著者
沼澤 理絵 中尾 康夫 久木田 和丘 米川 元樹 川村 明夫
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 = Journal of Japanese Society for Dialysis Therapy (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.351-359, 2007-04-28

慢性腎不全による透析患者数の増加に伴い, 手術を受ける症例も増加傾向にある. 透析患者は麻酔のリスクも高いとされる一方で, 透析患者のみを対象とした麻酔関連偶発症の調査報告はない. 当院麻酔科管理で手術を施行した慢性腎不全で透析療法中の998症例において手術室における危機的偶発症 (心停止および心停止寸前の高度低血圧, 高度低酸素, 高度徐脈) の発生率, 転帰, 原因を調査した. 症例をASA-PS別に分類すると, クラス3, 3E, 4, 4Eの順に895例 (89.7%), 72例 (7.2%), 13例 (1.3%), 18例 (1.8%) であった. 全体の3%に相当する30例に手術室内で危機的偶発症が発生しており, 1.1%に相当する11例が術当日または術後7日以内に死亡転帰をたどった. 麻酔科管理1,000症例あたりの偶発症の発生率および死亡率は30, 11であった. 心停止は3例で発生し, 発生率は1,000症例あたり3であった. 偶発症の主因としては23例 (76.7%) が術前合併症, 7例 (23.3%) が麻酔管理であった. 術前合併症としては心不全が最も多く, 敗血症がこれに次いだ. 麻酔管理の問題点としては, 区域麻酔 (脊椎麻酔や硬膜外麻酔) に関するものが最多であった. 偶発症の発生率 (1,000症例あたり) はASA-PS4, 4EではASA-PS3, 3Eより高かった. ASA-PSで評価される術前状態が偶発症の発生率に関与していることが透析患者でも示された. 透析療法を受けている慢性腎不全患者の麻酔リスクは高いと認識すべきであり, 安全な麻酔管理には術前評価, 麻酔計画が特に重要と考えられた.
著者
平澤 由平 鈴木 正司 伊丹 儀友 大平 整爾 水野 紹夫 米良 健太郎 芳賀 良春 河合 弘進 真下 啓一 小原 功裕 黒澤 範夫 中本 安 沼澤 和夫 古橋 三義 丸山 行孝 三木 隆治 小池 茂文 勢納 八郎 川原 弘久 小林 裕之 小野 利彦 奥野 仙二 金 昌雄 宮崎 良一 雑賀 保至 本宮 善恢 谷合 一陽 碓井 公治 重本 憲一郎 水口 隆 川島 周 湯浅 健司 大田 和道 佐藤 隆 福成 健一 木村 祐三 高橋 尚 由宇 宏貴
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 = Journal of Japanese Society for Dialysis Therapy (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.36, no.7, pp.1265-1272, 2003-07-28
被引用文献数
2 12 4

遺伝子組換えヒトエリスロポエチン製剤 (rHuEPO) が6か月以上継続投与されている慢性維持血液透析患者 (血液透析導入後6か月以上経過例) 2,654例を対象に, 維持Ht値と生命予後との関係をretrospectiveに調査, 検討した. Cox回帰分析による1年死亡リスクは, 平均Ht値27%以上30%未満の群を対照 [Relative Risk (RR): 1.000] とした場合にHt 30%以上33%未満の群でRR: 0.447 [95%信頼区間 (95% CI): 0.290-0.689 p=0.0003] と有意に良好であったが, Ht 33%以上36%未満の群ではRR: 0.605 [95% CI: 0.320-1.146 p=0.1231] と有意差を認めなかった. 一方, Ht 27%未満の群ではRR: 1.657 [95% CI: 1.161-2.367 p=0.0054] と有意に予後不良であった. また, 3年死亡リスクも1年死亡リスクと同様, Ht 30%以上33%未満の群ではRR: 0.677 [95% CI: 0.537-0.855 p=0.0010] と有意に良好であったが, Ht 33%以上36%未満の群ではRR: 1.111 [95% CI: 0.816-1.514 p=0.5036] と有意差を認めず, Ht 27%未満の群ではRR: 1.604 [95% CI: 1.275-2.019 p<0.0001] と有意に不良であった.<br>これらの調査結果より, 1年および3年死亡リスクはともにHt値30%以上33%未満の群で有意に低値であり, 生命予後の観点からみた血液透析患者のrHuEPO治療における至適維持目標Ht値はこの範囲にあると考えられた. ただし, 1年死亡リスクは, 例数が少ないもののHt値33%以上の群についても低値であったことから, このレベルについては今後再検討の余地があると考えられた.
著者
高橋 真生 北野 優里 須田 昭夫
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.115-117, 2002-02-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
6

