両極端でないユダヤ人の実像に迫り得た作品はあるのだろうか--この問いに答えようとする試みが『法大教養部紀要』第85号に掲載された第二論文「近世英文学にみるユダヤ人像」です。ユダヤ人のイギリス再入植がその緒についた1655年以降の歴史を辿った後、スコット作『アイヴァンホウ』中のレベッカとアイザック、ディケンズ作『オリヴァー・トウィスト』中のフェイギン、ジョージ・エリオット作『ダニエル・デロンダ』中の主人公はじめ他のユダヤ人群像を分析しました。結論は、やはりどの登場人物も「神話」か「反神話」に属するということです。未完の第三論文では、現代英文学を対象に同様のリサーチを行い、さらに「アメリカ文学におけるユダヤ人像」の研究を続行する所存です。
著者
三井 さよ
出版者
法政大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

特養ホームでの聞き取り調査、阪神・淡路大震災以後ボランティア活動を継続している団体での聞き取り調査、および知的障害者の支援団体における準参与観察と聞き取り調査を通して、生活上で他者の支援を必要とするという経験の内実について理論的に考察すると同時に、その中でもその人の生活をその人自身のものとしていくための手法について、それぞれにおかれた環境や状況に応じて存在することを確かめ、その理論化を試みた。
著者
衛藤 幹子
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、日本における女性の政治的過少代表(女性議員が少ない状態)の要因を、国際比較の文脈から分析することを目的に、文献調査、国内調査(関係者へのインタヴュー、アンケート)および海外現地調査(クオータ制度)を実施した。その結果、日本女性の過少代表の原因は、選挙制度、政党の態度、政治文化、クオータ制度の有無などから多面的に説明できるが、政治に対する女性の意識や行動が最も重要な要因であることが明らかにされた。
著者
五十嵐 敬喜 武藤 博己 大熊 孝
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究プロジェクトの実施により、次の知見が得られた。大きくはポスト公共事業社会成立に係わるもの、市場化改革の動向に係わるもの、市民事業の理論化に係わるものである。第一の点については、全国総合開発計画に係わる歴史分析、亀井改革、小泉構造改革などを通じた制度改革の動向、長野県、広島市などの事例研究を通じて、公共事業の縮小が構造的な要因に基づくものであることが明らかになった。併せて公共事業社会からポスト公共事業社会への移行を、歴史認識として鮮明化するために公共事業関連年表の作成を行った。第二の点については、公共事業がもたらした現代社会システムの問題性の検証及び、入札改革、PFI、指定管理者制度など、国における制度改革の事例研究を通じて、官を主体とした制度改革の限界が明らかになった。このなかで官から民へ、市民へという公共事業の主体の転換について方向性を示した。第三の点については、実態調査を通じた市民事業の現状を把握すると共に、これに対応した国及び地方自治体(長野県、山形県)の政策対応を検証することで、市民事業の可能性と公共事業のオルタナティブとなるための政策課題が明らかになった。また、市民事業の主体として建設業者の事業転換の可能性について方向性を示した。以上の作業を通じ、ポスト公共事業社会の展望として、「美しさ」という価値基準の提唱を試みると共に、市民事業を通じた新しい公共のあり方について提案を行った。
著者
竹内 淑恵 大風 かおる
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

市場の成熟化、競合環境の激化に伴い、新製品のコミュニケーション活動に十分な予算を投下できない企業では、製品パッケージによる消費者への情報伝達の重要性が認識されている。しかしながら、パッケージ情報がどのように、またどの程度消費者に処理されるのかは解明されていない。本研究では、パッケージの評価尺度とパッケージ・コミュニケーションモデルを開発し、実証分析を行った。あわせて「パッケージ評価尺度」に基づいて、架空ブランドの製品パッケージを作成し、「売れる製品パッケージ」開発のあり方を検討した。
著者
宮本 圭造 伊海 孝充 高橋 悠介 石井 倫子 山中 玲子
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

