著者
楠 威志 村田 清高
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学医学雑誌 (ISSN:03858367)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.123-127, 1999-06-25
被引用文献数
1

喉頭全摘出術を受けた退院患者のQOLを検討するため, 近声会26人を対象にアンケート調査を行った.その結果を基にQOLに影響を及ぼす精神的, 身体的要因すなわち呼吸, 食事, 生活行動, 手術の満足度などについて検討した.無喉頭・気管呼吸者の愁訴の1位は嗅覚障害, 2位は「鼻がかみにくい」であった.両者共に鼻機能低下によるものであった.喉頭全摘出術を受けたことに対しての想いは, 回答者22人中21人が満足していた.その約半数以上が術後1年以内に満足を得ていた.現在の健康状態については回答者24人中3人が重複癌であった.喉摘後に胃癌(2人), 肺癌(1人)の手術を行っている.代用発声として食道発声が最も多く利用されていた.しかし, 咽頭全摘時年齢70歳以上の者は食道発声の習得できなかった.食道発声者の大多数は訓練し始めて1〜6ケ月の間に発声が可能となっていた.食道発声の利点については, 大多数が食道発声ができて, 自分自身に自身がもて外向的, 積極的になったと答えている.
著者
津國 実
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

京都のハモ料理は、わが国の歴史的な食文化の一つである。しかし、水産物流通の国際化は、国外へハモの生産地域を拡大し、日本への大量供給を可能にした。その結果、国内のハモの需給バランスが崩れ、国産ハモの生産が減退し、食材自給による食文化維持が困難になっている。したがって、必要十分な国産ハモ生産を維持するために、産地において輸入品に対抗する高品質なハモ生産と新たな需要拡大が急務となっている。
著者
菅井 康祐 神崎 和男 山根 繁
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

音声学的な知覚・認識能力を適切に判別するテストを作成するための基礎調査として,従来型のリスニングテストがこれらの能力をどの程度予測するのか調査を行った。1つ目のディクテーション・インタヴュー課題では従来型のリスニングテストで同程度の習熟度と判定された学習者間では,ある程度の傾向は見られるものの異なる特性も見られた。単音節語の語頭の子音のみを入れ替えたミニマルペア識別課題では,正答率についてはそれほど大きな差は見られないものの,反応時間においては学習者間・課題間に大きな差が見られた。これらの結果により従来型のリスニングテストは子音の識別能力を弁別できないことが明らかになった。
著者
人見 一彦
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学医学雑誌 (ISSN:03858367)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.1-7, 2006-03-25

メンタルヘルス科の臨床は社会の変化と密接に関連している.医学部附属病院の開設以来,30年にわたり,メンタルヘルス科の臨床に携わってきた.その間に,微細脳損傷症状群から行動障害を伴う注意欠陥多動性障害への変化,破壊的行動障害のマーチ,自閉性障害から行動障害を伴う発達障害への変化,高機能自閉症への関心,統合失調症の軽症化,摂食障害の病像の変化,境界性人格障害に代表されるII軸診断における人格障害の登場,解離性同一性障害の増加,登校拒否・不登校などと表現される不適応行動から社会的引きこもりへの変化,うつ病の増加と密接に関係する自殺の増加,性同一性障害の登場などが問題となってきた.これらの変化は,家族内における対人関係の変化,それらと密接に関係するストレス社会,インターネット社会の登場と表裏一体をなしている.
著者
丹羽 功
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大學法學 (ISSN:09164537)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.25-45, 2007-06

1990年代の半ば以降の地方政治において,従来とは異なるタイプの首長が各地で登場してきたことが注目されている。これらの首長の特徴を表現する際には,選挙において政党の支援を受けていないという意味で「無党派」という語が用いられたり,情報公開や政策評価など新しい政策を積極的に推進していることから「改革派」という語が用いられたりしている。これらの首長については,上述のように政治的なスタンスや自治体政策の革新といった側面が関心の対象となっているが,その社会的背景やキャリアについては十分な検討が行われていない。本稿では近年に登場した新しいタイプの首長を一つの集団としてみた場合に,首長に至るキャリアにどのような特徴があり,何が変化しているのかを,都道府県知事を題材として考察する。
著者
須賀井 義教 油谷 幸利 大名 力 中村 麻結 中西 恭子
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

朝鮮語CALL(Computer-Assisted Language Learning)教材を開発して利用するためのツールや具体的な作成方法を探究し,普及することを目的として,数度にわたる講習会を行った.また,主にインターネットブラウザを通じて利用することのできる朝鮮語CALL 教材を実際に開発し,公開した.一部の教材は問題を自由に追加,修正することが可能であり,教師が学習者に合わせて問題をカスタマイズすることが可能である.
著者
熊倉 靖
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学生物理工学部紀要 = Memoirs of the School of Biology-Oriented Science and Technology of Kinki University (ISSN:13427202)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.1-13, 2000-02-25