症例は25歳の男性. アルポート症候群による慢性腎不全にて透析歴12年の患者であり, 慢性膵炎を合併している. 1998年ごろよりパニック障害を発症し, 2000年12月より塩酸パロキセチン水和物による治療を開始した. 服用開始21日目の血液検査で膵酵素の急上昇を認めたが自覚症状はなく, 他覚的所見でも異常を認めなかった. 腹部エコーや腹部CTでも軽度の膵腫大を示すのみであった. 2001年5月, 塩酸パロキセチン水和物の中止にて膵酵素は速やかに低下したがパニック障害に対して塩酸トラゾドンを開始したところ, 再び膵酵素の上昇を認め, 塩酸トラゾドンの中止にて膵酵素は低下した. SSRI (selective serotonin reuptake inhibitors) と系統の異なるスルピリドに変更したところ膵酵素の上昇はなかった.SSRIによる慢性膵炎の急性増悪と考えられ, 報告する.
著者
石井 恵理子 安藤 康宏 山本 尚史 小藤田 敬介 浅野 泰 草野 英二
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.1417-1422, 2004-06-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
14
被引用文献数
6 3

血中ANPはDWの指標として用いられているが, DW設定のための体液量の定量的な基準値, 特にhypovolemiaに関しては明確ではない. 今回われわれは, HD患者のANPとDWの関係について検討し, DWの適否判断のためのANP基準値を設定した. 主に心胸比によってDWが設定されている維持HD患者58名のHD後でのANP値 (RIA固相法) を測定し (n=110), その時点のDWの適否を自他覚所見に基づいてDW過小群・適正群・過大群の3群に分類し, ANPとの関係を検討した. その結果, 3群間においてHD後ANP値は有意差を認めた (DW過小群: 35.5±6.0pg/mL, DW適正群: 57.4±4.4pg/mL, DW過大群: 137.8±22.8pg/mL). 適正DW群の透析後ANP値の10-90パーセンタイルは25-100pg/mLに分布しており, ANP値が25-100pg/mLの間にあれば, DWが適正である確率は69.4%であった. さらに適正群のANP中央値付近 (40-60pg/mL) であれば, DWが適正である確率は95.8%と極めて高くなった. また, ANP 25pg/mL以下, あるいは100pg/mL以上ではそのDWが適正である可能性は低く, 25pg/mL以下では57.1%の症例でDWは過小であり, 100pg/mL以上では70.8%の症例で過大であった. ANPをDWの指標とする場合, 40-60pg/mLを至適DW目標とし, 25pg/mL以下, 100pg/mLはそれぞれDW過小・過大の可能性を考えるべきと思われた.
著者
中村 敏子 木村 玄次郎 富田 純 井上 琢也 稲永 隆
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.28, no.11, pp.1407-1413, 1995-11-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
16

血液透析の導入が必要である患者では, 高血圧や肺水腫等のため, 適正な体液量レベルの体重 (DW) をあらかじめ推測することが重要である. しかし, これまでは, DWを決定する絶対的な基準がないため, 実際にどの体重レベルまで除水すればよいのかを推定することは困難であった. そこで, 1977年から1987年の間に当施設で血液透析に導入し転院し得た慢性腎不全患者190例を対象として, 導入時の体重変化の程度と性別, 年齢, 原疾患, 血圧, 胸部X線 (CTR), 心電図などを調べ, DWまでの除水量や体液量是正後の血圧の推定が可能かどうか検討した. 導入期の体重 (iBW) と転院時の体重 (mBW) の差をとり, それを後者で除したものを体重変化率 (%ΔBW) とした. 導入期の収縮期血圧 (iSBP) と維持期の収縮期血圧 (mSBP) の差をとり, それを前者で除したものを収縮期血圧変化率 (%ΔSBP) とした. 性別や年齢は%ΔBWや%ΔSBPに影響を与えなかった. 導入時心電図所見を左室肥大とST変化により4段階に分けスコア化した (ECGスコア). %ΔBwはiSBP, CTR, ECGスコアと相関し, 慢性糸球体腎炎では糖尿病性腎症に比し低値を示した. iSBPは慢性糸球体腎炎では糖尿病性腎症や腎硬化症に比し低値であった. %ΔSBPは, iSBPやECGスコアと有意な相関を示し, 慢性糸球体腎炎や糖尿病性腎症では腎硬化症に比し高値であった. ECGスコアは慢性糸球体腎炎では糖尿病性腎症や腎硬化症に比して軽度であった. このように, 透析導入時に必ず施行される諸検査 (血圧, 心電図, 胸部X線) を利用して, 導入時の体重増加がDWの何パーセントであり, DWまでどの程度除水すべきなのか, 維持期には血圧がどのレベルまで低下するのかをも, 推定することが可能であることが示唆された.
著者
上田 陽彦 伊藤 奏 右梅 貴信 能見 勇人 日下 守 東 治人 柴原 伸久 勝岡 洋治
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.139-143, 2000-02-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
15