能楽を伝える最も古い家系である金春家伝来の文書は、能楽資料の宝庫である。今回の研究プロジェクトでは、同文書を総合的な観点から研究するために、金春家旧伝文書の中核を占める般若窟文庫の文書目録をデータ化するとともに、約二千点に及ぶ文書資料のデジタル撮影を行った。これらの成果に基づき、般若窟文庫のほぼ全ての文書の検索と、ウェブ上での画像閲覧が可能な「金春家旧伝文書デジタルアーカイブ」を作成した。また、関連文書の調査として、秋田家文書の秋田城介関連能楽伝書、毛利博物館蔵能楽伝書、吉川広家旧蔵笛伝書などの調査を行った。
著者
荒井 容子
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

1999年から2002年にかけての国際成人協議会のカナダからウルグアイへの事務局移転は1980年代中頃に軍事独裁政権を終結させた当該国及び当該リージョンの民衆運動の盛り上がりと、1985年第3回世界大会を通じての同協議会へのその影響、事務局移転後の同協議会の挑戦的活動展開と、関わっている。従ってこの移転は単なる経費削減目的の途上国移転ではなく、同協議会発展史における重要な画期として、上記諸条件と深く関わらせて理解されるべきことが明らかになった。またリージョン組織についてはそれぞれの発展史を、関係国の政治情勢の変化、リージョン内の諸国間関係、支援組織等をふまえて分析する必要があることが分かった。
著者
田中 義久 常木 暎生 藤原 功達 小川 文弥 小林 直毅 伊藤 守
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

高度情報化の進展に伴い、コミュニケーション行為およびメディア環境の変容は、対人関係、マス・コミュニケーション、メディエイティッド・コミュニケーションなどと、重層的な連関を通して進行してきている。本研究では、こうした状況を、地域社会におけるコミュニケーションとの関わりの中で捉えることを目標として研究会を開催し、10年前に実施した調査研究(文部省科学研究費・総合研究A・平成3-4年度「コミュニケーション行為と高度情報化社会」)をふまえ、埼玉県川越市で調査研究を行った。1997年度は、地域作りのリーダー層、行政関係者などを中心にヒアリングを行い、1998年度と1999年度には、川越市の旧市街地と郊外住宅地とで、情報機器利用や地域コミュニケーションなどに関する意識や行動について、質問紙による数量調査を実施した。2000年度は、当該地域の住民に対して、ヒアリング、グループ・インタビューを実施した。4年間の調査研究によって、情報化の進展する地域社会の実態を把握するとともに、高度情報化に即応した、コミュニケーションに積極的な層の存在が明らかになった。その上で、地域住民の側からのヴォランタリスティックな「地域社会」形成の行為は、いかに展開されていくのだろうか。コミュニティとコミュニケーションとの連関を、情報化と地域社会の双方に影響するグローバリゼーションの社会変動のなかで注目していくことの重要性は高い。2000年6月には日本マス・コミュニケーション学会において、「情報化の展開と地域における生活」というテーマで研究発表をおこない、11月には日本社会情報学会において「情報関連機器の利用とコミュニケーション行動に関する実証的研究」というテーマで研究発表をおこなった。また年度末には、本研究成果として、文部省科学研究費報告書(冊子)をまとめた。
著者
木村 純子
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

