著者
橋冨 博喜
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学九州工学部研究報告 (ISSN:13459430)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.149-160, 2001-03-01

A house that was built at the late 19th century, remains at Kurume City in Fukuoka Prefecture. Now the Yamada family lives in this house, but formerly this was Sakamoto Hanjiro's parents' house. Sakamoto Hanjiro was born there at 1882 and had been lived with his mother until 1902. At the same year he went to Tokyo to be a painter. This is a report on nine sliding screens which were kept by the Yamada family, and which were donated to The Boards of Education of Kurume City from the Yamada family at 1992. On these sliding screens, there are some pictures that were painted by a few painters from early Meiji period to 1909. It is possible to presume that some works of these were painted by Sakamoto or his friend Aoki Shigeru. And two works which I think Sakamoto had painted, contain several elements of western-style paintings in the late Edo period. Up to this time no attention had been paid to these elements in early Sakamoto's paintings. When we examine what the essence of his paintings are, it would be very useful for us.
著者
桜井 等至
出版者
近畿大学
雑誌
生駒経済論叢 (ISSN:13488686)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.79-107, 2005-12-15

日本経済の少子化が進行している。いよいよ2006年をピークに人口減少社会に突入する。問題は,こうした「少子人口減少社会の到来」をどう捉えるかである。少子人口減少社会に多くの問題点があるとして,それではなぜ「少子人口減少社会」が到来したのか。その要因は何か,が問われなければならない。われわれは,「少子化」が元々人々が良いと思ってその実現に努力してきた価値観(政策目標)が達成(成熟社会の実現)されて,いわばその副作用として発生してきた問題である,と捉える。それだけに,良い面を極力残しながら,悪い面の是正を目指さなければならない。この視点から,政府が行っている対策の有効性を確かめる。政府が実施している対症療法で問題は解決するものかどうか。われわれは総合経済政策論の視角からその限界を示し,根源的な解決を示す。それは,日本経済が「歴史的転換期」にあるという認識に立って,人口減少社会に則した体制改革を進めよう。すなわち,少子人口減少社会の問題解決は,総合福祉社会の形成を目指す絶好機である。
著者
津田 良平
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学農学部紀要 (ISSN:04538889)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.169-178, 1971-03-15

水中での物体の見え具合いは物理的要因と視覚生理との総合作用の結果として決まるものであるが、今回はその第一歩として人間の目を用いて網糸の見え方、即ち網糸の視程の研究を行なった。実験は水面の上から散乱光を照射した時の水平視程を測定すると共に、水中視程に大きな影響を与える物理的諸要因、即ち物体の色、反射率、透過率及び濁り、照射光度等をかえで視程測定を行ない、Koschmieder,Middletonの大気中の視程の理論式を実験条件に合う様に書きかえ、実測値を解析し、物理的要因とコントラストの識閾という生理的要因とに分けて視程に対する影響を調べた。 その結果、黒米では視角の小さい範囲では視角が減少すればコントラストの識閾は直線的に増加し、その直線の傾斜は水槽水の濁り、表面照度によってそれぞれ変化する事がわかった。この様な関係はBlackwellの大気中における実験でも確かめられている。
著者
古河 恵一 長野 護 重吉 康史
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学医学雑誌 (ISSN:03858367)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.171-174, 2007-09