症例は82歳男性. 1997年9月頃から全身倦怠感および食欲不振が出現し, 近医で高窒素血症 (BUN49mg/dl, 血清Cr値5.3mg/dl) を指摘された. 腹部CTにて両側水腎症が存在し, 第2腰椎から第5腰椎レベルの大動脈周囲に軟部組織陰影が認められた. 逆行性腎盂撮影にて両側中部~下部尿管の著しい狭窄像を認めた. 同年10月28日, 左腎瘻造設術および後腹膜組織生検術を施行した. 病理組織学的に後腹膜線維症と診断した. ステロイド療法を行ったところ, 1か月後に左尿管の狭窄は改善された. 治療開始後6か月目に左腎瘻力テーテルを抜去可能となった. 現在BUN 25mg/dl, 血清Cr値1.3-1.4mg/dlである.本症は, 腎不全を伴った特発性後腹膜線維症と考えられたが, ステロイド療法が病変部の縮小と腎機能の改善に有効であった.
著者
野本 保夫 川口 良人 酒井 信治 平野 宏 久保 仁 大平 整爾 本間 寿美子 山縣 邦弘 三浦 靖彦 木村 靖夫 栗山 哲 原 茂子 浜田 千江子 佐中 孜 中尾 俊之 本田 雅敬 横田 眞二 須賀 孝夫 森 典子 下村 旭 金 昌雄 今田 聰雄 田中 良治 川西 秀樹 枝国 節雄 福井 博義 中本 雅彦 黒川 清
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.303-311, 1998-04-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
24
被引用文献数
25 25

硬化性被嚢性腹膜炎 (sclerosing encapsulating peritonitis, SEP) はCAPD療法における最も重篤な合併症の1つである. 平成7-9年度にわたり, 厚生省長期慢性疾患総合研究事業慢性腎不全研究班に参加した『CAPD療法の評価と適応に関する研究班』にてこの病態に焦点をあてSEPの診断基準, 治療のガイドラインを作成し検討を重ねてきた. 今回平成7-8年度の成果を土台に1年間経験を各施設より持ち寄りその実際的な問題点を明らかにし, 改訂するべき事項があればさらに検討を続けることを目的として叡知をあつめ, 平成9年度硬化性被嚢性腹膜炎コンセンサス会議を開催した.今回は主に診断指針の見直しおよび治療および中止基準の妥当性に焦点をあて検討し改訂案を作成した. 診断基準に関しては昨年度に提示した定義に根本的な変更点はなかった. しかし, 治療法に関し若干の手直しを行った. 栄養補給は経静脈的高カロリー輸液 (TPN) を主体に行うが, 具体的投与量を提示した. 一部症例にステロイド薬 (含パルス療法) がSEP発症直後の症例に著効を示した症例に加えて, 一方不幸な転帰をとった症例も報告された. また, 外科的腸管剥離についても再検討を行った. 中止基準に関しては一部の手直しと小児症例に関するガイドラインも新たに加えた.以上当研究班で3年余にわたる作業を行ってきたが, 現時点での諸家のコンセンサスを得たSEP診断治療指針 (案) を上梓することができた. しかしながら本病態の多様性, 治療に対する反応性の相違から基本的な治療方針の提示にとどめた. 今後さらに中止基準を含んだSEP予防法の確立や生体適合性の良い透析液の開発が重要であることはいうまでもない.
著者
桜林 耐 高江洲 義滋 萩野下 丞 竹田 徹朗 宮崎 滋 甲田 豊 湯浅 保子 酒井 信治 鈴木 正司 高橋 幸雄 平沢 由平
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.241-247, 1997-04-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
20
被引用文献数
2