【平成16年度の成果】研究の経過過程で明らかにしたのは次の点である。日本で活発に行われている西洋文化としてのクリスマス消費を取り上げ、調査を行った。具体的には、消費文化の受容に関する(1)既存の分析枠組みを批判的に検討し、(2)新たな枠組みを提示し、(3)本研究が提示する枠組みを経験的に検証した。そこで明らかにしたのは、既存理論の限界である。これまでの議論は、西洋文化に日本文化を従属させる(グローバル論者)、あるいは日本文化に西洋文化を従属させる(伝統論者)といった「西洋中心の文化帝国主義モデル」であり、いずれも、文化を本質的なものとしてとらえ、日本の文化状況を均質化に行き着くものとして理解していた。ところが、調査を進めると、実際は、文化は西洋か日本かのいずれかに均質化していくわけではないことが明らかになった。われわれは、消費文化の変容とは、異文化を主体的に受け止め利用していく過程(=文化の再生産)ととらえるべきであることを主張した。【平成17年度の成果】平成17年度は第二次世界大戦後から現在に至るまでに(WHEN)、観光地という場において(WHERE)、それぞれどのような欲望を持って、どのように観光文化を構築し維持しているのかを(WHAT & HOW)、ローカルの人々・観光客・マーケターという異なる主体が(WHO)、主体間の相互作用に注目しながら明らかにする、という全体構想を持って行った。このような研究の全体構想の中で、以下の成果を出した。第一に、既存の文化認識論とは異なる新しい文化認識論を用いることの意義を明らかにした。第二に、第一で提示した枠組みを用いて経験的分析を行った。異文化に接するローカルな文化は、異文化をしたたかに利用しながら、文化の真正性とローカル・アイデンティティを構築していることを明らかにした。
著者
高橋 俊夫
出版者
法政大学
雑誌
日本文學誌要 (ISSN:02877872)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.21-29, 1968-03-23
著者
趙 宏偉
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

平成16年度〜17年度、中国の北京、上海、天津等都市、ロシアのモスクワ、台湾に学術調査や研究会とシンポジウムの参加に赴き、日本では合計11回の研究会のほかに、日本現代中国学会、アジア政経学会、中国研究所、環日本海研究所、日本対外文化協会、及び愛知大学と早稲田大学のCOEプロジェクト等が主催した研究集会で発表や講演を行った。そして日本現代中国学会誌等に論文を発表した。中華人民共和国は、その成立してからほぼ1990年代の半ばまで旧ソ連と短期間の同盟関係を持っていた以外、非同盟を貫いていた。これを「中国式孤立主義」と呼ぶ。1994年9月、江沢民党総書記は最高実力者〓小平から全権力の譲渡を受けてから、外交戦略を集団安保主義へと根底から転換しはじめた。96年4月に江沢民の主導で創設された第1号の集団安保組織として「上海ファイブ」が結成された。それから江沢民政権は「新安全観」(97年4月)として総括された外交理念を掲げ、中国の北では「上海ファイブ」を「上海協力機構」に発展させ、南ではアセアンとのFTA体制を進みながらそれを梃子に全面協力体制を作り、北東アジアでは北朝鮮核問題を課題に6カ国協議の開催に努力しながら北東アジア安保体制の将来像を模索した。江沢民は米中関係の安定化を図りながら、周辺地域で集団安保外交を推し進めていた。2002年12月から、江沢民の後を受けた胡錦涛は、江沢民外交を継承しながら守りから攻めへと集団安保外交を強めていった。胡錦涛は中国の「平和的台頭」、それによる「国際関係の多極化」を外交戦略の目標としている。(1)03年から、中ロ印協調体制の構築を取り組んでいる。3カ国外相会議は年2回に定例化され05年まですでに5回もの開かれた。3カ国協調で東ユーラシア大陸集団安保体制を結成し、アメリカとEUに相対する第3の極の構築を目指している。(2)上海協力機構の強化と拡大を図っている。05年にインド、パキスタン、イランを新規オブザーバーとして受け入れた。(3)中国とアセアンを軸として東アジア首脳会議を主導することを図っている。中ロ印は上海協力機構と東アジア首脳会議の両方に加わるが、両組織ともアメリカを除外するものである。(4)胡錦涛中国は北東アジアにおいて北朝鮮核問題を取り扱う6力国協議を主導し、そして05年に「北朝鮮大開発」に乗り出した。米中は「利害相関責任者」(筆者訳)として将来6カ国による北東アジア安保体制の構築に合意し、また「台湾問題」と「日本問題」(歴史問題と領土領海問題)を米中共同管理とすることになっている。
著者
菱田 雅晴 毛里 和子 天児 慧 加藤 弘之 唐 亮 高原 明生 小嶋 華津子 朱 建榮 趙 宏偉 諏訪 一幸 阿古 智子 南 裕子 中岡 まり 加茂 具樹 中居 良文 呉 茂松 白 智立 鄭 永年 景 躍進 趙 秀梅
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