ハイテクリサーチ研究の中で,時差症候群がどうして起きるのかを明らかにしました.単純にいえば,体内時計の一部が,環境の明暗サイクルの急激なシフトについて行けないために出発地の時間が体に残っていて時差ぼけが生じるのです.といえば,当たり前のことなのですが,長い間どうしてこういった環境のリズムと体内時計の乖離が生じるのかわかっていませんでした.時差症候群の原因には体内時計中枢の解剖学的な構築が大きく関与しており,そういった観点からの解析技術を我々の教室が有していたために価値のある所見を得ることができました.この総論では哺乳類体内時計の場所である視交叉上核とその中に存在する小領域と,体内時計はどうして変位するか.すなわち,日々の時刻あわせをどのように行うかについて説明して,最後に時差症候群の成り立ちについて述べます.ほとんどの生物には体内時計が存在し,われわれの生理現象(睡眠,体温,行動,ホルモンなど)のリズムが存在します.このリズムの周期は,正確に24時間ではなく24時間より若干長かったり,短かったりすることからこのリズムは概日リズム(サーカディアンリズム)と呼ばれています.体内時計の中枢は,視床下部の視交叉上核という小さな神経核にあり,その視交叉上核の細胞が環境の明暗周期に同調しています.視交叉上核の一側には1万個弱の細胞が存在し,その内の半分以上が神経細胞です.その神経細胞のほとんどが自律的な約24時間のリズムを作り出すことができます.
著者
向井 泰二郎 花田 雅憲
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学医学雑誌 (ISSN:03858367)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.213-217, 1992-03-25

Treatment with paradoxical intention for two cases of anthropophobia was discussed. Humour can reveal psychological symptoms of anthropophobia caused by the automatization or mechanization of humanity. Paradoxical intention used the humour of man in the points of automatization or mechanization of humanity. This paradoxical intention may be very useful for treatment of anthropophobia.
著者
薬師寺 洋之
出版者
近畿大学
雑誌
商経学叢 (ISSN:04502825)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.155-170, 2007-12

Alfred Weberによって1つの学問的体系としてまとめ上げられた立地論は,その後,相互依存的経済体系の中での立地理論あるいは空間経済学として吸収され,発展していった。しかし,かれの意図は,工業立地を,価格現象あるいは相互依存的経済体系から離れ,構造的なものとして捉えることにあった。また,現代経済のグローバル化の進展の下では,貿易理論よりWeberの古典的立地理論の方が,明快に光を当てられる一面がある。そこで,最初の仕事として,Weberの「立地因子」の規定を再検討する。すなわち自然的=技術的計算に基づき,国民経済を対象とするWeber立地論を,批判的に検討し,世界経済的立地論へと翻案する試みに向かって,世界経済の中での立地因子をどう規定すべきかについて,筆者の見解を提示する。
著者
寺下 隆夫 永井 勝 坂井 拓夫
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学農学部紀要 (ISSN:04538889)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.95-105, 2001-03-31

[Author Abstract]The ectomycorrhizal fungi Tricholoma matsutake and Lyophyllum shimeji are famous and delicious edible mushrooms from Japan. Since they form mycorrhiza on the fine roots of living plants, their growth depends facultatively on living plants. To cultivate these fungi for in a pure culture, glucose and a few other monosaccharides must be used as carbon sources. In 1994,it was reported that L.shimeji can form mature fruit-bodies on a medium that consists mainly of barley grains ; in addition, they form without a host plant. These observations indicate that some mycorrhizal mushroom fungi have the ability to utilize barley starch. When fungi form fruit-bodies, large amounts of mycelia may be needed either to store nutrients or to transport nutrients to the fruit-bodies, or for both purposes. However, it is very difficult to cultivate large amounts of mycelia using monosaccharides in a pure culture. The addition of low molecular weight substances in high concentrations increases the osmotic pressures of a medium, which in this case would suppress the growth of the mycelium. Then, amylase productions during the vegetative mycelial growth of T.matsutake (No.114 and Z-1 strain), which hydrolize starch as a substrate for the growth of the fungi were examined using a somewhat modified matsutake liquid medium. Amylase activity (α-and gluco-amylase) in the culture filtrates had relatively high values at 40 days after the inoculation. Maximum activity was attained 80 days after inoculation. α-Amylase showed more activity than glucoamylase in both strains. Amylase activity in the culture filtrate of T.matsutake was assayed by using several kinds of starch as the substrate ; the starches were purified from barley (5 kinds), corn, sweet potato, and potato. The enzyme was most active in the presence of the starch prepared from the "Amagi" and "Ichibanboshi" strains in the "Nonwaxy" barley group among the starches. This activity was were observed at a circa 2.0-fold higher value than that of the control (potato). The addition of potato and yam to the culture medium increased the dry weight of mycelia 4.8-5.6 times, as compared to the control (without addition) ; moreover, the value of amylase activity was 1.9-2.6 times that of the control. A positive correlation between vegetative mycelial growth and amylase activity was detected. To elucidate the properties of extracellular amylases in the T.matsutake Z-1 strain, the amylase fractions obtained from the DEAE-Toyopearl column chromatography were identified. One type of α-amylase, glucoamylases and α-glucosidases showed activity upon analysis by thin layer chromatography using hydrolyzates.[JST抄録]菌根形成食用担子菌,ホンシメジ(Lyophyllum shimeji)およびマツタケ(Tricholoma matsutake)の子実体形成研究についてレビューした。最初に,菌根形成きのこ類の人工栽培が難しい理由の一端を説明した。次に,ホンシメジが人工栽培化に至った過程,また,マツタケの人工的な子実体形成研究の現状について,これらの菌根菌類の生育生理の面から成育基質として重要な澱粉の利用性に注目して,アミラーゼなどの生成酵素との関連で述べた。マツタケ「シロ」中にどの程度の澱粉が含まれ,マツタケ菌がアミラーゼを生成してその澱粉をどの程度利用しているかなど今後解明すべき点は多い。記事区分:原著
著者
田尻 尚士
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学農学部紀要 (ISSN:04538889)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.15-24, 1991-03-15