目的: 血液透析の循環血液量 (BV) に対する影響を検索する第一歩として, 除水のない条件で検討した. 方法: クリットラインモニター (IN-LINE DIAGNOSTICS社製) で慢性血液透析10症例の無除水血液透析施行中のヘマトクリットを計測し, BVの変化を算定した. BVの変化 (ΔBV) を, mono-exponential関数: ΔBV(%)=A×〔1-exp(-B×t)〕-C×t, t: time (hour) で近似し, 各係数を臨床指標と比較検討した. 結果: 1) 全症例でBVの増加を認めた. BVの変化は上の近似式と良好に相関した (0.92<r<0.99, p<0.0001). 2) BVの増加率を表わす係数Aは8.66±2.92で, 体外循環充填量 (200ml) と回路回転血液量 (180から200ml/分) との和の全血液量に対する割合に相当した. また係数Aは胸部X写真の心胸比 (CTR) (r=0.88, p=0.0008), 透析開始前血清アルブミン濃度 (r=0.80, p=0.03) と有意に正相関した. 3) BVの増加速度を表わす係数Bは2.02±0.77で, BV増加は2時間で全増加量の99.9%に達した. 4) 係数Cは-1.64から1.06とばらつき, 臨床指標との相関はなかった. 結論: 無除水血液透析ではBVは経時的に増加した. この推移はmono-exponential関数に良好に近似され, その増加量が体外循環に必要な血液量にほぼ等しく, CTRや血清アルブミン濃度に正相関したため, BV増加の機転は体外循環に喪失する血液の補填であると考えられた. 近似式の係数Aは, BV増加の程度を表わし, hydrationやplasma refillingを反映する指標として有用であると考えられた.
著者
宗像 昭子 鈴木 利昭 新井 浩之 横井 真由美 深澤 篤 逢坂 公一 松崎 竜児 三浦 明 渡辺 香 森薗 靖子 権 京子 金澤 久美子 宮内 郁枝 鈴木 恵子 久保 和雄 尾澤 勝良 前田 弘美 小篠 榮
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.34, no.13, pp.1525-1533, 2001-12-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
14

今回我々は, 当院で維持血液透析を施行している安定した慢性腎不全患者59名を対象患者として, ベッドサイドにて簡便に使用できるアイスタット・コーポレーション社製ポータブル血液分析器i-STATを用いて, 透析前後で全血イオン化Ca (i-Ca) 濃度を測定し, 血清T-Ca濃度との関係について検討し, 以下の結果を得た.1) 透析前後における血清T-Ca濃度, 全血i-Ca濃度は, それぞれ9.43±0.90→10.54±0.70mg/dl (p<0.05), 1.26±0.10→1.30±0.07mmol/l (p<0.0001) と, いづれも有意な増加を示した. 2) Caイオン化率は, 53.43±0.03→49.55±0.04% (p<0.001) へと透析後有意に低下した. この原因として, 血液pHの変化の影響が考えられ, 血液pHとCaイオン化率との間には明らかな負の関係が認められた. 3) 透析前後における, 血清T-Ca濃度と全血i-Ca濃度の関係について検討したところ, 透析前ではy=7.507x+0.015 (r=0.839; p<0.001) と強い正の相関が認められたが, 透析後においては, 全く相関が認められなかった. この点について, pHならびにAlbを含めた重回帰分析法を用いて検討したところ, T-Ca=3.369×i-Ca+5.117×pH-32.070 (r=0.436, p=0.0052) と良好な結果が得られた. 4) 透析前後の全血i-Ca濃度の測定結果から, 容易に血清T-Ca濃度を換算できるノモグラムならびに換算表を作成した.以上の結果より, ポータブル血液分析器i-STATを用いた, ベッドサイド (“point-of-care”) での全血i-Ca濃度の測定とノモグラムの利用は, 透析室においてみられるCa代謝異常に対して, 非常に有用であると考えられる.
著者
中西 祥子 中西 員茂 藤堂 恵 久保 和雄 二瓶 宏
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.32, no.8, pp.1135-1141, 1999-08-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
14