1978年末以来の中国の改革が"私利"を核とした社会システム全体の転型であることに呼応して、中国共産党自身にも"私化"傾向が著しく、組織としての私人性に加えての"私利性"は"領導核心作用"なるレトリックの正統性に深刻な影を落としている。最終的には、この党組織は、内外の環境変化から危機的様相を強め、存続そのものが危殆に瀕しているかの如く見えるものの、これら変化を所与の好機として、この世界最大の政党にして最大規模の利害集団はその存在基盤を再鋳造し、新たな存在根拠を強固なものとしつつあるものとの暫定的結論を得た。
著者
木宮 正史
出版者
法政大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

本研究を開始するにあたり、李錘〓(世宗研究所研究員)による『朝鮮労働党研究:指導思想と構造変化を中心に』(ソウル:歴史批評社)を入手することができた。これは、従来、実証性という点で問題のあった北朝鮮政治研究の研究水準を飛躍的に高めた記念碑的な研究であると言える。したがって、本研究者は、この研究を足がかりにして、研究で使用されている一次史料を、科研費で購入した労働新聞のマイクロフイルムやその他の研究を利用しながら調査する作業を続けた。その結果、一般的に植え付けられた北朝鮮政治経済の静態性イメージとは異なり、冷戦構造の緊張及び弛緩により、具体的には中ソ両国との関係の変化を媒介として、金日成を中心とする「唯一指導体制」が動揺をはらみながらも堅固化する過程のダイナミズムを、『労働新聞』や『民主朝鮮』などの一次史料を綿密に分析することにより、抽出することができた。今後は、同時期の韓国における政治変動との比較作業を通して、韓国と北朝鮮との政治体性及び経済政策の違いが、冷戦構造に対するどのような対応の違いによってもたらされたのかを解明する作業を継続していきたい。また、以上の歴史的研究は、現状分析にも次のような含意を提供した。それは、一般的に予想されたのとは異なり、ポスト冷戦が即時的に北朝鮮に解放政策をもたらしたわけではないということである。換言すれば、朝鮮半島における冷戦構造は、特に北朝鮮に対しては、それを与件とすることが体制の存在根拠であるような、唯一指導体制及びそれを支える唯一思想体系である主体思想を社会に深く植え付けたからであると言える。
著者
川口 由彦
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本年度は研究実施計画に書いたように、昨年度がら収集してきた資料を更に充実させるべく、群馬県立文書館に3回、京都府立総合資料館に2回、調査に赴いた。小作争議表、小作調停受理・結果報告書、自作農創設維持計画書、地主所蔵文書などを中心に、群馬と京都という二つの地械での地域での地主小作関係の現代的内容を考察するためである。今年度の科研費は、この調査にほとんど費やしたといっていい。ここからわかったのは、京都の場合、1927年頃から小作争議解決の方式とでもいうものが登場することで、小作調停条項であらかじめ検見対象地を決めておき、地主小作立会のもと、農会の技術者が厳密に収穫量を測定し、収穫量を前提に機械的に減免額を決定するという手続の設定にまでいたっているということである。地主小作立会のもとの検見というのは、それ自体としては、江戸時代からのムラ仕事としてなされる「ムラ決め」の延長線上といえなくもないが、これを調停条項として、法的強制力を持たせたところにこの時代の特徴がある。どりわけ、争議の際の「当事者間の合意」を制度的に排除してしまった点で、地主小作人間の対立が極限にいたり、ぎりぎりのところで小作関係を継続するためこのようなシステムが生まれたと思われるのである。農林省発行の「小作年報」所載の調停条項例で見ても、京都と新潟くらいでしか見られない特異なシステムである。これにくらべると、群馬では、そもそも京都のように小作料減額免除システムをあらかじめ決めておくという解決方法が少なく、一回きりの減額や土地返還を決めるものが圧倒的に多い。