機械化による大規模製造法を基準としたダイズ原料による豆腐製造を行い,消泡剤(エマルジーA:グリセリン脂肪酸エステル,エマルジーS:グリセリン脂肪酸エステル,ダイズリン脂質,炭酸カルシウム,シリコン樹脂混合剤)と凝固剤(合成ニガリ,硫酸カルシウム,グリコノデルタラクトン;マグラクトン-70)の使用が豆腐物性におよぼす影響を検討した.消泡剤添加は直接に豆腐物性に影響せず豆乳,おからの歩留りに影響し,製品歩留りを左右するために,分散,混合性に秀れ,親水性,親油性に富み,界面での吸着性が敏速で平均的であることが重要である.凝固剤は離水性を左右して豆腐物性に直接影響する.ニガリは凝固速度が緩慢で,離水性に欠けて凝固度が弱く,一部型くずれするものが認められ,全般的に物性度が不足した.硫酸カルシウムは凝固速度が敏速で平均的で豆腐内面も緻密で光沢を有し,離水性に富み豆腐特有の舌ざわりと咀しゃく感を呈し,物性度は良好となり,豆乳重量に対して1.0%添加が最良である.マグラクトン-70は凝固速度が緩慢で均一性に欠け,離水過多となり,内面に小孔を有し,光沢性に欠け,咀しゃく感が粗雑で凝固過多となり,物性度が高く豆腐特有のソフト感に欠けることが認められた.pHおよび色調は直接豆腐物性に影響しない.水分含有量は豆腐物性に顕著に影響をおよぼし,全般的に離水性が不足すれば水分過多の原因となる.機械化大規模製造法は高温,短時間処理が多用されることから,消泡剤,凝固剤は耐熱性を有し,分散,混合性,親水および親油性に富むことが重要で,消泡剤はグリセリン脂肪酸エステル純度が高く,凝固剤は硫酸カルシウム純度の高いものが最適である.
著者
内海 龍太郎
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

細菌は環境変化を迅速に感知する多様な膜センサーを介して、環境適応に必要な遺伝子の発現を制御し、多様な環境変化に迅速に適応するシステム(TCS, two component signal transduction)を有している。細菌細胞は、1細胞に何十というTCS回路を持っていることが知られている。さらに、各TCS回路は互いに連結して、さらに複雑な遺伝子発現制御ネットワークを形成している。本研究では、世界で初めて、大腸菌K-12のTCS EvgS/EvgAとPhoQ/PhoPに着目して、それらの2種のTCS間をつなぐ、コネクターの働きを明らかにし、環境変化に迅速に適応できる細菌の情報伝達ネットワークの分子機構を明らかにした。
著者
青野 京
出版者
近畿大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