28歳, 女性. 15週で妊娠判明時に血清クレアチニン4.4mg/dlを指摘され, 慢性腎不全の診断にもかかわらず患者の強い希望により妊娠継続した. 血液透析を行いながら32週で経膣分娩にて1790gの男児出産し, 産後8日目の血液透析を最後に離脱した. その後外来経過観察中徐々に腎機能低下, 産後1年10か月にて血液透析再導入となり, 週1回4時間の透析療法を行っていたが, 再び妊娠した. 透析時間延長, 回数を増やし38週にて経膣分娩にて2764gの女児を出産. 産後は週2回各4時間の血液透析となる. その後徐々に高窒素血症進行し, 週3回各4時間の血液透析を行っているが, 大きな合併症なく今日に至っている.2児とも奇形なく, 発育については第1子のみ生後8か月までは標準を下回ったがそれ以後は支障なく, それぞれ10歳, 8歳となり日常および学校生活を順調に過ごしている.
著者
山中 望 藤森 亜希 南部 正人 阪 聡 櫻井 健治 守屋 利佳 東原 正明 鎌田 貢壽
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.97-107, 2002-02-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
29

【目的】CRIT-LINETMモニター (CLM) を用いたplasma refilling rate (PRR) の測定法は研究者毎に異なり, 確立された方法がない. そこで本研究では, 11通りのPRR測定法の有用性と限界について検討し, 臨床的に利用価値の高いPRR測定法を明らかにすることを目的とした. 【対象および方法】慢性腎不全患者で, 透析中の血圧が安定している患者を対象とした. 透析条件は, 除水速度以外は透析中一定とした. 除水は, 異なる3種類の除水方法 (UF-A, -B, -C) で行った. 透析開始時の有効循環血液量 (BV(0)) は, 生体計測法 (8%法) と回帰I法 (Hct I法, ΔBV% I法), UF-A, -B, -C法の組み合わせから推定した. PRRの測定は, 生体計測法と回帰I法, 回帰II法 (Hct II法, ΔBV% II法), UF-A, -B, -C法を組み合わせた11通りの方法を行い比較検討した.【結果】8%-A法で測定されたPRR値は, 8.7±1.6mL/minであった. 種々のBV(0)測定法とUF-C法との組み合わせで得られたPRRは, 8%-A法のPRRと有意差を認めなかった. UF-B法で測定したPRRは, UF-A, -C法で測定したPRRに比べ有意に低値 (p<0.01, n=13) であった. 【考察】UF-A法より得たPRRは, 除水施行中のPRR値であるといえる. UF-B法より得たPRRが低値を示した理由は, 除水が行われない条件下の測定であったためであるといえる. UF-C法は, PRR測定直前に大きな除水をかけるため, 適用できる患者が限られるという欠点があるが, 膠質とPRRの関係について検討することが可能である.【結論】透析中の除水を考慮したPRRを測定する場合には8%-A法が, 非除水時のPRRを測定する場合には8%-B法が臨床的に有用である. 8%-C法では, 膠質のPRRへの効果を検討することができる.
著者
谷津 勲 朝倉 伸司 名倉 正明 福田 収 横山 公要 坂田 洋一 浅野 泰 目黒 輝雄
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.27, no.8, pp.1159-1167, 1994-08-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
35

透析時残血発生機序の検討の一つとして再生セルロース膜に吸着されるマトリックス蛋白質の動態および血液凝固反応の関与を検討した. 血液凝固反応に関しては血液凝固亢進の分子マーカーであるTAT複合体の変化を検討した. 合併症のない慢性腎炎より腎不全へ移行した安定した血液透析患者を対象とした. そのうち透析時残血の存する群 (残血群n=4), 残血のない群 (非残血群n=5) に分けてマトリックス蛋白質であるFbg, VNの透析時血漿中濃度の推移および透析器膜よりの50mM Tris HCl-1M NaCl, pH 7.4による溶出分画中の濃度, 分子パターンを検討した. TAT濃度に両群間で差はなくまた正常範囲内であり残血群でも血液凝固反応が進行している所見はない. このことより残血は血小板の膜への接着を中心とする一次止血機構に似た反応が推定された. マトリックス蛋白質であるFbgの血漿中濃度の推移は両群間で差は認められなかった. しかしVNの血漿中濃度の推移は残血群でより高値の傾向を示した. Immunoblotting法による分子パターンは大きな差は認められなかった. しかしながら透析器膜の1M NaCl-Tris buffered saline (TBS) による溶出分画中の蛋白質には他のマトリックス蛋白質に比しVNが多く含まれていた. またそのimmunoblotting法による分子パターンではVN-multimerが残血群でより多く認められた. この溶出分画中にはFibrinおよびFibrin-bound FNは認められなかったことから, このVN-multimerはFibrin由来とは考えられず, 従って残血の結果生じたものではなく, むしろ残血発生の原因の一つと考えられた. これらの結果より透析時残血発生機序の一つとしてVN-multlmerが強く関与していることが推定された.
著者
横尾 隆 久保 仁 石川 匡洋 加藤 尚彦 木村 弘章 大井 景子 我那覇 文清 川口 良人 細谷 龍男
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.33, no.7, pp.1115-1119, 2000-07-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
15
被引用文献数
3 3