機械工業は産業革命以来工業の指導的役割を果たして来た。第2次世界大戦後はエレクトロニクスと結びついてメカトロニクスを生み出した。更なる発展のために発想の転換を迫られ、生物に目が注がれるようになった。ここで誕生したのがバイオメカニクスとバイオミメテイクスである。前者は生態の機能を分析し、生体の一部を人工的に作成して医療や福祉に貢献している。後者は生物の形態、機能、行動を観察し、優れた点を機械工業に取り入れてこれを発展向上させようとする技術である。バイオミメテイクスの歴史は古いが技術として認知されたのは最近のことで、次の4点を目標として適用されている。1.新しい材料を開発する。2.新しい機構、構造を開発する。3.新しいシステムやアルゴリズムを設計する。4.熟練者の技能や人間の感性を分析し具体化する。本稿ではこの目的に沿った適用例を紹介し、今後の参考に供するするものであるが,いずれの場合でも生物側にシーズが、また適用側にニーズがあり、この仲介役とて工学があるというバイオミメテイクスの特徴を備えている。バイオミメテイクスの具体化の方法としては名案はないが、次の3方法が考えられる。第1案運良く思いつく。第2案過去の適用例をニーズとシーズ、仲介の工学で分類しておく。第3案シーズとニーズのそれぞれの側から開発を進める。今後、バイオミメテイクスは従来解決が困難であると考えられて来た環境保全や人間の感性や勘、コツといった分野にも深く立ち入って行くことが期待される。
著者
小西 幸男
出版者
近畿大学
雑誌
生駒経済論叢 (ISSN:13488686)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.193-216, 2006-03-31

EUは加盟国により構成され,EUの環境政策は環境法を通じて加盟国の国内法へと浸透していく。しかし,各加盟国は独立した国であり,それぞれにおいて国内の政策および法体系によって環境政策および行政を行っていることとEUの環境法政策は詳細の実施を各加盟国の裁量に委ねていることから複層に絡み合う二つの環境法政策の間には整合性の問題が存在する。EUの環境政策における整合性がどのように図られるかを解明することによって,EUの目指す環境法政策とはどういったものであるがより明確になるであろう。本論文ではドイツにおける容器包装例の国内施行例がEU環境法に照らし実施されたにもかかわらず,EUから違反事例であると指摘を受けた事件を考察することで,整合性の問題点を検証する。
著者
岡野 奨 光永 靖 坂本 亘 熊井 英水
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学農学部紀要 (ISSN:04538889)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.79-82, 2006-03-31

生簀内における養殖クロマグロの遊泳行動を把握するためにバイオテレメトリーにより調査した。巡航遊泳時における尾鰭の振動数は1.8Hzであったのに対し,突進遊泳時における尾鰭の振動数は8.0Hzであった。巡航遊泳時および突進遊泳時における推定遊泳速度は,それぞれ1.1および5.2BL/sであった。クロマグロは尾鰭を振動させずに潜行(glide)し,再び尾鰭を振動させながら水面に向かうglide and swimming遊泳を示した。クロマグロは台風通過時に遊泳水深分布が中層に集中する特異的な遊泳行動を示した。大量の土砂と雨水,底網の吹かれが原因で遊泳水深の分布が中層付近に集中し,死亡したと推測される。
著者
岩井 千尋
出版者
近畿大学
雑誌
商経学叢 (ISSN:04502825)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.315-337, 2008-03

コーポレート・ガバナンスをどのような形にするかということは,一国の資本主義をどのような形にするかということに繋がるが,その中心に位置する問題が株主重視型ガバナンスか従業員重視型ガバナンスかということである。従来から米国が株主重視であるのに対し日本は従業員重視であったが,法人企業統計から,わが国の大企業は2003年頃から急速に株主重視に舵を切り始めたことが分かる。「失われた15年」を経て,いまや企業は収益力を回復した。しかし,株主重視に寄ったせいで従業員の所得が増えなくなり消費不振を招くなどの悪影響が出始めた。日本がこれ以上株主重視に向かうのは好ましくない。株主のみを重視すべきという主張はさしたる根拠があるものでもなく,日本の終身雇用にマッチしないし,人々の幸せに繋がらない。
著者
永田 誠
出版者
近畿大学
雑誌
商経学叢 (ISSN:04502825)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.597-614, 2006-03-31