本研究で提案するライフパタン研究とは,大規模な量的調査データを用いて個人の各ライフステージでの生活,志向性,価値観などの変遷を時系列的に追って,いくつかのパタン化を試みようとするものである。モデルの構築には長期的なパネルを用いた縦断的研究が必要となるが3年間で変化を抽出することは難しいため,これを補完する方法として想起法による過去5時点の生活領域の変化を検討し,ライフパタンモデル構築のための基礎資料とした。統計的な手法の確立については今後の課題である。また,2007年~2009年に組織労働者を対象に質問紙調査を行い約19,000名分のデータを得た。ここから生活や生き方のパタンの違いによる幸福感や働きがい,生活満足度などを検討したところ,大きく6つのタイプが抽出された。生活満足度が高かったのは家庭中心型であり,幸福感が最も高いのもこの型であった。日本の組織労働者の全体傾向としては,まず家庭領域が幸福感に大きく寄与していることが明らかになった。一方で生きがい感に対しては家庭,そして仕事領域の双方が大きな影響を及ぼしていることがわかった。そして余暇などの自由時間領域は幸福感や生きがいに直接貢献してはいるものの,その働きは仕事や家庭のストレス要因を緩和するようなものであることが示唆された。一方で「趣味に生きるオタク」や「仕事人間」のように一つの領域のみにエネルギーを費やしている層は生活満足度や幸福感が低い傾向がみられた。これらのことからワーク・ライフ・バランスの観点からは,家庭と仕事,自由時間の間のバランスのとれた生活が人生全体において望ましいことが改めて示されたと言える。今後は,現在構築中のライフパタンモデルを確立し,価値観や志向性などの観点も加味して,現在のライフ・バランスや幸福感満足度などが時系列的にどのように変化していくかということを総合的に検討していくことが課題である。
著者
知念 宏司
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究においては、研究代表者が以前から関係している「剰余位数分布問題」において成果が得られた。これは、整数 a (2 以上で完全 h 乗数ではない)を固定し、素数 p に対して a の mod p での位数 D_a(p) の分布を調べる、より具体的には、D_a(p) を k で割ると l 余るような素数 p の自然密度を調べる問題である。この問題の拡張として、平方剰余の条件を付加した場合 (Chinen-Tamura, 2012)、および、mod p のかわりに mod pq とした場合 (Murata-Chinen, 2013) について成果が得られた。
著者
中尾 彰
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学医学雑誌 (ISSN:03858367)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.89-101, 2007-06

糖尿病患者に網膜光凝固術を施行すると,光ストレスからの回復が遅く,日常生活において明順応状態にある可能性が考えられた.検眼鏡的に網膜症をみとめなくても網膜機能障害を示すか調べるために,暗順応検査,秤体系網膜電図(scotopic electroretinogram,scotopic ERG),錐体系ERGとしてphotopic ERG,長時間光刺激photopic ERGを施行した.暗順応検査では,網膜症をみとめなくても光覚閾値が上昇していた症例があった.明順応20分後のphotopic ERG b波振幅と暗順応30分後の光覚閾値は,網膜症が進行すると相関は強くなる傾向があった.長時間光刺激photopic ERG d波は,網膜症が進行すると明順応開始直後から振幅がみとめられた.暗順応においては自覚的,他覚的に順応の遅れが糖尿病患者においてみとめられた.また,明順応においては,他覚的にそれに対するERGの変化が障害されていることが証明された.糖尿病患者では,網膜に光強度の変化に対する順応に問題があり,ダイナミックレンジが狭くなっていることを示唆しており,網膜症をみとめない糖尿病早期の診断に有用であると考えられた.
著者
知花 弘吉
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学理工学部研究報告 (ISSN:03864928)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.91-100, 2005-09-30

The purpose of this study is to clarify the spatial abilities of university students. Their spatial abilities were measured with DAT. There were 25 questions, and the students had 20 minutes to answer. There were 428 university students that were subjects. The results are as follows; (1) the year of the student did not make a difference; (2) there was no difference between men and women's answers. However, men scored higher than women in different areas; (3) there was no difference in answers from students in the architectural design course and the architectural system course; (4) students that are good at mathematics tended to score higher.本文データの一部はCiNiiから複製したものである。
著者
嶋野 法之 広永 美喜也
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