症例は54歳男性, 肝硬変を合併する維持透析患者. 1989年に腹膜透析導入, 1996年よリ血液透析に変更となった. 血液透析中に一過性意識障害をくり返すため精査加療目的に入院. 頭部CTにおいて有意所見みられず, また脳血流シンチでも透析前後で明らかな差異は認められなかった. しかし血液透析後にアンモニア濃度が上昇するため, 門脈ドップラー検査を施行したところ門脈血流は肝内, 本幹とも遠肝性で脾静脈の一部から始まる側副血管を介して下大静脈に流入していた. さらに透析中に本幹での門脈血流の低下が指摘された. このため短絡血流の増加が意識障害を説明するものと考え, 透析中にアミノレバン®を投与することにより認められなくなった. これまでに透析中の門脈血流中の変化に対する報告はみられず, 今回の門脈ドップラーによる血流の結果は肝硬変合併血液透析患者の特殊性を示し, 意識障害が生じた場合の精査に重要であるものと考えられた.
著者
古橋 三義 中島 光好
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.35-42, 2002-01-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
15

透析患者の消化性潰瘍に対して, H2受容体拮抗剤は有効な治療薬である. 新規H2受容体拮抗剤であるlafutidineは他剤と比較して尿中排泄率が低く, 腎機能の低下した高齢者〔Ccr: 20-60 (平均45.2) mL/min〕でも, 腎機能の正常な高齢者 (Ccr: 61mL/min以上) および健常成人と同様な未変化体の血漿中濃度推移を示すことが報告されている. そこで今回, 透析患者におけるlafutidineの体内動態について検討した. 透析患者6名 (年齢49-72歳, 透析歴11か月-14年) の非透析時および透析時にそれぞれ, lafutidine 10mg錠を1回1錠投与し, 血漿中未変化体濃度を測定し, ファーマコキネティックパラメータを算出した. また, 透析による除去率についても測定した. 非透析時にはTmaxが0.8±0.1hr, Cmaxが336±40ng/mL, t1/2が6.71±0.30hrを示し, AUC(0-24hr)は2278±306ng・hr/mLであった. 透析時はTmaxが2.6±0.5hr, Cmaxが226±36ng/mL, t1/2が4.57±0.24hrを示し, AUC(0-6hr)は853±128ng・hr/mLであった. 使用した透析膜におけるlafutidineの除去率は7-18%であった. 透析患者においてもlafutidineのt1/2の延長は大きくなかった. Lafutidineの透析患者におけるt1/2 (6.7hr) はlafutidineの投与間隔 (12hr) よりも短く, 他のH2受容体拮抗剤と異なり, 透析患者においても用法を変更する必要はないと考えられた. しかし, 透析患者ではCmaxが健常成人の約2倍に上昇したことから, 用量は低用量から投与開始することが望ましい.
著者
栗山 哲 中山 昌明 友成 治夫 沼田 美和子 林 文宏 疋田 美穂 川口 良人 細谷 龍男
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.30, no.12, pp.1369-1373, 1997-12-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

現在, 除水不全を呈するCAPD患者に有効に作用する薬剤はない. 本研究では, 除水不全を認めるCAPD患者において, 抗プラスミン剤であるトラネキサム酸 (tranexamic acid: TNA) が改善効果を有するか否かを検討した.限外濾過不全I型の除水不全を認めるCAPD患者5例において, 先行するCAPDスケジュールを変更せずにTNA 1500mg/日を2週間経口投与し, その薬理効果を検討した. その結果, 1) TNA投与で一日総除水量は全例で有意に増加した. また, 体重は5例中3例で有意に減少した. 2) TNAはCAPD排液中の電解質, UN, Cr, アルブミン等の総除去量に影響を与えなかった. また, PETのD/PcrやKT/V, PCRにも影響を与えなかった. 3) TNA投与により血中およびCAPD排液中のブラジキニン濃度, 血中の組織プラスミノーゲンアクティベーター (tPA) 濃度は有意に低下した.以上, TNAは除水不全を呈するCAPD患者で除水量を増加させる. その機序は不明であるが, ブラジキニン, tPAの抑制を介した腹膜透過性の変化が関与している可能性が示唆された.
著者
浅野 澄子 若松 由実子 黒沢 睦子 岩崎 和代 伊藤 京子 西田 真澄 野島 町子
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析療法学会雑誌 (ISSN:09115889)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.437-441, 1985