カントの道徳哲学とドイツ観念論哲学を土台にして,ニックリッシュはかれの組織論を展開している。その組織論はかれの経営経済学の哲学的根底をなしている。かれの組織論の最も大きな特徴は,道徳原理が組織の最も根本的な法則だと捉える点にある。この考えが,今日の経営の諸問題,例えば,企業倫理,コーポレートガバナンス,成果主義賃金制度などの解決にどのような意味を持つのかを論じ,さらに,彼の組織論あるいは経営経済学の持つ学史的意義を明らかにした。
著者
犬塚 澄雄 山本 浩史 大石 武士 青木 晋平
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学農学部紀要 (ISSN:04538889)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.13-17, 1988-03-20

キノコ残渣の養鶏飼料化を図るため,26週齢の産卵鶏(RIR系)を用い,市販の成鶏用配合飼料にシイタケ残渣を8%と12%代替した飼料を給与し,卵質に加えてとくに今までほとんど検討されていなかった血液成分への影響について,市販飼料の結果と比較して,調べた.供試したシイタケ飼料(8%と12%)の一般成分は,市販飼料と比較すると,粗蛋白質と粗脂肪の各含量が低く,粗繊維と粗灰分合量に富んでいることがわかった.体重は減少する傾向が認められ,飼料摂取量は8%代替では市販飼料とあまり差はなかったが,12%代替では有意(P<0.05)に減少した.飲水量は逆に増加した.産卵率は市販飼料に劣らない良い成績が得られ,飼料効率の点ではむしろ優れているようであった.卵重は12%代替で有意(P<0.05)に小さい結果を得た.卵殻厚も同様で薄くなった.ハウユニットには差はなく,卵黄の色調は消費者の嗜好性からみて,実用上で全く問題はないと思われる.血液成分については,T-cho, HDL-cho, TG,およびβ-Lpの各濃度は市販飼料の場合よりも低い価が得られ,とくに12%代替では有意差(P<0.01)が認められ,総体的に脂質の低減効果が認められた.Ca濃度も有意(P<0.05)に減少した.GやMgの濃度はほとんど変化はなかった.シイタケ残渣の代替率は8%と12%の間にその適正値が存在することが推測された.
著者
辻井 農亜 岡田 章
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学医学雑誌 (ISSN:03858367)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.225-231, 2007-12

本研究は1994年から2003年までの10年間に近畿大学医学部付属病院メンタルヘルス科へ不登校を主訴に受診した6-18歳の患者533人を不登校の病態の変化を調べることを目的として1994〜1998年の前期と1999〜2003年の後期に分け,受診者数,主訴の内訳,不登校に陥った契機,初診時診断(ICD-10),転機について性別,学年別(小学生,中学生,高校生)に比較検討を行った.結果は,10年間の調査期間中の不登校状態にある受診者数に増減はないが前期に比べて後期の男子の受診者数が減少し,不登校に随伴する症状を呈する中高生の女子の受診者数が増加していた.不登校の契機は学校生活によるものが最も多かった.初診時診断はF43(重度ストレス障害および適応障害)の比率が最も大きく,特に女子では男子に比べF44(解離性[転換性]障害),F50(摂食障害)の比率が大きかった.転帰は,中高生に比べ小学生での再登校の比率が大きかった.本調査の結果から,当科では不登校の子どもの受診形態が変化し,特に中高生の女子において不登校に随伴する症状の治療が受診動機となっていることが示唆された.これは不登校に対する理解が浸透し不登校状態にある子どもに対応する各関係機関の役割が明確になり,医療機関は学年別,性別に応じて不登校状態の背景にある症状を把握し治療する役割が求められているためと考えられた.
著者
大友 貴志
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学医学雑誌 (ISSN:03858367)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.215-223, 1997-12-25

モルモットの肝臓からRNAを調整し, 既知の他動物のcDNA相同部位よりプライマーを作製し, RT-PCR(Reverse Transcription Polymerase Chain Reaction)法・5'RACE(Rapid Amplification of cDNA End)・3'RACE法, ジデオキシ法によってビクニンおよびカウンタートリピンのcDNA塩基配列を決定した.ビクニンはα1-ミクログロブリンの3'側につながって合成され, 1157塩基から成り352残基のアミノ酸をコードしており, カウンタートリピンは1481塩基から成り358残基のアミノ酸をコードしていた.そして得られたアミノ酸配列を既知の他動物の配列と比較検討したところモルモットではトリプシン阻害活性中心部に特色ある変化が見られた.さらにこの二つの蛋白質の分子系統樹を同義置換率に基づいて作成したところ, モルモットは齧歯類よりヒト, ブタに近い種族であることがわかった.このことは, モルモットが齧歯目には属さず, モルモットを含む天竺鼠目を齧歯目と対等な分類にするべきと提案したLiの仮説を支持するものであった.