デジタルミュージアムは貴重な絵画を画像データベースとして蓄積し、画像をディスプレイ上にリアルに再現することを試みるものである。作品の印象は昼光や燭光など照明光の分光分布やその強度などの照明環境で大幅に変化する。このように多様な照明環境で人間が見た時の色彩を視覚系の色順応を考慮し画像再現する研究が極めて活発に行われている。本報告書では日本画、油彩画および水彩画の3種類の絵画の分光反射率を絵画を描くのに用いた色材の先験情報を用いずに画像データから正確に復元し、多様な照明環境の下で観察したときの美術作品の色彩を忠実にディスプレイ上に再現するための研究成果について述べる。
著者
星河 武志
出版者
近畿大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

日本の外貨準備高は巨額であり、約1兆ドルである。膨大な外貨準備高の累積の背後には外国為替市場介入の存在が挙げられる。本研究では、為替政策の影響を分析した。その結果、大規模な円売りドル買い介入によって、為替相場が円安方向に動かされている可能性が示された。また、為替政策が為替相場のボラティリティに影響を与えていること、円売りドル買い介入が日経平均株価に対してプラスの効果を持つことが示された。
著者
山口 健也 向井 泰二郎
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学医学雑誌 (ISSN:03858367)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.55-65, 2001-04-25

うつ病の予後に影響を及ぼす因子としては, 発症時の症状, 身体的因子, 心理的因子, 社会的因子などの諸要素が考えられる.このような因子と予後の関連を, 外来で対応可能な軽症から中等症のうつ病患者について調べた.初診時の症状を包括的精神病理学尺度を用いて評価し, 身体的因子, 心理的因子, 社会的因子, 治療経過を説明変数とし, 予後を目的変数として, 多変量解析である林の数量化理論II類を用いて検討した.対象は, 近畿大学医学部付属病院精神神経科外来にて, 1990年11月19日から1995年5月1日までの期間に, DSMIV診断基準(diagnostic and statistical manual of mental disorders fourth edition)にて, うつ病性障害のうち, 大うつ病性障害-単一エピソード(code : 296.2), 大うつ病性障害-反復性(code : 296.3), 気分変調性障害(code : 300.4)と診断されたもので, 1年の経過を追跡しえた, 男性22名, 女性23名, 合計45名, 平均年齢50.9歳±15.3のうつ病患者であった.その結果, 性別, 年齢, 前医の有無はほとんど影響がなく, 身体合併症は難治例と同様に予後の悪さの指標となることがわかった.薬物療法との関連からは, 睡眠薬, 抗うつ剤の使用が良かった.sulpiride, 抗不安薬も弱いながらも効果があった.精神症状と予後の関連では, 患者本人がはっきりと自覚しやすい, あるいは苦しさが前景にでる症状ほど治りやすいと考えられた.対人関係の観点からは, 主治医との関係及び家族関係が良好なほど予後は良いと考えられた.うつ病の治療においては, 薬物療法, ついで精神療法さらには家族による環境的配慮が重要であると考えられた.判別的中点は-0.1417,判別的中率は91.1%であり相関比は0.7463であった.
著者
Unno Wasaburo
出版者
近畿大学
雑誌
理工学総合研究所研究報告 (ISSN:09162054)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.1-5, 1991-01-30

[Abstract] Earth as a whole can be considered as a multi-dimensional dynamical system if not completely an isolated system. Global environment problem, for example, should be described in multi-dimensional phase space consisting of all observables including space and time. Multi-dimensional representation of one variable, e.g., temperature at one position, changing with time is first described, and is generalized to multi-dimensional representation of several variables, temperatures at several positions, and then is generalized to that of many variables, all the characteristic quantities of the system at various space-time positions. The multi-dimensional representation should be adopted to the dynamical system analysis described by a system of differential equations as well as the analysis of the observational data system of any dynamical system.