日本のCAPD患者の入浴の状況は, 腹膜炎やトンネル感染を恐れ, 満足できる現状とはいえない. 我々は細菌汚染の面から浴槽内の湯と皮膚の状態を調査し, カテーテル出口部の状態による入浴の可否と方法を判定する基準を設定し, 患者指導に役立てたいと考え検討した.<br>昭和55年6月より59年5月までにCAPD導入した15例を調査対象とした. カテーテル出口部良好患者6例における入浴 (院内浴場-番湯) 前後の皮膚の3部位の, 細菌培養を施行した. その結果を参考にして, カテーテル出口部の状態による入浴基準を3段階に作製した. 大衆浴場4件と一般家庭風呂5件の入浴前後の湯の細菌培養を施行した.<br>当院で導入した15例中8例で計21回の腹膜炎が発生した. この起因菌は黄色ブドウ球菌4例, グラム陰性桿菌2例, 他カンジタ, グラム陽性球菌, セラシア属, ナイセリア, アシネトバクタアニトリウス各1例ずつ, 陰性10例であった. 腹膜炎発症直前の浴槽内入浴は2例であったが, 出口部の状態も良好であり, 起因菌培養は陰性であった. 一般家庭風呂の入浴前の細菌培養ではグラム陽性桿菌2件, 緑膿菌以外のシュードモナス属3件, 菌検出陰性1件を認め, 入浴後では1件にアエロモナスハイドロフィアが検出され, また1件が菌検出陰性へ変化した. 大衆浴場4件中1件のみグラム陽性桿菌を検出したが, 一般家庭風呂とに菌種類に著変はなかった. 6例の出口部良好患者の入浴前後の皮膚の3部位において, 検出された菌種には, 入浴前後で変化なくグラム陽性球菌を高頻度に検出した.<br>CAPD導入患者15例中8例計21回の腹膜炎がみられた. 入浴後に発症した腹膜炎は2回あったが, 出口部状態も良好で起因菌陰性の結果から, 入浴が原因となる腹膜炎と断定する根拠はなかった. また腹膜炎患者6例計8回カテーテル出口部の異常を認めた. 以上から, カテーテル出口部の状態による入浴基準を作製し入浴の可否を決定しているが現在までに入浴によるトンネル感染および腹膜炎の発生をみていない.
著者
小野 満也 小山 恒男 山口 博 佐藤 博司 寺島 重信 渡辺 俊一
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.27, no.8, pp.1155-1158, 1994-08-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
12
被引用文献数
1

当院血液透析患者90例, CAPD患者14例, 計104例に対して上部消化管内視鏡を施行し, 当院人間ドック受診者の内視鏡所見6,623例を正常コントロール群として比較した. 透析患者80例に107の病変がみられ, 特に胃粘膜点状出血が19.2%と多く, 透析患者に特異的な所見と思われた. 胃癌は5例に認められた. 血液透析患者の正常群22例と点状出血群20例の比較では, 年齢, 透析歴, 透析前血清カルシウム値, 透析前血中β2ミクログロブリン値, KT/V, 動脈硬化度に差はみられなかったが, ステロイド・NSAID投与の有無では点状出血群が有意に高率であり, 点状出血へのプロスタグランジン抑制の関与が考えられた.
著者
田中 勤 馬場 一成 小原 智香子 鈴木 覚 山崎 大樹 朝烏 邦昭 関内 久美子 中野 清子 黒川 千恵 島嵜 紀子 佐藤 裕子
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.33, no.7, pp.1101-1107, 2000-07-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
9