例外は、全国的に「無産村」として名をはせた新田郡強戸村と、隣村の山田郡毛里田村である。この2村では争議が激甚に戦われたが、これを反映して調停条項も、当該争議以降の減額免除規定を定めるものが多い。ただ、その内容を見ると、地主小作両者からなる「委員会」をつくってここで合意するとなっているものがよく見られ、京都のように合意の契機を排除するところまでいっていない。強戸村の場合、村政も小作側が握ってしまうという特異な事態があったにせよ、従来の「ムラ決め」的要素を引ぎずっているといっていい。この相違が、農地改革期にも現れ、京都の場合は、農地改革は自明のことで、次のステップが考えられていくのに、群馬では、農地改革自体に大きな力が注がれる。農地法下の農民のあり方もこれに規定されたものとなるのである。
著者
御法川 学
出版者
法政大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本年度(〜平成17年3月31日)は以下の項目を実施した。(1)リアルサイズ要素モデルの設計リアクティブ構造の超小型配列を実現するため、各種の微細加工法(微細放電加工、マイクロブラスト加工、マイクロ光造形)を用いることを検討した。ラージサイズの1次モデルの試験結果においては、共鳴構造の諸寸法が共鳴周波数と減音量に与える影響についての知見を得た。(2)微細加工によるリアクティブ素子の試作マイクロブラスト加工、マイクロ光造形、微細放電加工などの微細加工を用いてマイクロリアクティブ素子を試作した。まずそれぞれの加工法において、加工可能な溝・孔形状のサイズや加工精度について調べた。本研究では、マイクロブラスト加工によって物体表面に微細なリアクティブ構造を製作した。(3)音響試験試作したリアクティブ素子の性能を評価するための音響試験を行った。本研究では、微細構造が空力騒音に与える影響を風洞実験によって調べた。その結果、予備実験においては表面性状の変更による減音効果を確認できたが、製作した微細構造では顕著な減音効果が得られなかった。(4)研究成果の発表本年度は未実施であるが、次年度以降に発表予定とする。
著者
田嶋 淳子 鄭 暎慧 高 鮮徽
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究では、日本国内および中国東北地方における移住者調査を通じ、以下の点が明らかとなった。1)中国系移住者の日本への流入は1980年代以来就学生、留学生が中心だが、日本人配偶者、研修生およびIT技術者としての来日が増加傾向にある。また、在日中国人の2割はすでに永住権をもつ。このことから定住化傾向が指摘できる。定住化は中国系移住者が送り出し地域への再投資を可能とする資力を持ち始めていることを示す。2)遼寧省大連および藩陽における調査から、研修生の来日が主には日系企業の工場設置と不可分に進んでいることが示された。また、IT関連では日本への派遣労働者としての導入も同時に進んでおり、日本語と技術を併せ持つ人材への需要とそれに応じた中間組織(派遣業者および付随するシステム)の形成が進んでいる。3)吉林省延辺朝鮮族自治州における海外出稼ぎ経験者調査からは、彼らの出国が親族関係(8割が韓国内に親族関係をもつ)により、可能となっており、比較的容易と考えられている。ただし、彼らの出国は地域経済に一定の影響を与えており、残された子どもの教育問題など今後の影響が懸念される。4)黒竜江省では、残留日本人孤児および残留婦人らの出身地域の一つであるF県を対象とする聞き取り調査をおこなった。彼らは帰国したが、地域にはその関係が埋め込まれている。このことから、周囲の人々と日本への移住者とが独自の社会空間を作り上げていることが明らかとなった。以上の結果から、中国系移住者の移動と定着が地域レベルで周囲の人々の目を日本社会へと向ける要囲となっており、さらなる日本への流入が継続していく社会的基盤ができあがってきていることが示された。