透析患者では日常生活上の制限等のストレスから心因反応としての精神症状や身体的愁訴を呈する患者が少なくない. 様々な症状を呈する患者に対しては包括的治療の観点から生活指導のほかに薬物治療も有効なアプローチとなる. 【目的】透析患者の不安や抑うつ等の精神症状やその他の不定愁訴に対する新規セロトニン作動性抗不安薬Tandospirone (TAN) の有効性および安全性を検討する. 【対象・方法】当院に通院する透析患者29例に心理テストの一つSTAIを施行し, 神経症, 抑うつ状態の領域にあった5例に対しTAN 30mg/日を投与した. 投与4週目にSTAIを指標として有効性について検討し, 安全性については, 透析開始時のダイアライザー通過前後および透析終了時のTAN血清中濃度を測定することで, 蓄積性とダイアライザー除去率を検討した. 【結果】 (有効性) STAIの得点から投与5例中3例に改善が認められた. 特にイライラ感等の自覚症状の改善が認められ, 透析療法の受容が向上した. (安全性) 副作用は全例において認められなかった. 血清中濃度は投与4週目においても健常者の血清中濃度と殆ど変わらず蓄積性は少ないと考えられた. ダイアライザーによる除去は投与開始時の除去率16.9%, 透析4時間による最終的な除去率80.4%であった. 【結語】TANは抗不安・抗うつ作用を併せ持つ新しいタイプの抗不安薬であり, 透析患者の精神症状や不定愁訴を改善する. 従来のBZ系抗不安薬と異なり筋弛緩作用がないことから透析後ふらつきを呈しやすい症例に用いやすく, 特に依存性のない点は長期フォローが必要な透析患者のストレスマネージメントに有用と考えられる.
著者
潮下 敬 泉川 欣一 原 耕平 Arifa Nazneen 古巣 朗 宮崎 正信 河野 茂
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.131-134, 2003-02-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

本邦では毎年ハチ刺症により約40人の死亡が認められる. アナフィラキシーショックはよく知られているが, 横紋筋融解症による急性腎不全の合併症例は比較的少ない. 今回, われわれはスズメバチ刺症後に横紋筋融解症, 多臓器不全をきたし血液透析を施行して救命した症例を経験した. 症例は80歳男性. 全身をスズメバチに刺されて意識消失し緊急入院となる. 入院後急性腎不全を主体とする多臓器不全を発症したが, 血液透析を計8回施行して腎機能は回復した. 透析離脱後は他の臓器不全も改善し後遺症も認められなかった.ハチ刺症による急性腎不全の発症機序としてはハチ毒による尿細管壊死, 横紋筋融解, 血管内溶血などが考えられる. これまでの報告と合わせてスズメバチ刺症による多臓器不全について報告する.
著者
安藤 亮一 吉川 桃乃 山下 裕美 土肥 まゆみ 千田 佳子 井田 隆 石田 雄二 秋葉 隆
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.317-325, 2003-05-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
30
被引用文献数
1

活性型ビタミンD静注製剤である, マキサカルシトールとカルシトリオールの透析患者の二次性副甲状腺機能亢進症に対する効果を比較検討した. また, 新たに開発された1-84副甲状腺ホルモン (PTH) のみを測定するwhole PTHの測定を行い, whole PTHおよびC端の不活性フラグメント7-84 PTHへの効果についても比較検討した. 対象は年齢, 透析歴, PTHをマッチングさせた, 各群10例の二次性副甲状腺機能亢進症を有する透析患者である. PTHの値に応じて, マキサカルシトール5あるいは10μgを週3回各透析後に (マキサカルシトール群), また, カルシトリオールを0.5あるいは1.0μgを週3回 (カルシトリオール群) より開始し, intact PTH, whole PTH, 7-84 PTH, 骨型アルカリフォスファターゼ (BAP), インタクトオステオカルシン (iOC), I型プロコラーゲンNプロペプチド (PINP), 補正カルシウム (Ca), リン (P) に及ぼす影響について, 24週間にわたり前向きに比較検討した.両群ともに, 4週後にwhole PTHの有意な低下が認められた. カルシトリオール群では, 8週-12週においてPTHの低下が少ない傾向であったが, 薬剤の増量により, 16週以後, マキサカルシトール群と同様に低下した. Intact PTH, 7-84 PTHは, whole PTHと同様の経過を示した. BAP, iOC, PINPも同様の傾向を示したが, カルシトリオール群では有意な低下ではなかった. また, 補正Caは両群ともに増加, Pは変動が大きいが有意な変化を認めなかった. これらの検査値は24週後において, 両群間に有意な差を認めなかった. 薬剤の投与量を調節した結果, 24週後の投与量の比は約7:1であった. 以上より, マキサカルシトールとカルシトリオールは投与量を調節すれば, ほぼ同等の二次性副甲状腺機能亢進症に対する効果が得られ, その効力比はマキサカルシトールを1とするとカルシトリオールで約7に相当すると考えられた.